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合宿編:北部のS級冒険者
クルドパーティとのお別れ
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生徒たちと手合わせを終えたクルドパーティは、その後の特訓も興味津々で見学していた。生徒vsカミーユパーティで、カミーユたちが生徒をボコボコにしているところを見てサンプソンがワーワー騒いでいた。
「なにが"俺らのかわいい生徒の手のひらに矢を思いっきりぶち込むなんてなあ"だ!?君たちなんて腹に穴開けてるじゃないか!!そりゃあこんな特訓してたら痛み耐性つくよねぇ!?」
さらに"王様ゲーム"をしていると知り、クルドたちはドン引きしていた。
「なんちゅうモン子どもに教えてんだよ…それも貴族の子に…」
「カミーユたちの教え子が早々に逃げ出す理由が分かったよ~…」
一日の特訓が終わり、血だらけ泥まみれの生徒たちが浴室へ向かっていく。この一カ月で見事に感覚がバグってしまった生徒たちは、エリクサーを飲みながら楽し気に笑って「たのしかったねー」などと話していた。クルドたちは無言で彼らの背中を見つめ、次にジトっとした目でカミーユたちを見た。
「あ?なんだよ。ほら、俺らもメシ食うぞ」
「…お前たちは今後一切弟子をとらないほうがいい」
「ああ?あいつら以外にとる気なんかねえよ」
「ダフ…俺のダフが…カミーユに気に入られたばっかりに…かわいそうに…」
クルドがグスグス泣き出したので、カミーユはくさいものを見るような目で彼を一瞥し、首根っこをつかんで屋敷の中まで引きずって行った。生徒がお風呂に入っている間に大人たちはプラム酒樽を開け乾杯した。先ほどまで(あまりにひどい特訓を見て)ゲッソリしていたクルドパーティも、酒が入った途端陽気になりゲラゲラ笑っている。アーサーとモニカたちが食堂へ入ったときにはすでに大人たちは顔が真っ赤になり見事に出来上がっていた。
「わー、モニカ見て?もうプラム樽が2樽開いてるよ」
「ほんとだー!クルドさんたち、カミーユたちと同じくらいいっぱい飲んでるー!あはは!」
「やっぱりS級冒険者はお酒いっぱい飲めないとなれないんだよ。そうに違いないよ」
「じゃあわたしたち、絶対S級になれないねー」
その日も双子だけお酒を飲ませてもらえず、プラム酒を飲んでいる生徒たちを羨ましそうに眺めながらプラムジュースをすすった。久しぶりに再会できたのがよほど嬉しいのかクルドはダフの隣を離れず、サンプソンはアデーレに絡んでベニートとイェルドに威嚇されていた。ミント、ブルギーはジル、カトリナと楽し気に話しており、マデリアはリアーナ、カミーユと品のない笑い声をあげながらプラム酒をガブガブ飲んでいた。あまりに賑やかしい食卓に、双子や他の生徒たちもつられてクスクス笑った。
途中まではただただ騒がしい晩酌だったのだが、酒が進むにつれてだんだんと"まとも"ではなくなっていったS級冒険者がいた。そう、ブルギーだ。彼はS級冒険者の中でも一番酒癖が悪いらしく、一人でプラム酒樽を丸々一樽飲み干した挙句「あー!戦いてぇー!!」と突然叫び、同じく酔っぱらってテンションが上がっているリアーナと屋敷の外へ出た。庭からゲラゲラと楽し気に大笑いする声と、雷鳴や叫び声が聞こえてくる。一時間経っても戻ってこないのでアデーレが様子を見に行くと、二人とも傷だらけのまま地面に大の字になっていびきをかいていたそうだ。
生徒が食事を終えてからも、S級冒険者は大騒ぎしながら酒を飲みかわした。カミーユたちもクルドたちも、互いの苦しみを知っている友人に久しぶりに会えてホッとできたようだった。彼らの笑い声は明け方まで絶えなかった。
