無職無双 ~現実世界で無職になって絶望。異世界転生しても無職のままで絶望。だが、無職こそ最強の世界だった無職転生物語~

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第一章 ミズガルズの層

第十二話 ディシデリーズの塔を攻略しよう  ~イズン師匠の地下室の青いドアの件~

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 アイラが仲間になりバランスのいいメンバー構成となった。

 前衛の武道家、アイラ。
 後衛の回復役、神官のフレイヤ。
 後衛の攻撃役、魔道士のイズン師匠。
 後衛のサポート役、運び屋ノル。
 そして、前衛の無職の俺だ。

 うん、パーティーのバランスはいいが前衛の俺がパーティーの印象を著しく下げている気がする。

 前衛が無職。
 
 一応、RPだけなら最強だし、今の所ワンパンで敵無しで、自分で言うのも何だがけっこう強いんだけど……。

 そして俺の部屋での毎朝のドタバタ劇は無くなった。
 ノルが毎日、俺のベッドに潜り込むから仕方が無いと、イズン師匠が住む城の部屋がみんなにあてがわれた。
 まあ、俺だけ今までの部屋のままなのだが。
 ディシデリーズの塔の攻略準備は整った。

「さあ、いよいよだわさ。ディシデリーズの塔を攻略するわよ!」

 イズン師匠の号令に全員が発奮した。

「ワタシの名前は、アイラ・エリザベート。イギリス王家の正当な継承者よ。参る!」
「行くニャ! 行くニャ! 行くニャ!」
「私も頑張ります!」
「さあ、行こう!」


---


 ディシデリーズの塔は飛空艇で1時間ほどの場所にあった。
 入口は縦横数百メートルはあろうかという扉になっている。
 観音開きの扉は、まるで塔の中に冒険者を誘い込むかのように左右に開いていた。
 遠い昔、巨大な観音様が出入りしたのでは無いだろうかと疑うほどだ。

「でけええええええええ!」

 久しぶりに思わず叫んでしまった。

「デカイ、にゃあああああああ!」

 ノルも負けずと叫んだ。

「アンタ、子猫のノルと同じレベルだったのね……」

 イズン師匠の久しぶりのジト目が痛い。

「イズン様。お言葉ですが我々召喚者にとって、この光景はあまりに壮大で荘厳です」
「そうね。アイラさん。私も同感です。でも、アルスはこちらの世界の人間だったはず……」

 ま、まずい。俺が召喚者では無いか? と疑われてしまう。

「いやー。俺は外の世界が怖くて街からほとんど出て事無くて。
 驚いちゃいましたよ。
 行きましょう! ゴー! ゴー!」

 話をそらすために半ば強引にディシデリーズの塔の入口へと向かった。


---


「痛ッ!」

 走って入口へつっこむと辺りは真っ暗だった。
 岩か何かに頭を思いっきりぶつけてしまった。

「バカねぇ。何やってるのさ。アルス、自宅の訓練を思い出しなさい」
(自宅の訓練? そうか! ライトだ!)

 自宅での明かりを照らすイメージを思い浮かべた。
 途端、半径10メートルほどの周囲が明るくてらされた。

「よし。訓練の成果が出てるわさ。
 本来は後衛が担当する所だけど、アルスが担当ね。
 1人だけバカみたいにRP大きいわさ」

 バカみたいには余計だ……。
 現在のRPはイズン師匠の測定によると、

 アルス   600万以上
 イズン師匠 54万
 アイラ   13000
 フレイヤ  4800
 ネル    3200

「ちなみに半径1メートルの範囲を1分間照らすのに必要なRPが1。
 アルスの場合、半径10メートルほどあるから不眠不休でざっと70日ほどは照らせるわね」
「アルスすごいわ!」
 
 フレイヤが明らかに尊敬の眼差しで俺を見ている。
 やっと俺の偉大さをわかってくれたか。

「何デレデレしてるのさ。ちょっと褒められたぐらいで」

 ヤバい。師匠に見抜かれてしまった。
 師匠はこういうことにやたら勘が働く。

「さあ、モタモタせずにさっさと進みなさい」
「はいはい、わかりましたよ」

 俺が先頭、次にアイラ、後方にイズン師匠、フレイヤ、ノルの陣形で進んでいく。
 ディシデリーズの塔の中はレンガのようなモノで辺り一面敷き詰められている。
 まるでビルの中に居るような無機質な構造だ。
 一本道を進んでいくと螺旋階段が現れた。
 100メートルほど階段を上がっていくと塔の2層に到達したようだ。
 新たな無機質なフロアーが眼の前に現れた。

 これと言った魔物なども出ることも無く10層に到達した。
 たしか師匠は100層まで行ったらしい、この単調な移動がまだ90層も続くのか。
 魔物なんかが出ないだけマシか……

