エテルノ・レガーメ

りくあ

文字の大きさ
73 / 165
第8章︰エーリ学院〜中級クラス〜【前編】

第67話

しおりを挟む
「おはようルナちゃん。」
「おはようフラン!」

レジデンスに帰って来てから数週間が経ち、明日からエーリでの授業が再開する事になっていた。
食堂に向かっている所で彼と出会い、並んで廊下を歩き始めた。

「いよいよ明日だね。」
「うん!中級クラスになったから、タクトさんやレミリアと同じ教室だよね?」
「そうだね。今まで先輩って呼んでたけど…明日からなんて呼ぼう。」
「わ、私も…タクトさんの事呼び捨てにした方がいいのかな?どうしよう…緊張する…。」
「ルドルフはどう思う?」
「常に俺様は上だ。呼び捨てに抵抗など…」
「やっぱりそうだよね…。聞いた僕が間違ってたよ…。」
「フランらしくないね。相手の事気にしないで、自分が呼びたいように呼ぶと思ってた。」
「なんか…“タクトくん”、“レミリアちゃん”…って呼ぶの、違和感ない?」
「確かに…。こういうのって、相手に聞くのが1番良いかも…。」
「なるほど…そうしようかな…。」
「腹が減った。飯はまだか?」
「ルドルフはお腹空かないでしょ?」
「そういうお前達だって空かないだろう。それなのに何故食べる?」
「うーん。なんか食べたくなるんだよね。」
「そう!食事してる時に話をするの、楽しいんだよね。」
「普通に話すのと何が違うんだ?…変な奴だな。」
「そういうルドルフも、結構ご飯食べるの楽しんでるよね?昨日なんて…」
「そんな事はいいからさっさと歩け!」

彼は何かに背中を押される様に、廊下を小走りで進み始めた。

「わわっ…!走らせないでよ~。ルナちゃーん!ルナちゃんも早く来て~!」
「あ、うん…!」

私も同じように、小走りで彼の背中を追いかけて行った。



私達は各自で準備を済ませると、レジデンスの橋の前に集まった。扉の前にはエレナとレーガが見送りに来ている。

「もう行っちゃうの?夜までに着けばいいのに…」
「明日の為に色々準備がありますから…。すみません、ラギト様。」
「フランの言う通りですわよレーガ。」
「だって~。」
「レーガは近いうちにエーリに来るでしょ?そんなお別れみたいに言わないでよ~。」
「そうだけど…。」
「お前等、いつまで挨拶をしているつもりだ。」 

私達をエーリまで送る為に、橋の前で待機していたライガが、痺れを切らしてこちらに歩いて来た。

「しょうがないでしょー。色々積もる話が…」
「そんなに話す事があるなら俺が聞こう。」
「ライガに話しても意味無いじゃん!」
「フラン。勉強を頑張って、また元気な姿を見せてくださいね?」

2人が言い争っているのを無視して、エレナがフランを抱きしめて別れの挨拶を交わした。

「はい。リーシア様もお元気で。」

エレナは身体を離すと、私とも抱擁を交わして挨拶をかわした。

「フランは俺の方に。ルナはフィーの方に乗ってくれ。」
「わかりました。」
「あ、待ってよー!僕も2人と抱き合っ…」
「あなたと抱き合っていたら、日が暮れますわ!またの機会にし…」

建物の中に入っていく彼等に背を向けて歩き出すと、橋の前で使い魔に乗って待っていたフィーの元にやって来た。

「よろしくねフィー。」
「はい…。どうぞ、乗ってください…!」

馬の様な見た目の使い魔が、地面に膝をついて体勢を低くした。私が背中に腰を下ろすと、その場にゆっくりと立ち上がった。

「この子の名前はなんて言うの?」
「マーク…ですよ。」
「ありがとうマーク。エーリまでよろしくね!」

マークの身体を撫でると、尻尾を振って喜んでいる様に見えた。

「行くぞフィー。」
「…はい!」

長い長い橋を渡って、2頭の馬はエーリに向かって駆けて行った。



エーリの門の前で送って来てくれた2人と別れると、フランと共に寮に向かった。

「ヴァン様の馬、使い魔じゃないのにすごく懐いてたんだけど、飼ってるのかな?」
「えー?ライ…ヴァン様が、生き物を飼い慣らすなんてするかな?」
「でも、レム様の使い魔達とすごく仲がいいよね。僕達が知らないだけで、結構動物が好きなのかもよ?」
「そうなのかな?意外だなぁ…。」
「あ、あの…!フランくん…だよね?」