「よし、じゃあ帰るか」
「あー…、もう帰るのか」
生徒たちが起き出したころ、帰り支度を済ませたクルドパーティが玄関の前に立っていた(ブルギーは二日酔いでミントに介抱されていた)。柄にもなくカミーユが寂し気な声を漏らしたので、クルドは彼の背中をバンバンと叩いた。
「なんだよ!また近いうちに会おうぜ。たまには北部にも顔を出せよ」
「そうだな。またそっちのうまいメシ食わせてくれ」
「もちろんだ!」
「し…師匠~…!!!」
クルドとの別れが寂しいのか、ダフが涙目でクルドにハグをした。クルドもオンオンと泣き出してしまい、挙句の果てに「もうこいつ一緒に連れて帰っていいか?!」と言い出したので、ブルギーが彼をダフから引きはがした。他の生徒たちもクルドパーティに別れの挨拶をする。クルドパーティは生徒ひとりひとりと握手をして激励の言葉を贈った。
屋敷の前に馬車が停まる。とうとう別れの時が来た。クルドは馬車に乗る前、カミーユに肩をまわし小声で囁いた。その声は先ほどの明るい声ではなく、低く真剣なトーンだった。
「カミーユ」
「なんだ?」
「…ダフを危ないことに巻き込むなよ」
「…なんだよ急に」
クルドは答えず馬車に乗り込んだ。クルドパーティを乗せた馬車が走り出す。13人に見送られながら、彼らは北に帰っていった。
◇◇◇
北へ向かう馬車の中、クルドパーティの間に長い沈黙が流れていた。みなが深刻な表情を浮かべており、誰かが話を切り出すのを待っている様子だ。沈黙を破ったのはクルドだった。
「…その様子じゃあ、お前ら全員気付いたな?」
「…まあね」
「だよな」
「まさかカミーユが匿ってたとはね」
「ってことは、俺らが聞いた話はウソっぱちかもしれねえなあ」
「そうだと思ったから誰も手を出さなかったんでしょ」
「うん…」
「今回のことは依頼主に報告はしないってことでいいか?」
「いいよ」
「それにしても妙だな…。帰ったらいろいろ調べてみる」
「頼んだぞ」
「なにが"俺らのかわいい生徒の手のひらに矢を思いっきりぶち込むなんてなあ"だ!?君たちなんて腹に穴開けてるじゃないか!!そりゃあこんな特訓してたら痛み耐性つくよねぇ!?」
さらに"王様ゲーム"をしていると知り、クルドたちはドン引きしていた。
「なんちゅうモン子どもに教えてんだよ…それも貴族の子に…」
「カミーユたちの教え子が早々に逃げ出す理由が分かったよ~…」
一日の特訓が終わり、血だらけ泥まみれの生徒たちが浴室へ向かっていく。この一カ月で見事に感覚がバグってしまった生徒たちは、エリクサーを飲みながら楽し気に笑って「たのしかったねー」などと話していた。クルドたちは無言で彼らの背中を見つめ、次にジトっとした目でカミーユたちを見た。
「あ?なんだよ。ほら、俺らもメシ食うぞ」
「…お前たちは今後一切弟子をとらないほうがいい」
「ああ?あいつら以外にとる気なんかねえよ」
「ダフ…俺のダフが…カミーユに気に入られたばっかりに…かわいそうに…」
クルドがグスグス泣き出したので、カミーユはくさいものを見るような目で彼を一瞥し、首根っこをつかんで屋敷の中まで引きずって行った。生徒がお風呂に入っている間に大人たちはプラム酒樽を開け乾杯した。先ほどまで(あまりにひどい特訓を見て)ゲッソリしていたクルドパーティも、酒が入った途端陽気になりゲラゲラ笑っている。アーサーとモニカたちが食堂へ入ったときにはすでに大人たちは顔が真っ赤になり見事に出来上がっていた。
「わー、モニカ見て?もうプラム樽が2樽開いてるよ」
「ほんとだー!クルドさんたち、カミーユたちと同じくらいいっぱい飲んでるー!あはは!」
