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第3章:使命
第29話
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「すみません。こちらのイヤリングは、このお店の物ですか?」
ヴィーズは店員と思われる女性に話しかけ、先程のイヤリングを手渡した。
「うーん...。うちのじゃ無さそうですね。」
「そうですか...。ちなみに、売っていそうなお店に心当たりは?」
「多分...貴族通り沿いにあるお店だと思います。こいう言った宝石を扱ってるのは、あそこくらいかと...。」
「ありがとうございます。助かりました。」
「い、いえ...!お力になれて良かったです。」
彼と握手を交わす女性の頬が、ほんのり赤くなっているように見えた。
店を出て、再び大通りを歩き出す。
「やはりこれは、貴族の所有物みたいですね。」
「あるいは、プレゼントとかかもしれないね。」
「...プエゼント?」
「人から貰った物の事だよ。前に僕が付けてたピアスがあったでしょ?あれとかね。」
「犯人は、このイヤリングを自分で買ったんじゃなくて、誰かに貰ったのかもしれないって事だね。」
「あの女性が言ってたのは、あのお店かな?」
「今度は私が聞いてみますね。」
ルスケアの後に続いて、店内に足を踏み入れた。先程の店と飾られている物は似ているが、その1つ1つに色とりどりの石が埋め込まれている。
「いらっしゃいませ。何をお探しでしょうか?」
「すみません...ちょっとお聞きしたい事があるんですが...。」
店員の男性に手渡したイヤリングが、このお店の物である事が分かった。すぐさま購入者を調べてもらうと、意外な人物の名前が浮上した。
「購入されたお客様は...ヘレボラス家のご子息様ですね。」
「ヘレボラス家...。モーヴ様と同じ、伯爵家の貴族ですが...資料には載っていません。」
「まさかとは思うけど...ヘレボラス家の関係者が事件に関係してるかもしれない?」
「話を聞いてみない事には何とも...。」
「情報の提供、ありがとうございました。」
「いえ。またのお越しをお待ちしております。」
「一旦店を出て、話を整理しよう。」
貴族通りと呼ばれるだけあって、通りを歩く人々はキラキラと輝く服をまとっていた。その数は疎らで賑わいは少ないが、馬車を引く馬の足音があちこちから聞こえてくる。
「購入者が男性なら、プレゼントで間違いなさそうだね。」
「問題は、誰にプレゼントしたかですが...。ヘレボラス家には、奥様以外の女性はいらっしゃらなかったと思います。」
「流石に奥様が放火犯とは思えないし...。ご子息の友人か、恋人の可能性が高そうかな?」
「...恋人?」
「好きな人の事だよ。」
「...ロゼとパニ、恋人?」
「そ、それは違うよ!うーん...。お付き合いの事は何て説明したら良いんでしょう...?」
「恋とか愛とか、説明するのが難しい言葉ってあるよね。」
「そ、そうですね...。」
「...分からない?」
「うん。説明するのは難しいかな...。」
「...ビオレタに聞いてみる。」
「ビオくん...何て説明するだろうね...。」
「あはは...。」
不思議な笑みを浮かべる彼等と共に、イヤリングを買ったと言う男性の元へ向かった。大きな建物の扉を叩き、長い廊下を歩いて奥の部屋に通される。
「騎士が俺に、一体何の用?」
「お時間を頂き、申し訳ありません...。このイヤリングに見覚えはありませんか?」
ソファーへ座る男性の前にイヤリングを置くと、彼は驚いた表情を浮かべた。
「こ、これは...!フィアンマに贈ったイヤリング!?どうしてお前達が持ってるんだ!」
「最近、貴族の屋敷ばかりを狙う、放火事件が起きているのはご存知ですか?このイヤリングは、被害にあったコデマリ家の裏庭に落ちていました。」
「ま、まさか...そんなはずは...。」
彼はイヤリングを手に取り、強く握りしめる。私には、彼がどんな感情を抱いているのか...さっぱり分からなかった。
