【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco

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イベントストーリー:太陽が昇らない日

夜明け

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その日、双子たちは1日中町で過ごした。一般民であれば半日歩き回ると疲れ果ててしまうが、彼らの体力はみなバケモノ級のためずっと元気いっぱいだった。夜の時間になるとテラス席で食事をとりながら酒を飲みかわし、上機嫌な笑い声が外に響き渡る。夜が更けどんどんと人が減っていき、町がシーンと静まり返る中彼らだけがいつまでも騒がしかった。

「お、きたな」

カミーユが空を見上げてニッと笑う。カトリナも何かに気付き、夢中になってお肉にかぶりついていた双子の肩をつついた。

「アーサー、モニカ。見てェ」

「ふぁっ?!」

「ふぁにっ?!」

「長かった夜が明けるわァ」

カトリナが指さした先にはいつの間にか明るんでいた空に太陽の切れ端が少しだけ覗いていた。

「わぁ…!!」

「朝だ!!」

「長かった夜ももうおしまいね。みんな、"太陽が昇らない日"は楽しかったかしらァ?」

カトリナの問いかけに、双子も貴族生徒もにっこり笑って頷いた。

「楽しかったー!!!」

「とっても楽しかったです!!」

「そう、良かったわァ」

「次に"太陽が昇らない日"に会えるのは10年後か。おまえらそんときゃもう25歳だぜ。お菓子を配る側になっちまうんだなあ」

「25歳かあ…!」

「わたしたち、なにしてるんだろうねー!!」

「俺は立派な騎士になってるはずだ!!」

「わ、私はS級アーチャーになってたいなあ…」

「あと、チャドのお嫁さんにもなってるかもね」

「ク、クラリッサってばあ!!」

「あはは!」

「クラリッサは何になってたいの?」

「私?私はジュリア様のお付きの騎士になりたいわ。もうヘッドハンティングにはあってるし」

「ブッ!!《おいまじかよ!!》」

《あら~。敵に塩を送っちゃったわねェ…》

「シリルは?なにになってるんだ?!」

「僕もジュリア様のお付きの騎士かな。僕も声がかかってるし」

「ブーーーッ!!《おいちょっと待て?!うそだろ?!》」

《敵が塩分過多で死んでしまうね。にしてもさすがジュリア王女だな。優秀な人を見る目がある》

《感心してる場合かよ!!》

《まあ、逆にいいんじゃないのォ?もしかしたらいざというときに守ってくれるかもしれないじゃない》

《そんな楽観的でいいのかよ…》

《いいんじゃね?!こいつらアーサーとモニカのこと大好きだしな!!》

「ねえ、アーサーとモニカはなにになりたいの?」

シリルがそう尋ねると、アーサーとモニカは「うーん」と考え込んでからニパっと笑った。

「やりたいことが多すぎて、決められない!」

「そっか。君たちらしいね」

「10年後も一緒に"太陽が昇らない日"を過ごせるといいな!!」

「あら!それはいいわね!!」

「うん!!私もみんなと次の"太陽が昇らない日"を過ごしたい!」

「きゃー!!もちろんわたしも過ごしたい!!ね!アーサーもそうでしょ?!」

「うん!!じゃあ、約束しよう!!」

「約束!!」

生徒たちは6人で小指を繋ぎ、10年後の"太陽が昇らない日"も一緒に過ごす約束をした。双子はカミーユたちとベニートたちにも約束に混ざるように言った。ベニートたちは照れくさそうに小指を繋げたが、カミーユたちは何度お願いしても微笑むだけで小指を繋いでくれなかった。

「さて、日の出も見たしそろそろ帰るか」

「昨日休んだし今日はビシバシいくよ」

「え?!わたしたち寝てないんだけど!!」

「それがどうかした?」

「ヒェッ…」

「夜が明けたらいつもと変わらない一日が始まるのよォ」

「ぎゃはは!!おまえら仮装の化粧崩れてボロボロだ!!さっさと化粧落として特訓するぞー!!」

10年に1度の"太陽が昇らない日"。非日常の変わった1日を過ごした彼らは、アイテムボックスをお菓子でパンパンに膨らませて屋敷へ戻る。化粧を落とした彼らは1時間の仮眠をとったのち、特訓着に着替えて準備をした。

ダフはアイテムボックスに入ったお菓子の詰め合わせをひとつ取り出しぱくりと頬張る。とても美味しいカップケーキは、きっとアデーレが作ったものだろう。ダフは元気いっぱいになり庭まで全力疾走した。

アーサーとモニカは部屋を出るまえにペンダントを撫でる。

「セルジュ先生、ロイ。今日も一日よろしくね」

「本当に聞こえてるのかなあ~」

「わかんない!でも、セルジュ先生もロイも、この中にいることはまちがいないんだ」

「おーい!!アーサー、モニカー!!また遅刻かああーーーー?!」

「あっ!」

「いまいくねー!!」

リアーナが呼ぶ声に返事をして、アーサーとモニカは階段を駆け下りる。庭では明るい空が彼らを待っていた。双子は両手を広げながら空を見上げ、肺いっぱいに新鮮な空気を吸い込んだ。

「やっぱり空は明るいほうがすきだなあ」

「わたしもー!」

(イベントストーリー:"太陽が昇らない日"章 end)
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