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第6章︰家族
第59話
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「あれが密猟者...?」
少女の案内で、開けた場所に座り込む怪しい集団を見つけた。まずは茂みに身を隠し、彼等の様子を伺う。
「あれ?さっきの子は?」
「先程まで一緒に居たんだが...。」
「逃げてしまったのなら、仕方ありませんね。今は彼女の事より、目の前の問題に集中しましょう。アスールさんは、ルスケアとここで待機を。ジンガさんは彼等の目を引き付けて下さい。その隙に、私が仕留めます。」
「分かりました。」
物音を立てないよう、ゆっくりと距離を詰めていくジンガ。彼の後ろに隠れるように後を着いていくモーヴ。私はルスケアと共にその場に残り、彼等の背中を見送る。茂みの端に辿り着いたジンガは、密猟者と思われる集団の前に勢いよく飛び出した。
「何だお前は!どうしてここが...」
「お前達こそ何者だ?ここで何をしている?」
「見りゃ分かんだろぉ?狩りだよ狩り!俺達は猟を依頼されてこの島に...」
「それなら、依頼書を見せてもらえないだろうか?」
「い、依頼書だとぉ?」
「国からの依頼であれば、書類に署名をし...」
「うぐっ...!」
茂みから投げ込まれたナイフが、密猟者の脚に突き刺さる。あれは、モーヴのナイフに違いない。
「お、おい!大丈夫か!?」
「こいつ...!」
密猟者の1人が、ジンガに向かって剣を引き抜いた。すかさず彼も剣を引き抜き、男性と剣を交える。
「お前...ただの狩人って訳じゃ無さそうだな...。」
「俺は狩りよりも、世話をする方が向いている。」
「俺達を捕まえに来たって訳か...そう簡単に捕まってたまるか...!」
必死に抵抗しようとする密猟者に対し、ジンガは落ち着いた様子だった。彼の剣を上手く捌き、あくまで攻撃には転じず、モーヴの判断を待っているかの様だ。
そんな様子を茂みから眺めていると、突然背後から現れた人物が私の身体を軽々と持ち上げる。
「アスールくん...!?」
「嫌!」
逃れようと必死に抵抗するが、あまりの力強さにビクともしなかった。背後から回された腕で首が締め付けられ、徐々に意識が薄れ始める。
何度も名前を呼びかける彼の顔が、しばらくして見えなくなった。
「おいあ?」
目を覚ますと、そこは薄暗い洞穴のような場所だった。近くに置かれた焚き火のお陰で、心配そうに私を見つめる少女の顔がよく見える。彼女は、先程森の中で出会った魔族だった。
「...ここどこ?」
「あーあーい。」
どうやら、彼女にもここがどこだか分からないらしい。詳しい状況は分からないが…見知った顔があると、少しだけ恐怖が和らぐ様な気がした。
「...名前は?」
「えうー!」
「...私、アスール。」
「あうーう!」
彼女の名前は、レルムと言う様だ。上手く言葉を発音出来ない所に、どこか親近感を感じる。
「...ここ出る。エルムどうする?」
「いぅいぉいーう!」
一緒に行くと言う彼女と共に、私は出口を目指す事にした。
どこから入って来たかも分からない場所から出ると言うのは、容易ではないが...動く人の音と微かに感じる外の匂いを頼りに、岩陰に隠れながらゆっくりと歩みを進めて行く。
「おい。こんな所に突っ立って、何してんだ?」
「何って...見張りっすよ見張り!さっき連れて来た子供が、この先に居るんっすよー。」
密猟者と思われる2人の男が、視線の先で話を始めた。出口の手掛かりが掴めるかもしれないと思い、その場にしゃがみ込んで彼等の話に耳を傾ける。
「そういや、変わったガキを捕まえたんだってな?どんなガキなんだ?」
「1人は普通の子供なんっすけど、もう1人が魔族だって話っす。まー...俺はさっき交代したばっかりなんで、まだ見てないんっすけどね。」
「おいおい魔族ってマジかよ...。そんなの捕まえて大丈夫なのか?」
