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第3章:使命
第36話
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「なぁアスール。昨日、ヴィーズの事探しとったけど…あの後、結局会えたんか?」
私が食事をしていると、アルトゥンが昨日廊下で会った時の事を話し始めた。そこで私は、ヴィーズの為に作った香水を渡し損ねた事を思い出す。
「…あ。」
「い?」
「え?」
「いや…そこは「う?」だろ。」
グリの指摘に笑い合う、彼等のやり取りの意味が分からず、私は首を傾げる。
「ごめんごめん。確かに理由を聞いてなかったなーと思って。何か用があって、僕の事探してたんだよね?」
「…持って来る。」
「お?」
私は食事の途中で食堂を飛び出し、自室に戻って香水を手に取った。それを持ち帰り、椅子に座っているヴィーズへ瓶を差し出す。
「これは?」
「…プレゼント。靴のお礼。」
「え?これを?僕に?」
「てめぇ以外居ねぇだろ。」
「…ありがとうビズ。」
お礼の言葉を口にすると、彼は私の腕を掴んで引き寄せた。バニラの甘い香りが、私を包み込む。
「…おい。いつまで抱き合ってんだ?飯が冷めちまうだろ。さっさと食え。」
「なんやグリ。嫉妬しとるん?」
「あぁん?締められてぇのか?」
「怖…。」
「ありがとうアーちゃん。大事にするね。」
ヴィーズはほんのり頬を赤らめながら、笑顔を浮かべた。私もいつか彼の前で、笑顔を浮べる事は出来るのだろうか?
「アスール。入るぞ?」
食後、自室へ戻った私の元にグリがやって来た。彼が私の部屋へ来るとは珍しい…そう思っていると、彼の後ろに立つ人影が見えた。
「アスールさん。おはようございます。突然押しかけてしまい、申し訳ありません。」
「…モブ?」
「おや…私の名前を、覚えていて下さったのですね。」
ビオレータと色味の似ている薄紫色の髪で、片目が隠れている所が彼とそっくりだった。数回しか会った事は無いが、どこか雰囲気も似ているような気がして、私は親近感と共に彼の事を覚えていたのだ。
「これから、モーヴ様とヴァハトゥン諸島連国へ行く事になった。ガルセク王子が、お前も一緒に連れて行けと言ってるらしいんだが…どうする?」
「…行きたい。」
「あなたなら、そう仰ると思いました。では、私は先に馬車で待っていますね。」
グリと共に身支度を済ませ、私は彼等と共にヴァハトゥン諸島連国へと行く事になった。
馬に跨るグリを横目に、私とアルトゥンはモーヴが待っている馬車の荷台に乗り込む。
「…親書?」
「ガルセク様が書いた手紙の事ですよ。多忙なあの方の代わりに我々が手紙を届けに行く…それが今回の目的です。」
彼は私達に、今日の目的と行先を告げた。これから向かうヴァハトゥン島は、ヴァハトゥン諸島連国に属する1番大きな島だと言う。
「俺達がモーヴ様に同行しろと言うのは分かります。でも…ガルセク王子は、何故アスールを連れて行くよう命令したんでしょうか?」
「ああ見えて、情に厚いお方なのです。私の憶測ですが…アスールさんに、世界のあらゆる場所を見せて差し上げたいのでしょう。」
「…情に厚い?」
「お優しいという事ですよ。それとアルトゥンさん。今日はガルセク様がいらっしゃいませんから、普段通り喋って頂いて構いませんよ。その話し方では、疲れてしまうでしょうから。」
「あ、ありがとうございます!じゃあ…お言葉に甘えて…。」
その一言で、私の彼に対する印象が少し変わった。ルスケアと話していた時の彼とは、まるで別人のようだったからだ。
「…モブは疲れない?」
「私は元よりこの話し方が定着しておりますので、どうぞお構いなく。」
