エテルノ・レガーメ

りくあ

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第5章︰エーリ学院【前編】

第37話

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「…着いたぞ。ルナ。」
「わぁ…すごく懐かしい感じがする…!」
「まぁ…長い事離れていたらそうなるだろうな。」
「…ルナ…?ルナですか…!?」
「あ、フィー!」

駆け寄ってきた彼女と抱き合うと、後ろからもう1人こちらに歩いてくるのが見えた。

「ルナ…。」
「ライガ…!…ただいま。」
「おかえり。よかった…戻って来られたんだな…。」
「記憶を無くしていたせいで少々時間がかかった。だが、もう記憶は元に戻してある。」
「そうか。…詳しく話を聞きたい。今から部屋に来れるか?」
「わかった。」
「ルナも、あいつらに顔を見せたら来てくれ。」
「う、うん。」
「エレナも…レーガも…気にしていたので…一緒に行きましょう…ルナ。」

彼女と手を繋ぎ、建物の中へと入っていった。

「ルナ!よかった…無事だったのですね!すごく心配しましたわ…。」
「ごめんねエレナ…。」
「おかえりルナ。」
「ただいま…!そういえば、レーガとは街であったよね?あの時は…記憶無い時だったからわからなくて…ごめんね。」
「気にしてないよ。ちょっとびっくりしたけどね。」
「でも、この腕輪!身体の調子がわかるからすごく助かったよ!」
「それはよかった。プレゼントした甲斐があったよ~。」
「これからも…ずっとここに住むんですよね…?」
「うん!そのつもりだよ。」
「ルナの部屋はそのままにしていますわ。疲れたでしょうし、ゆっくりお休みになって。」
「ありがとう!あ…でも、ライガの所に行かなきゃ。」
「そう…ですね…。」
「でしたらフィー。私達は朝食の準備をしましょう。」
「はい…!…お話が終わったら、食堂に来てくださいね…。」
「うん、わかった!」

ーコンコン

長い階段を上った先にある扉を叩くと、中から「入れ。」という声が聞こえてきた。深く深呼吸をして、ゆっくりと扉を開いた。

「お、おまたせ…。」
「来たか。…ヴェラとの話は大体ついた。ルナも座れ。」
「うん…!」

お互い別々のソファーに座っている2人の元に駆け寄ると、ヴェラが座っている隣に腰を下ろした。

「話をざっとまとめると…記憶を無くして、人間達の世話になっていた…という事だな?」
「そうだ。」 
「ヴェラが見つけた時の場所に住むようになる前は、どうしていたんだ?」
「えっと…街から離れた所にある、小さな村で倒れている所を助けて貰ったの。しばらくそこでも暮らしてたよ。」
「そんなに遠くまで飛んでいたんだな…。」
「ごめんなさい…私が魔法を誤って発動させちゃったから…。」
「それは仕方ないだろう。誰しも失敗はあるものだ。」
「もう聞くことはないだろう?私はルナと話す事が…」
「なら、最後に1つ聞こう。…なぜ、あのギルド…エテルノ・レガーメにいた?」
「た、たまたまだよ…!記憶を戻す為の成り行きで…。」
「たまたま…か。」
「何が言いたい?」
「いいや…。今はやめておこう。そろそろ朝食の時間だ。話すのはいいが、食事をしてからにしろ。」
「わかった…。」



食堂で食事を済ませた後、歩き慣れた廊下を進んだ。自分の部屋に入ると、懐かしい香りがした。

「懐かしいなぁ…。」
「そうだな。…ライガにはあまり詳しく話さなかったつもりだったが、まさかギルドにいた事を知られていたとは…。」
「もしかしたら、ヴェラに会う前にレーガと会ったからかもしれない…。その時は、レーガだってわからなかったから…。」
「余計な事は話さないように注意しないといけないな…。」
「うん…。あっ…そうだ!ミグを出してあげないと…!」
「なら、私は部屋に戻る。ミグに、使い魔の常識くらい教えておきなさい。」
「はーい。」

彼女が出ていくと、部屋は静かになり少し寂しさを感じた。誰も居ない部屋の中で目を閉じ、自分の胸に手を当てた。

「ミグ…出てきて…。」
「…ん。ここが…ルナの部屋か?」
「うん。そうだよ。」
「なんかここ…埃っぽくないか?」
「言われてみるとそうだね…掃除がてら内装変えちゃおうかなぁ…。」
「そんなことも出来るのか?」
「多分!」
「多分かよ…。」
「“血の盟約は互いの友好の証。我が血を糧とし力に変え、我が意思に従え!”」

血がついた手で床に触れると、下からじわじわと内装が変わっていった。

「うわ…こうして魔法を目の当たりにするの初めてだな…。」
「私だって凄いんだからね!」
「それはいいけど…血、足りなくなってるぞ。」
「だ、大丈夫だよ少しくらいなら…」

扉のノックする音が聞こえ、「どうぞー。」と返事をすると、レーガが扉を開けた。彼の手には白い箱が握られていて、それを私に見せつけるように、胸の辺りまで持ち上げてみせた。

