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占いのお客さん 11月1日
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アレックスとボビーは朝日屋を出た後その足でギルドの方へ向かっていた。
パーティメンバーと待ち合わせをしていたからだ。
「ねえ、アレックスさん、黙ってろって言うから黙ってましたけど
さっきの話本当ですかね」
「それを確かめるためにも、明日俺は探しに行こうと思っている。
それとな、おチビのことはとりあえず、秘密にしといてくれ」
「分かりました。アレックスさん、俺も明日行きますよ」
「それは、助かるよ。おチビの言う通りケガをしているだろうから明日の朝、
ギルドから幌馬車を借りて麓の休憩小屋まで来てくれよ。それと水と食い物もな」
「・・・・分かりました」
ボビーはアレックスのことを新人時代からずっと面倒見てもらった恩もあって、兄のように思って信頼している。
そのアレックスがまだ7歳になったばかりの子供の言うことを信用しているのがちょっとだけ
悔しいような嫉妬のような感情もあった。
「ボビーありがとう。助かるよ」
アレックスのパーティーは「オーシャンズ」と言って、30名以上が所属している。
普段は1~4名くらいの少人数で活動している冒険者が、
少人数では受けられない依頼を受けられるメリットがあり
全員がほぼ顔見知りであるため、急造で組んでも連携プレーが出来るため依頼成功率高くなることと
初心者の面倒見も良いため、大きなケガや事故が減るので、ギルドでも推奨しているシステムだ。
1000エラン以上の依頼を達成すると1%がパーティに積み立てられて
ケガ等の見舞金に充てられている。
尤も、引かれているのはそれだけじゃない。
ギルド手数料や、税金もだ。
実はスコットもオーシャンズに所属している。
情報収集というか、横の繋がりとかも主な目的ではあるけれど。
同じシステムのパーティがもう一つありそれが「マウンテンズ」と言うわけだ。
このあとギルド近くの串焼き屋で各々が情報を訊きこんで集合することになっていた。
串焼き屋に入るとすでに10名ほどが待っていた。
全員が来る必要もないし、来られない人もいるのでこれくらいなのだろう。
「急な話ですまないな、アレックス、お前の方はどうだった?」
店に入ると「オーシャンズ」のまとめ役の年長者のダグラスが訊いてきた。
「俺は明日の朝からガウラ岳の方へ探しに行こうと思っている」
「スコットはいつもマーレイ山に行ってるんだ。反対側じゃないか」
アレックスとは仲がいいデビットが声をあげた。
「マーレイ山は行く奴らは多いがスコットを見たって話が無かった。
だったら、他のツウツウ草の生えてる場所に行ったってことだと思う」
その後ツウツウ草の生息地はどこなんだと話になった。
ガウラ岳の南面までは、2日がかりの往復になるため
ここに集まったメンバーでは正確な場所を知ってる人まではいなかった。
「ところで、この話は正式な依頼となった。
ゴードン薬局のマイコオがスコットの幼馴染ということもあって依頼にしてくれた。
報酬は少ないので俺からやってくれとは言えないが気には留めといてくれ。
今日は以上だ」
と、ダグラスの言葉で『オーシャンズ会合』はお開きになった。
翌日の朝早くにアレックスは一人で出発した。
港街のトリニスタンへと続く馬車道りの西街道を暫くいって、T字路を南に向かう。
そこから、3時間以上真っ直ぐに進む。
その間、ホーンラビットを狩っていたいた3人組以外誰ともすれ違わない。
この辺りの土地は、起伏も激しい。そして、大きな肉食魔物もいない。
一番大きいのが、ちょっと入った先に、2本角のカモシカの魔物ファーリードバックが群れでいる。
長い首もとにふわふわの白い毛があり、雄は白い毛が胸元まで続く。
縄張り意識が非常に高く、縄張りに入ると執拗に追いかけてくる。
その為だろうか、ゴブリンもこの辺りにはいない。
オークの3頭くらいは、群れで一気に倒してしまう。
その気性は、やはり魔物だからだろうか?