「港からは、船に乗り換えるんよね?」
「…船?」
「左様でございます。ヴァハトゥンは海に囲まれた島国ですから、上陸する為には船に乗る必要があるのです。」
「…海泳ぐ?」
「ま、俺等の代わりに泳いでくれる…って点では合っとるかな?」
「百聞は一見にしかずと言います。乗ってみたら分かると思いますよ。船酔いしなければ良いですが…こればかりは、乗ってみなければ分かりませんからね。」
「…船酔い?」
「海には波があるやろ?波のせいで、船が揺れるんよ。その揺れで気分が悪なってしまうのが、船酔いや。」
「もしも気分が悪いなと感じたら、いつでも私達に仰って下さいね。」
「…分かった。」
あっという間に馬車の旅は終わり、港と呼ばれる場所から船に乗り込んだ。辺り1面海に囲まれ、いつもと違う風が私の髪を撫でる。
「ずっと外にいると風邪ひくぞ?」
海を眺める私の元に、グリがやって来た。
「…風、吹いてる。」
「そっちの風じゃねぇよ。」
「…いつもと違う。塩味の風。」
「風に味はしねぇよ。これは、潮風ってやつだ。」
「…何でしょっぱい?」
「さぁな。」
揺れているのは馬車と変わらないが、生き物の声の代わりに水が打ち付ける音が耳に届く。
「船酔いはしてねぇか?」
「…気分悪い、分からない。」
「じゃ、大丈夫そうだな。」
そう言うと、彼は海に背を向けて私の隣に座り込んだ。
「…中、戻らない?」
「お前が入るんなら戻っても良い。」
「…何で?」
「俺、どうもモーヴ様が苦手なんだよな。悪ぃ人じゃねぇのは分かってんだけど…やっぱ貴族とは考え方が合わねぇ。」
「…ルスキャは苦手?」
「確かにあいつも貴族だけど、良い意味で貴族っぽくねぇからな。あいつは別に苦手じゃねぇよ。」
「…同じ貴族なのに?」
「同じつっても、貴族には階級ってもんがある。ルスケアは、貴族の中でも下の方だったはずだ。モーヴ様は…何だったか覚えてねぇけど、あいつよりは上だったと思うぜ。」
貴族が私達よりも偉い人達だという事は知っていたが、彼等の間で上や下という順番がある事は知らなかった。
「おや?グリさんも、こちらにいらっしゃったのですね。」
話をしている私達を見つけたモーヴは、こちらへゆっくりと歩み寄って来た。
「ちょうど良かった。あんたからも話してやってくれねぇか?貴族について聞かれても、俺はあんまり詳しくねぇから。」
「分かりました。私で良ければお話致しましょう。」
グリはその場に立ち上がり、モーヴと入れ替わるようにして船の中へと戻って行った。
「さて…何からお話しましょうか?」
「…モブは偉い?偉くない?」
「おやおや。随分、真っ直ぐ聞いてくるのですね。」
聞き方が悪かったのだろうか?そう思った私は、身体を少しだけ右へ傾けた。
「…身体斜めなら良い?」
「ははは。そういう事ではないのですよ。あなたのように真っ直ぐな方だからこそ、ガルセク様が気にかけるのでしょうね。」
私は彼の言葉の意味がわからず、首を傾げた。
「話が逸れてしまいましたね。結論から言いますと、どちらかと言えば偉い方…でしょうか。」
「…どっち?」
「貴族には、大きく別けて5つの階級があります。1番上が公爵、その次が侯爵、伯爵、子爵、男爵と続きます。私は伯爵なので、丁度真ん中…と言う事になりますね。」
「…どっちでもない。」
「まぁ、私はガルセク様に仕えていますから、少々上の立場という事になります。なので、どちらかと言えば偉い方…という事ですね。」
「…ルスキャは?」
「ルスキャ…あぁ。ルスケアですか。彼は男爵なので1番下ですね。」
そこで私は、とある違和感を覚えた。
「…ルスキャ、何で呼び捨て?」
そう。彼は私達を呼ぶ時とルスケアを呼ぶ時で対応が違っていたのだ。その理由を、私は彼に問いかける。
