無職無双 ~現実世界で無職になって絶望。異世界転生しても無職のままで絶望。だが、無職こそ最強の世界だった無職転生物語~

ユニ

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第一章 ミズガルズの層

第二十四話 フレイヤと出かけよう  ~改めて決意した件~

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「昨日はカールとお祭り行ったんだってね」

 朝起きて広間に行くとフレイヤが話しかけてきた。

「うん。あいつ子供みたいにハシャイでさ」
「うふふ。カールらしいね。」

 フレイヤは微笑んだ。

「ところでアルス。今、欲しい物ってある?」
「え? うーん。そうだな……」

 この世界に来て何か欲しいって感覚が無くなったな。
 武器や防具、食べ物。
 生きていくのに必要な物に限られる。
 武器は『レーヴァテイン』があるし食べ物に困ることも無い。

「思いつかないな」
「そうよねぇ。実は私も思いつかないのよ」
「なんだ。フレイヤもか。この世界は生きていくだけで精一杯だし毎日刺激的だしね」
「そうよね。ちょっとカールにも聞いてみようかしら」

 そう言うとフレイヤは広間から出ていった。


---


「アルス殿。ちょっと稽古に付き合ってくれないか?」

 フレイヤと別れて一人で屋敷内をウロウロしていたら
 アイラが話かけてきた。

「イズン師匠は休暇と言ってたから訓練はちょっと……」
「いや、稽古と言ってもスポーツで体を動かす程度のものですから問題ないはずです」

 ああ、スポーツか、アイラはイギリス出身だからサッカーとかクリケットとかテニスだろうか?

「それならオーケー。俺もちょうど体を動かしたいと思ってたところだ」
「アルス殿。では、さっそく初めましょう」
「え? 道具とかは?」


---


「ひぃ痛たたたたた! こうさん! こうさん!」

 アイラに柔道の寝技、袈裟固(けさがた)めをかけられた。
 固められた腕が痛いのだが、それ以上に苦しい。
 ちょうどアイラの巨乳が俺の顔面を覆い尽くし息が出来ない。
 痛い、苦しい、そして、気持ちいい。

「これはジュードーと言うのです。この技から抜けてみてください」
「いや、降参だって!」
「どうです? 効いてますか? 痛いですか? 気持ちいいですか?」

 おいおいアイラってSだったのかよ。
 予想はしてたが、ここまでハードなのは完全に想定外だ。

「ニャ? ニャ?」

 いいところにノルが現れた。

「ノ、ノル助けてくれ!」

 ノルが目を輝かせてこちらを見ている。
 なんだか嫌な予感がする。

「ノルも仲間に入るニャー!」

 ノルが俺の下半身に飛びついてきた。
 上半身はアイラのおっぱいに固められ。
 下半身はノルに……。

「ってノル! そこはダメだ!」

 ノルの尻尾がちょうど俺の股間のあたりをさわさわと……。

「うおおおおおおおおおおおおお!」

 その時、なんだかジトっとした視線を感じた。

「なーにやってるだわさ」

 イズン師匠だ。
 そして、隣にフレイヤまで。

「ア、アルス、何をやっているの?」

 フレイヤが顔を赤らめて恥ずかしそう言った。
 フレイヤの隣に居たカールが話かけてきた。

「お! アルス! 女の子二人を同時に押し倒すなんて元気だね」
「お、お前! 誤解されるようなことを! 早く助けてくれ」


---


 なんとか脱出して待ちまで逃げてきた。
 あのままじゃあアイラに一日中付き合わされそうだったし。
 酷い目にあった……。

 しかし、フレイヤはカールと仲良さそうだったな。
 さっきもイズン師匠の後から二人で現れたし。
 フレイヤは元々良い所のお嬢様だし、カールだってエリートだ。
 二人惹かれ合ってなんてな……。

 そうだ!
 久しぶりにギルドの屋上行ってみよう。
 ゆっくりと街の様子でも眺めよう。


---


 ギルドの屋上から見える景色は変わらず楽しげなものだった。
 やはり異世界は見ているだけでもワクワクする。
 
「おや?」

 あれはフレイヤとカールだ。
 楽しそうに二人で街なかを歩いている。
 あ! フレイヤがカールの手を引いてお店に入っていった。
 そう言えば今朝フレイヤが俺に欲しい物を聞いて来た時、カールに聞いてみると言っていた。
 もしかして買い物付き合ってくれる相手を探していて俺がつまらない返事をしたから……。