そのためか、この辺りの者はファーリードバックを街道の守護獣と呼んでいる。
偶に、街道に出てくるはぐれファーリードバックを狩ることもあるが、
素早い動きと、突進力、ジャンプ力で、冒険者泣かせとなっている。
だが、街道を歩いている限りは、目を合わせなければ、人を襲うことはほとんどないようだ。
草食魔獣で良かったというところか。
他には鹿角の大きなウサギである、ジャッカロープも生息している。
スコットが腰に下げていた物の1つは
それらの草食獣の嫌う肉食獣の毛に薬草等をまとめた自作の匂い袋だ。
普段は革袋に入れて、匂いが出ないようにしている。
さて、アレックスは真っ直ぐに休憩小屋を目指した。
午前中に目的の小屋に到着して、足を怪我しているスコットさんを発見した。
この時驚いていたのは、見つけたアレックスではなく、
見つけてもらったスコットの方だった。
だが、傷のせいかスコットはかなり衰弱していた。
まず、下級ポーションを差し出し飲ませた。
その後、持ってきた果実水を差し出すと勢いよくガブガブと飲み干した。
スコットが言うには1日目にツウツウ草の生息地まで行ったが日が沈んでしまったため
2日目に採集していて遅くなり帰り道が暗くなって足を滑らせたことで
やむを得ず、ちょっと開けたところでキャンプををして
3日目の昼過ぎにようやくこの小屋までたどり着いたが
食料は尽きて、小屋の井戸水だけで我慢したそうだ。
薬草を少しかじったが痺れるほどの苦さだったらしい。
前日より足が大きく腫れ上がり痛みも酷く、持っていた薬草でシップをして
ここを通る人がいないか見ていたらしい。
馬車通りの西街道まで行く体力も無かったようだ。
そんな話をしているうちにボビーの幌馬車がやって来た。
馬車に乗せるとスコットは安心したのか、
顔をグシャグシャにして何度も何度もお礼を言ったのだった。
道中も
パンとバナナを渡したら、またお礼を言い
パンを食べてむせこんで、水を貰ってはまたお礼を言い
ボビーが話を聞いて「大変でしたね」といたわれば、お礼を言い
足がまた痛みだしたので、下級ポーションを貰ってはお礼を言うのだった。
そんなこんなで、幌馬車は3時頃にギルドに到着した。
ギルマスのスティーブンが転がりそうな勢いで出てきた。
「こいつら、本当に連れて帰ってきた!」
「足が折れてるかもしれない。先に治療してくれ!」
下級ポーションを飲ませたが腫れと痛みを和らげる程度で
骨折までは治せない。
治療室にかついでつれて行って出てきたら
道中にすれ違った冒険者たちが集まってきていた。
「詳しい話を聞きたいので2階の俺の部屋に来てくれないか」
とギルマスに連れられてアレックスとボビーは2階に行くことになった。
ギルマスは神妙な面持ちで聞いて来た。
「いったい、どうゆう経緯でどこで見つけたのか教えて欲しい」
アレックスはゆっくりと話し出した。
「昨日、スコットが帰ってこないと聞いて俺はギルドに来ただろう。
で、ここ2、3日にマーレイ山から帰ってきた連中にスコットを見かけなかったか聞いて回ったんだ。
ところが誰もこの3日くらい見てないと言う。
前回スコットが採取したツウツウ草が売店にあるっていうから
それを持って朝日屋のおチビ・・・いや、ナッキーの所に持って行ったんだ」
「朝日屋のナッキーって誰だ?」
「昨日冒険者登録をしただろう。朝日屋のおチビだよ」
「飯屋の、朝日屋の、末っ子か?あれがどうしたって?」
「おチビは勉強家でなツウツウ草を見せたら知ってるんだよ。
それで、スコットはどこにいるか訊いたんだよ」
「なんでチビ助に訊いたんだよ?」
「あいつは占いってスキルを授かったんだよ」
「占い?珍しいスキルだな。昔、王都にも占い師ってのがいたな。
そうかで、それで」
「占いに集中したいからって席を外して、20分近く経ってから戻ってきて、
広げた地図のこの辺の小屋に足を怪我しているってそういったんだ」
「いや、信じられねえよ」
ギルマスのスティーブンは半信半疑だが
ここまで黙って聞いていたボビーが口を開いた。
「いえ、俺もその場にいたんだけど本当ですよ。
ガウラ岳の南側にはまだツウツウ草が生えていてそこに行ったと言ってました
帰りの馬車で話を聞いたら全くその通りでしたよ。
オレなんかこう、怖いくらいでしたよ。
