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淫魔編:モニカの画家生活
【234話】ご褒美毒タイム
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「モニカ、本当にいいんだね?」
「はぁ…。どうぞ」
ルアンの宿の一室。アーサーとモニカは向かい合って正座していた。二人の間に置かれているのは、アーサーがダンジョンで抽出してきた魔物の毒。
モニカがためいきをつきながら借り物の杖を握った。そんな妹にアーサーは念を押す。
「僕がいいって言うまで治さないでね。ね」
「意識を失うまでは待ってあげるわ」
「ありがとうモニカぁ!だいすきだよぉぉ!!」
「こんなことでだいすきって言われても全然うれしくないよぉ…」
アーサーはうやうやしく毒瓶を持ち上げ蓋を開けた。どきどきした顔で匂いを嗅ぎ、「いただきます」と丁寧に手を合わせてから一気に飲み干した。それを見てもモニカは騒がない。ただものすごく顔をしわくちゃにして兄の奇行を眺めていた。
「なんで初めて飲む毒を一気に摂取するのよ…。致死毒だったらどうするの…」
「うーん…」
瓶を空にしたアーサーは、物足りない表情で自分の体の様子を伺っている。10分経っても特段苦しむことはなく、はぁぁ…と残念そうにため気をついた。
「なぁんだ…。がっかりだなあ」
「あら、そんな弱い毒だったの?」
「うん。別になんてことなかったや。あーあ、せっかく楽しみにしてたのになー」
「ちょっとアーサー。念のためエリクサーと解毒薬は飲んでね?」
「あ、そうだね。念のため飲んどこっかあ。はあ…」
期待外れの毒にアーサーの気分ががくんと下がってしまった。好みの毒だったら愛用しようと考えていたのか、彼はそれを20本も持ち帰っていた。その毒に興味を失ったアーサーは、アイテムボックスから毒瓶を20本取り出しテーブルに並べた。
「はーあ。この毒どうしようかなあ。薬にも使えやしないし。モニカ飲む?」
「飲むわけないでしょ?いらないなら捨てたら?」
「そうだねえ…。捨てよっかあ…」
アーサーが毒を捨てようとするなんて、よっぽど弱い毒だったんだなとモニカは思った。こんなに落ち込んでいるアーサーを見ていると、なんだかかわいそうになってくる。きっとすごく楽しみにしていたんだろうに…と考えると、モニカまで悲しくなってきた。
「アーサー。今回は残念だったわね。でも、またこれからもダンジョンに潜ったり、魔物と戦う機会はたくさんあるよ。きっとまた知らない毒に出会えるわ。だからそんな落ち込まないで?」
「うん…。…ねえモニカ」
「なあに?」
「モニカの毒、飲みたいなあ…」
「ぐっ…」
「ねえ、お願い…。ひと瓶だけ…」
アーサーが目を潤ませながら両手を組んだ。モニカの毒はカミーユでさえ死にかけるほどの猛毒だ。アーサーのことを大好きなモニカが、そんなものを自ら手渡すはずがない。
…こともなかった。しばらくアーサーのおねだりに耐えていたモニカだったが、最終的には根負けをして毒魔法液が入った瓶を兄に手渡した。
「今回だけだからね…」
「わぁぁっ!モニカありがとう!!モニカ最高!モニカだいすき!!」
「あああ…こうやってアーサーを甘やかしちゃうからベニートたちに怒られちゃうんだぁ…」
「いっただっきまーーーす!!…グボァッ!う"わ"ぁ"っ…やっぱりモニガの毒ば最高だよぉ"…っ!ウエッ…!ゲボッ…!」
口と鼻から大量の血を噴き出しながら、アーサーはこれ以上ないほど幸せそうな顔をしていた。床に倒れピクピク痙攣しながら「あー…これこれぇ…」とボソボソ言っている。
意識が朦朧とし始めたのでモニカは兄に回復魔法をかけた。満足いくまで毒を堪能できたのか、さきほどと打って変わり上機嫌になったアーサーは、鼻歌を歌いながら部屋の掃除をし始める。モニカはそんな兄をぼーっと眺めて「はぁ…」とため息をついた。
そのとき、部屋に突然イェルドが飛び込んできた。ゼェゼェと息を荒げて慌ててドアに鍵をかけている。
「イェルド、どうしたの?」
「シッ!静かに!」
「?」
イェルドはビクビクしながらクローゼットの中へ隠れた。小さな声で「いいか!誰が来ても俺はいないって言ってくれよ?!」と双子に言っている。アーサーとモニカは訳も分からず頷いた。するとすぐにコンコンとドアをノックする音が聞こえてきた。モニカがドアを開けると、そこにはニコニコ笑ったアデーレが立っていた。笑っているのに、すごく怖い。
「こんにちはモニカ、アーサー。ねえ。イェルド知らない?」