「彼とは、子供の頃からの知り合いなのですよ。」
「…友達だから、呼び捨て?」
「友達ではありません。私も彼も、それ程親しくは無いのです。」
「…じゃあ苦手?」
「どちらかと言えばそうですね。」
彼は再び、曖昧な表現をした。海の方を見つめる彼の目元は、髪で隠れてよく見えない。
「…何で?」
「そうですね…。強いて言えば、貴族らしくない所…でしょうか。」
「…らしくないから苦手?」
「ええ。昔から彼は気が弱く、いつもお母様の影に隠れてばかりいました。貴族というものは、人の上に立ち…手本になる行動をしなければならない。私は父上から、そのように教えられました。」
風が吹き、彼の髪が後ろに靡く。青緑色の瞳は遠くを見つめ、微動だにしなかった。
「彼には貴族である資格がない…私はそう思いました。騎士になったと聞いた時は、少々驚きましたが…貴族のままで居るよりは、ましだったと思いますよ。」
「…よく分からない。」
私は彼の言葉の意図が、まるで分からなかった。
「少々難しいお話をしてしまいましたね。外はまだ冷えますから、中へ戻りましょう。」
差し出された彼の手に触れる事なく、私は船内へ戻って行った。
「アスール。足元危ないから気ぃつけてな?」
目的地に辿り着き、私達はヴァハトゥン島に上陸した。アルトゥンに手を引かれ、船を降りて行く。
すると、私達の元に1人の女性が駆け寄って来た。
「あなた方が、ビエント王国からの使者様ですね?お待ちしておりました!」
「私、ガルセク様の代理で親書を届けに参りました。モーヴ・ヘリオトロープと申します。彼等は私の付き添いの騎士達です。」
「遠い所から、わざわざお越し下さって感謝いたします!私はタル様の従者でございます。ソルとお呼び下さい!」
彼女は笑顔で手を差しだし、モーヴの手を掴むと身体を寄せて抱き合った。隣に立つアルトゥンにも同じように抱擁を交わすと、彼女は私の前に座り込んだ。
「あなたも騎士なのですか?」
私は首を横に振った。
「…騎士の付き添い。」
「あはは!騎士様にも、付き添いの方がいらっしゃるんですね。」
「彼女は、ガルセク様のご要望で連れて参りました。この国を見せるようにと、仰せつかっております。」
「なるほど…!では、歓迎会の後に私が島をご案内しましょう。」
彼女は私と握手を交わすと、背中にそっと手を回した。潮風と共に、オレンジのような爽やかな香りが鼻を抜ける。
全員と抱擁を交わし終え、彼女の案内で長が待っているという集会所へと向かった。
私が食事をしていると、アルトゥンが昨日廊下で会った時の事を話し始めた。そこで私は、ヴィーズの為に作った香水を渡し損ねた事を思い出す。
「…あ。」
「い?」
「え?」
「いや…そこは「う?」だろ。」
グリの指摘に笑い合う、彼等のやり取りの意味が分からず、私は首を傾げる。
「ごめんごめん。確かに理由を聞いてなかったなーと思って。何か用があって、僕の事探してたんだよね?」
「…持って来る。」
「お?」
私は食事の途中で食堂を飛び出し、自室に戻って香水を手に取った。それを持ち帰り、椅子に座っているヴィーズへ瓶を差し出す。
「これは?」
「…プレゼント。靴のお礼。」
「え?これを?僕に?」
「てめぇ以外居ねぇだろ。」
「…ありがとうビズ。」
お礼の言葉を口にすると、彼は私の腕を掴んで引き寄せた。バニラの甘い香りが、私を包み込む。
「…おい。いつまで抱き合ってんだ?飯が冷めちまうだろ。さっさと食え。」
「なんやグリ。嫉妬しとるん?」
「あぁん?締められてぇのか?」
「怖…。」
「ありがとうアーちゃん。大事にするね。」
ヴィーズはほんのり頬を赤らめながら、笑顔を浮かべた。私もいつか彼の前で、笑顔を浮べる事は出来るのだろうか?