見てきたように、当たってるんですから」
(いや、実際には、テオが見てきてるんだが、誰も知る由もない)
「本当かよ!まあ実際にこの時間で帰って来てるんだから信じるしかねえよな
分かったよ。あとで、そのチビ助にもギルドに来るように言っといてくれ
発見情報源の貢献者として実績を加える」
馬車は片道3時間かけて行って往復6時間なので、
他に寄ってる時間的猶予もなかった。
「ギルマス、おチビのことは、スキルを貰ったばかりなんで、安定するまでは
なるべく伏せておいて欲しいんだが」
「分かってるよ。今回は偶々かもしれねえしな。そうじゃねえかもしれないが。
騒いだら、外れた時が可哀そうってんだろ」
「ありがとう」
ギルマスの部屋から出てくると部屋の前でダグラスが待っていた。
「アレックス、お前の予想通りだったな」
「いや、俺の予想じゃないんだよ」
「え、誰の助言なんだい」
「実は朝日屋のおチビのスキルなんだ」
「東の飯の上手いところだよな。お前んちの近くの。どんなスキルなんだい」
「占いだそうだ」
「占い?3回に1回当たるかどうかってもんだろ?そんなのよく信じたな」
「他にあてもなかったし、試しに訊いてみたら説得力もあったから行こうと思った。
ただ、授かったばかりで、不安定だろうから誰にも言わなかった。
外れたら俺の見当違いで済むようにな」
「授かったばかりってあの末っ子のことかい。こりゃたまげた」
「そうだ、外れることもあるだろうから、まだあんまり広めないで欲しい」
「いや、それはどうだろう?」
夕方5時頃にアレックスさんがお店にやって来た。
「おチビ、お前の言った通りだったよ。採取した帰りに滑ってケガしたって言ってた。
マーレイ山探してたら見つからなかったな。これはお前の分の報酬だ」
そう言って僕に大銀貨1枚を僕に渡した。
「えっ!こんなに!いいんですか?」
「ああ、正式な捜索依頼になったからな。ちゃんとした報酬だ。
それとな、ギルドマスターには、お前の協力があったことを伝えてあるから。
貢献実績になってるぞ。近いうちにギルドに顔出せってさ」
「え、そうなんですか?」
「当たり前だろうが、みんながマーレイ山だと言っていたのを、俺がガウラ岳の登山口で見つけたんだ。
何でそこに居ると思ったかと聞かれたから、
朝日屋のおチビにアドバイスしてもらったと答えたんだ。
ギルマスも最初は不思議がってたけど
おチビのそうゆうスキルだ と言ったら納得してたよ」
「あまり広めて欲しくないのですけど」
「それは無理だな。もう俺の後を付いて来ている奴がいる」
入口を見ると3人が並んでた。
「アレックスさん、もしかして、皆さん人探しですか?」
「いや、よく知らんがたぶん・・・そうみたいだな」
「え、無理ですよ、そんなの」
「俺も断ったんだがな。とりあえず、みんなを呼ぶから聞いてやってくれ」
アレックスさんが
「みんな入って来い」
と手招きすると、僕の前に3人並んだ。
まず、僕は説明した。
「初めに断っておきますが、僕のは人探しのスキルではありません。
ただの占いです。外れることもありますし、昨日初めて使いました。
知らない人を探せる自信はまったくもってありません。
イメージできないからです。
それでよければお話を聞きますが、外れても文句は言わないでください」
「なんだよ!それ!」
目つきの悪い一人が、吐き捨てるように言って出ていった。
もう一人の青白い髪の青年も無言で、うなだれるようにして出ていった。
最後の一人が
「僕の話を聞いてもらえるでしょうか?」
と聞いてきたので
「ええ、お役に立てるか分かりませんけれど、どうぞ」
「まずは、スコットのことありがとうございました。
私は、マイコオと言います。スコットとは幼馴染なんです。
私の家が薬屋で、彼はよく薬草を採ってきてくれるんです。
と言うのも、私の父は厳格で、友人同士でもキチンとギルドを通して依頼しろと言われているのです。
それで、スコットが帰ってきたと聞いてギルドに行ったんです。
そこでナッキーさんのことを聞いたんです。それで、お礼と探して欲しいものがあるんですけど」
「はい、それで探しものはなんでしょうか?」
「・・・お金です。・・・・」
なんか、ガチの探し物来たんですけど、どうしましょう?