「…シラナイ」
「そう。じゃあイェルドを見つけたらインコ飛ばしてくれる?」
「ハイ」
「ありがと」
アデーレはニコニコ笑ったまま去っていった。よく見ると彼女はずっと剣に手をかけている。双子は顔を真っ青にしてクローゼットに隠れているイェルドに詰め寄った。
「イェルド、あなたなにしたの?!あんな怖いアデーレ見たことないよ?!」
「あ、いや…。言えないデス」
「ええ?!僕たちに言えないようなことをしたの?!」
「ハイ」
「一体何したのイェルドぉ…」
「あは…あはは。わ、悪気はなかったんだけど…」
「一番タチが悪いやつだよぉ…」
「お、お前らまでそんなこと言うなよぉ…。で、アデーレ行ったか?」
「うん。もう近くにはいないと思うよ」
「そうか。だったらここから出て良いな。…はぁー、逃げ回って喉カラカラ!何か飲むもん…。あ、あるじゃんグレープジュース!」
「あっ!」
イェルドはそう言って、先ほどアーサーがテーブルに並べた毒瓶を一本飲み干した。双子は目を見合わせたが、それほど強い毒ではないため毒耐性があるイェルドだったら大丈夫だろうとあまり心配はしていなかった。だが…
「ゴボッ…!ガハっ…オエェェェッ…!」
「?!」
「な、なんだごれっ…!ど、毒じゃないかっ…!グァッ…オェェッ!!!」
「イ、イェルドぉ?!」
吐瀉物をぶちまけながら床に倒れこむイェルドに、モニカは慌てて回復魔法をかけた。アーサーは「えっ?!えぇっ…?!」とイェルドと毒瓶を交互に見ている。
「ど、どうしてそんな症状が…?!だってこれは…」
「ごれっ…きっつ…!俺毒耐性あんのに…っ、ぎづいっ…!」
「えぇー?!」
混乱しているアーサーを、モニカはじとっとした目で見た。
「アーサー…。あなたまた毒耐性強くなったわね?イェルドの症状を見ているかぎりかなりの猛毒よ、これ」
「う、うそぉ…」
「私の毒を受けすぎたせいかな…」
「そんなあ…。もしかして僕…モニカの毒でしか満足できない体になっちゃったのぉ…?」
「かもね。私の毒レベル以上の毒じゃないと…もうダメかもしれない」
「そんな…」
半時間後、モニカの回復魔法とエリクサーによって完治したイェルドは、毒耐性が強くなり打ちひしがれているアーサーと、アーサーでも負けちゃう猛毒とまたきっといつか出会えるよと慰めているモニカを真顔で眺めていた。
「え?何この子たちこわい」
「はぁ…。どうぞ」
ルアンの宿の一室。アーサーとモニカは向かい合って正座していた。二人の間に置かれているのは、アーサーがダンジョンで抽出してきた魔物の毒。
モニカがためいきをつきながら借り物の杖を握った。そんな妹にアーサーは念を押す。
「僕がいいって言うまで治さないでね。ね」
「意識を失うまでは待ってあげるわ」
「ありがとうモニカぁ!だいすきだよぉぉ!!」
「こんなことでだいすきって言われても全然うれしくないよぉ…」
アーサーはうやうやしく毒瓶を持ち上げ蓋を開けた。どきどきした顔で匂いを嗅ぎ、「いただきます」と丁寧に手を合わせてから一気に飲み干した。それを見てもモニカは騒がない。ただものすごく顔をしわくちゃにして兄の奇行を眺めていた。
「なんで初めて飲む毒を一気に摂取するのよ…。致死毒だったらどうするの…」
「うーん…」
瓶を空にしたアーサーは、物足りない表情で自分の体の様子を伺っている。10分経っても特段苦しむことはなく、はぁぁ…と残念そうにため気をついた。
「なぁんだ…。がっかりだなあ」
「あら、そんな弱い毒だったの?」
「うん。別になんてことなかったや。あーあ、せっかく楽しみにしてたのになー」
「ちょっとアーサー。念のためエリクサーと解毒薬は飲んでね?」
「あ、そうだね。念のため飲んどこっかあ。はあ…」
期待外れの毒にアーサーの気分ががくんと下がってしまった。好みの毒だったら愛用しようと考えていたのか、彼はそれを20本も持ち帰っていた。その毒に興味を失ったアーサーは、アイテムボックスから毒瓶を20本取り出しテーブルに並べた。
「はーあ。この毒どうしようかなあ。薬にも使えやしないし。モニカ飲む?」
「飲むわけないでしょ?いらないなら捨てたら?」
「そうだねえ…。捨てよっかあ…」
アーサーが毒を捨てようとするなんて、よっぽど弱い毒だったんだなとモニカは思った。こんなに落ち込んでいるアーサーを見ていると、なんだかかわいそうになってくる。きっとすごく楽しみにしていたんだろうに…と考えると、モニカまで悲しくなってきた。
