エテルノ・レガーメ

りくあ

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第4章︰ルカとルナ

第36話

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「ぅ…ん…。」

目を開けると、視界いっぱいに赤くなった夕焼け空が広がっていた。

「起きたか。」
「…ミグは!?」
「ちゃんといるよ。」

私の身体を後ろから支えるように、黒い狼が横たわっていた。

「ミグ…なの?」
「あぁ。どんな動物になるかと思ったら狼だったよ。結構かっこいいだろ?」
「それ普通、自分で言う?」
「別にいいだろ…。」 
「私は猫かと思ってたけど…どうして狼なんだろうね?」
「さぁ?けど、猫はもう使役した事があるんだし、違うもので良かったんじゃないか?」
「そうなのか?ルナ。」
「そういえば、記憶を無くしたせいですっかり忘れてた…。私が居なくなったあと、ルファーはどうなったの?」
「契約者とかなり離れた事で、契約の効果がなくなったらしい。しばらく私に付きまとっていたが、いつの間にか姿を消していた。」
「そっか…。」
「さて。これで契約は済んだ。ここを発つ前に、ルナは挨拶が必要だろう?出発は明日にしよう。」 
「じゃあまずは…クラーレさんの所に行かないとね。」
「あぁ。行こう。」



「え、この狼が…ミグなの?」
「はい…。」
「俺が選んだ事だ。ルナのせいじゃない。」
「…言葉がわからなくなっちゃった…。さっきまで会話してたのにね…。」
「そうか…やはり人間じゃなくなったって事だな…。」
「多分吸血鬼にしかわからないんじゃないかな…。」
「なら、俺は死んだって事を親父とテトに伝えてくれって言ってくれないか?」
「クラーレさん。ミグが、俺は死んだって事を、テトとテトの執事のシグさんに伝えて欲しいそうです…。」
「わかった…。ルナは、テト様に挨拶には行かないの?」
「テトになんて言ったらいいか…。必ずまた戻ってくるから、しばらく遠くに旅に行くって伝えてもらってもいいですか?」
「わかった。…せっかく引き止めたのに、結局行っちゃう事になるなんてね。」
「ごめんなさい…。」
「ううん…いいんだよ。ルナがしたいようにするのが1番だし…。ルカの為に動いてくれてるようなものだしね…。」 
「必ず、ルカを元に戻してみせます。ヴェラと一緒に!」
「ありがとう。そうだ、これ持って行って。」

彼は、自身の首に付けていたネックレスを外すと、私の手に握らせた。

「これは…?」
「母の形見なんだ。この世に1つしかない特注品でね。」
「ど、どうしてそんな大切な物を私に!?受け取れません!」
「僕達のギルドは…吸血鬼は全て敵だと思ってる。ルナが吸血鬼だと知って、襲うメンバーがいるかもしれない。そのネックレスを見せれば、僕が認めたって証明になるでしょ?お守りだと思って持ってて欲しいんだ。」
「確かに…そうですね…。わかりました…。戻ってきたら必ず返します!」
「気をつけてね。帰ってくるのを待ってるよ…。」
「はい…!」

一旦自室に戻ってミグを部屋で待たせ、私はスレイ達の部屋に向かった。

「えー!?旅に出る!?」
「せっかくまた会えたのに…。」
「今度はどこにいくの?」
「目的地は…決めてないの!けど、もっとこの広い世界を見て回りたいなって思って!」 
「ところで、今朝からミグくんを見てないけど…どこに行ったの?」
「ミグは…王城に戻る事になって、昨日行ったんです。」
「ミグも居なくなって、なんか寂しくなるな~。」
「旅に出ても、また戻ってくるよね?」
「もちろん!」
「そっか…じゃあ、早く帰ってきてね!」
「身体には気をつけるんだよ?」
「はい!みんなありがとう!」

食堂にやってくると、ラズとラヴィが休憩をしていたようで、彼等にも旅に出る事を伝えた。

「ええー!ルナちゃんここ出ちゃうの!?」
「旅なんだろ?なら、また戻ってくるって事じゃないか。」
「はい!戻ってくるつもりです!」
「でもさー…。ルナちゃんみたいに可愛い子が居なくなっちゃうの寂しいだろー?」
「なーに言ってんのさ…。寂しくないやつがいる訳ないだろう?」
「ご、ごめんね…。」
「寂しいけどさ、別れる訳じゃないんだし、あんたの家はここなんだからさ。いつでも帰ってきなよ?」
「ラヴィ…ありがとう!」
「ちゃんと飯食うんだぞ?」
「はい!ありがとうラズさん!」