 カールなら無邪気に色々な欲しい物言いそうだ。
 それで一緒に買いに行こうとなっても不思議じゃない。

(あーあ、やっぱり俺はダメな奴だな。)

 異世界に来て誰もライバルが居ないからフレイヤと仲良くなれたが、ちょっと他の男が出てきたら俺なんて、まるで路傍の石ころレベルの存在感。

 フレイヤを現実世界に戻すためにディシデリーズの塔の攻略を決意した。
 しかし、フレイヤが現実に帰ってしまったら、どうなるだろう?
 俺も一緒に現実世界へ戻ったとしても現実世界にはフレイヤの周りに男なんて沢山いる。
 俺なんて相手にされなくなるだろう。
 もし、元の42歳の無職に戻ってしまったら相手にされないどころか拒否されるだろう。

(あーあ、やっぱりこのまま異世界に居た方がいいんじゃないだろうか……)


---


 ぼんやりとギルドの屋上から景色を眺めてホームに戻ってきたら
 すでにみんなで夕食をとっていた。

「アルス、何やってんのだわさ。早く座って食べなさい」
「食べるニャ!」

 イズン師匠に促されてテーブルについたが何となく食欲が出ない。
 フレイヤの方を見ると隣に座ったカールと楽しそうに話をしている。

「アルス殿。先程は申し訳なかった。
 ついつい力が入ってしまって」
「え? いいよ。別に」
「アルス殿が元気が無いので」
「アイラは関係無いから大丈夫。はぁ……」

 そうアイラは関係ない。
 そしてフレイヤやカールにも関係ない。
 卑屈な俺が久しぶりに目の前の現実を受け入れられなくて卑屈になってるだけだから。

 フレイヤの様子を盗みみると何かカールに話しかけていた。
 ああ、俺のことなんて眼中に無いのね……。
 俺の弱った様子を見て少しは気にかけてくれるかと思ったのに。
 それにカール、あいつは何なんだ。
 フレイヤと楽しそうに。
 
「アルス! ちょっと立ってもらえる?」

 突然フレイヤに話しかけられた。

「え? なんで?」
「いいから、いいから」

 のろりと俺が立ち上がるとフレイヤが近づいてきた。
 そして、目の前に突然何かを広げた。

「じゃーん! これアルスに!」
「え?」

 フレイヤが手に持っているのは洋服だった。
 ちょうど俺が着れるぐらいの大きさで白に水色のアクセントカラーの半袖のシャツだ。
 
「これ特殊な素材で作ってあってRP込めれば込めただけ防御力があがるの」
「あ、ありがとう」
「サイズもぴったりなはずよ。背丈が同じカールに合わせたから」

 それでフレイヤはカールと一緒に街に居たのか。

「へー。アルスにだけねぇ。これまた大胆ねぇ」

 イズン師匠が横から口を挟んできた。
 フレイヤを見てニヤニヤとした。

「アルスには助けられて来たので最後の戦いの前に何かお礼がしたくて。
 もちろんイズン師匠にもお世話になったのですが今日は……」
「いいわさ。いいわさ。若い者同士でやりなさい」

 得意そうにカールが近寄ってきた。

「アルス。大事に着ろよ。フレイヤがほぼ全財産はたいてオレがサイズ見たんだからな」
「おい! カール。お前はサイズ見ただけじゃないか!」
「まあ、まあ、そう興奮するなって」

 カールはそう言うと近寄って来て耳打ちしてきた。

「オレの見立てだとフレイヤはアルスに惚れてるね。
 アルスもまんざらじゃ無いんだろ?
 アルスの良い所、話してアシストしておいたからな。
 頑張れよ!」
「お、おい! なんだよ! 勝手に決めるなよ」

 いや俺がフレイヤのこと好きなのはいいとして、フレイヤは俺のことを……。

「あら、カール何話したの? 私にも教えてちょうだい」

 フレイヤも近寄ってきた。

「あー、アルスの奴がフレイヤのことを」
「わー! わー! 違うんだ!
 ありがとう! フレイヤ!
 おい! カール余計なこと言うな!」

 その夜はみんないつも異常ににぎやかだった。

(俺は、やはり、何があろうとフレイヤを現実世界へ帰してあげるんだ。)

 あとカール疑ってゴメン。
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