「アスール。入るぞ?」
食後、自室へ戻った私の元にグリがやって来た。彼が私の部屋へ来るとは珍しい…そう思っていると、彼の後ろに立つ人影が見えた。
「アスールさん。おはようございます。突然押しかけてしまい、申し訳ありません。」
「…モブ?」
「おや…私の名前を、覚えていて下さったのですね。」
ビオレータと色味の似ている薄紫色の髪で、片目が隠れている所が彼とそっくりだった。数回しか会った事は無いが、どこか雰囲気も似ているような気がして、私は親近感と共に彼の事を覚えていたのだ。
「これから、モーヴ様とヴァハトゥン諸島連国へ行く事になった。ガルセク王子が、お前も一緒に連れて行けと言ってるらしいんだが…どうする?」
「…行きたい。」
「あなたなら、そう仰ると思いました。では、私は先に馬車で待っていますね。」
グリと共に身支度を済ませ、私は彼等と共にヴァハトゥン諸島連国へと行く事になった。
馬に跨るグリを横目に、私とアルトゥンはモーヴが待っている馬車の荷台に乗り込む。
「…親書?」
「ガルセク様が書いた手紙の事ですよ。多忙なあの方の代わりに我々が手紙を届けに行く…それが今回の目的です。」
彼は私達に、今日の目的と行先を告げた。これから向かうヴァハトゥン島は、ヴァハトゥン諸島連国に属する1番大きな島だと言う。
「俺達がモーヴ様に同行しろと言うのは分かります。でも…ガルセク王子は、何故アスールを連れて行くよう命令したんでしょうか?」
「ああ見えて、情に厚いお方なのです。私の憶測ですが…アスールさんに、世界のあらゆる場所を見せて差し上げたいのでしょう。」
「…情に厚い?」
「お優しいという事ですよ。それとアルトゥンさん。今日はガルセク様がいらっしゃいませんから、普段通り喋って頂いて構いませんよ。その話し方では、疲れてしまうでしょうから。」
「あ、ありがとうございます!じゃあ…お言葉に甘えて…。」
その一言で、私の彼に対する印象が少し変わった。ルスケアと話していた時の彼とは、まるで別人のようだったからだ。
「…モブは疲れない?」
「私は元よりこの話し方が定着しておりますので、どうぞお構いなく。」
「港からは、船に乗り換えるんよね?」
「…船?」
「左様でございます。ヴァハトゥンは海に囲まれた島国ですから、上陸する為には船に乗る必要があるのです。」
「…海泳ぐ?」
「ま、俺等の代わりに泳いでくれる…って点では合っとるかな?」
「百聞は一見にしかずと言います。乗ってみたら分かると思いますよ。船酔いしなければ良いですが…こればかりは、乗ってみなければ分かりませんからね。」
「…船酔い?」
「海には波があるやろ?波のせいで、船が揺れるんよ。その揺れで気分が悪なってしまうのが、船酔いや。」
「もしも気分が悪いなと感じたら、いつでも私達に仰って下さいね。」
「…分かった。」
あっという間に馬車の旅は終わり、港と呼ばれる場所から船に乗り込んだ。辺り1面海に囲まれ、いつもと違う風が私の髪を撫でる。
「ずっと外にいると風邪ひくぞ?」
海を眺める私の元に、グリがやって来た。
「…風、吹いてる。」
「そっちの風じゃねぇよ。」
「…いつもと違う。塩味の風。」
「風に味はしねぇよ。これは、潮風ってやつだ。」
「…何でしょっぱい?」
「さぁな。」
揺れているのは馬車と変わらないが、生き物の声の代わりに水が打ち付ける音が耳に届く。
「船酔いはしてねぇか?」
「…気分悪い、分からない。」
「じゃ、大丈夫そうだな。」
そう言うと、彼は海に背を向けて私の隣に座り込んだ。
「…中、戻らない?」
「お前が入るんなら戻っても良い。」
「…何で?」
「俺、どうもモーヴ様が苦手なんだよな。悪ぃ人じゃねぇのは分かってんだけど…やっぱ貴族とは考え方が合わねぇ。」
「…ルスキャは苦手?」
「確かにあいつも貴族だけど、良い意味で貴族っぽくねぇからな。あいつは別に苦手じゃねぇよ。」
「…同じ貴族なのに?」
「同じつっても、貴族には階級ってもんがある。ルスケアは、貴族の中でも下の方だったはずだ。モーヴ様は…何だったか覚えてねぇけど、あいつよりは上だったと思うぜ。」
貴族が私達よりも偉い人達だという事は知っていたが、彼等の間で上や下という順番がある事は知らなかった。