「お菓子持って来たんだけど一緒に食べ…あれ?ルナの新しい使い魔?」
「うん!ミグって言うの。」
「…どうも。」
「あはは。なんか、ハンスみたいだね。」
「そ、そうかな?ちょうど部屋の模様替えも終わったし、座って座って!」
「おじゃましまーす。…前の部屋も可愛かったけど、こういう部屋もいいね。」
「そう?よかった!」

箱の中に入っていたケーキを取り出し、それぞれの前に置いた。「いただきます。」と手を合わせ、1口頬張ると甘いクリームが口の中に広がった。

「使い魔とは、いつ契約したの?」
「えっと…昨日…かな?」
「それは随分と急だったね?」
「ルファーが居なくなっちゃったって聞いて…。使い魔が居ないと不便だろうってヴェラが言うから、契約を手伝ってもらったの。」
「ミグ…だっけ?」
「…はい。」
「人間が、吸血鬼に使役させる使い魔になるなんて…どんな気持ち?」
「に、人間?その…ミグは…」
「匂いでわかるんだよ。月日が経てば徐々に薄れていくものだけど、昨日契約したばかりならまだ人間みたいなものだし。」
「そ、そう…なんだ…。」
「あ、だからって、君を消そうって思ってるわけじゃないよ~?ただ、普通なら使い魔になるのは、吸血鬼と友好な関係の動物がほとんどだから、どうしてなのかなー?って、気になっただけ。」
「吸血鬼と友好な人間もいるって事ですよ。」
「友好な人間…ねぇ…。」
「レ、レーガ!このケーキって、どこで買ってきたの?すごく美味しいね!」 
「街でだよ。このお店のお菓子が美味しいって人間達が話してるのを聞いて、食べてみたくなってね~。」
「吸血鬼は食いしん坊なのが多いんだな。」
「こ、こらミグ…!」
「いい事教えてあげるよ…ミグ。使い魔になったばかりだから知らないと思うけど、主以外の他の吸血鬼に生意気な口の利き方は良くないよ?主に敵を作る可能性があるからね。」
「…そうですか。わざわざご丁寧にありがとうございます。」
「さすが、元々人間なだけあって肝が座ってる。…ま、うちのベルは全然言う事聞いてくれないんだけどね~!」
「職業柄、慣れてますので。」
「ふーん?」
「ごめんねレーガ…!こっちに来てからまだ何も教えてなくて…きちんと教えてこんでおくから!」
「別に気にしてないよ~。じゃあ…そろそろ戻ろうかな。エレナが待ってるかも。」
「お菓子ありがとうレーガ!また遊びに来てね!」
「ルナも、夜寝れなかったらいつでも僕の部屋に来ていいからね?」
「あー…う、うん…!あり…がと…。」

引きつった笑顔で彼を見送った後、部屋に戻るとミグがこちらをじっと睨むようにして見つめていた。

「な、なぁに?ミグ…。」
「夜、あいつの部屋に…ねぇ。」
「きょ…兄妹なんだから、別にいいでしょ?」
「ふーん。」
「それより…!この本で使い魔について勉強して!さっきみたいに、生意気しちゃ駄目なんだからね!」
「はいはい。」



「エーリ?…に移るって…どういう事?」

翌日、ライガの部屋に呼び出された私は、聞き慣れない言葉を耳にした。

「ここに住む俺ら以外にも、吸血鬼が集められている場所があるって言うのは、聞いた事があるか?」
「あ、うん。ヴェラが言ってたと思うけど…。」
「エーリと言うのは、その建物の名前だ。下っ端の吸血鬼達が、魔法や戦闘術を身につける為の学校になっている。」
「学校…。」
「俺としては…前のように、ここで一緒に仕事が出来れば良かったんだが…。そう出来ない状況になってしまってな。」
「状況って…どんな?」
「一緒に仕事をした時、怪我をしただろ?まだ仕事をさせるには早かったという事だ。…そして今回、魔法を誤って発動したせいで遠くに飛んでしまい、記憶を失って戻れなくなった事。これらの事があったから、きちんと学ぶ必要があると思ってな。」
「そう…なんだね…。」
「お前を追い出したくてしている訳じゃない。それだけはわかってくれ…。」
「仕方ないよ…!私がまだまだ未熟だからだよね…。わかった!エーリで頑張って勉強するよ!」
「昇級していけば、こっちに戻る事も出来るはずだ。他の奴らに、挨拶して来てくれないか?先に外で待っているから、準備が出来たら来てくれ。」
「うん。わかった。」

ボロボロと大粒の涙を流しながら、懸命に手を握りしめて、別れを惜しむフィー。
優雅に笑ってみせる顔が明らかに引きつっているが、それでも笑顔で送り出そうと必死に作り笑いをしているエレナ。
いつもニコニコしている優しい顔を崩さないように、必死に堪えながら頭を撫でてくれたレーガ。
ヴェラは、既にその事をライガと話していたようで「しっかり勉強しなさい。」と一言口にしただけで、随分あっさりと送り出された。
ライガと一緒に馬に跨ると、レジデンスの前に架かっている長い長い橋を駆け抜けて行った。後ろを振り返ると徐々に小さくなっていく建物に、どこか寂しさを感じた。
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