「何ビビってるんっすかー?魔族って言ったって、まだ子供...」
「おい貴様等!ガキがこっちに来なかったか!?」
「いやー?僕等は見て無いっすよ?」
「くそっ...!あいつ等どこ行きやがった!」
「まさか...逃げたのか?おいおい嘘だろ!俺は魔族の相手なんてゴメンだぜ!」
「あ、ちょっと...先輩!待って下さいっすー!」
どうやら、私達が逃げだした事がバレたらしい。この場に留まって居ては、見つかるのは時間の問題だ。
「お゛うーうお?」
「...こっち。」
私はとにかく人目を避けながら、洞穴の中を歩き回った。しかし、進めど進めど出口は見つからず、諦めかけたその時...。
「おい!居たぞ!こっちだ!」
密猟者に見つかり、少女の腕を掴んでその場から駆け出した。ジンガのように魔法の力で早く走れる訳もなく、あっさり捕まってしまう。
男性に腕を捕まれ、私は強く目をつぶった。
「うぐぁぁぁ!」
またしても、無意識に魔法の力を引き出し、彼の身体に電気を流してしまった。後からやって来た密猟者の集団が、少し離れた場所からこちらの様子を伺っている。
「こいつ!普通の子供じゃねぇ!気を付けろ!」
「ガルルル...!」
獣の鳴き声がし、私は後ろを振り返った。すると、先程まで同じくらいの背丈だった少女が、四足歩行の動物の姿へ変化していた。
クロマのように頭部に耳が生えているが、丸みは無く、先が尖っている。鋭い牙や爪を持つ彼女の姿は、人間の面影をほとんど残して居なかった。
「お、おい...こいつが魔族か!?まだ子供なんじゃ無かっ...」
「ガウガウ!」
「うぉぁぁぁー!?」
彼女は、密猟者の集団を目掛けて飛びかかった。脚を引っ掻き、腕に噛みつき、群がった人達に次々と襲いかかって行く。獣の姿がよっぽど恐ろしいのか、中にはその場から逃げ出す者もいた。
「そっちのガキは、触れなきゃ問題ねぇ!」
反対側の通路から、別の集団がやって来た。こちらも同様に武器を持っており、私の側には騎士も少女も居ない。
どうやってここから逃げ出すべきかを考えていると、男性の1人が私に向かって槍を突き出した。槍の先が私の元へ届く前に、突如現れた鋭い剣が槍と交差して甲高い音を響かせる。
「大丈夫か?」
私の前に立ちはだかったのは、ここへ来る前に行動を共にしていたルスケアだった。
「んだテメェ!一体どっから...」
「黙れ密猟者共!彼女に危害を加える気なら、容赦はしないぞ!」
「ひぃ...!」
別人と化した彼は握りしめた鋭い剣で、密猟者を次々と斬り倒していく。
少女の様子が気になって後ろを振り返ると、地面に倒れる密猟者達の姿があった。しかしそこに、彼女の姿も獣の姿も見当たらない。
「さて、こんなものか...もうここに用は無い。帰ろう。」
「...エルム居ない。」
「私はあなたを助けに来た。他の者に構って居られない。」
「...一緒に行くって約束した。」
「仕方ない。それなら私が探そう。あなたは少し寝ると良い。」
こちらへ歩き出す彼とのすれ違いざまに、首元へ衝撃が走った。
次に意識を取り戻した時、私は既にトンムル島を離れた後だった。近くで目覚めるのを待っていたジンガが、これまでの経緯を話し始める。
私が連れ去られた場所は、密猟者の根城だったらしく、武器を持ったルスケアが真っ先に乗り込み、彼等を一掃してしまったそうだ。その後、密猟者達をヴァハトゥン島の役所に連れて行き、依頼は無事に完了したと言う。
私が寝ているこの場所は、ヴァハトゥン島にある宿屋の一室だ。
「...エルムは?」
「森で助けた少女の事か?俺は見ていないから分からない。」
「...ルスキャとモブは?」
「2人は買い出しに行っている。もう少ししたら帰って来るはずだ。」
しばらく2人で話をしていると、両手に袋を抱えたルスケアとモーヴが部屋へ戻って来た。
「アスールくん!身体はもう平気?」
「…へーき。」
「そもそも気絶していただけで、怪我はしていない。そこまで心配する事か?」
「でも…どうして気絶したのかは、誰にも分からなかったから…。」