「やっぱりS級冒険者はお酒いっぱい飲めないとなれないんだよ。そうに違いないよ」
「じゃあわたしたち、絶対S級になれないねー」
その日も双子だけお酒を飲ませてもらえず、プラム酒を飲んでいる生徒たちを羨ましそうに眺めながらプラムジュースをすすった。久しぶりに再会できたのがよほど嬉しいのかクルドはダフの隣を離れず、サンプソンはアデーレに絡んでベニートとイェルドに威嚇されていた。ミント、ブルギーはジル、カトリナと楽し気に話しており、マデリアはリアーナ、カミーユと品のない笑い声をあげながらプラム酒をガブガブ飲んでいた。あまりに賑やかしい食卓に、双子や他の生徒たちもつられてクスクス笑った。
途中まではただただ騒がしい晩酌だったのだが、酒が進むにつれてだんだんと"まとも"ではなくなっていったS級冒険者がいた。そう、ブルギーだ。彼はS級冒険者の中でも一番酒癖が悪いらしく、一人でプラム酒樽を丸々一樽飲み干した挙句「あー!戦いてぇー!!」と突然叫び、同じく酔っぱらってテンションが上がっているリアーナと屋敷の外へ出た。庭からゲラゲラと楽し気に大笑いする声と、雷鳴や叫び声が聞こえてくる。一時間経っても戻ってこないのでアデーレが様子を見に行くと、二人とも傷だらけのまま地面に大の字になっていびきをかいていたそうだ。
生徒が食事を終えてからも、S級冒険者は大騒ぎしながら酒を飲みかわした。カミーユたちもクルドたちも、互いの苦しみを知っている友人に久しぶりに会えてホッとできたようだった。彼らの笑い声は明け方まで絶えなかった。
「よし、じゃあ帰るか」
「あー…、もう帰るのか」
生徒たちが起き出したころ、帰り支度を済ませたクルドパーティが玄関の前に立っていた(ブルギーは二日酔いでミントに介抱されていた)。柄にもなくカミーユが寂し気な声を漏らしたので、クルドは彼の背中をバンバンと叩いた。
「なんだよ!また近いうちに会おうぜ。たまには北部にも顔を出せよ」
「そうだな。またそっちのうまいメシ食わせてくれ」
「もちろんだ!」
「し…師匠~…!!!」
クルドとの別れが寂しいのか、ダフが涙目でクルドにハグをした。クルドもオンオンと泣き出してしまい、挙句の果てに「もうこいつ一緒に連れて帰っていいか?!」と言い出したので、ブルギーが彼をダフから引きはがした。他の生徒たちもクルドパーティに別れの挨拶をする。クルドパーティは生徒ひとりひとりと握手をして激励の言葉を贈った。
屋敷の前に馬車が停まる。とうとう別れの時が来た。クルドは馬車に乗る前、カミーユに肩をまわし小声で囁いた。その声は先ほどの明るい声ではなく、低く真剣なトーンだった。
「カミーユ」
「なんだ?」
「…ダフを危ないことに巻き込むなよ」
「…なんだよ急に」
クルドは答えず馬車に乗り込んだ。クルドパーティを乗せた馬車が走り出す。13人に見送られながら、彼らは北に帰っていった。
◇◇◇
北へ向かう馬車の中、クルドパーティの間に長い沈黙が流れていた。みなが深刻な表情を浮かべており、誰かが話を切り出すのを待っている様子だ。沈黙を破ったのはクルドだった。
「…その様子じゃあ、お前ら全員気付いたな?」
「…まあね」
「だよな」
「まさかカミーユが匿ってたとはね」
「ってことは、俺らが聞いた話はウソっぱちかもしれねえなあ」
「そうだと思ったから誰も手を出さなかったんでしょ」
「うん…」
「今回のことは依頼主に報告はしないってことでいいか?」
「いいよ」
「それにしても妙だな…。帰ったらいろいろ調べてみる」
「頼んだぞ」
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