無職無双 ~現実世界で無職になって絶望。異世界転生しても無職のままで絶望。だが、無職こそ最強の世界だった無職転生物語~

ユニ

文字の大きさ
14 / 46
第一章 ミズガルズの層

第十四話 ディシデリーズの塔30層を攻略しよう 前半 ~フレイヤとクロダの件~

しおりを挟む
 イズン師匠にフロアボスとの戦闘中、ノルの記憶を見ることが出来た件を相談した。
 通常、肉体を強化するためには、その肉体のイメージと一体化するイメージだけすれば良いらしい。
 俺の場合、コントロールが上手くいかず意識まで一体となるイメージをしてしまいノルと意識が一時的に同化したとのこと。
 RPは人間を構成する肉体と意識を構成するものであり、物や現象の根源でもあり、全てを生み出すモノらしい。


---


 30層へ着くと先客が居た。
 100人以上は居る。
 ヒムロ達だ。
 ゴウリキにホソカワも居る。
 200人は居るというヒムロの所属する中隊(カンパニー)だ。
 
「あ、貴方(アナタ)達も、まさか、ここまで攻略してきたのですか?」

 ヒムロが俺たちに気づいて驚いたように言った。

「ん? ヒムロ、知り合いか?」

 中隊(カンパニー)のリーダーらしき男が言った。
 あれは確か俺の派遣先の会社の取締役だ。
 ほとんど面識は無いし接点すら無かったが何度か見かけたことがある。
 やたらと笑い声がデカイ奴という印象が残っている。
 60歳ほどだったがゴウリキを越える体格と凶暴さの持ち主だ。
 何かと暴力的なニュースが出るたびにネットで叩かれる団塊の世代というやつだ。
 現実世界でも暴力的だったが異世界に来て一層凶暴性が増しているように見える。
 バカでかい斧を背負って、日本式の黒い甲冑をまとい、まるで魔物か魔王か。

「ええ……。古伊屋麗(フルイヤレイ)お嬢様も一緒に居るようです」

 ヒムロが答えると男は答えた。

「何? あの娘(ムスメ)がか?」
「お久しぶりです。クロダさん」

 フレイヤから先に声をかけた。
 社長令嬢であるフレイヤは当然、取締役は顔見知りだろう。
 フレイヤはヒムロの方も見て会釈をした。

「ガーッハッハッハ! 久しぶりだね。古伊屋麗(フルイヤレイ)お嬢さん。こちらではフレイヤだったかね?」

 空気を振動させるような大きな笑い声は相変わらずだ。

「はい、フレイヤです。」
「お嬢様が、こんな世界で生き抜くのは大変でしょう。
 いつも甘いことばかり言ってましたしね。
 ワシのような、あなたに言わせれば暴力的な人間にとってはやりやすいですがね。
 今や200名の中隊(カンパニー)のリーダーです」
「それは素晴らしいですね。私もパーティーに入って塔を攻略している所です」
「ガーッハッハッハ! パーティーとは、その子供と女だけのかね?」

 ホソカワがとっさにクロダへと説明した。

「クロダ様。あの小さな魔女のようなロリっ子は大魔道士イズンです。それに長身のデカイ女はイギリス王室のアイラ様です」

 ホソカワが前回痛い目にあったこともあってかフォローを入れたがフォローになっていない。

「誰がロリっ子ですって!」
「デカイ女だと!」
「ニャニャニャニャ!」

 イズン師匠とアイラが睨みつける。
 なぜかノルも一緒になって睨みつけている。

「き、聞こえてましたか! し、失礼しました」

 ホソカワはクロダの後ろに隠れてしまった。
 相当怖がっている。
 実際にぶっとばしたのは俺なのだがイズン師匠とアイラを恐れているようだ。

「ちょうど良かったわ。フロアボスについて説明するいい機会だわさ」

 イズン師匠がその場の全員に向けて話はじめた。

「大魔道士イズンは100層まで到達したと言われています。聞いて損は無いかと」

 ヒムロがクロダに助言した。

「ほう……」

 クロダもイズン師匠には一目置いているようだ。

「まず、クロダさんだっけ? アナタ達は、ここまでフロアボスを倒して来たのよね?」
「ガーッハッハッハ! もちろん。余裕だったがね」
「あたし達も同じよ。フロアボスを倒して来たわ」

 どういうことだ?
 フロアボスは何体も居るってことなのか?

