【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco

文字の大きさ
437 / 718
イベントストーリー:太陽が昇らない日

チックチックは子どもだけ

しおりを挟む
生徒たちが大量のお菓子の袋詰めをゲットしている中、一人だけまだひとつもお菓子をもらえない生徒がいた。そう、ダフだ。

「チックチックティックティック!」

「わ、わああああ!!!」

「あ、また逃げられてしまった…」

「チックチックティックティック!」

「ってあんた子どもじゃないだろう!大人はお菓子を渡す側だよ!」

「い、いえ俺はまだ15歳なんですが…」

「こんなムキムキのゴツい15歳がいるもんか!」

ダフの身長は下手な大人より高く、ムキムキさに関しては普通の成人男性では比にならないほどだ。普段からダフは25,6歳と間違われるのだが、"太陽が昇らない日"でもそれは同じだった。ガタイの良い怪物の仮装をした人に話しかけられた大人は驚いて逃げてしまったり、子どもだと信じてくれずお菓子をもらえない。ダフはふと学院時代のダンスパーティーを思い出した。

「この体格と怪力は、日常生活を楽しむには少し困りものだな」

しょんぼりしてしまいそうになる自分の両頬を強く叩き、ダフはいつものニカっとした表情に戻った。

「よし!これ以上話しかけても落ち込むだけだな!潔く諦めてカミーユさんたちの元へ戻ろう!」

「ん、ダフ?」

来た道を戻っていると、ホットワインを啜っているアデーレが花壇の淵に座っていた。彼女の周りには小さな子どもたちが群がっており、袋詰めのお菓子を受け取ると大喜びして走っていった。するとまた次の子どもの群れがアデーレの元に駆け寄り「チックチックティックティック!」と大声で叫んでいる。

「アデーレ姉さん!ははは!子どもたちに大人気ですね!」

「私のお菓子がおいしいって子どもたちの間で噂になっちゃったらしくて…。さっきからずっとこの調子。…はい、これで在庫切れよ。他の子たちにも伝えといて」

「わーー!!ギリギリ間に合ったー!!やったー!!」

「おいしいおかしゲットだー!!」

「やったー!ともだちにじまんしよーっと!!」

子どもの群れがはけると、アデーレはダフに隣に座るよう合図した。

「ダフ、はいこれ」

隣に腰かけたダフに、アデーレは特別大きなお菓子の袋詰めを渡した。ダフはきょとんとながらそれを受け取る。

「え…さっき在庫切れって…」

「あなたたちの分は置いてあるに決まってるでしょ」

「お、俺にも…?」

「当然じゃない。子どもなんだから」

「お、おれ、姉さんから見て子どもに見えますか…?」

「え?どうして?」

「だって俺、姉さんより背が高いしムキムキだし…」

狼狽えているダフをアデーレはじぃーっと見てから、「なに言ってるんだろう」と首を傾げた。

「どこをどう見たって子どもだわ」

「ね、姉さん…!!!」

「確かに体格は大きいし、性格もしっかりしてるけど。まだまだ子どもよ」

アデーレの言葉を聞いたとたん、ダフが立ち上がりどこかへ走り去ってしまった。アデーレは彼が走っていく姿を見てぽかんとしている。

「な、なにか気に障ること言っちゃったかしら…」

◇◇◇

「う~…、いかんいかん!思わず泣いてしまいそうになってしまった!女性の前で涙を見せるなんて騎士のすることじゃあない!!」

路地裏に逃げ込んだダフはガシガシと目をこすりまた両頬を叩いた。カミーユたちの元へ戻ると、彼らもダフにパンッパンにお菓子が入った袋を放り投げる。

「おー、ダフ。お前に渡すの忘れてた」

「カ、カミーユさん…!」

「いっぱい食ってもーっと大きくなれよ!!」

「君、ブランデーが入った焼き菓子が好きだったよね?だからいっぱい入れといたよ」

「私はふわふわの綿菓子を入れてみたわァ。きっとダフに似合うと思ってェ」

「俺はカミーユさんたちみたいに気の利いた菓子は渡せないから、とりあえず騎士生活に役立ちそうなカロリーの高い常備品を入れといた」

「かー!ベニートはいっつもそうなんだよなあ!面白みにかけるプレゼントばっかりなんだ!だから俺はベニートの分も面白いお菓子にしといたぞ!舌が真っ青になる飴とか、ロシアンルーレットマドレーヌとかな!!」

「リアーナさん、ジルさん、カトリナさん、ベニートさんにイェルドさんまで…。ありがとうございます…。お、俺、ちゃんとみなさんには子どもに見えてますか…?」

ダフの一言でだいたい何があったか察した大人たちは、「あー…」と小さな声を漏らして目を見合わせた。唇を噛んでプルプル震えているダフに、大人が口々に慰めの言葉をかける。

「はんっ、大人に見られたいなら俺よりデカくなってみせるんだな。俺にとっちゃあお前なんてまだまだチビっこだ」

「そうだそうだー!!ダフ!お前はまだガキんちょだ!!ちっちぇえちっちぇえ!!がははは!!」

「ダフ、大人っていうのは20歳以上のことを言うんだよ。15歳の君は残念だけどどうしたって大人にはなれない。君は子ども。だって15歳だから」

「こんなに純粋で良い子の大人がいるなら会ってみたいわねェ」

普通の子どもなら、子ども扱いされた方が怒るのかもしれない。だが、体格と顔立ちによって子ども扱いをされてこなかった、その上貴族であるがゆえに今まで子どもらしい振る舞いをすることができなかったダフにとって、子ども扱いされることはとても嬉しいことだった。

「ぐす」

我慢できず、ダフは腕で目を隠して泣き出してしまった。大人たちはニヤニヤしながらそんな彼をここぞとばかりにからかい始める。

「おいおいおい~!大人は人前で泣かねえぞ~?」

「お前の師匠はよく泣くがなあ!さすが師弟だなあ!」

「な、泣いてません!!ひぐぅっ…」

「泣いてるじゃねーか!!」

「クスクス」

「あ!ダフだー!!探してたんだよぉ?!」

ダフがからかわれているときに他の生徒たちも戻って来た。生徒たちはそれぞれダフに袋詰めのお菓子を差し出す。

「え?」

「アーサーとモニカの提案で、みんなでお菓子のプレゼント交換しようって話になったんだ。慌ててお店で買ってきたものだけど、もらってよ、ダフ」

「ダフも僕たちにプレゼントするお菓子買ってきて~!!」

わいわいとはしゃぐ仲間たちからお菓子の山を受け取り、ダフは嬉しそうにニカっと笑った。

「ああ!ありがとうみんな!ちょっと待ってくれ!すぐに買ってくる!!」

ダフは近くにあった出店で袋詰めのお菓子を5つ購入した。手で持ちきれないのでアイテムボックスに入れようと蓋を開けると、すでにそこにはたくさんの袋詰めのお菓子が入っていた。ダフは目じりを下げてそれを眺めて、ひとりでにぽそりと呟いた。

「どれももったいなくて食べられないなあ」
しおりを挟む
感想 494

あなたにおすすめの小説

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。