ヤクザのお嬢は25人の婚約者に迫られてるけど若頭が好き!

タタミ

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2人目:弁護士の広瀬②

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 お見合いファイルNo.2
 名前:広瀬道孝ひろせみちたか
 年齢:33歳
 身長:179cm
 職業:GGカンパニー顧問弁護士

 広瀬という弁護士は、いかにもインテリだが神崎とは違って常に微笑を称える男性だった。

「お初にお目にかかります。弁護士の広瀬道孝と申します。GGの顧問弁護士をしております。本日は短い時間ですが、どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。大蛇姫子です」

 弁護士という社会的地位の高い接客業に就いているだけあって丁寧で礼儀正しい挨拶をして、広瀬はおしぼりで手を拭いている。

「お忙しい中、都合をつけていただいたようでありがとうございます」
「いえいえ。私がスケジュールを見極めきれず、慌ただしくなってしまってすみません。今日は既に一世様とお会いしているんですよね。どうでした? 坊ちゃまは」
「あ、えっと……個性的な方だなと思いました。私、男性と会話したことがあまりないので、神崎さんのような方は初めてで」
「個性的、とは言葉を選びましたね。一世様は我が道を行く方ですよね。私も初対面の時は面食らいました。でも悪い人ではないんですよ」

 広瀬は神崎と仲が良いのか彼のことを皮肉る言い方をして、気さくに会話のキャッチボールをしてくれる。神崎よりよほど話しやすくてホッとしていると、広瀬が姫子に笑いかけた。

「大蛇様からお見合いのお話をいただいて正直驚いていたのですが、姫子さんのような可愛らしい女性と出会えるとは思わぬ収穫です」
「!」

(さらりとそんなことを……!)

 姫子は男慣れしていない。龍吾の目があるので組員の男たちはお世辞でも「可愛い」などと言ってこない。かといって褒めないのも失礼だという配慮なのか、何かと「完璧です!」という全肯定の言葉を贈られていた。
 弁護士というからもっと生真面目な感じだと思っていたのに、広瀬は硬派どころか女慣れしたオーラを感じる。

(ちょっと褒められたくらいで浮かれてはダメ……! さすが悪徳弁護士、おべんちゃらがうまいわ……!)

 姫子は嬉しくなってしまいそうになる己を叱咤して、決意を新たに広瀬を見つめた。
 お見合いなのだから広瀬が気に入ったのならそれはそれでいいはずだが、姫子にとってこの場はバトル会場に近かった。
 姫子の心は望月のものだ。少しでも靡いてしまうことは負けに等しく、ある意味で屈辱的だった。

「広瀬さんはお上手ですね。私お世辞にも慣れていないので、お手柔らかにお願いします」
「お世辞ではないですよ。本心です」

 ふふ、と微笑まれて姫子は下唇を噛んだ。負けない、負けない。照れたら負けよ、姫子。

「GGカンパニーの顧問弁護士ということですが、うちと関係があっても大丈夫なんですか? 私と結婚となれば大蛇組がついて回りますよ」

 広瀬はちらりと姫子の後ろに立つ望月に視線を投げた。
 望月はパッと見、入れ墨はないしスキンヘッドでもないが、堅気の会社員だと紹介するのは厳しい。

「問題ない、と言い切ることは正直出来ませんが、心配には及びません。私の父が元々大蛇組のご相談に乗る弁護士でしたので。その縁でGGカンパニーの顧問弁護士を任されて、今回のお見合いもお声がけいただいたんです」
「なるほど、お父様の代から大蛇組と関わりがあったんですね」
「ええ。広瀬家と大蛇家は意外と仲良しなんです」

(ということは完全にうちとズブズブだし、思ったよりグレーだな……)

 大蛇組がケツ持ちしている会社の跡取りよりも、弁護士の広瀬の方が黒い。
 ヤクザとか半グレとかの『お前が悪いだろ』という事件の弁護を請け負っている弁護士一家は、姫子にとってヤクザより怖い。インテリ職に就きながら悪事に手を染めるタイプは、頭が悪くて暴力的な人間よりずっと厄介だ。

「私は黒のヤクザを弁護して白にする仕事は請け負っていませんが、姫子さんがお困りの際は何でも相談してください」
「ふふ、相談することのない人生を歩みたいところです」

 上品に笑顔を返しながら、姫子は広瀬に心をブレさせないことを再度決意する。
 頭が良くて仕事がグレーで口車が上手くて女にも慣れている男なんて、姫子に扱えるタマではない。ちょっとでも気を許せばクルクルと手籠めにされてしまうだろう。

「仕事の話ばかりではつまらないですね。姫子さんのことも聞かせてください」
「私はお仕事の話、興味深くてもっと聞きたいです」
「そうですか? 姫子さんのお望みなら叶えたいですが……。では聞いた話、というテイで少し刺激的な弁護士の仕事について──」

 広瀬は終始話やすかったし、節々で姫子を褒めてくれたが、刺激的な仕事の話が驚くほど真っ黒で、姫子は「ふふ」と笑顔を浮かべたまま、こいつヤクザより悪いのでは?と気づいてしまっていた。
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