「みんな不思議なようね。
 フロアボスはパーティー単位で出現するの。
 パーティー内のメンバーに攻略未経験者が居た場合、
 フロアに足を踏み入れると毎回出現するの」

 そういうことか。初めて知った。
 クロダ達も驚いている。

「そこで問題。
 今回ここにはあたし達のパーティーとクロダさんのカンパニーが居るわ。
 どうなると思う?」
「同時に出現するフロアボスは一体だけのはず。
 つまり、共闘で有利になるということですか?」

 ヒムロが答えた。

「御名答。
 しかし、残念ながらこのフロアボスは違うわさ。
 『ウィル・オ・ザ・ウィスプ』
 天国にも地獄にも行けない者の魂。
 ヒトの苦しみや恨みのRPの残像。
 戦闘参加メンバーが多ければ多いほど、その中の悪意が多いほど、
 ここのフロアボスは数を増やすわ」
「ガーッハッハッハ!
 ご説明ありがとう。
 心配には及ばんよ。
 君達は我々のおこぼれてこの層を突破させてあげよう。
 モタモタしていると日が暮れてしまう。
 さっそくフロアボスへ挑もうでは無いか」

 クロダは自信たっぷりにそう言うと中隊(カンパニー)メンバーを引き連れてフロア中央へと進みだした。
 中隊(カンパニー)メンバーも俺たちをバカにしているのか、俺たちの方を見て指を刺して笑う者や、何か悪口を言っている様子の者が居た。

「これからが重要な話だったんだけどねぇ」

 イズン師匠は、そう言うと説明を続けた。

「今回は、アルスはRPをフレイヤに供給し続ける役目。
 フレイヤは回復呪文で『ウィル・オ・ザ・ウィスプ』を攻撃する役目よ。
 『ウィル・オ・ザ・ウィスプ』のRPは1体1000。
 RP1000相当の回復呪文で倒せるわ」
「1体ということは複数出るってことでしょうか?」

 イズン師匠に尋ねた。

「そう。ヒトの悪意の数だけね。
 クロダの中隊(カンパニー)、あれは相当な悪意がありそうね」
「し、師匠、それ知ってるなら共闘しない方が良かったじゃないですか?」
「バカねぇ。数多い方が修行になるし、第一あいつら見捨てるわけにもいかないでしょ」

 フレイヤは話を聞くと何か決心したように言った。

「私、頑張ります」

 フレイヤもバカにされていたのに人が良すぎるよ。
 ヒムロとの間に何があったのか知らないがアイツを助けたいんだろうか?

「フレイヤ、回復呪文には2つあるのは知ってるわね?」

 イズン師匠の質問にフレイヤは即答した。

「はい。肉体的回復呪文(ヒール)と精神的回復呪文(キュア)ですね」
「よく勉強してるわさ。
 今回使用するのは当然、精神的回復呪文(キュア)。
 恨み、悲しみ、嫉妬、怒り、様々な負の感情を浄化するのよ」
「わかりました!」
「アルス。あんたはそのバカみたいな量のRPをフレイヤに供給し続けること。
 前回の戦いの延長だわさ。
 フレイヤ自身に自分を重ねるイメージ」
「わ、わかりました」

 わかりました。と言ったものの、ヒムロ達を救うことにイマイチ乗り気になれない。
 だいいち、フレイヤとヒムロの関係も気になるし。
 
「さぁ、行くわよ! クロダ達に置いてかれないように」

 イズン師匠は俺の気持ちも知らずどんどん進んでいった。

「アルス。どうしたの? 行きましょ」

 1人立ち止まっていた俺にフレイヤが話しかけてきた。

「あ、あ……。うん」 

 足は重いがフレイヤの後をついて歩いた。
 中身は四十過ぎのおっさんだと言うのに気になる女の子の過去が気になるなんて、
 俺はいつまでも子供のまま成長が無いのかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

処理中です...