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異国編:ジッピン前編:出会い
【271話】贈り物
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浄化されたアサギリを腰にさしたモニカに、ムクゲはアイテムボックスを手渡した。
「モニカ。アレ、ヌシサマに」
「あっ!そうだった。ウスユキあのね。渡したいものがあるの!」
「私に?」
「うん!」
モニカは受け取ったアイテムボックスをまさぐり、1枚のウキヨエを取り出した。差し出されたそれを受け取ったウスユキが「これは…」と目を見開いている。
「えっと、クズモチハクサイって人が描いたウキヨエよ」
「この花は桜かな?」
「うん!シダレザクラって言うらしい!」
「ああ…。やはりヒトが描く桜は美しいですね。ヒトの目にはこう映っているのかな」
「気に入った?」
「とても。ありがとうモニカ」
「お礼はレンゲとムクゲに言ってあげて。二人に頼まれたの。ウスユキにサクラのウキヨエを買ってきてって」
「蓮華と蕣が…?」
主の視線を感じ、レンゲとムクゲは照れくさそうにもじもじした。小さな声で、言い訳のようにことばを並べる。
「ヌシサマにあげたかった」
「見せたかった」
「ヒトの描く桜を見せたかった」
「喜ぶと思って」
「ヌシサマ、ヒトが好きだから」
「ヒトのモノあげたかった」
「ヒトも桜を好きだってこと」
「見せたかった」
「モニカに頼んだ」
「そしたらモニカ買ってきてくれた」
「蓮華、蕣」
普段無口の二人があわあわしながら弁解していると、ウスユキが静かに名前を呼んだ。そのとたんレンゲとムクゲは口を閉じすぐさま黙る。怒られると思っているのか、おそるおそるウスユキを見上げて小さく震えた。そんな少女たちにウスユキは柔らかい笑みを浮かべ、二人の頭の上に手を置いた。
「ありがとう。うれしい」
「ヌシサマ…」
「これはモニカと、蓮華と蕣からの贈り物だね。後生大切にする」
「怒ってない?」
「なぜ怒ることがある?」
「ヌシサマ…うれしい?」
「ああ。とてもうれしいよ」
「ヌシサマぁ…!」
贈り物を気に入ってもらえてよっぽど嬉しかったのか、レンゲとムクゲがウスユキの足元にしがみついた。二人の頭を撫でながら、ウスユキはモニカに目を移す。
「モニカ。蓮華と蕣の願いを聞いてくれてありがとうございます」
「ううん!えへへ。3人が喜んでくれてうれしい!」
そのあと、モニカはレンゲとムクゲにも浮世絵を渡した。二人はそれを食い入るように見つめている。相変わらず感情に乏しい表情をしているが、きらきら目を輝かせていることから気に入ってもらえたことが分かった。ウスユキは二人の手に持っているウキヨエを覗き込み目じりを下げた。
「いい絵だ」
「大人の女の人の絵」
「大人の男の人の絵」
「そう。憧れているモノの絵だね」
「うん」
「うん」
「憧れてるもの?」
「はい。この子たちは大人にはなれないですから」
「そうなんだあ。レンゲとムクゲはずっと子どものままなんだね」
「大人の姿にしてあげてもいいけれど、子どもの姿の方がかわいらしいからそのままにしているんです」
「今のままでいい」
「ヌシサマの好きな姿でいる」
「ありがとう」
夢中になってウキヨエを見ているあやかしたちを、モニカはニコニコしながら眺めていた。だが、ふとあることに気付きぷるぷる震えた指でムクゲを指した。
「…ちょっと待って。憧れの姿が大人の姿…。リクエストされたウキヨエは、レンゲが大人の女の人の絵で、ムクゲが大人の男の人の絵だったわよね…?ってことは…」
「?」
「も、もしかしてムクゲって…お、お、男の子…?」
「うん」
「いまさら?」
「ええーーーーー?!」
「おや、モニカは気付いていなかったのですか?」
