しっかり者がダメ男に惹かれる法則(1)

坂田 零

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ACT3 優柔不断は早々簡単に治らない8

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 あおいがあまりにもキラキラする眼差しで見るもんだから、まんざら悪い気もしない。
 だけど、相手は本職のプロだからな・・・・
 俺は一度大きく息を吐くと、水割りのグラスをカウンターに置いて、あおいのキレイな顔を見る。

「ん~・・・じゃあ、あおいがメインとって、1コーラス歌ってくれれば下のコーラスラインとれると思う」

 俺がそう言うと、あおいは何故か驚いたように、大きな目を更に大きく見開いてまじまじと俺を見た。
 俺は思わず首を傾げる。

「お?どうした???」

「え・・・だって、今、あおいってあたしを呼んだから・・・」

「え?あおいじゃなかったっけ?本名?」

「え??あおいだけど・・・!」

「だよな?ならいいやん・・・
え?なにかまずかった?」

 何か含みがある訳でもなく、俺がふつーにそういうと、何故かあおいは、星を散らしたみたいに更にきらきらと瞳を輝かせてこう答えたのだった。

「あたしをMarin呼ばない人がいることに、なんか感動した・・・・!」

「は、はい?????」

 何を言っちゃってんだこの子は??
 俺は訳がわからず更に首を傾げてしまう。

 そんな俺の目の前で、あおいは両目をキラキラと輝かせると大きく息を吸って、まるで、漣が歌うような声で懐かしいPOPSを歌い出した。
 8帖ほどしかない個室いっぱいに、魂が揺れるような澄んだ歌声が響く。

 やっぱ、この子の実力はすげーな・・・・
 
 ソウル、R&B、まで歌いこなすこの実力。
 こんな子とセッションとか、まぁ、普通ならできないことだよな・・・
 そんなことを思いつつ、あおいのキーを取って、下のコーラスラインを見つけだす。

 よし・・・
 ここか・・・・

 思い切り息を吸う。
 あおいの息に合わせて、彼女の漣のような声が紡ぎ出すメロディの下のコーラスラインに音を合わせる。
 息が重なれば、それは一つのハーモニーになる。
 声が共鳴するのが心地良い。
 やっぱプロだよな、すげー上手いわ。

 ひとしきり歌いきると、俺とあおいの目があった。
 あおいは何故か、めちゃくちゃ嬉しそうに、どこか羨望っぽいまなざしで俺を見つめてた。
 
「てっちゃん・・・・!てっちゃんてクズとか言われてるのに!
歌うとなんかすっごいグルーブなんだけど!!
すっごい気持ちいこれ!!!
それに・・・そこらの名ばかりアーティストなんかより、全然いい声してるんだけど!?」

「えー・・・・・そうかなぁ?」

「そうだよ!!!」

 あおいはやけに嬉しそうにそう言って、まじまじと俺を見つめたのだった。
 なんだかよくわからないけど、この間が最悪だった分、なんとなく面白い夜がこうして更けていった。
 


 
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