「その...フィアンマさんについて、教えて貰えませんか?」
「お前...まさか、彼女が犯人だって言うのか!?馬鹿を言うな!彼女がそんな事をするはず...」
「お待ちなさい。」
扉が開き、1人の女性が部屋に押し掛けてきた。彼女は玄関で出迎えた女性と違い、煌びやかなドレスを身にまとっている。
「お、お母様!」
「今の話は本当かしら?」
「はい。まだ、犯人が彼女と決まった訳ではありませんが、我々はその可能性が高いと見ています。」
「お母様...!騎士の話など、耳を傾ける必要は...」
「お黙り!あの女に、どれだけ惑わされたと思っているの!?」
「奥様。もしよろしければ、詳しく聞かせていただけませんか?」
彼が言うフィアンマと言う女性は、男性の元婚約者だったそうだ。婚約者というものが何かは分からないが、一緒に暮らしていた家族らしい。
しかし、彼女は魔族である事が判明し、婚約を無かった事にして家から追い出してしまったと言う。
「彼女には、魔族らしき特徴は無かったのですか?」
「角は無いし、目は赤いし...容姿端麗には違いなかったので、すっかり騙されましたわ。」
「しかし...それではどうやって魔族だと知ったのです?」
「前髪で隠れていた方の目が、黒瞳だったのですわ!あれを見た時、どれ程ゾッとした事か...!」
「なるほど...魔族である事を、隠していた訳ですね。」
「そうですわ!あの女...魔族の癖に、息子の妻になろうなどとふざけた事を...」
「お母様!彼女を侮辱するのは止めてくれ...!...もう十分だろ!彼女はもうここには居ないんだ!帰ってくれ!!!」
私達は男性に部屋を追い出され、来た道を引き返す。
貴族通りを抜けて大通りへ戻ると、近くにある開けた場所へやって来た。端の方に置かれた椅子に腰を下ろした私の前に、ヴィーズがしゃがみ込む。
「沢山歩いたけど...足、痛くない?」
「...へーき。」
「ちょっとごめんね。」
彼は私の足首を掴み、靴を脱がせた。
「やっぱり...靴擦れが出来てる。」
「えっ...!どうして言ってくれなかったの?痛かったでしょ?」
「...痛くない。」
「アーちゃんは、痛みを感じ無い訳じゃないよね?」
「そのはずですけど...感じにくいのかもしれないですね。そういう人も稀にいるそうです。」
「もう少し大きいサイズの靴を買ってくるよ。ここでルーくんと待っててくれる?」
「...分かった。」
彼は私達をその場に残し、通りの方へ向かって駆けて行った。
「アスールくん。本当に...痛くなかったの?」
「...無かった。」
「うーん...。痛いって言う言葉は分かる?」
「...怪我すると痛い。」
「靴擦れも立派な怪我だよ?ほら、血が出てるでしょ?」
ルスケアが指さした踵を見てみると、赤くなっている事に気が付いた。
「...あのね、アスールくん。人を助けてあげるのも大事だけど、自分の事も大事にしないとダメだよ?」
「...よく分からない。」
「自分を犠牲にして、救われる人は誰も居ないんだ。相手も、自分も...。」
彼は私の手を両手で包み込み、自身の額に近付ける。背の高い彼の後頭部を見るのは、これが初めてだった。
私は握られていない方の手を伸ばし、彼の頭にそっと手を乗せる。彼の髪は、フワフワとしていて柔らかかった。
「髪に...何かついてた?」
「...柔らかい。」
「ふふ...。この髪の毛は、お父様譲りなんだ。」
「...おとーさま、どんな人?」
「ちょっと厳しい人だけど...みんなから尊敬されて、慕われる人だったよ。」
「...きびしー?」
「ユオダスさんみたいな人...かな。強くて頼りになるけど、ダメな所はダメ!って物事を強く言う人だったんだ。」
「...ユオアス、きびしー?」
「き、厳しい所もあるけど、もちろん優しい所もあるよ?良い時は良いってちゃんと褒め...」
「きゃー!火事よー!」
突如、大通りの方から女性の悲鳴が聞こえた。ルスケアの耳にも悲鳴が届き、彼はその場に立ち上がる。
