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1人目:俺様跡取りの神崎①
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お見合いファイルNo.1
名前:神崎一世
年齢:25歳
身長:181cm
職業:GGカンパニー跡取り
家の広間で、姫子は昨日龍吾に渡されたファイルを開いていた。
そこにはお見合い相手の簡単な情報と顔写真が載っている。
「GGカンパニーはうちがケツ持ちしてから業績が圧倒的に伸びた商社です。現社長が『ぜひうちの愚息を』ということで、めでたく1人目に選ばれました」
「そうですか……」
姫子は気乗りしない返事をした。気乗りせずとも、大蛇家にいて龍吾に逆らうのは至難の業であるため、もう今日会うことは決まっているのだが。
神崎として写っているのは、整ってはいるが鋭い目つきに威圧感を感じる男性だ。最終学歴に載っている大学は、姫子も知っている有名なところである。
姫子は生まれてからずっとヤクザに囲まれており、基本的にガラの悪い男性にはかなりの免疫がある。しかし、インテリ層が出してくる特有の威圧感は苦手であった。
「神崎、結構イケメンじゃないですか? 頭もいいみたいですよ」
「いや……まぁ……こういう方が好きな人もいらっしゃるでしょうけど……」
落ち着きなく着物の袖──見合いのために上等な振り袖を龍吾が用意していた──を直していると、望月が前触れなく顔を覗き込んできて、姫子はせっかく直した袖を振り乱した。
(近……! でもありがとうございます!)
「お嬢、前に『年上で背が高くて黒髪が似合う塩顔が好き』って言ってましたよね。神崎は当てはまってますよ」
「神崎さんは目が鋭いだけで塩顔じゃないです。どちらかといえばソースです」
「ソース……。いろんな顔があるんですね」
首をひねる望月を見て、(というか私の好みは望月さんのことを言っているだけですし)という言葉を隠してお茶を飲む。
「まぁ、そんな緊張せずとも適当に1時間くらいおしゃべりしたら終わりますから。俺も一緒ですし、大丈夫ですよ」
「でも私、男の人と手すら繋いだことがないのにお見合いなんて……。何を話せばいいのか検討もつかなくて」
姫子が肩を落とすと、望月はしばし黙った。
そろそろ神崎が来てしまうか……と広間の時計を見た時、立っていた望月が隣に座った。
「なら、試してみましょうか。緊張もほぐれるかも」
沈黙の間にどんな結論に至ったのか、望月は言うが早いか姫子の手を握っていた。
その瞬間、姫子は気が遠くなり倒れるように椅子から転がり落ちる。いや正確には本当に落ちる前に望月が腕を掴んで支えてくれて、それもまた刺激になり気絶に拍車をかけた。
「お嬢! 大丈夫ですか?」
「す、すみません……少し眩暈が……」
好きな人の前で白目を剥くわけにはいかないとどうにか正気を保った姫子は、か細くそう言って椅子に座り直す。
望月はテーブルのピッチャーを取ると、迅速に水を用意してくれ、姫子はコップを受け取りながら右手を撫でた。
(ああ……もう一生右手は洗いません……)
不潔な決心をしていると、望月が眉を下げて目を合わせてくる。
「ほんとに免疫ないんですね……。こりゃ何人も男に会うだけでも大変でしょう。神崎と喋るのがきつくなったらいつでも俺に言ってください」
「はい……ありがとうございます……」
望月だから手を握られただけで過剰反応をしたのであり、その辺の男に手を握られても無反応でいる自信があったが、心配されるのが嬉しくて姫子はしおらしく頷いた。
「あ、もう神崎が来る頃ですね。応接間に移動しましょうか」
望月の言葉に従って、姫子はお嬢様らしい狭い歩幅で応接間へ入った。
ちなみに後日、右手を庇う不自然な動作で手を洗っていないのがバレた姫子は、望月に指導されながら手術前の外科医並みに手を洗わされたのだった。
名前:神崎一世
年齢:25歳
身長:181cm
職業:GGカンパニー跡取り
家の広間で、姫子は昨日龍吾に渡されたファイルを開いていた。