魔法の訓練でお世話になったリーガルさんの元に向かうと、彼の部屋にはシェリアさんの姿もあった。

「あら…旅にでるのね…。」
「せっかく魔法について語り合える奴だったのに…残念だ…。」
「リーガルはそればっかりねぇ…。」
「リーガルさんに魔法教えて貰えてよかったです!ありがとうございました!」
「戻ってくるんだろう?戻ってきたらまた語り合おう。それまで、俺も魔法の腕をあげておくからな。」
「はい!」
「身体に気をつけてるのよ?ちゃんとご飯も食べて、元気で戻ってきなさいね?」
「ありがとうシェリアさん!」

廊下を歩いていると、リアーナとイルムに出会い、彼女達にも旅に出る事を話した。

「そう…旅に…。」
「そんな…せっかく…仲良くなれたのに…っ。」
「イ、イルム…泣かないで?また戻ってくるから…!」
「ちゃんと戻って来てね!」
「怪我しないように気をつけてね?」
「ありがとうリアーナ…。」
「また帰ってきたらお買い物行こうね!ミグくんも連れて!」
「…うん!また行こうね!」

一通り挨拶を済ませた所で自室に戻ると、狼姿のミグがベッドの上で横になっていた。

「おかえり。挨拶は済んだのか?」
「うん…アリサさんは居ないみたいで会えなかったけど…他の人にはちゃんと挨拶出来たよ。」
「アリサは騎士だからな…仕方ないだろうな。」
「そういえば、ヴェラは?」
「地下室でレミリアと一緒に話をしてるみたいだぞ?あいつも一緒に帰るみたいだしな。」
「よかった…殺されなくて…。」
「クラーレだって良い吸血鬼と悪い吸血鬼がいる事わかったわけだし、前みたいに無差別に殺す事はないだろう。」
「吸血鬼も…人間の事を殺さないようになればいいのにね…。人と吸血鬼は仲良く出来ないのかな?」
「難しいだろうな。今までずっといがみ合ってきたんだ。急に仲良くなるのは中々な…。」
「そうだよね…。」
「歩き回って疲れただろ?少し休んだらどうだ?」
「じゃあ、そうしよっかな…。」

    

「ルナ。おかえり。」
「ただいま…なのかな?」
「うーん…夢の中で、おかえりって言うのも変だったかな?」

夢の中で、ルカが私を出迎えてくれた。彼が座っていたソファーの、向かい側に腰を下ろした。

「ルカ…私ね、吸血鬼達の所に行く事にしたの。」
「え…どうして!?」
「このギルドに来て、ルカの事を大事に思ってる人達に出会って…みんな、私の事を助けてくれた。だから私も、あなたを助けたいって思ったの。」
「ルナ…。」
「出会いって、突然で…偶然で…そういう運命だったんだなって思う…。吸血鬼と人間は、長い間敵同士だったかもしれない…でもいつか、そんな時もあったねって笑い合える未来にしたい!」
「…それが、ルナの考えなんだね。僕も、出来る事があったら全力でサポートするよ!…あ…でも、ルナの状況がわからないと協力のしようが無いよね…。どうしよう…。」
「それなら、ヴェラにいい方法を教えてもらったよ!」
「そうなの?」

私は自身の指にはめていた指輪を外すと、彼にそれを渡した。

「この指輪を付けてると、私の見てるものがルカにも見えるようになるの。…他にもあったような気がするけど…忘れちゃった…あはは。」
「とにかく便利な指輪って事で覚えておくよ!」
「うん!ルカ…。私…頑張るよ。」
「頑張ろう。僕達2人で。」



「…ナ…おい…ルナ…!」
「ん…ヴェラ…?」

自室のベッドの上で彼女に起こされると、渋々身体を起こした。

「ミグも起きろ。」
「んー…なんだよ…まだ夜中じゃないか…。」
「動くなら夜の方が都合がいい。」
「あれ?レミリアも一緒に行くんじゃないの?」
「あいつは先に送っておいた。建物が別だし。」
「そっか…。」
「お前は移動中、ルナの中に入ってろ。」
「ど、どうやって入ったらいいんだ?」
「それは私がするから、ミグはそのままで大丈夫だよ。」
「そ、そうなのか?じゃあ…頼む。」

彼を自分の影に取り込むと、ヴェラと共に吸血鬼達の元へと出発した。
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