「おや?グリさんも、こちらにいらっしゃったのですね。」
話をしている私達を見つけたモーヴは、こちらへゆっくりと歩み寄って来た。
「ちょうど良かった。あんたからも話してやってくれねぇか?貴族について聞かれても、俺はあんまり詳しくねぇから。」
「分かりました。私で良ければお話致しましょう。」
グリはその場に立ち上がり、モーヴと入れ替わるようにして船の中へと戻って行った。
「さて…何からお話しましょうか?」
「…モブは偉い?偉くない?」
「おやおや。随分、真っ直ぐ聞いてくるのですね。」
聞き方が悪かったのだろうか?そう思った私は、身体を少しだけ右へ傾けた。
「…身体斜めなら良い?」
「ははは。そういう事ではないのですよ。あなたのように真っ直ぐな方だからこそ、ガルセク様が気にかけるのでしょうね。」
私は彼の言葉の意味がわからず、首を傾げた。
「話が逸れてしまいましたね。結論から言いますと、どちらかと言えば偉い方…でしょうか。」
「…どっち?」
「貴族には、大きく別けて5つの階級があります。1番上が公爵、その次が侯爵、伯爵、子爵、男爵と続きます。私は伯爵なので、丁度真ん中…と言う事になりますね。」
「…どっちでもない。」
「まぁ、私はガルセク様に仕えていますから、少々上の立場という事になります。なので、どちらかと言えば偉い方…という事ですね。」
「…ルスキャは?」
「ルスキャ…あぁ。ルスケアですか。彼は男爵なので1番下ですね。」
そこで私は、とある違和感を覚えた。
「…ルスキャ、何で呼び捨て?」
そう。彼は私達を呼ぶ時とルスケアを呼ぶ時で対応が違っていたのだ。その理由を、私は彼に問いかける。
「彼とは、子供の頃からの知り合いなのですよ。」
「…友達だから、呼び捨て?」
「友達ではありません。私も彼も、それ程親しくは無いのです。」
「…じゃあ苦手?」
「どちらかと言えばそうですね。」
彼は再び、曖昧な表現をした。海の方を見つめる彼の目元は、髪で隠れてよく見えない。
「…何で?」
「そうですね…。強いて言えば、貴族らしくない所…でしょうか。」
「…らしくないから苦手?」
「ええ。昔から彼は気が弱く、いつもお母様の影に隠れてばかりいました。貴族というものは、人の上に立ち…手本になる行動をしなければならない。私は父上から、そのように教えられました。」
風が吹き、彼の髪が後ろに靡く。青緑色の瞳は遠くを見つめ、微動だにしなかった。
「彼には貴族である資格がない…私はそう思いました。騎士になったと聞いた時は、少々驚きましたが…貴族のままで居るよりは、ましだったと思いますよ。」
「…よく分からない。」
私は彼の言葉の意図が、まるで分からなかった。
「少々難しいお話をしてしまいましたね。外はまだ冷えますから、中へ戻りましょう。」
差し出された彼の手に触れる事なく、私は船内へ戻って行った。
「アスール。足元危ないから気ぃつけてな?」
目的地に辿り着き、私達はヴァハトゥン島に上陸した。アルトゥンに手を引かれ、船を降りて行く。
すると、私達の元に1人の女性が駆け寄って来た。
「あなた方が、ビエント王国からの使者様ですね?お待ちしておりました!」
「私、ガルセク様の代理で親書を届けに参りました。モーヴ・ヘリオトロープと申します。彼等は私の付き添いの騎士達です。」
「遠い所から、わざわざお越し下さって感謝いたします!私はタル様の従者でございます。ソルとお呼び下さい!」
彼女は笑顔で手を差しだし、モーヴの手を掴むと身体を寄せて抱き合った。隣に立つアルトゥンにも同じように抱擁を交わすと、彼女は私の前に座り込んだ。
「あなたも騎士なのですか?」
私は首を横に振った。
「…騎士の付き添い。」
「あはは!騎士様にも、付き添いの方がいらっしゃるんですね。」
「彼女は、ガルセク様のご要望で連れて参りました。この国を見せるようにと、仰せつかっております。」
「なるほど…!では、歓迎会の後に私が島をご案内しましょう。」
彼女は私と握手を交わすと、背中にそっと手を回した。潮風と共に、オレンジのような爽やかな香りが鼻を抜ける。
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