ヤクザのお嬢は25人の婚約者に迫られてるけど若頭が好き!

タタミ

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3人目∶ヤクザ息子の百足①

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 お見合いすら初めてなのに、連続でお見合うハメになった姫子は、半ば放心状態で着物を脱ぎ、夕飯を食べ、風呂に入り、寝た。
 そして朝を迎え、昨日の出来事は夢だったのかもしれないと思いながら部屋を出ると、望月が姫子を待ち構えていた。

「おはようございます、お嬢」
「望月さん、どうしたんですか? わざわざ私の部屋の前で」

 望月は若頭であり多忙だ。今でも姫子の送り迎えをしてくれているのは奇跡に近い。普段はギリギリまで仕事をしていて、学校へ出る時間になったら姫子の前に現れるのが通例になっていた。
 そんな望月と起き抜けに会えたのは嬉しいが、寝癖がついていないかと姫子は慌てて手櫛で整える。

「今日会う予定の男について、お話があって」

 望月はお見合いファイルを姫子に渡した。
 中の写真にはめちゃくちゃ不機嫌な顔をした、同い年くらいの青年が写っている。髪の毛はブリーチされた金髪で、染めたのが前なのか根元は黒い。

「まぁ……。今回は随分と親しみのある見た目の方ですね。いかにもヤンキーらしくて」
「見たまんまのチンピラなんですが、そいつの肩書見てください。百足組むかでぐみの跡取りです」
「百足組……」

 歩き出す望月に合わせて歩きながら、組の名を反芻する。龍吾からその名を聞いたことがある。確か、百足組は……。

「昔、うちと大抗争してませんでした?」
「してました。俺が大蛇に入る前の話ですが、犠牲者多数の血で血を洗う大抗争だったと聞いてます。そして大蛇は百足に勝ったので、今関東最大の組織になっている」
「なんでそんな因縁の地からご子息がエントリーしてくるんですか!?」

 思わず声を大きくすると、望月が「しーっ」と人差し指を口に当てた。その動作がセクシーで、姫子はにやけそうになってファイルで隠す。

「今は友好関係ってことになってるのと、まぁ単純にお互い勢力拡大になるから政略結婚枠ですかね。でも組のモンは百足をよく思ってないやつが多いです。無駄な火種を避けるために、百足のことは他言しないようにお願いします」
「わ、わかりました……。今日のお見合いは色んな意味でドキドキですね……」

 姫子も望月に合わせて声を抑える。一緒にナイショ話できるのいいなと思っていると、廊下に龍吾とその他組員の行列が現れた。
 龍吾はいつも朝が早い。もう朝食を終えて執務室に戻るのだろう。
 お互いに近づいていくと、望月は龍吾に頭を下げ、平組員は望月に頭を下げた。そして先陣を切る龍吾と姫子は見つめ合って立ち止まる。

「姫子。見合いはどう──」
「ふん!」

 姫子は思い切りそっぽを向いて、話しかけてきた龍吾を無視した。「あ、おい! 待て!」と龍吾は慌てていたが、顔を背けたまま平組員を退けて廊下を進み、広間に入る。
 お見合いはしているものの、姫子は理不尽な命令をしてきた龍吾を許したわけではなかった。従うしかないのならせめてもの抵抗をしてやろうと、反抗期を発動することにしたのだ。
 広間では龍吾の大きい声を聞いたお手伝いさんたちが何事だとオロオロしていて、姫子は「大丈夫です。ただの親子喧嘩ですよ」とフォローした。
 姫子が席について水を飲んでいると、幾分疲れた顔をした望月が広間に入ってくる。

「お嬢、挨拶くらいしてやってください。半泣きでしたよ、親父」
「嫌です。これで泣くくらいなら、娘にお見合いなんて強制しなきゃいいんです。私はお見合いの件が落ち着くまでお父様とは喋りません、と伝えておいてください」

 板挟みの中間管理職ポジションになっている望月は、「言うだけ言っておきます」とため息混じりに答えてからタブレットを開いた。

「親父のことは気が済むまで無視しててもいいんで、これは見てください。親父からです」
「なんですか? これ」
「ワクワク感を出すために見合い予定者のチラ見せ動画を作らせたらしいです。組員の高木ってやつが動画編集が趣味で」
「何に力を入れてるんですか、お父様は……」

 突っ込んでいるうちに動画が再生される。
 
 ──一世一代の大勝負……!
 ──集められたのは、我こそはと名乗りを上げた男たち!

 仰々しいデザインの文字が踊り、バン!と神崎と広瀬、そして今日会う予定の百足の写真が現れる。
 4人目以降は目から下だけの写真が連続で出て、『医者!?』とか『アイドル!?』とか真実なのかわからないざっくりとした肩書も載っていた。

 ──戦いは拳ではなく、魂で!
 ──姫のハートを掴むのは、いったい誰だ!?

 最後に『乞うご期待』と文字が出て、動画は終わった。全体的にバトル漫画のPVのようだった。

「いや~ワクワク感、ありましたね。素性の知れない敵キャラが一気に登場したみたいで、テンション上がります」

 お見合い相手の例えが敵キャラでいいのかはわからなかったが、確かに凝っていて見応えはあった。

「それはそうとして……。神崎さんと広瀬さんに百足さんも入れて15人しかいませんでしたけど、お見合い相手は総勢25人なんじゃありませんでした?」
「ああ。親父、相手が25人もいたら面白いだろってことで数を先に設定しちゃったみたいで。いきなりそんなに見合い相手が見つからなかったんで、残りの10人は随時更新するらしいです」
「じゃあ、もう今見つかってる15人でいいのでは……?」
「親父は1度言ったことを曲げない人ですからね」
「手段と目的がごちゃごちゃになっている人、の間違いでは……?」
「お嬢はすぐ正論言ってきますね。18年も娘やってたら、あの人が感情100%で生きてるっていい加減わかるでしょう」

 望月の言い分は確かにそうなのだが、私が悪いのか?と首を傾げ続けるうちに、お手伝いさんが朝食を配膳し始めた。
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