私も詳しくは覚えていないが、別人になったルスケアが関係している事は間違いない。しかし、当の本人がその時の事を何も覚えていないのだ。
「私は見直しましたよ。普段は頼りないあなたが、戦いであれ程頼りになるとは思いませんでした。」
「それは…大変恐縮なのですが…。」
「さ、まずは食事に致しましょう。アスールさんも、お腹が空いたでしょうからね。」
彼等の買って来た食事をテーブルに広げ、紙の皿に取り分けられた料理を口に運んでいく。
「ガルセク様がいらっしゃったら、我々で作るべきなのでしょうが…。たまには、このような食事も悪くないでしょう?」
「…おーじさま、外のご飯食べない?」
「基本的には食しませんね。毒が盛られている可能性がありますから。」
「…毒?」
「簡単に言うと、危ないからって事だよ。ガルセク王子は、お偉い方だから細かい事にも気を配らないといけないんだ。」
「…これには毒…ない?」
「俺達が狙われる心配は無い。」
一瞬止まりかけた食事の手を再び動かし始めると、モーヴも再び口を開いた。
「それはそうとアスールさん。寝る部屋は、私とご一緒でもよろしいでしょうか?」
「…モブと?」
「モーヴ様…!我々3人がこの部屋で寝ますから、隣は1人でお使いになっ…」
「それではベッドが余ってしまいます。お2人のどちらかがソファーで寝るくらいなら、私の部屋にアスールさんが寝てもらう方がよろしいと思いますが?」
「…モブと寝る。」
「ア、アスールくん…!」
「庭師。本人達が良いと言ってるんだから、俺達は従おう。」
ルスケアの心配は他所に、食事を終えた私とモーヴは隣の部屋へ移動した。
「アスールさんは、武器を持ったルスケアさんが別人のようになる事をご存知でしたか?」
「…ほーか事件の時に見た。」
「では…知らなかったのは、我々親衛隊だけのようですね。」
「…何で聞く?」
「私は、彼が剣を振る姿を見た事がありませんでした。彼が臆病だから剣を握らないのだと、そう決めつけていたのですが…。そうでは無いと分かったので、今後は彼への態度を改める事にします。」
モーヴは、ルスケアに対していい印象を持っていなかった。今回の調査で彼の誤解だった事が分かり、少しだけ心が軽くなる様な感覚がした。
少女の案内で、開けた場所に座り込む怪しい集団を見つけた。まずは茂みに身を隠し、彼等の様子を伺う。
「あれ?さっきの子は?」
「先程まで一緒に居たんだが...。」
「逃げてしまったのなら、仕方ありませんね。今は彼女の事より、目の前の問題に集中しましょう。アスールさんは、ルスケアとここで待機を。ジンガさんは彼等の目を引き付けて下さい。その隙に、私が仕留めます。」
「分かりました。」
物音を立てないよう、ゆっくりと距離を詰めていくジンガ。彼の後ろに隠れるように後を着いていくモーヴ。私はルスケアと共にその場に残り、彼等の背中を見送る。茂みの端に辿り着いたジンガは、密猟者と思われる集団の前に勢いよく飛び出した。
「何だお前は!どうしてここが...」
「お前達こそ何者だ?ここで何をしている?」
「見りゃ分かんだろぉ?狩りだよ狩り!俺達は猟を依頼されてこの島に...」
「それなら、依頼書を見せてもらえないだろうか?」
「い、依頼書だとぉ?」
「国からの依頼であれば、書類に署名をし...」
「うぐっ...!」
茂みから投げ込まれたナイフが、密猟者の脚に突き刺さる。あれは、モーヴのナイフに違いない。
「お、おい!大丈夫か!?」
「こいつ...!」
密猟者の1人が、ジンガに向かって剣を引き抜いた。すかさず彼も剣を引き抜き、男性と剣を交える。
「お前...ただの狩人って訳じゃ無さそうだな...。」
「俺は狩りよりも、世話をする方が向いている。」
「俺達を捕まえに来たって訳か...そう簡単に捕まってたまるか...!」
必死に抵抗しようとする密猟者に対し、ジンガは落ち着いた様子だった。彼の剣を上手く捌き、あくまで攻撃には転じず、モーヴの判断を待っているかの様だ。
そんな様子を茂みから眺めていると、突然背後から現れた人物が私の身体を軽々と持ち上げる。