2人で廊下を歩いていると、すれ違った女子生徒がフランを見て声をかけてきた。

「そうだけど…。僕に何か用?」
「こ、これ…よかったら受け取って下さい!」

彼女は鞄から取り出した手紙をフランに差し出すと、その場から走り去って行ってしまった。

「え、なんだろう…今の。」
「それってまさか…!ラブレターじゃないの?」
「ラブレター?何それ…。」
「読んでみたらわかるよ!部屋に戻って見てみたら?」
「一旦荷物置いたら、これ持ってルナちゃんの部屋に行くよ。1人じゃ見るの心細いし。」
「ラブレターを果たし状か何かと勘違いしてない…?」
「え、違うの?」
「とりあえず、荷物置いてきなよ!部屋で待ってるね。」

しばらくして私の部屋にフランがやって来ると、2人でテーブルを挟んでクッションに腰を下ろした。彼は手に持っていた手紙の封を切ると、中から1枚の紙を取り出した。

「フランくんへ…。初めてあなたを見た時から、ずっと気になっていました。あなたの活躍を、これからもずっと応援しています…」
「これはやっぱりラブレターだよ!」
「どっちかと言うと激励の手紙じゃない?」
「え?うーん…そうなのかなぁ…。控えめなラブレターだと思うんだけど…。」
「前にアレクくんが送って来たやつと似た感じでしょ?今度お礼を言っておこうっと。」
「ラブレターにお礼するって変な感じ…。」
「礼などするものじゃないぞフラン。」

突然会話に入ってきたルドルフは、私と同じ様に異を唱えた。

「どうして?」
「別に必要ないと思っただけだ。わざわざ言いに行くなど面倒だろう。」
「なんだ…そういう事かぁ…。」
「でも相手は、わざわざ手紙を書いてくれたんだよ?何か反応してあげないと可哀想じゃない?」
「そ、それなら、もっとフランが活躍する姿を見せてあげたらいいんじゃない?そしたら相手も喜んでくれるよ!」
「なるほど。その手があったね。」
「以外と機転が利くな。小娘。」
「ルドルフ。ちゃんと名前で呼んでよ、ルナちゃんの事。」
「ふん…。…慣れないだけだ。わかっている。」

ーコンコン

ノックの音が聞こえ、扉を開けるとララとユイが部屋にやって来た。

「やっほールナ。」
「あ、ユイ!」
「久しぶりだね。ルナちゃん。」
「うん!ララも久しぶり~。あ、入って!フランと話してた所だったの。」

彼女達を部屋に招き入れると、ベッドを片付けて部屋を広くした。同じようにクッションの上に座ると、4人でテーブルを囲む形になった。

「2人共おかえり。」
「た、ただいま…!」
「なんかちょっと見ないうちに雰囲気変わったんじゃない?フラン。」
「そうかな?何も無いけど?」
「ところで…この紙は何?」
「あ、それは」

ララが手に取った紙を2人で覗き込むと、ユイがその紙を彼女の手から奪い取った。

「こ、これラブレターじゃない!」
「いや…これは激励の手紙」
「そうだよね!?私もそう思ったんだよ!」
「多分違」
「一体…誰から貰ったの?」
「知らない子だよ。」
「どんな感じの子!?」
「ユイちゃん落ち着いて…!」

立ち上がってフランに迫っていくユイの腕を、座ったままのララが掴んでその場に座らせた。

「と、取り乱したわ…。」
「知らない子から、突然この手紙を貰ったんだ。僕は激励の手紙だと思うんだけど。」
「確かに告白っぽくないような…。告白っぽいような…。」
「多分あれね。ダンクデーが近いからよ。」
「ダンクデーって何?」
「私も初めて聞いた!何かの行事?」
「普段お世話になってる人に、感謝をする日だよ。相手に感謝の気持ちを込めて、お菓子を贈る日なの。」
「へー。そんな日があったんだね。僕知らなかったなぁ。」
「わ、私も…。」
「その日の為に、フランに気に入られようとしてるのかもしれないわ…。注意しなさいよ?」
「何をどう注意したらいいんだろう…。」
「さ、さぁ…?」

こうしてしばらく私達の話は続き、明日の準備の為に早めに解散する事になった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。 知らない生物、知らない植物、知らない言語。 何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。 臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。 いや、変わらなければならない。 ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。 彼女は後にこう呼ばれることになる。 「ドラゴンの魔女」と。 ※この物語はフィクションです。 実在の人物・団体とは一切関係ありません。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...