「アーサー。今回は残念だったわね。でも、またこれからもダンジョンに潜ったり、魔物と戦う機会はたくさんあるよ。きっとまた知らない毒に出会えるわ。だからそんな落ち込まないで?」
「うん…。…ねえモニカ」
「なあに?」
「モニカの毒、飲みたいなあ…」
「ぐっ…」
「ねえ、お願い…。ひと瓶だけ…」
アーサーが目を潤ませながら両手を組んだ。モニカの毒はカミーユでさえ死にかけるほどの猛毒だ。アーサーのことを大好きなモニカが、そんなものを自ら手渡すはずがない。
…こともなかった。しばらくアーサーのおねだりに耐えていたモニカだったが、最終的には根負けをして毒魔法液が入った瓶を兄に手渡した。
「今回だけだからね…」
「わぁぁっ!モニカありがとう!!モニカ最高!モニカだいすき!!」
「あああ…こうやってアーサーを甘やかしちゃうからベニートたちに怒られちゃうんだぁ…」
「いっただっきまーーーす!!…グボァッ!う"わ"ぁ"っ…やっぱりモニガの毒ば最高だよぉ"…っ!ウエッ…!ゲボッ…!」
口と鼻から大量の血を噴き出しながら、アーサーはこれ以上ないほど幸せそうな顔をしていた。床に倒れピクピク痙攣しながら「あー…これこれぇ…」とボソボソ言っている。
意識が朦朧とし始めたのでモニカは兄に回復魔法をかけた。満足いくまで毒を堪能できたのか、さきほどと打って変わり上機嫌になったアーサーは、鼻歌を歌いながら部屋の掃除をし始める。モニカはそんな兄をぼーっと眺めて「はぁ…」とため息をついた。
そのとき、部屋に突然イェルドが飛び込んできた。ゼェゼェと息を荒げて慌ててドアに鍵をかけている。
「イェルド、どうしたの?」
「シッ!静かに!」
「?」
イェルドはビクビクしながらクローゼットの中へ隠れた。小さな声で「いいか!誰が来ても俺はいないって言ってくれよ?!」と双子に言っている。アーサーとモニカは訳も分からず頷いた。するとすぐにコンコンとドアをノックする音が聞こえてきた。モニカがドアを開けると、そこにはニコニコ笑ったアデーレが立っていた。笑っているのに、すごく怖い。
「こんにちはモニカ、アーサー。ねえ。イェルド知らない?」
「…シラナイ」
「そう。じゃあイェルドを見つけたらインコ飛ばしてくれる?」
「ハイ」
「ありがと」
アデーレはニコニコ笑ったまま去っていった。よく見ると彼女はずっと剣に手をかけている。双子は顔を真っ青にしてクローゼットに隠れているイェルドに詰め寄った。
「イェルド、あなたなにしたの?!あんな怖いアデーレ見たことないよ?!」
「あ、いや…。言えないデス」
「ええ?!僕たちに言えないようなことをしたの?!」
「ハイ」
「一体何したのイェルドぉ…」
「あは…あはは。わ、悪気はなかったんだけど…」
「一番タチが悪いやつだよぉ…」
「お、お前らまでそんなこと言うなよぉ…。で、アデーレ行ったか?」
「うん。もう近くにはいないと思うよ」
「そうか。だったらここから出て良いな。…はぁー、逃げ回って喉カラカラ!何か飲むもん…。あ、あるじゃんグレープジュース!」
「あっ!」
イェルドはそう言って、先ほどアーサーがテーブルに並べた毒瓶を一本飲み干した。双子は目を見合わせたが、それほど強い毒ではないため毒耐性があるイェルドだったら大丈夫だろうとあまり心配はしていなかった。だが…
「ゴボッ…!ガハっ…オエェェェッ…!」
「?!」
「な、なんだごれっ…!ど、毒じゃないかっ…!グァッ…オェェッ!!!」
「イ、イェルドぉ?!」
吐瀉物をぶちまけながら床に倒れこむイェルドに、モニカは慌てて回復魔法をかけた。アーサーは「えっ?!えぇっ…?!」とイェルドと毒瓶を交互に見ている。
「ど、どうしてそんな症状が…?!だってこれは…」
「ごれっ…きっつ…!俺毒耐性あんのに…っ、ぎづいっ…!」
「えぇー?!」
混乱しているアーサーを、モニカはじとっとした目で見た。
「アーサー…。あなたまた毒耐性強くなったわね?イェルドの症状を見ているかぎりかなりの猛毒よ、これ」
「う、うそぉ…」
「私の毒を受けすぎたせいかな…」
「そんなあ…。もしかして僕…モニカの毒でしか満足できない体になっちゃったのぉ…?」
「かもね。私の毒レベル以上の毒じゃないと…もうダメかもしれない」
「そんな…」
半時間後、モニカの回復魔法とエリクサーによって完治したイェルドは、毒耐性が強くなり打ちひしがれているアーサーと、アーサーでも負けちゃう猛毒とまたきっといつか出会えるよと慰めているモニカを真顔で眺めていた。
「え?何この子たちこわい」
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