「アスールくん...!様子を見に行こう!あ...その前に、怪我を治してからね?」
「...分かった。」
治った足で椅子から立ち上がり、彼と共に声が聞こえた方へと向かった。
ヴィーズは店員と思われる女性に話しかけ、先程のイヤリングを手渡した。
「うーん...。うちのじゃ無さそうですね。」
「そうですか...。ちなみに、売っていそうなお店に心当たりは?」
「多分...貴族通り沿いにあるお店だと思います。こいう言った宝石を扱ってるのは、あそこくらいかと...。」
「ありがとうございます。助かりました。」
「い、いえ...!お力になれて良かったです。」
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店を出て、再び大通りを歩き出す。
「やはりこれは、貴族の所有物みたいですね。」
「あるいは、プレゼントとかかもしれないね。」
「...プエゼント?」
「人から貰った物の事だよ。前に僕が付けてたピアスがあったでしょ?あれとかね。」
「犯人は、このイヤリングを自分で買ったんじゃなくて、誰かに貰ったのかもしれないって事だね。」
「あの女性が言ってたのは、あのお店かな?」
「今度は私が聞いてみますね。」
ルスケアの後に続いて、店内に足を踏み入れた。先程の店と飾られている物は似ているが、その1つ1つに色とりどりの石が埋め込まれている。
「いらっしゃいませ。何をお探しでしょうか?」
「すみません...ちょっとお聞きしたい事があるんですが...。」
店員の男性に手渡したイヤリングが、このお店の物である事が分かった。すぐさま購入者を調べてもらうと、意外な人物の名前が浮上した。
「購入されたお客様は...ヘレボラス家のご子息様ですね。」
「ヘレボラス家...。モーヴ様と同じ、伯爵家の貴族ですが...資料には載っていません。」
「まさかとは思うけど...ヘレボラス家の関係者が事件に関係してるかもしれない?」
「話を聞いてみない事には何とも...。」
「情報の提供、ありがとうございました。」
「いえ。またのお越しをお待ちしております。」
「一旦店を出て、話を整理しよう。」
貴族通りと呼ばれるだけあって、通りを歩く人々はキラキラと輝く服をまとっていた。その数は疎らで賑わいは少ないが、馬車を引く馬の足音があちこちから聞こえてくる。
「購入者が男性なら、プレゼントで間違いなさそうだね。」
「問題は、誰にプレゼントしたかですが...。ヘレボラス家には、奥様以外の女性はいらっしゃらなかったと思います。」
「流石に奥様が放火犯とは思えないし...。ご子息の友人か、恋人の可能性が高そうかな?」
「...恋人?」
「好きな人の事だよ。」
「...ロゼとパニ、恋人?」
「そ、それは違うよ!うーん...。お付き合いの事は何て説明したら良いんでしょう...?」
「恋とか愛とか、説明するのが難しい言葉ってあるよね。」
「そ、そうですね...。」
「...分からない?」
「うん。説明するのは難しいかな...。」
「...ビオレタに聞いてみる。」
「ビオくん...何て説明するだろうね...。」
「あはは...。」
不思議な笑みを浮かべる彼等と共に、イヤリングを買ったと言う男性の元へ向かった。大きな建物の扉を叩き、長い廊下を歩いて奥の部屋に通される。
「騎士が俺に、一体何の用?」
「お時間を頂き、申し訳ありません...。このイヤリングに見覚えはありませんか?」
ソファーへ座る男性の前にイヤリングを置くと、彼は驚いた表情を浮かべた。
「こ、これは...!フィアンマに贈ったイヤリング!?どうしてお前達が持ってるんだ!」
「最近、貴族の屋敷ばかりを狙う、放火事件が起きているのはご存知ですか?このイヤリングは、被害にあったコデマリ家の裏庭に落ちていました。」
「ま、まさか...そんなはずは...。」
彼はイヤリングを手に取り、強く握りしめる。私には、彼がどんな感情を抱いているのか...さっぱり分からなかった。
「その...フィアンマさんについて、教えて貰えませんか?」