「アスールくん...!?」
「嫌!」
逃れようと必死に抵抗するが、あまりの力強さにビクともしなかった。背後から回された腕で首が締め付けられ、徐々に意識が薄れ始める。
何度も名前を呼びかける彼の顔が、しばらくして見えなくなった。
「おいあ?」
目を覚ますと、そこは薄暗い洞穴のような場所だった。近くに置かれた焚き火のお陰で、心配そうに私を見つめる少女の顔がよく見える。彼女は、先程森の中で出会った魔族だった。
「...ここどこ?」
「あーあーい。」
どうやら、彼女にもここがどこだか分からないらしい。詳しい状況は分からないが…見知った顔があると、少しだけ恐怖が和らぐ様な気がした。
「...名前は?」
「えうー!」
「...私、アスール。」
「あうーう!」
彼女の名前は、レルムと言う様だ。上手く言葉を発音出来ない所に、どこか親近感を感じる。
「...ここ出る。エルムどうする?」
「いぅいぉいーう!」
一緒に行くと言う彼女と共に、私は出口を目指す事にした。
どこから入って来たかも分からない場所から出ると言うのは、容易ではないが...動く人の音と微かに感じる外の匂いを頼りに、岩陰に隠れながらゆっくりと歩みを進めて行く。
「おい。こんな所に突っ立って、何してんだ?」
「何って...見張りっすよ見張り!さっき連れて来た子供が、この先に居るんっすよー。」
密猟者と思われる2人の男が、視線の先で話を始めた。出口の手掛かりが掴めるかもしれないと思い、その場にしゃがみ込んで彼等の話に耳を傾ける。
「そういや、変わったガキを捕まえたんだってな?どんなガキなんだ?」
「1人は普通の子供なんっすけど、もう1人が魔族だって話っす。まー...俺はさっき交代したばっかりなんで、まだ見てないんっすけどね。」
「おいおい魔族ってマジかよ...。そんなの捕まえて大丈夫なのか?」
「何ビビってるんっすかー?魔族って言ったって、まだ子供...」
「おい貴様等!ガキがこっちに来なかったか!?」
「いやー?僕等は見て無いっすよ?」
「くそっ...!あいつ等どこ行きやがった!」
「まさか...逃げたのか?おいおい嘘だろ!俺は魔族の相手なんてゴメンだぜ!」
「あ、ちょっと...先輩!待って下さいっすー!」
どうやら、私達が逃げだした事がバレたらしい。この場に留まって居ては、見つかるのは時間の問題だ。
「お゛うーうお?」
「...こっち。」
私はとにかく人目を避けながら、洞穴の中を歩き回った。しかし、進めど進めど出口は見つからず、諦めかけたその時...。
「おい!居たぞ!こっちだ!」
密猟者に見つかり、少女の腕を掴んでその場から駆け出した。ジンガのように魔法の力で早く走れる訳もなく、あっさり捕まってしまう。
男性に腕を捕まれ、私は強く目をつぶった。
「うぐぁぁぁ!」
またしても、無意識に魔法の力を引き出し、彼の身体に電気を流してしまった。後からやって来た密猟者の集団が、少し離れた場所からこちらの様子を伺っている。
「こいつ!普通の子供じゃねぇ!気を付けろ!」
「ガルルル...!」
獣の鳴き声がし、私は後ろを振り返った。すると、先程まで同じくらいの背丈だった少女が、四足歩行の動物の姿へ変化していた。
クロマのように頭部に耳が生えているが、丸みは無く、先が尖っている。鋭い牙や爪を持つ彼女の姿は、人間の面影をほとんど残して居なかった。
「お、おい...こいつが魔族か!?まだ子供なんじゃ無かっ...」
「ガウガウ!」
「うぉぁぁぁー!?」
彼女は、密猟者の集団を目掛けて飛びかかった。脚を引っ掻き、腕に噛みつき、群がった人達に次々と襲いかかって行く。獣の姿がよっぽど恐ろしいのか、中にはその場から逃げ出す者もいた。
「そっちのガキは、触れなきゃ問題ねぇ!」
反対側の通路から、別の集団がやって来た。こちらも同様に武器を持っており、私の側には騎士も少女も居ない。
どうやってここから逃げ出すべきかを考えていると、男性の1人が私に向かって槍を突き出した。槍の先が私の元へ届く前に、突如現れた鋭い剣が槍と交差して甲高い音を響かせる。
