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リウ:姫子ちゃん、見て?今日の撮影でタキシードを着たんだ🤵早く式でも着たいな♫
ナルミ:強引な人来たなと思ったらモデルのリウ・スイで草。この写真店の子に見せてもいいやつ?
大地主の玉城:このグループ、とんでもない面子やん。誰か土地余っとる人おらん?
Kanzaki:なんで『大地主』とわざわざつけてるんだ。自己顕示欲の塊か?
大地主の玉城:その方が印象つくやないですか、大企業の跡取り息子はん💓
臓器の富久田:いいですねそれ!俺も真似させてもらいました😊
弁護士の広瀬:『臓器の』というのは、いったいどんなお仕事なんでしょうか…
ナルミ:とかいいながらマネしてるじゃん、弁護士の広瀬さん。俺も変えようかな~『スーパーホスト★ナルミ』とかに😘
姫子は一連のやり取りを読み、『いいね!』というスタンプを押してアプリを閉じた。
先日集団見合いという非常に疲れるイベントを終えたことで、グループLINEも盛況していた。
15人の男性に会って、いまだピンと来た人はいない。残りは10人だ。
「そろそろ、また始まるかしら……」
集団見合いから既に10日ほど経っている。次のお見合い企画が動き出しているのは、望月の多忙な姿から察していた。
姫子にとって結婚したいと思える男性が現れないことよりも、あと10人に会ったら望月との決別が確定する事の方が恐ろしく、着実に精神を削られている。
それに、この見合いが大きな抗争の予兆であるという噂。
「だとしたら、素直に従うしかない……のかな……」
大蛇組組長の娘であり、それ以外には何もない姫子は、抗争が起きるかもしれないと知ってもできることなどないに等しい。龍吾の命令に従うことが最大限のできることである。
「あ~あ。もうお夕飯にしてもらおうっと……」
テーブルに出しただけになっていたゲーム機を棚にしまい、姫子は自室を出た。色々な理由で気持ちは暗くなるばかりで、せっかく買った新作の恋愛シミュレーションゲームもすっかりやる気が起きない。
階段を降りて長い廊下を歩き、お手伝いさんのいるキッチンへ向かう道中、玄関で靴を履く男性が目に入った。
「あら、黒須さん?」
その男性は、一度見合いで顔を合わせた無免許医の黒須であった。
「……こんばんは」
黒須は姫子の声掛けに勢いよく振り向いたが、長い沈黙を経て挨拶をした。
「お久しぶりです。来てらしたんですね。ご挨拶もしないままですみません」
「いえ、仕事で来ただけですから」
「もしかして組の誰かが怪我でもしましたか」
黒須の仕事といえばメインは外科だ。つい抗争のことが頭を過り、姫子は黒須に近づいて声を潜めた。
黒須は脚をもつれさせながら姫子から離れ、「いえ、そういうことでもありません」と早口に答えた。
「そうですか……。ならよかったです。もしかして喧嘩でもあったんじゃないかと思って」
ホッとした表情を見せると、黒須は踵を踏んでしまっていた靴を直して顔を上げる。
「……龍吾さん──お父上とはお見合いの件、和解されましたか」
つい先程まであった赤面を消した黒須に聞かれ、姫子は途端に居心地が悪くなる。
見合いの裏に隠された理由が抗争なのではと思い始めてから、余計に父の顔を見られなくなっていた。
もしそうなのかと聞いて、「そうだ」と言われてしまったら、姫子は全く異なる苦悩にまで突き落とされてしまう。
「恥ずかしながら……和解も何も、ほとんど会話してません。淡々とお見合いに応じているだけです。もう15人とお会いして、残りは10人になりました。改めて多すぎますよね」
明るく言ってみたが、黒須は愛想笑いを浮かべることもなく少し目を伏せた。
そして一瞬腕時計を確認してから手にしたバッグを持ち直す。何が入っているのか、随分と幅があり重そうだ。
「姫子さん。この後ご予定は」
「特になにも……。あ、今から私だけお夕飯にしようかと思っていましたけれど」
「そうですか。もしまだ時間があるなら、少しだけ話を──」
黒須が姫子に向けて声を潜めると、ぎしりと床板の軋む音がした。
「黒須さん。抜け駆けはダメですよ」
「! も、望月さん?」
いつからいたのか、廊下の暗闇から望月が現れ近づいてくる。
今頃はシマの挨拶回りだろうと思っていた姫子は突然の登場に色んな意味で動揺したが、黒須は浅く息を吐いて姫子から離れるだけだった。
「……抜け駆けなどではありません。しかし、わかりました。判断には従います」
「どうも」
望月の短い返答には有無を言わせぬ雰囲気があった。
何か話したいことがあるなら「黒須さんも一緒にお夕飯食べませんか」などと言おうと思った姫子も、何も言い出せず2人の様子を窺うのみだ。
「姫子さん、すみません。今のは忘れてください。では、俺はこれで」
「あ、はい。またいらしてください」
「お父上と和解されることを願っております」
黒須はそれだけ言って玄関を出て行った。
ナルミ:強引な人来たなと思ったらモデルのリウ・スイで草。この写真店の子に見せてもいいやつ?