そこへ、お姉ちゃんがやってきた。
「いらっしゃいませ。ご注文は何に致しますか!」
全員が
『えっ!』となった。
短い沈黙のあと
「ご注文は何に致しますか?」
と再び聞いて来た。
アレックスさんが
「俺はA定食で、こっちは甘ヅル薬草茶を」
と言ったら
「かしこまりました。A定と甘茶1つ!」
と言って厨房に向かった。
が、すぐに薬草茶を1つ持ってきてテーブルに置いて
「ごゆっくりどうぞ」
と愛想笑いをして、行ってしまった。
マイコオさんは、キョトンとしていたが
「お茶はおごるから飲んでいった方が良い。
それより、話の続きだ」
とアレックスさんに促されると
「ありがとうございます」
そう言って、お茶をグイっと飲んだ。
「順を追って説明します。私の家はゴードン薬局と言います。
うちはこの街に常駐している辺境騎士団にも薬やポーションを納品しております。
夏に大きな実践演習や、魔物駆除があったため、うちの納品もかなりありました。
あれは十日ほど前のことでした。
騎士団の経理を担当している方が、当方に入金にきてくださいました。
金額は9万8千エランでした。
金貨10枚でしたので、大銀貨2枚をお返ししたのを覚えてます。
お釣りを用意したのは私で、金貨を受け取ったのは父でございます。
父とその方はダッフル(チェスや将棋のようなもの)がお好きで
その方が来ると必ず1局指してからお帰りになられます。
その日もそうでした。」
「ちょっと待って下さい。金額が大きそうですので、詳しいお話は、明日じゃダメでしょうか?
ここじゃ、誰が聞いているか分かりません。
聞きかじりで、変な噂がたってもいけませんから」
いや、実際にお姉ちゃんがチラチラと見ているんだが。
「すみません。気が付きませんで。では明日私のうちにおいでください」
「じゃ、俺が明日そっちに連れて行こう。ナッキーも良いな」
アレックスさんがそう提案してくれた。
「じゃあ、それでお願いします」
「おう、それでな、俺はここで、夕飯も食べていく。後ろで嬢ちゃんも見ているからな」
アレックスさんは背中に目があるんだろうか?
「それでは、また明日お待ちしております」
マイコオさんは丁寧なお辞儀をして帰っていった。
子供の僕にもちゃんと接してくれる、良い人だ。
パーティメンバーと待ち合わせをしていたからだ。
「ねえ、アレックスさん、黙ってろって言うから黙ってましたけど
さっきの話本当ですかね」
「それを確かめるためにも、明日俺は探しに行こうと思っている。
それとな、おチビのことはとりあえず、秘密にしといてくれ」
「分かりました。アレックスさん、俺も明日行きますよ」
「それは、助かるよ。おチビの言う通りケガをしているだろうから明日の朝、
ギルドから幌馬車を借りて麓の休憩小屋まで来てくれよ。それと水と食い物もな」
「・・・・分かりました」
ボビーはアレックスのことを新人時代からずっと面倒見てもらった恩もあって、兄のように思って信頼している。
そのアレックスがまだ7歳になったばかりの子供の言うことを信用しているのがちょっとだけ
悔しいような嫉妬のような感情もあった。
「ボビーありがとう。助かるよ」
アレックスのパーティーは「オーシャンズ」と言って、30名以上が所属している。
普段は1~4名くらいの少人数で活動している冒険者が、
少人数では受けられない依頼を受けられるメリットがあり
全員がほぼ顔見知りであるため、急造で組んでも連携プレーが出来るため依頼成功率高くなることと
初心者の面倒見も良いため、大きなケガや事故が減るので、ギルドでも推奨しているシステムだ。
1000エラン以上の依頼を達成すると1%がパーティに積み立てられて
ケガ等の見舞金に充てられている。
尤も、引かれているのはそれだけじゃない。
ギルド手数料や、税金もだ。
実はスコットもオーシャンズに所属している。
情報収集というか、横の繋がりとかも主な目的ではあるけれど。
同じシステムのパーティがもう一つありそれが「マウンテンズ」と言うわけだ。
このあとギルド近くの串焼き屋で各々が情報を訊きこんで集合することになっていた。
串焼き屋に入るとすでに10名ほどが待っていた。
全員が来る必要もないし、来られない人もいるのでこれくらいなのだろう。
「急な話ですまないな、アレックス、お前の方はどうだった?」