「だ、だって!!レンゲと同じ髪型してるし!!キモノだってレンゲと同じ女の子のものを着てるじゃない!!」
「ヌシサマの趣味」
「こら蕣。妙なことを言うんじゃないよ」
「モニカ。アレ、ヌシサマに」
「あっ!そうだった。ウスユキあのね。渡したいものがあるの!」
「私に?」
「うん!」
モニカは受け取ったアイテムボックスをまさぐり、1枚のウキヨエを取り出した。差し出されたそれを受け取ったウスユキが「これは…」と目を見開いている。
「えっと、クズモチハクサイって人が描いたウキヨエよ」
「この花は桜かな?」
「うん!シダレザクラって言うらしい!」
「ああ…。やはりヒトが描く桜は美しいですね。ヒトの目にはこう映っているのかな」
「気に入った?」
「とても。ありがとうモニカ」
「お礼はレンゲとムクゲに言ってあげて。二人に頼まれたの。ウスユキにサクラのウキヨエを買ってきてって」
「蓮華と蕣が…?」
主の視線を感じ、レンゲとムクゲは照れくさそうにもじもじした。小さな声で、言い訳のようにことばを並べる。
「ヌシサマにあげたかった」
「見せたかった」
「ヒトの描く桜を見せたかった」
「喜ぶと思って」
「ヌシサマ、ヒトが好きだから」
「ヒトのモノあげたかった」
「ヒトも桜を好きだってこと」
「見せたかった」
「モニカに頼んだ」
「そしたらモニカ買ってきてくれた」
「蓮華、蕣」
普段無口の二人があわあわしながら弁解していると、ウスユキが静かに名前を呼んだ。そのとたんレンゲとムクゲは口を閉じすぐさま黙る。怒られると思っているのか、おそるおそるウスユキを見上げて小さく震えた。そんな少女たちにウスユキは柔らかい笑みを浮かべ、二人の頭の上に手を置いた。
「ありがとう。うれしい」
「ヌシサマ…」
「これはモニカと、蓮華と蕣からの贈り物だね。後生大切にする」
「怒ってない?」
「なぜ怒ることがある?」
「ヌシサマ…うれしい?」
「ああ。とてもうれしいよ」
「ヌシサマぁ…!」
贈り物を気に入ってもらえてよっぽど嬉しかったのか、レンゲとムクゲがウスユキの足元にしがみついた。二人の頭を撫でながら、ウスユキはモニカに目を移す。
「モニカ。蓮華と蕣の願いを聞いてくれてありがとうございます」
「ううん!えへへ。3人が喜んでくれてうれしい!」
そのあと、モニカはレンゲとムクゲにも浮世絵を渡した。二人はそれを食い入るように見つめている。相変わらず感情に乏しい表情をしているが、きらきら目を輝かせていることから気に入ってもらえたことが分かった。ウスユキは二人の手に持っているウキヨエを覗き込み目じりを下げた。
「いい絵だ」
「大人の女の人の絵」
「大人の男の人の絵」
「そう。憧れているモノの絵だね」
「うん」
「うん」
「憧れてるもの?」
「はい。この子たちは大人にはなれないですから」
「そうなんだあ。レンゲとムクゲはずっと子どものままなんだね」
「大人の姿にしてあげてもいいけれど、子どもの姿の方がかわいらしいからそのままにしているんです」
「今のままでいい」
「ヌシサマの好きな姿でいる」
「ありがとう」
夢中になってウキヨエを見ているあやかしたちを、モニカはニコニコしながら眺めていた。だが、ふとあることに気付きぷるぷる震えた指でムクゲを指した。
「…ちょっと待って。憧れの姿が大人の姿…。リクエストされたウキヨエは、レンゲが大人の女の人の絵で、ムクゲが大人の男の人の絵だったわよね…?ってことは…」
「?」
「も、もしかしてムクゲって…お、お、男の子…?」
「うん」
「いまさら?」
「ええーーーーー?!」
「おや、モニカは気付いていなかったのですか?」
「だ、だって!!レンゲと同じ髪型してるし!!キモノだってレンゲと同じ女の子のものを着てるじゃない!!」
「ヌシサマの趣味」
「こら蕣。妙なことを言うんじゃないよ」
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