「疲れたニャー。お腹空いたニャー」

 ノルがダダをこね始めた。
 フレイヤやアイラにも疲労の色が見えていた。

「師匠。そろそろ休憩にしませんか?」
「そうさね。それじゃあ」

 イズン師匠が魔法を唱えると眼の前に青い扉が現れた。
 古道具屋の地下一階の謎の青い扉と全く同じように見える。

「さ、ついて来なさい」

 イズン師匠は青い扉の中へと入っていった。
 ノル、アイラ、フレイヤも続く。

 青い扉を抜けるとそこは……。

 古道具屋の地下室だった。

 正面に青い扉、右手に白い扉、左手には一階への階段がある。
 おお……。
 これは、なんというチートで便利な能力。

「さ、今日はみんな休むわよ。
 探索はまた明日ね。
 ちなみに10層ごとにフロアボスが居るから気をつけるだわさ。
 10層進んだら1日休んで次の日にフロアボスに挑戦。
 これも修行の一環。
 フロアボスに挑むメンバーは毎回アタシが指定するわさ」


---


 一晩ゆっくりと休み青い扉を抜けてディシデリーズの塔10層へ戻ってきた。
 青い扉は設置した特定の場所一箇所だけ行き来出来るらしい。
 イズン師匠、100層に行った時にそのままにしてくれてれば良かったのに、
 お気に入りのカフェの近くに青い扉を設置してしまったらしい……。

「今日はアルスとアイラでフロアボスを倒すのよ。
 アルスはサポート役。
 アイラを敵の攻撃から守るのよ。
 アイラは敵を攻撃。以上、行くわよ!」
「あの、師匠。一体どんな敵が出てくるんでしょうか?」
「ワタシも知りたいです。戦略も考えられますし」
「バカねぇ。それじゃ修行にならないじゃない。さっさと行く」

 なんという無茶ぶり。
 しかし、どんな敵が出てくるか? なんてわからなくて普通ではある。
 まあ、何とかなるだろう。

「アルス頑張ってね。もしケガをしたら私が回復するから安心して」
「ありがとう。フレイヤ。頑張るよ」

 フレイヤが回復してくれるならわざとケガしてしまおうか。

 10層のフロアは、だだっぴろい仕切の無い部屋のようだ。
 まっすぐと進むと突然フロア全体が明るくなった。
 塔の中とは思えないほど広い。
 一度行った事がある東京ドームの10倍はある広さだ。

 中心部に車ほどの大きさの魔物が居た。
 
「き、きもち悪いニャ!」

 後方からノルが叫んだ。
 うん、キモい。
 魔物はライオンの頭に前足まではいいが、
 下半身はアリだ。
 
「『ミルメコレオ』よ。
 ライオンの頭部にアリの体を持つ魔物。
 何も食べられなくて最後は餓死すると言われてるわ。
 RPは23000。
 アイラだけじゃあ勝てないからアルスのサポートにかかってるわよ」

 イズン師匠はそう言うとノルとフレイヤを青い光で包んだ。
 一度見たことがある防御魔法だ。
 
「アルス殿、いくわよ!」

 アイラはミルメコレオへと向かって突っ込んでいった。
 間髪入れずストレートパンチを叩き込む。
 爆発が起きる。
 インパクトの瞬間炎の魔法を叩き込むアイラの十八番だ。
 RPの差が大きい。
 ミルメコレオは、ほとんどダメージを受けていないようだ。

 ミルメコレオが右手のツメを振り上げるのがわかった。

(まずいアイラが攻撃される!)

 とっさに師匠の防御魔法と同じ様にアイラをRPで包むイメージをした。
 
「ウ、グワァ!」

 アイラはミルメコレオの右手のツメの攻撃を受けた。

「大丈夫! いける!」

 防具の力か、RPの力によるものか、わからないが鋭い爪の攻撃にもかかわらず切り裂かれてはいない。
 ま、まずい。
 イズン師匠と同じように防御魔法は使えない。

「アルス!
 何やってんのさ!
 アイラを光で包むイメージ!
 訓練の照明の光だけをイメージしなさい!」
「ありがとうございます!
 照明の光だけをアイラのまわりにイメージならわかる」

 今度は、ミルメコレオが左手のツメを振り上げるのがわかった。
 
「照明の光だけをアイラのまわりにイメージ!」

 アイラの周りを青い光が包み込んでいる。
 ミルメコレオの左手の爪は青い光に阻まれてアイラに届いていない。

「よし!」
「アルス殿。ありがとうございます!」

 アイラがラッシュを繰り返す。
 拳のインパクトと爆発が何十発と繰り返される。
 俺も青い光でのアイラのガードを繰り返す。
 かれこれ1時間は経っただろうか?
 ミルメコレオが突然動かなくなった。

(な、なんだ? 倒したのか?)

 アイラも同じ疑問を思ったのか攻撃を止めていた。

「アナタ達の勝ちよ。よくやったわさ」

 イズン師匠は何かを知っているようだ。

「この魔物は一定時間が経過すると自滅するの」
「え? それじゃあ逃げ回ってるだけでも良かったんですか?」
「そうね。
 でも、それじゃあ修行にならないじゃない。
 アルスはRPによる防御。
 アイラはRPアップ。
 二人とも良くやったわさ」
「さあ、次の層を目指すわよ!」

 ディシデリーズの塔。
 残る階層は90層。
 フロアボスは9体。
 現実へ帰るための戦いは、まだ始まったばかりだ。
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