店に入ると「オーシャンズ」のまとめ役の年長者のダグラスが訊いてきた。
「俺は明日の朝からガウラ岳の方へ探しに行こうと思っている」
「スコットはいつもマーレイ山に行ってるんだ。反対側じゃないか」
アレックスとは仲がいいデビットが声をあげた。
「マーレイ山は行く奴らは多いがスコットを見たって話が無かった。
だったら、他のツウツウ草の生えてる場所に行ったってことだと思う」
その後ツウツウ草の生息地はどこなんだと話になった。
ガウラ岳の南面までは、2日がかりの往復になるため
ここに集まったメンバーでは正確な場所を知ってる人まではいなかった。
「ところで、この話は正式な依頼となった。
ゴードン薬局のマイコオがスコットの幼馴染ということもあって依頼にしてくれた。
報酬は少ないので俺からやってくれとは言えないが気には留めといてくれ。
今日は以上だ」
と、ダグラスの言葉で『オーシャンズ会合』はお開きになった。
翌日の朝早くにアレックスは一人で出発した。
港街のトリニスタンへと続く馬車道りの西街道を暫くいって、T字路を南に向かう。
そこから、3時間以上真っ直ぐに進む。
その間、ホーンラビットを狩っていたいた3人組以外誰ともすれ違わない。
この辺りの土地は、起伏も激しい。そして、大きな肉食魔物もいない。
一番大きいのが、ちょっと入った先に、2本角のカモシカの魔物ファーリードバックが群れでいる。
長い首もとにふわふわの白い毛があり、雄は白い毛が胸元まで続く。
縄張り意識が非常に高く、縄張りに入ると執拗に追いかけてくる。
その為だろうか、ゴブリンもこの辺りにはいない。
オークの3頭くらいは、群れで一気に倒してしまう。
その気性は、やはり魔物だからだろうか?
そのためか、この辺りの者はファーリードバックを街道の守護獣と呼んでいる。
偶に、街道に出てくるはぐれファーリードバックを狩ることもあるが、
素早い動きと、突進力、ジャンプ力で、冒険者泣かせとなっている。
だが、街道を歩いている限りは、目を合わせなければ、人を襲うことはほとんどないようだ。
草食魔獣で良かったというところか。
他には鹿角の大きなウサギである、ジャッカロープも生息している。
スコットが腰に下げていた物の1つは
それらの草食獣の嫌う肉食獣の毛に薬草等をまとめた自作の匂い袋だ。
普段は革袋に入れて、匂いが出ないようにしている。
さて、アレックスは真っ直ぐに休憩小屋を目指した。
午前中に目的の小屋に到着して、足を怪我しているスコットさんを発見した。
この時驚いていたのは、見つけたアレックスではなく、
見つけてもらったスコットの方だった。
だが、傷のせいかスコットはかなり衰弱していた。
まず、下級ポーションを差し出し飲ませた。
その後、持ってきた果実水を差し出すと勢いよくガブガブと飲み干した。
スコットが言うには1日目にツウツウ草の生息地まで行ったが日が沈んでしまったため
2日目に採集していて遅くなり帰り道が暗くなって足を滑らせたことで
やむを得ず、ちょっと開けたところでキャンプををして
3日目の昼過ぎにようやくこの小屋までたどり着いたが
食料は尽きて、小屋の井戸水だけで我慢したそうだ。
薬草を少しかじったが痺れるほどの苦さだったらしい。
前日より足が大きく腫れ上がり痛みも酷く、持っていた薬草でシップをして
ここを通る人がいないか見ていたらしい。
馬車通りの西街道まで行く体力も無かったようだ。
そんな話をしているうちにボビーの幌馬車がやって来た。
馬車に乗せるとスコットは安心したのか、
顔をグシャグシャにして何度も何度もお礼を言ったのだった。
道中も
パンとバナナを渡したら、またお礼を言い
パンを食べてむせこんで、水を貰ってはまたお礼を言い
ボビーが話を聞いて「大変でしたね」といたわれば、お礼を言い
足がまた痛みだしたので、下級ポーションを貰ってはお礼を言うのだった。
そんなこんなで、幌馬車は3時頃にギルドに到着した。
ギルマスのスティーブンが転がりそうな勢いで出てきた。
「こいつら、本当に連れて帰ってきた!」
「足が折れてるかもしれない。先に治療してくれ!」
下級ポーションを飲ませたが腫れと痛みを和らげる程度で
骨折までは治せない。
治療室にかついでつれて行って出てきたら
道中にすれ違った冒険者たちが集まってきていた。
