黒羽織

四宮

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黒羽織其の六 妖刀さがし

03

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「――――――――・・・・・」
不気味なほどの静寂。
行灯の影が敷いた布団に伸びる。
肌をさらけ出した以蔵の胸元に、遊女の白く長い指が伸びては何度も尖った。
「――――――・・・・」
縛られていた帯は緩やかに解け、着物の裾から覗く足の指先が何かに耐えるかのように先ほどからグネグネと動いている。
淫猥な音が香と混ざり、灯る蝋燭は時折ジジジと揺れた。
乗りかかった女の身体が前後に揺れる。
着崩れた着物から覗くは女の細い肩。
女が何処かぎこちない動作で腰を擦りつける度に布の隙間越しに乳房が揺れ、結い髪に挿した簪に影が触れた。
女の帯が解ける度に肩の上まで垂れた髪が、はらりと背中へ落ちていく。

「・・・ぁ・・・・」
艶やかな光が照らす紅の唇が僅かに動くその様は、パクパクと水面に出て、餌を乞う金魚のようでもあった。
「・・ぅ・・・・くっ!」
女が動くたびに蜜の擦れる音が僅かに漏れる。
どこかもどかしくもある緩い動きに堪えきれなくなったのか、以蔵が腰を上下に強く揺さぶりながら、ぱぁんと腰を奥に叩きつけると女の脚がビクリと強張った。
先程までの女の咥内とは違うその熱に以蔵の表情が微かに歪み、ぐいっと女の腿を掴む手を強めれば女の唇から、か弱い吐息が零れて溶けた。
「・・・ぁ・・」
よく見れば女の眉間には皺が寄り、少し開いた唇からは白い歯が覗いている。
以蔵が腰を何度も動かす度に、ゆっくりと溶け出していく熱い蜜が、互いの思考を奪ったまま放してくれそうもない。

「・・・ぅ・・」
蜜と以蔵の雄がぐちゅぐちゅと交わる音だけが大きく響き、女の方が強請るように以蔵の唇に吸い付いていく。
「・・・ん・・」
するりと入り込んできた女の舌が以蔵の舌と絡まる度に、互いの温度が上がっていくのをより強く感じながら、うっすらと瞳を閉じれば唇の隙間から零れる女の甘い声色と絡み付いた熱が、先ほどよりもねっとりと咥えこんで離してくれそうもない。
「・・・うぐ・・」
先程まで魅せていた女の咥内とは違うその熱に、以蔵の表情が微かに歪み、グイっと女の腿を掴む手を強めれば女の唇から、か細い吐息が零れて溶けた。
挿入れた時には堅かった女の膣肉が擦れる度に熱を生み、少しずつ熱い蜜が溶け出していく。
蜜と以蔵の雄がぐちゅぐちゅと交わる度に、女の方が強請るように以蔵の唇に吸い付こうと舌を伸ばしてくる。

「・・・ん・・・」
ねとねとと互いの舌先を絡め取りながら、女がじゅるりと以蔵の舌に吸い付き、彼が腰を強く打ち付ける度に女の口からは吐息が零れ、自然と顔が離れていった。
「・・・っ!」
緩く腰を回すように以蔵が女の腰をがしりと抱くと、女の背が僅かにのけ反った。
その背をぐいと崩すように抱き寄せれば、僅かに揺れる乳房が見えた。
「・・・は・・・」
白い乳房の先にある桃色に色づいた突起に、がぶりと噛み付く。と、そのまま強く吸い上げる。
「・・・・ぁう!!」
ビクビクと強張るしなやかな曲線。悲鳴にも似た女の吐息交じりの声が妙に心地良く、また熱っぽい。
ころころと舌で胸の突起を弄ぶ度に女の吐息が更に熱を帯び、雄を飲み込む女の肉が僅かにうねる。
「・・う・・」
以蔵が女を横に寝転がし、乗っていた女から自身の雄をずるんと引き抜くと、鷲掴みにしたままの手を緩めることなく、横に広げようと女の腿に力を込めた。

その瞬間-・・女と目が合った。

「・・・・・・・」
頬にうっすらと紅が差し、恍惚とした女の表情。簪が解け緩んだ髪が畳に伸びていく。
首筋を見る。そこには吸いついた痕がくっきりと残っていた。
乳房と脇の間に視線を流すと、ごくりと以蔵の喉が鳴る。
「・・・・・・・」
女がやや遠慮がちに細い腕を伸ばし、以蔵の首に絡み付いていく。
しなやかな指が、うっすらと汗ばんだ肌を何度も撫で摩り、近づいた互いの唇から零れる甘い吐息と遠慮がちに進む女の指が、以蔵の背を這うように動いていく。
「・・ん・・・」
舌を絡ませながら動く唇の下で、彼は自身の雄を女の膣肉にずぶりと突き刺した。
途端に女の眉間に皺が寄り、長い睫毛が僅かに震えた。
行灯に照らされ、妖艶な光を帯びて動く女の声に、朦朧とした意識がさらに飲み込まれていくのを感じながら、以蔵は香の放つ甘美な欲に身を埋めていく。
「・・・ぐ・・はっ・・」
腰を揺らすたびに、ぴちぴちと淫猥な水音が吐息に混ざり、やがてそれは零れて解けた。

「・・・う・・・ぁ・・・」
「ん・・・・」
ねとねとと吸い付いていく自身の腰間の先だけが、別の生き物のように動いて止まりそうもない。
同時に女の声が消え入るように、これもまた人間とは違う別の生き物のように絡みついては離れていきそうになかった。
「以蔵はん・・堪忍して・・・・ぁ・・・もうあかん・・壊れてまう・・」
と、喘ぎながら言われても、酔いが覚めるまで女の相手をしていたと聞かされた時には、何も言葉が出なかった日もあった。
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