「大丈夫か?」
私の前に立ちはだかったのは、ここへ来る前に行動を共にしていたルスケアだった。
「んだテメェ!一体どっから...」
「黙れ密猟者共!彼女に危害を加える気なら、容赦はしないぞ!」
「ひぃ...!」
別人と化した彼は握りしめた鋭い剣で、密猟者を次々と斬り倒していく。
少女の様子が気になって後ろを振り返ると、地面に倒れる密猟者達の姿があった。しかしそこに、彼女の姿も獣の姿も見当たらない。
「さて、こんなものか...もうここに用は無い。帰ろう。」
「...エルム居ない。」
「私はあなたを助けに来た。他の者に構って居られない。」
「...一緒に行くって約束した。」
「仕方ない。それなら私が探そう。あなたは少し寝ると良い。」
こちらへ歩き出す彼とのすれ違いざまに、首元へ衝撃が走った。
次に意識を取り戻した時、私は既にトンムル島を離れた後だった。近くで目覚めるのを待っていたジンガが、これまでの経緯を話し始める。
私が連れ去られた場所は、密猟者の根城だったらしく、武器を持ったルスケアが真っ先に乗り込み、彼等を一掃してしまったそうだ。その後、密猟者達をヴァハトゥン島の役所に連れて行き、依頼は無事に完了したと言う。
私が寝ているこの場所は、ヴァハトゥン島にある宿屋の一室だ。
「...エルムは?」
「森で助けた少女の事か?俺は見ていないから分からない。」
「...ルスキャとモブは?」
「2人は買い出しに行っている。もう少ししたら帰って来るはずだ。」
しばらく2人で話をしていると、両手に袋を抱えたルスケアとモーヴが部屋へ戻って来た。
「アスールくん!身体はもう平気?」
「…へーき。」
「そもそも気絶していただけで、怪我はしていない。そこまで心配する事か?」
「でも…どうして気絶したのかは、誰にも分からなかったから…。」
私も詳しくは覚えていないが、別人になったルスケアが関係している事は間違いない。しかし、当の本人がその時の事を何も覚えていないのだ。
「私は見直しましたよ。普段は頼りないあなたが、戦いであれ程頼りになるとは思いませんでした。」
「それは…大変恐縮なのですが…。」
「さ、まずは食事に致しましょう。アスールさんも、お腹が空いたでしょうからね。」
彼等の買って来た食事をテーブルに広げ、紙の皿に取り分けられた料理を口に運んでいく。
「ガルセク様がいらっしゃったら、我々で作るべきなのでしょうが…。たまには、このような食事も悪くないでしょう?」
「…おーじさま、外のご飯食べない?」
「基本的には食しませんね。毒が盛られている可能性がありますから。」
「…毒?」
「簡単に言うと、危ないからって事だよ。ガルセク王子は、お偉い方だから細かい事にも気を配らないといけないんだ。」
「…これには毒…ない?」
「俺達が狙われる心配は無い。」
一瞬止まりかけた食事の手を再び動かし始めると、モーヴも再び口を開いた。
「それはそうとアスールさん。寝る部屋は、私とご一緒でもよろしいでしょうか?」
「…モブと?」
「モーヴ様…!我々3人がこの部屋で寝ますから、隣は1人でお使いになっ…」
「それではベッドが余ってしまいます。お2人のどちらかがソファーで寝るくらいなら、私の部屋にアスールさんが寝てもらう方がよろしいと思いますが?」
「…モブと寝る。」
「ア、アスールくん…!」
「庭師。本人達が良いと言ってるんだから、俺達は従おう。」
ルスケアの心配は他所に、食事を終えた私とモーヴは隣の部屋へ移動した。
「アスールさんは、武器を持ったルスケアさんが別人のようになる事をご存知でしたか?」
「…ほーか事件の時に見た。」
「では…知らなかったのは、我々親衛隊だけのようですね。」
「…何で聞く?」
「私は、彼が剣を振る姿を見た事がありませんでした。彼が臆病だから剣を握らないのだと、そう決めつけていたのですが…。そうでは無いと分かったので、今後は彼への態度を改める事にします。」
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