【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco

文字の大きさ
345 / 718
初夏編:田舎のポントワーブ

【364話】ブグルとの再会

しおりを挟む
ブグルの家へ向かっているとき、牧場で牛の世話をしているブグルの母親を見つけた。お母さんは双子に会えて大喜びし、急いで仕事をすませておいしいごはんを作ってくれると言って手を振った。以前会ったときと変わらず明るく元気で、少し話をしただけなのに双子もつられて元気いっぱいになった。

元気いっぱいになった子どものすることはひとつ。そこからブグルの家までキャハキャハ笑いながら走って行った。もし保護者がカミーユたちでなければ追いつけなかっただろうが、彼らは息もきらさず楽々ついてきた。

「ブグルー!!」

家に到着し、チーズ倉庫のドアをモニカがノックした。ドアの奥から「はーい!」と返事が返ってきて、すぐにブグルが顔を出す。双子の顔を見てしばらくかたまっていたが、ハッと我に返りはちきれそうな笑顔になった。

「モニカ?!モニカか!?」

「うん!!!」

「アビーは?!」

「こっち!」

「おいぃぃっ!!なんで女の子の姿じゃないんだ!!女の子のアビーに会いたい!!アビー!!母さんの服を貸すから女の子になってくれ!!」

「ぎゃぁぁぁっ!!」

ブグルはアーサーのシャツを掴んで乱暴にボタンを引きちぎった。ついでにアーサーの股間を掴み、「ここは成長していないな!よかった!!」とニッコリ笑う。外なのにアーサーの服をひん剥こうとするブルグの腕を、ジルが無表情のまま掴んだ。今にも人を殺してしまいそうな彼の目に、アーサーとモニカは真っ青になった。

「……」

「むっ!誰だお前は!」

《おいジルやめろっ!》

《落ち着きなさいジル》

《ぶっ…ぶふふっ…男に襲われてんぞアーサー…っ、ぶふっ》

カミーユたちの声に我に返ったジルは、慌てて掴んでいる手の力を緩めてブグルに向けて小さな笑顔を向けた。だが、目は変わらず笑っていない。

「失礼いたしました。私はアビー坊ちゃまとモニカお嬢様のボディーガードです」

《おい変な設定を付け加えるなっ!》

「ボディーガード?!すごいな!!ヒョロヒョロなのに強いのかおまえ!」

「そうですね。この腕を握りつぶすことは容易でございます」

《ジルゥゥゥッ…!何言ってんだおまえ一般町民にぃっ!!》

《ダメだわァ。アーサーとモニカのことになるとほんとポンコツになっちゃうんだから…》

カミーユとカトリナが額に手を当てながらため息をついた。普通そんなことを言われたら怖がるものだが、ブグルは目をぱちくりさせたあと大声で笑った。

「あははは!!そうかそうか!!悪かったな!!にしてもモニカとアビーはやっぱりいいところのお嬢ちゃんだったのかー!ボディーガードがいるなんてな!!」

「あ、あははは…」

「だ、黙っててごめんね…?」

「で?うしろの大人たち全員ボディーガードか?その人たちも階級が上そうだけど…」

「え、えーっと…」

双子が返答に困っていると、すかさずカミーユが前に出てブグルに挨拶をした。さりげなくジルの肩を掴みグイグイと後ろへ引っ張っている。

「申し遅れました。わたくしはカルロス・カールソン。モニカ嬢とアビー坊のご両親と懇意にさせていただいておりまして、この度はこの子たちと一緒にポントワーブ南部へ避暑に参りました。こちらは妻のキャシーです」

「お、おぉ…」

やっとの思いでジルをブグルから引きはがしたあと、カミーユはカトリナの肩を抱いてブグルの前に立たせた。カトリナは貴族風の挨拶をして、男性をメロメロにさせてしまう笑顔を彼に向けた。

「はじめまして。わたくし、キャシー・カールソンと申しますわ。あなたのことはモニカとアビーからよく伺っておりますのよ。なんでもあなたの作るチーズは最高だとか」

「……」

ブグルは返事をできなかった。カトリナの美しすぎる容姿と豊満な胸に釘付けになっており、顔を真っ赤にして口が半開きになっている。意識せずとも目が谷間に釘付けになってしまい、ブグルは両手でさっと股間を隠した。

こういった反応に慣れているのか、カトリナはクスクス笑いながら会釈をして双子のうしろに移動した。カミーユはブグルに背を向けて歩いているとき、頭を掻いてこっそりため息をついた。

(さて、残りのリアーナ…どうすんだよジルのせいで設定がぐちゃぐちゃになっちまっただろうがぁ…)

心配そうにリアーナに目をやると、リアーナはニヤァっと気味の悪い笑みを浮かべてからパッとかわいらしい笑顔を作った。パタパタをブグルの元へ駆け寄り、彼女も雑な貴族風の挨拶をした。