「お前...まさか、彼女が犯人だって言うのか!?馬鹿を言うな!彼女がそんな事をするはず...」
「お待ちなさい。」
扉が開き、1人の女性が部屋に押し掛けてきた。彼女は玄関で出迎えた女性と違い、煌びやかなドレスを身にまとっている。
「お、お母様!」
「今の話は本当かしら?」
「はい。まだ、犯人が彼女と決まった訳ではありませんが、我々はその可能性が高いと見ています。」
「お母様...!騎士の話など、耳を傾ける必要は...」
「お黙り!あの女に、どれだけ惑わされたと思っているの!?」
「奥様。もしよろしければ、詳しく聞かせていただけませんか?」
彼が言うフィアンマと言う女性は、男性の元婚約者だったそうだ。婚約者というものが何かは分からないが、一緒に暮らしていた家族らしい。
しかし、彼女は魔族である事が判明し、婚約を無かった事にして家から追い出してしまったと言う。
「彼女には、魔族らしき特徴は無かったのですか?」
「角は無いし、目は赤いし...容姿端麗には違いなかったので、すっかり騙されましたわ。」
「しかし...それではどうやって魔族だと知ったのです?」
「前髪で隠れていた方の目が、黒瞳だったのですわ!あれを見た時、どれ程ゾッとした事か...!」
「なるほど...魔族である事を、隠していた訳ですね。」
「そうですわ!あの女...魔族の癖に、息子の妻になろうなどとふざけた事を...」
「お母様!彼女を侮辱するのは止めてくれ...!...もう十分だろ!彼女はもうここには居ないんだ!帰ってくれ!!!」
私達は男性に部屋を追い出され、来た道を引き返す。
貴族通りを抜けて大通りへ戻ると、近くにある開けた場所へやって来た。端の方に置かれた椅子に腰を下ろした私の前に、ヴィーズがしゃがみ込む。
「沢山歩いたけど...足、痛くない?」
「...へーき。」
「ちょっとごめんね。」
彼は私の足首を掴み、靴を脱がせた。
「やっぱり...靴擦れが出来てる。」
「えっ...!どうして言ってくれなかったの?痛かったでしょ?」
「...痛くない。」
「アーちゃんは、痛みを感じ無い訳じゃないよね?」
「そのはずですけど...感じにくいのかもしれないですね。そういう人も稀にいるそうです。」
「もう少し大きいサイズの靴を買ってくるよ。ここでルーくんと待っててくれる?」
「...分かった。」
彼は私達をその場に残し、通りの方へ向かって駆けて行った。
「アスールくん。本当に...痛くなかったの?」
「...無かった。」
「うーん...。痛いって言う言葉は分かる?」
「...怪我すると痛い。」
「靴擦れも立派な怪我だよ?ほら、血が出てるでしょ?」
ルスケアが指さした踵を見てみると、赤くなっている事に気が付いた。
「...あのね、アスールくん。人を助けてあげるのも大事だけど、自分の事も大事にしないとダメだよ?」
「...よく分からない。」
「自分を犠牲にして、救われる人は誰も居ないんだ。相手も、自分も...。」
彼は私の手を両手で包み込み、自身の額に近付ける。背の高い彼の後頭部を見るのは、これが初めてだった。
私は握られていない方の手を伸ばし、彼の頭にそっと手を乗せる。彼の髪は、フワフワとしていて柔らかかった。
「髪に...何かついてた?」
「...柔らかい。」
「ふふ...。この髪の毛は、お父様譲りなんだ。」
「...おとーさま、どんな人?」
「ちょっと厳しい人だけど...みんなから尊敬されて、慕われる人だったよ。」
「...きびしー?」
「ユオダスさんみたいな人...かな。強くて頼りになるけど、ダメな所はダメ!って物事を強く言う人だったんだ。」
「...ユオアス、きびしー?」
「き、厳しい所もあるけど、もちろん優しい所もあるよ?良い時は良いってちゃんと褒め...」
「きゃー!火事よー!」
突如、大通りの方から女性の悲鳴が聞こえた。ルスケアの耳にも悲鳴が届き、彼はその場に立ち上がる。
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