隣人、イケメン俳優につき

タタミ

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添い寝

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「添い寝、してくれないかな」

    そう言われた俺は驚いて「えっ?」と言ってしまったが、久遠さんの真剣な顔が少しシュンとなる様に胸が締まり「いいですよ」と反射的に答えて、気付けばベッドの上で久遠さんと横並びに寝ていた。
    なんだこの状況。さすがにベッドが狭いだろ。
    冷静な自分が問いかけてくるが、俺は冷静な判断を振り払って天井を見た。今冷静になってもどうしようもない。ただ、シングルベッドに成人男性がふたり並ぶのはかなり窮屈なのは本当だった。窮屈というか、肌の触れ合いを避けることがほぼ不可能だ。
    少し動けば肩、腕、脚のすべてが触れ合ってしまう。今も久遠さんと手が触れ合って、慌てて引っ込めた。

「すいません、ベッド狭くて。こんなんで寝れます?」
「うん。さっきよりいい」

    言葉通りどこかまどろんだ声を出す久遠さんは、俺の方に顔を向けた。こんな狭いベッドで俺まで顔を向けたら完全に至近距離だ。目だけで久遠さんを見ると微笑まれる。

「……なんか、一太くんがそばにいると安心する」
「そ、そうですか。よかったです」

    俺は全然眠れなそうだけどと胸の内で付け足す。
    付け足していると久遠さんが寝返りを俺側に打った。俺側に寝返ったので久遠さんの髪が俺の肩に触れる。同じシャンプーを使ったはずなのに圧倒的に良い香りがして、正直どぎまぎした。顔も体臭もいいなんてズルい。
    西野との関係を終わらせたいのは本心だし、久遠さんに協力したいのも本心だった。でも俺は久遠さんのキスで興奮した前科持ちだ。添い寝に簡単に同意してしまったはいいが、自身の下半身がどうなるのか不安でしょうがない。
    距離を取ろうと俺は久遠さんが向いた方向と逆に寝返りを打った。久遠さんの体温と香りが遠退いて一息ついたのもつかの間、久遠さんが俺の背中にくっついてきて流石に肩がびくついた。

「く、久遠さんあの……」
「ごめん、ちょっとだけ。ちょっとだけこうさせて……」

    眠気を含んだ吐息が耳にかかる。眠れそうなら抵抗できない。俺は背中に久遠さんの体温を感じながら硬直した。
    俺がそばにいれば寝られるってことなのか。脳と不眠の関係性は知らないが、俺といたら久遠さんの脳が安堵して眠れるということなんだろうか。
    久遠さんの呼吸が規則正しくなって、ほとんど寝息のようになった。息がうなじにかかる。
    西野に抱かれてる久遠さんってどんななんだろ。嫌いとはいえヤってる最中はキスとかしたり……。
    真面目なことを考えることで背中の久遠さんから気をそらそうと思ったのだが、久遠さんの寝息がうなじにかかると下世話な想像が膨らんでダメだった。
    悲しい映画のことでも思い出して気持ちを鎮めようと目を閉じていると背中の久遠さんが動いた。

「……一太くん、今エロいこと考えてたでしょ」
「っえ!?いやそんな!て、てか起きてたんですか」

    俺の問いかけに答えずに久遠さんは手を俺の腹に滑らせた。そして止める間もなく、ズボンに手を突っ込まれる。

「ちょっ、久遠さん……!」
「西野とヤるときどんなだか、教えてあげよっか」

    湿り気のある息が耳にかかりぞくぞくして、急速に欲が溜まるのを感じる。

「あの、ちょっと待って」
「待たない。期待してるのバレてるよ」

    久遠さんの手が下着の上から撫で上げただけで、俺のものは芯を持ち始める。抜いとくんだったと後悔しても遅い。

「ほら、もうこんなだ」
「あー、あのこれは……!」
「こっち向いて。俺のも触って……」

    手を取られ久遠さんに導かれるままに、俺は久遠さんのズボンに手を突っ込んだ。少し大きくなっているそこに、俺の手を擦り付けるように動かした久遠さんは「はぁっ」と声を漏らした。その扇情的な姿に思わず揉むように手で包むと久遠さんの脚がびくりと動く。

「あっ……ッいいよ……一太くんっ……」

    久遠さんの開いた口から舌が覗いて、衝動的に舐めたくなる。衝動に耐えて手に力を入れると、久遠さんの鼻にかかった声を上げた。

「ッ……もっと、もっと強くして……」

    切なげに眉を寄せた久遠さんがねだるように俺を見る。俺の理性はそこで切れて、俺は久遠さんの股に脚を差し込むようにして押し倒した。下着の中に手を入れて直接しごくと、久遠さんは首をそらして声を上げる。その間にも久遠さんの手は俺のものを触り続けていた。

「ぁ、あッ……ん、……!」

    久遠さんの喘ぎに俺は唾を飲んだ。なんでこんなに興奮するのかわからない。とにかくもっと声を聞きたくて、しごくスピードを上げた。びくびくと身体を痙攣させる久遠さんが俺の首に両腕を絡ませる。

「ね、キスしたい……」

    俺だってしたい。
    気持ちのままに唇を重ねて……。

    ──ジリリリリリッッ!!!

    やかましいアラーム。

「……は?」

    俺の目の前には久遠さんなんていなくて、いつもの白い天井が見えるだけだった。
    ベッドのスプリングが軋む勢いで起き上がる。うるさいスマホを取りアラームを止めると朝の7時5分だった。
    え、なに今の夢?
    固まったブリキのオモチャのようなぎこちなさでベッドを振り返れば、久遠さんが安らかな寝顔を見せていた。雑誌に載せた方がいいクオリティだ。そう思うと同時に己の汚らわしさを痛烈に感じる。
    なんて欲まみれな夢を見てんだ。最低だ。

「……死にたい」

    罪悪感で重い身体を立ち上がらせて、俺はベッドを降りた。
    言い訳をさせてもらえば、俺はここ数日なんなら久遠さんと出会ってから抜いていなかった。忙しいのと久遠さんが部屋にいるのとでタイミングを逃して、これを機にオナ禁でもしてみるかなんてお気楽な考えで怠っていた。誰に聞いてもらえるわけでもないが、普段ならこんな無節操な夢は見ない。

「うあー……」
「一太くん、どうかした……?」
「うわ!」

    俺がひとりでに小さく唸っていると、いつの間にか起きていた久遠さんが俺の横にいた。

「い、いや!おはようございます!」
「あ、うん。おはよう」

    俺の大声に怪訝な顔をした久遠さんだったが、視線が俺の腹、というか下腹部に向いた。そしてすぐに「あぁ」と合点の行った顔になる。

「朝だし仕方ないって。あるある」

    フォローするような口調と表情に嫌な予感がして目線を下げると、俺の下半身が……なんというか、要するに元気一杯になっていた。
    なに朝立ちしてんだよ、バカ!

「あー!あの!これはっですね……!すみません、こんなもん見せるつもりは……!」
「全然へーきだよ、気にしすぎだって。男なんてみんなそんなもんだよ」

    ものすごくあっさりと微笑まれても、恥ずかしさは全く消えない。

「ト、トイレ行ってきます……」

    消え入りそうな声で伝えて、俺は久遠さんに手を振られながらトイレに駆け込んだ。そして、一生分のため息を吐いてからズボンを下ろした。
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