「詳しい話を聞きたいので2階の俺の部屋に来てくれないか」
とギルマスに連れられてアレックスとボビーは2階に行くことになった。
ギルマスは神妙な面持ちで聞いて来た。
「いったい、どうゆう経緯でどこで見つけたのか教えて欲しい」
アレックスはゆっくりと話し出した。
「昨日、スコットが帰ってこないと聞いて俺はギルドに来ただろう。
で、ここ2、3日にマーレイ山から帰ってきた連中にスコットを見かけなかったか聞いて回ったんだ。
ところが誰もこの3日くらい見てないと言う。
前回スコットが採取したツウツウ草が売店にあるっていうから
それを持って朝日屋のおチビ・・・いや、ナッキーの所に持って行ったんだ」
「朝日屋のナッキーって誰だ?」
「昨日冒険者登録をしただろう。朝日屋のおチビだよ」
「飯屋の、朝日屋の、末っ子か?あれがどうしたって?」
「おチビは勉強家でなツウツウ草を見せたら知ってるんだよ。
それで、スコットはどこにいるか訊いたんだよ」
「なんでチビ助に訊いたんだよ?」
「あいつは占いってスキルを授かったんだよ」
「占い?珍しいスキルだな。昔、王都にも占い師ってのがいたな。
そうかで、それで」
「占いに集中したいからって席を外して、20分近く経ってから戻ってきて、
広げた地図のこの辺の小屋に足を怪我しているってそういったんだ」
「いや、信じられねえよ」
ギルマスのスティーブンは半信半疑だが
ここまで黙って聞いていたボビーが口を開いた。
「いえ、俺もその場にいたんだけど本当ですよ。
ガウラ岳の南側にはまだツウツウ草が生えていてそこに行ったと言ってました
帰りの馬車で話を聞いたら全くその通りでしたよ。
オレなんかこう、怖いくらいでしたよ。
見てきたように、当たってるんですから」
(いや、実際には、テオが見てきてるんだが、誰も知る由もない)
「本当かよ!まあ実際にこの時間で帰って来てるんだから信じるしかねえよな
分かったよ。あとで、そのチビ助にもギルドに来るように言っといてくれ
発見情報源の貢献者として実績を加える」
馬車は片道3時間かけて行って往復6時間なので、
他に寄ってる時間的猶予もなかった。
「ギルマス、おチビのことは、スキルを貰ったばかりなんで、安定するまでは
なるべく伏せておいて欲しいんだが」
「分かってるよ。今回は偶々かもしれねえしな。そうじゃねえかもしれないが。
騒いだら、外れた時が可哀そうってんだろ」
「ありがとう」
ギルマスの部屋から出てくると部屋の前でダグラスが待っていた。
「アレックス、お前の予想通りだったな」
「いや、俺の予想じゃないんだよ」
「え、誰の助言なんだい」
「実は朝日屋のおチビのスキルなんだ」
「東の飯の上手いところだよな。お前んちの近くの。どんなスキルなんだい」
「占いだそうだ」
「占い?3回に1回当たるかどうかってもんだろ?そんなのよく信じたな」
「他にあてもなかったし、試しに訊いてみたら説得力もあったから行こうと思った。
ただ、授かったばかりで、不安定だろうから誰にも言わなかった。
外れたら俺の見当違いで済むようにな」
「授かったばかりってあの末っ子のことかい。こりゃたまげた」
「そうだ、外れることもあるだろうから、まだあんまり広めないで欲しい」
「いや、それはどうだろう?」
夕方5時頃にアレックスさんがお店にやって来た。
「おチビ、お前の言った通りだったよ。採取した帰りに滑ってケガしたって言ってた。
マーレイ山探してたら見つからなかったな。これはお前の分の報酬だ」
そう言って僕に大銀貨1枚を僕に渡した。
「えっ!こんなに!いいんですか?」
「ああ、正式な捜索依頼になったからな。ちゃんとした報酬だ。
それとな、ギルドマスターには、お前の協力があったことを伝えてあるから。
貢献実績になってるぞ。近いうちにギルドに顔出せってさ」
「え、そうなんですか?」
「当たり前だろうが、みんながマーレイ山だと言っていたのを、俺がガウラ岳の登山口で見つけたんだ。
何でそこに居ると思ったかと聞かれたから、
朝日屋のおチビにアドバイスしてもらったと答えたんだ。
ギルマスも最初は不思議がってたけど
おチビのそうゆうスキルだ と言ったら納得してたよ」
「あまり広めて欲しくないのですけど」
「それは無理だな。もう俺の後を付いて来ている奴がいる」
入口を見ると3人が並んでた。
