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初夏編:まったりポントワーブ
【372話】羨望
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カミーユたちと晩御飯を食べたあと、アーサーとモニカは自分たちの家へ帰りベッドへ潜り込んだ。二人ともおなかいっぱいで、仲の良い家族の光景を見てしあわせな気持ちになっていた。モニカはニコニコしながら兄にぎゅぅっと抱きついた。
「わたし、カミーユの家族だいすき」
「僕もだいすき」
「カミーユもシャナも、ユーリのことがだいすきなんだねっ」
「うん。それにユーリも、カミーユとシャナのことがだいすきだよ」
「いいなあ」
モニカがなにげなく呟いた"いいなあ"という言葉に、アーサーの胸がチクっと痛んだ。その言葉をきっかけに湧きだしそうになる感情をぐっとこらえ、無理矢理明るい声を出した。
「でもね、僕、ユーリが持ってないもの持ってるんだあ」
「え?なになにー?」
「僕のことがだいすきな妹!」
それを聞いたモニカはニパっと笑い、兄の胸に頭をぐりぐり押し付けた。
「わたしもね!ユーリが持ってないもの持ってるよ!」
「なあにー?」
「わたしのことがだいすきなお兄ちゃん!」
「えへへー」
「強くてかっこよくて優しくて、ときどきお姉ちゃんにもなってくれる自慢のお兄ちゃん!」
「女装するお兄ちゃんって自慢できるのかなあ…」
「できるよぉ!だってアビーもアンジェラもかわいいんだもん!」
「まあ、モニカがいいならいいんだけどさ…」
アーサーは、はぁとため息をつきながら妹の頭を撫で、まあいいかと小さく笑った。モニカはしばらくぼぉっとしていたが、目を瞑り寝心地のいい場所を探しながら小さな声で呟いた。
「ときどき想像するの。カミーユがわたしたちのおとうさんで、シャナがわたしたちのおかあさんだったらって。お寝坊したらシャナに起こされて、ぐずってたらカミーユがおんぶしてキッチンまで連れて行ってくれるの。おいしい朝ご飯を食べたあとにね、依頼に行こうとするカミーユに行かないで~って駄々をこねたら、カミーユがじゃあ今日は家族で過ごすかって言ってくれて、一緒にショッピングしてくれるの。アーサーはそういう想像したことない?」
「…ある」
「どんなどんなー?」
「僕は、セルジュ先生がおとうさんで、ミモレスがおかあさんだったらって想像しちゃう。セルジュ先生が子煩悩すぎてミモレスにヤキモチやかれるんだ。先生とミモレスのかわいい夫婦喧嘩を眺めながら、僕とモニカが笑ってるっていう想像とか…しちゃう」
「あはは!想像できちゃうー!でもわたしはたぶん、先生とアーサーが仲良すぎてヤキモチ妬いちゃうわ…」
「それも想像できるなあ」
「…わたしはね、血のつながった両親のことはもうどうだっていいの。愛してほしいなんて思わないし、仲直りしたいとも思わない。わたしはアーサーがいてくれたらそれだけでいいんだけど…。でもやっぱりときどき…ほんのちょっと、わたしのことを大好きでいてくれてる人たちと、本当の家族だったらなあって思っちゃう」
「うん」
「わたしとアーサーのことを、一番だいすきでいてくれるおかあさんとおとうさんが欲しいなあって、思っちゃったりするの」
「だったら…ジルが適任かなあ?」
アーサーがニヤニヤしながらそう言うと、モニカは「あはは…」と困ったように苦笑いをした。
「ジルがおとうさんだったら友だちできなさそう…」
「モニカが彼氏なんて作った日には大暴れしそうだね!」
「アーサーに彼女ができてもね!…私も大暴れしちゃうわそんなの」
想像してしまったのか、モニカの体からかすかに冷気が漂った。アーサーはゾッとして、気を逸らせるためにモニカの頬をムニムニと揉んだ。
「僕はねモニカ!最近はこう考えるようにしてるんだ!僕たちは血のつながったお父上とお母上に愛されなかったけど」
「愛されるどころか憎まれてたわ。もうどうだっていいけど」
「そうだけど、今はね、僕たちを守るために命をくれたミアーナに、ピンチになったときにいつも助けてくれるカミーユたち、大怪我を負ってでも力を貸してくれたベニートたち、僕たちのいいところをたくさん見つけて褒めてくれるクロネたち、僕たちを家族のように慕ってくれるトロワの人たちがいるよ。それって、たった二人の大人に愛されるよりもすごいことだと思わない?」
それを聞いたモニカはハッとしてから目をキラキラさせた。
「たしかに!」
「しかも血の繋がった弟たちは僕たちのこと大好きでいてくれてるし、ジュリアだって兄弟だって知らないのにとっても好いてくれてるよ!」
「たしかにぃ!!」
「なにより、僕には僕のことをだいだいだーいすきでいてくれてるモニカがいるし、モニカにはモニカのことをだいだいだいだいだーいすきな僕がいるよ!」
「きゃー!!」
「僕もね、やっぱりおとうさんとおかあさんが欲しくなっちゃうときがあるよ。でもそう考えると、今のままで充分しあわせだなって思えるからオススメ!」
「アーサーはやっぱり天才ね!わたしもこれからそう考えるようにしよーっと!」
「うんうん!はい、じゃあそろそろ寝ようねモニカ。明日からエリクサー作り再開するから早起きしなきゃ」