大地主の玉城:このグループ、とんでもない面子やん。誰か土地余っとる人おらん?
Kanzaki:なんで『大地主』とわざわざつけてるんだ。自己顕示欲の塊か?
大地主の玉城:その方が印象つくやないですか、大企業の跡取り息子はん💓
臓器の富久田:いいですねそれ!俺も真似させてもらいました😊
弁護士の広瀬:『臓器の』というのは、いったいどんなお仕事なんでしょうか…
ナルミ:とかいいながらマネしてるじゃん、弁護士の広瀬さん。俺も変えようかな~『スーパーホスト★ナルミ』とかに😘
姫子は一連のやり取りを読み、『いいね!』というスタンプを押してアプリを閉じた。
先日集団見合いという非常に疲れるイベントを終えたことで、グループLINEも盛況していた。
15人の男性に会って、いまだピンと来た人はいない。残りは10人だ。
「そろそろ、また始まるかしら……」
集団見合いから既に10日ほど経っている。次のお見合い企画が動き出しているのは、望月の多忙な姿から察していた。
姫子にとって結婚したいと思える男性が現れないことよりも、あと10人に会ったら望月との決別が確定する事の方が恐ろしく、着実に精神を削られている。
それに、この見合いが大きな抗争の予兆であるという噂。
「だとしたら、素直に従うしかない……のかな……」
大蛇組組長の娘であり、それ以外には何もない姫子は、抗争が起きるかもしれないと知ってもできることなどないに等しい。龍吾の命令に従うことが最大限のできることである。
「あ~あ。もうお夕飯にしてもらおうっと……」
テーブルに出しただけになっていたゲーム機を棚にしまい、姫子は自室を出た。色々な理由で気持ちは暗くなるばかりで、せっかく買った新作の恋愛シミュレーションゲームもすっかりやる気が起きない。
階段を降りて長い廊下を歩き、お手伝いさんのいるキッチンへ向かう道中、玄関で靴を履く男性が目に入った。
「あら、黒須さん?」
その男性は、一度見合いで顔を合わせた無免許医の黒須であった。
「……こんばんは」
黒須は姫子の声掛けに勢いよく振り向いたが、長い沈黙を経て挨拶をした。
「お久しぶりです。来てらしたんですね。ご挨拶もしないままですみません」
「いえ、仕事で来ただけですから」
「もしかして組の誰かが怪我でもしましたか」
黒須の仕事といえばメインは外科だ。つい抗争のことが頭を過り、姫子は黒須に近づいて声を潜めた。
黒須は脚をもつれさせながら姫子から離れ、「いえ、そういうことでもありません」と早口に答えた。
「そうですか……。ならよかったです。もしかして喧嘩でもあったんじゃないかと思って」
ホッとした表情を見せると、黒須は踵を踏んでしまっていた靴を直して顔を上げる。
「……龍吾さん──お父上とはお見合いの件、和解されましたか」
つい先程まであった赤面を消した黒須に聞かれ、姫子は途端に居心地が悪くなる。
見合いの裏に隠された理由が抗争なのではと思い始めてから、余計に父の顔を見られなくなっていた。
もしそうなのかと聞いて、「そうだ」と言われてしまったら、姫子は全く異なる苦悩にまで突き落とされてしまう。
「恥ずかしながら……和解も何も、ほとんど会話してません。淡々とお見合いに応じているだけです。もう15人とお会いして、残りは10人になりました。改めて多すぎますよね」
明るく言ってみたが、黒須は愛想笑いを浮かべることもなく少し目を伏せた。
そして一瞬腕時計を確認してから手にしたバッグを持ち直す。何が入っているのか、随分と幅があり重そうだ。
「姫子さん。この後ご予定は」
「特になにも……。あ、今から私だけお夕飯にしようかと思っていましたけれど」
「そうですか。もしまだ時間があるなら、少しだけ話を──」
黒須が姫子に向けて声を潜めると、ぎしりと床板の軋む音がした。
「黒須さん。抜け駆けはダメですよ」
「! も、望月さん?」
いつからいたのか、廊下の暗闇から望月が現れ近づいてくる。
今頃はシマの挨拶回りだろうと思っていた姫子は突然の登場に色んな意味で動揺したが、黒須は浅く息を吐いて姫子から離れるだけだった。
「……抜け駆けなどではありません。しかし、わかりました。判断には従います」
「どうも」
望月の短い返答には有無を言わせぬ雰囲気があった。
何か話したいことがあるなら「黒須さんも一緒にお夕飯食べませんか」などと言おうと思った姫子も、何も言い出せず2人の様子を窺うのみだ。
「姫子さん、すみません。今のは忘れてください。では、俺はこれで」
「あ、はい。またいらしてください」
「お父上と和解されることを願っております」
黒須はそれだけ言って玄関を出て行った。
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