「アレックスさん、もしかして、皆さん人探しですか?」
「いや、よく知らんがたぶん・・・そうみたいだな」
「え、無理ですよ、そんなの」
「俺も断ったんだがな。とりあえず、みんなを呼ぶから聞いてやってくれ」
アレックスさんが
「みんな入って来い」
と手招きすると、僕の前に3人並んだ。
まず、僕は説明した。
「初めに断っておきますが、僕のは人探しのスキルではありません。
ただの占いです。外れることもありますし、昨日初めて使いました。
知らない人を探せる自信はまったくもってありません。
イメージできないからです。
それでよければお話を聞きますが、外れても文句は言わないでください」
「なんだよ!それ!」
目つきの悪い一人が、吐き捨てるように言って出ていった。
もう一人の青白い髪の青年も無言で、うなだれるようにして出ていった。
最後の一人が
「僕の話を聞いてもらえるでしょうか?」
と聞いてきたので
「ええ、お役に立てるか分かりませんけれど、どうぞ」
「まずは、スコットのことありがとうございました。
私は、マイコオと言います。スコットとは幼馴染なんです。
私の家が薬屋で、彼はよく薬草を採ってきてくれるんです。
と言うのも、私の父は厳格で、友人同士でもキチンとギルドを通して依頼しろと言われているのです。
それで、スコットが帰ってきたと聞いてギルドに行ったんです。
そこでナッキーさんのことを聞いたんです。それで、お礼と探して欲しいものがあるんですけど」
「はい、それで探しものはなんでしょうか?」
「・・・お金です。・・・・」
なんか、ガチの探し物来たんですけど、どうしましょう?
そこへ、お姉ちゃんがやってきた。
「いらっしゃいませ。ご注文は何に致しますか!」
全員が
『えっ!』となった。
短い沈黙のあと
「ご注文は何に致しますか?」
と再び聞いて来た。
アレックスさんが
「俺はA定食で、こっちは甘ヅル薬草茶を」
と言ったら
「かしこまりました。A定と甘茶1つ!」
と言って厨房に向かった。
が、すぐに薬草茶を1つ持ってきてテーブルに置いて
「ごゆっくりどうぞ」
と愛想笑いをして、行ってしまった。
マイコオさんは、キョトンとしていたが
「お茶はおごるから飲んでいった方が良い。
それより、話の続きだ」
とアレックスさんに促されると
「ありがとうございます」
そう言って、お茶をグイっと飲んだ。
「順を追って説明します。私の家はゴードン薬局と言います。
うちはこの街に常駐している辺境騎士団にも薬やポーションを納品しております。
夏に大きな実践演習や、魔物駆除があったため、うちの納品もかなりありました。
あれは十日ほど前のことでした。
騎士団の経理を担当している方が、当方に入金にきてくださいました。
金額は9万8千エランでした。
金貨10枚でしたので、大銀貨2枚をお返ししたのを覚えてます。
お釣りを用意したのは私で、金貨を受け取ったのは父でございます。
父とその方はダッフル(チェスや将棋のようなもの)がお好きで
その方が来ると必ず1局指してからお帰りになられます。
その日もそうでした。」
「ちょっと待って下さい。金額が大きそうですので、詳しいお話は、明日じゃダメでしょうか?
ここじゃ、誰が聞いているか分かりません。
聞きかじりで、変な噂がたってもいけませんから」
いや、実際にお姉ちゃんがチラチラと見ているんだが。
「すみません。気が付きませんで。では明日私のうちにおいでください」
「じゃ、俺が明日そっちに連れて行こう。ナッキーも良いな」
アレックスさんがそう提案してくれた。
「じゃあ、それでお願いします」
「おう、それでな、俺はここで、夕飯も食べていく。後ろで嬢ちゃんも見ているからな」
アレックスさんは背中に目があるんだろうか?
「それでは、また明日お待ちしております」
マイコオさんは丁寧なお辞儀をして帰っていった。
子供の僕にもちゃんと接してくれる、良い人だ。
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初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
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