そこにはお見合い相手の簡単な情報と顔写真が載っている。
「GGカンパニーはうちがケツ持ちしてから業績が圧倒的に伸びた商社です。現社長が『ぜひうちの愚息を』ということで、めでたく1人目に選ばれました」
「そうですか……」
姫子は気乗りしない返事をした。気乗りせずとも、大蛇家にいて龍吾に逆らうのは至難の業であるため、もう今日会うことは決まっているのだが。
神崎として写っているのは、整ってはいるが鋭い目つきに威圧感を感じる男性だ。最終学歴に載っている大学は、姫子も知っている有名なところである。
姫子は生まれてからずっとヤクザに囲まれており、基本的にガラの悪い男性にはかなりの免疫がある。しかし、インテリ層が出してくる特有の威圧感は苦手であった。
「神崎、結構イケメンじゃないですか? 頭もいいみたいですよ」
「いや……まぁ……こういう方が好きな人もいらっしゃるでしょうけど……」
落ち着きなく着物の袖──見合いのために上等な振り袖を龍吾が用意していた──を直していると、望月が前触れなく顔を覗き込んできて、姫子はせっかく直した袖を振り乱した。
(近……! でもありがとうございます!)
「お嬢、前に『年上で背が高くて黒髪が似合う塩顔が好き』って言ってましたよね。神崎は当てはまってますよ」
「神崎さんは目が鋭いだけで塩顔じゃないです。どちらかといえばソースです」
「ソース……。いろんな顔があるんですね」
首をひねる望月を見て、(というか私の好みは望月さんのことを言っているだけですし)という言葉を隠してお茶を飲む。
「まぁ、そんな緊張せずとも適当に1時間くらいおしゃべりしたら終わりますから。俺も一緒ですし、大丈夫ですよ」
「でも私、男の人と手すら繋いだことがないのにお見合いなんて……。何を話せばいいのか検討もつかなくて」
姫子が肩を落とすと、望月はしばし黙った。
そろそろ神崎が来てしまうか……と広間の時計を見た時、立っていた望月が隣に座った。
「なら、試してみましょうか。緊張もほぐれるかも」
沈黙の間にどんな結論に至ったのか、望月は言うが早いか姫子の手を握っていた。
その瞬間、姫子は気が遠くなり倒れるように椅子から転がり落ちる。いや正確には本当に落ちる前に望月が腕を掴んで支えてくれて、それもまた刺激になり気絶に拍車をかけた。
「お嬢! 大丈夫ですか?」
「す、すみません……少し眩暈が……」
好きな人の前で白目を剥くわけにはいかないとどうにか正気を保った姫子は、か細くそう言って椅子に座り直す。
望月はテーブルのピッチャーを取ると、迅速に水を用意してくれ、姫子はコップを受け取りながら右手を撫でた。
(ああ……もう一生右手は洗いません……)
不潔な決心をしていると、望月が眉を下げて目を合わせてくる。
「ほんとに免疫ないんですね……。こりゃ何人も男に会うだけでも大変でしょう。神崎と喋るのがきつくなったらいつでも俺に言ってください」
「はい……ありがとうございます……」
望月だから手を握られただけで過剰反応をしたのであり、その辺の男に手を握られても無反応でいる自信があったが、心配されるのが嬉しくて姫子はしおらしく頷いた。
「あ、もう神崎が来る頃ですね。応接間に移動しましょうか」
望月の言葉に従って、姫子はお嬢様らしい狭い歩幅で応接間へ入った。
ちなみに後日、右手を庇う不自然な動作で手を洗っていないのがバレた姫子は、望月に指導されながら手術前の外科医並みに手を洗わされたのだった。
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◆出会い編あらすじ
毎日同じ、変わらない。都会の片隅にある植物園で働く美咲。
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◆登場人物
佐倉 美咲(25) 公園の管理運営企業に勤める。植物園のスタッフから本社の企画営業部へ異動
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