「はじめましてブグルさん!わたくし、モニカ様とアビー様のメイドでございます!」

《メッ…》

《メイド…?!》

「メイドぉ?!」

驚いたアーサーとモニカまで大声をあげてしまった。リアーナはこっそりアーサーの背中をつねりながら、ブグルににっこり笑いかける。

「お会いできるのを楽しみにしておりましたわブグルさん!」

「っ…!」

リアーナの笑顔に、ブグルはまたもや固まってしまった。そして目線はやはり胸元にいってしまう。突然現れた美人二人にブグルの頭の中はぐちゃぐちゃだ。彼は挨拶を返す余裕もなく、グルグルと目をまわしながらリアーナに背を向けて叫んだ。

「ぐあぁぁっ!すみません俺にはアビーがいるんで!!すみませえん!!」

「えっ?」

「ちょ、ブグル何を言って…?」

「まだ手を繋いだことしかないけど!!いま文通で愛を育んでてゆくゆくは結婚するんで!!おっぱい大きいお姉さん二人には申し訳ないけどすんませえん!!!」

「え…アーサー…え?」

「ちがうよ?!」

ブグルの発言にカミーユたちはポカンとしてアーサーを見た。モニカでさえ「え、そうだったの?」という顔で兄を見ている。

「あ、だからブグルに会いに行きたいって言ってたのか…?」

「あら…。そうだったの…」

「でもモニカがオッケーするわけなくない…?」

「アーサー…ブグルとそういう関係だったのぉぉ…?」

「モニカも知らなかったのか…」

「許可しない。僕の大事なアーサーに手を出すなんていい度胸だね」

「ちがうって言ってるでしょぉ?!?!」

勝手に話を進められてアーサーは大声をあげた。鬼のような形相をしているモニカの手を握り、ブグルを指さしてカミーユたちに訴える。

「ブグルは思い込みが激しいだけだから!!僕たちは友だちなだけだから!!」

「そうだったのかアビー?!じゃああの伝書インコで囁いていた愛の言葉は何だったんだー!!!」

「うわぁ…アーサー…」

「ちがうぅぅ!!ただ早く会いたいねって言っただけでしょ?!え、それも愛の言葉になっちゃうの?!言葉ってむずかしい!!」

「アーサー…ほんとにブグルと付き合ってない?ほんと?」

まだ疑っているのかモニカはジトっと兄を睨んだ。アーサーは必死に首を横に振る。

「ほんと!!モニカも知ってるでしょ?!ブグルが思い込み激しいの!!」

「うん…」

「ブグル!!僕と君は結婚しないからね!!友だちだからね!!」

「うぅぅアビィー…」

「わんこみたいな顔しないで!!これが現実なの!!受け止めてよね!!」

「受け止めるから…女の子の恰好してくれるか…?」

「いいよ!!……え?」

「ほんとか…。やったぁ…。また女の子のアビーに会えるぞぉっ。嬉しいなあ!やったーーー!!!」

「……」

一瞬でテンションが戻ったブグルは、小屋から母親の服を引っ張り出してきてアーサーに着せた。サイズが大きすぎて歩くとストーンと脱げてしまうので、カトリナとモニカがニコニコしながらアイテムボックスからアビーセットを取り出した。どうして常備しているのか尋ねても、二人は答えずにアーサーにカツラをかぶせ、化粧を施し、コットとスカートを着せるだけだった。その間もモニカはずっと「ほんとにブグルと付き合ってないよね?ね?」と呪詛のように囁いており、アーサーは何度でも「付き合ってないよ!信じて!」と答えていた。

女の子の姿になったアビーを見てブグルは感激していた。力いっぱい抱きしめてぐるぐる回転したりベタベタ触ったりするものだから、またジルが無言でブグルに圧をかけていた。

ブグルの変人っぷりに少し引いていたカミーユたちも、ブグルチーズを一口食べたらすっかり彼のことを気に入ってしまった。家に持って帰る用にとチーズをごっそり購入し、ブグルの母親が出してくれたビールとチーズ、干し肉を食べながら「最高の人に出会えた」とブグルと母親にハグしていた。

すっかりブグルに甘くなってしまったカミーユ、カトリナ、リアーナは、ブグルのアビーと一緒にお風呂に入りたいというワガママを受け入れてしまった。絶対反対派のジルとモニカがお風呂についていこうとしたので、カミーユはあわててモニカを連れ戻した。ジルは何を言っても無駄だったので、その日はブグル、アーサー、ジルという謎の組み合わせて浴槽に浸かった。

ブグルに振り回されたアーサーは疲れ切ってしまい、帰る頃にはぐっすり眠ってしまっていた。カミーユがアーサーをおんぶして、モニカは寝ているアーサーの手を繋ぎながらカールソン家へ帰った。

「モニカ、今日は楽しかったか?」

「うん!!ブグルはちょっと変だけど、楽しかったよ!」

「よかった」

「カミーユ、また一緒にブグルの家に遊びに行ってくれる?」

「もちろんだ」

「僕は絶対についていくよ」

「私も行きたいわァ。チーズが美味しいんだもの」

「あたしもいくぞー!!肉がうまい!!」

「やったー!じゃあまた一緒にいこーね!!」

「おう。楽しみにしてるぜ」
しおりを挟む
感想 494

あなたにおすすめの小説

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。