「はぁーい、おやすみアーサー」
「おやすみ、モニカ」
モニカはニコニコ笑いながら再び目を瞑った。しばらくして胸元で妹の寝息が聞こえてきたが、アーサーはなかなか寝付けなかった。
「わたし、カミーユの家族だいすき」
「僕もだいすき」
「カミーユもシャナも、ユーリのことがだいすきなんだねっ」
「うん。それにユーリも、カミーユとシャナのことがだいすきだよ」
「いいなあ」
モニカがなにげなく呟いた"いいなあ"という言葉に、アーサーの胸がチクっと痛んだ。その言葉をきっかけに湧きだしそうになる感情をぐっとこらえ、無理矢理明るい声を出した。
「でもね、僕、ユーリが持ってないもの持ってるんだあ」
「え?なになにー?」
「僕のことがだいすきな妹!」
それを聞いたモニカはニパっと笑い、兄の胸に頭をぐりぐり押し付けた。
「わたしもね!ユーリが持ってないもの持ってるよ!」
「なあにー?」
「わたしのことがだいすきなお兄ちゃん!」
「えへへー」
「強くてかっこよくて優しくて、ときどきお姉ちゃんにもなってくれる自慢のお兄ちゃん!」
「女装するお兄ちゃんって自慢できるのかなあ…」
「できるよぉ!だってアビーもアンジェラもかわいいんだもん!」
「まあ、モニカがいいならいいんだけどさ…」
アーサーは、はぁとため息をつきながら妹の頭を撫で、まあいいかと小さく笑った。モニカはしばらくぼぉっとしていたが、目を瞑り寝心地のいい場所を探しながら小さな声で呟いた。
「ときどき想像するの。カミーユがわたしたちのおとうさんで、シャナがわたしたちのおかあさんだったらって。お寝坊したらシャナに起こされて、ぐずってたらカミーユがおんぶしてキッチンまで連れて行ってくれるの。おいしい朝ご飯を食べたあとにね、依頼に行こうとするカミーユに行かないで~って駄々をこねたら、カミーユがじゃあ今日は家族で過ごすかって言ってくれて、一緒にショッピングしてくれるの。アーサーはそういう想像したことない?」
「…ある」
「どんなどんなー?」
「僕は、セルジュ先生がおとうさんで、ミモレスがおかあさんだったらって想像しちゃう。セルジュ先生が子煩悩すぎてミモレスにヤキモチやかれるんだ。先生とミモレスのかわいい夫婦喧嘩を眺めながら、僕とモニカが笑ってるっていう想像とか…しちゃう」
「あはは!想像できちゃうー!でもわたしはたぶん、先生とアーサーが仲良すぎてヤキモチ妬いちゃうわ…」
「それも想像できるなあ」
「…わたしはね、血のつながった両親のことはもうどうだっていいの。愛してほしいなんて思わないし、仲直りしたいとも思わない。わたしはアーサーがいてくれたらそれだけでいいんだけど…。でもやっぱりときどき…ほんのちょっと、わたしのことを大好きでいてくれてる人たちと、本当の家族だったらなあって思っちゃう」
「うん」
「わたしとアーサーのことを、一番だいすきでいてくれるおかあさんとおとうさんが欲しいなあって、思っちゃったりするの」
「だったら…ジルが適任かなあ?」
アーサーがニヤニヤしながらそう言うと、モニカは「あはは…」と困ったように苦笑いをした。
「ジルがおとうさんだったら友だちできなさそう…」
「モニカが彼氏なんて作った日には大暴れしそうだね!」
「アーサーに彼女ができてもね!…私も大暴れしちゃうわそんなの」
想像してしまったのか、モニカの体からかすかに冷気が漂った。アーサーはゾッとして、気を逸らせるためにモニカの頬をムニムニと揉んだ。
「僕はねモニカ!最近はこう考えるようにしてるんだ!僕たちは血のつながったお父上とお母上に愛されなかったけど」
「愛されるどころか憎まれてたわ。もうどうだっていいけど」
「そうだけど、今はね、僕たちを守るために命をくれたミアーナに、ピンチになったときにいつも助けてくれるカミーユたち、大怪我を負ってでも力を貸してくれたベニートたち、僕たちのいいところをたくさん見つけて褒めてくれるクロネたち、僕たちを家族のように慕ってくれるトロワの人たちがいるよ。それって、たった二人の大人に愛されるよりもすごいことだと思わない?」
それを聞いたモニカはハッとしてから目をキラキラさせた。
「たしかに!」
「しかも血の繋がった弟たちは僕たちのこと大好きでいてくれてるし、ジュリアだって兄弟だって知らないのにとっても好いてくれてるよ!」
「たしかにぃ!!」
「なにより、僕には僕のことをだいだいだーいすきでいてくれてるモニカがいるし、モニカにはモニカのことをだいだいだいだいだーいすきな僕がいるよ!」
「きゃー!!」
「僕もね、やっぱりおとうさんとおかあさんが欲しくなっちゃうときがあるよ。でもそう考えると、今のままで充分しあわせだなって思えるからオススメ!」
「アーサーはやっぱり天才ね!わたしもこれからそう考えるようにしよーっと!」
「うんうん!はい、じゃあそろそろ寝ようねモニカ。明日からエリクサー作り再開するから早起きしなきゃ」
「はぁーい、おやすみアーサー」
「おやすみ、モニカ」
モニカはニコニコ笑いながら再び目を瞑った。しばらくして胸元で妹の寝息が聞こえてきたが、アーサーはなかなか寝付けなかった。
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