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画廊編:半年後
商人ギルド
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「おや、アーサーさん、モニカさん。お久しぶりです!ささ、こちらへどうぞ」
双子が商人ギルドの受付で立っているとギルドマスターが手を揉みながら近づいてきた。作り笑いをはりつけ、ヘコヘコと頭を下げて、双子を個室へ案内する。ジッピンへ行く前に外貨両替をするために通された部屋と同じだった。双子がソファに腰かけたのを確認してから、ギルドマスターは分厚い紙束をテーブルに置いた。
「まず、長旅おつかれさまでした。カユボティさんから伺っておりますよ。お二人ともジッピンでとても活躍されたとか」
「いえいえ」
「それほどでも」
アーサーとモニカはまんざらでもなさそうにモジモジした。かわいらしい反応にギルドマスターはクスクス笑いながら本題に入る。
「さて、本日おいでくださったのは、ジッピンの輸入品の代金をお支払いいただくためで間違いないでしょうか?」
「はい!」
「ありがとうございます。こちらが商品の一覧表です。版画が500枚、髪飾りが50本、雑貨が220個、ドレスが10着。お間違いないでしょうか?」
「はい、間違いないです!」
「では、代金をお伝えいたしますね。版画500枚で白金貨3枚。髪飾り50本で金貨28枚。雑貨220個で白金貨4枚。ドレス10着で白金貨50枚。最後に商人ギルドの手数料として金貨6枚。合計白金貨60枚と金貨4枚です」
「はあい!」
元気に返事をして、アーサーがアイテムボックスからボロボロの麻布を2つ取り出した。白金貨を入れている袋と金貨が入っている袋のようで、モニカと分担してそれぞれの袋から硬貨を1枚ずつ数えて取り出している。それを見ていたギルドマスターが、双子から代金を受け取りながら尋ねた。
「あの、アーサーさんとモニカさんは…もしかしてまだお財布をお持ちでないのでしょうか?」
「えっ?」
「お財布…。ああ、学院でみんなが持ってたやつかなあ」
「あー!カユボティやヴァジーが持ってたやつ?!」
「ええ。そうです」
「持ってないです!」
「そうですか、お二人ほどの方がまだお持ちでないとは…。意外です」
「え、そんなにおかしなことですか…?」
「いえ、申し訳ありません。誤解を生む言い方をしてしまいました。確かに財布はまだ普及していませんから持っていないことはおかしなことではありません。持っているのはこの国でもほんの一部。貴族や資産家、優秀な商人くらいでしょうか。…しばらくお待ちを」
ギルドマスターが指を鳴らすと、どこからか制服を着た女性がやってきた。商人ギルドで働いている人だろう。耳元でギルドマスターが何かささやくと、小さく頷き応接間を出た。彼女が戻ってくるまでの間、アーサーとモニカが財布について話しているのをギルドマスターがニコニコ眺めていた。
「お財布かあ。考えたことなかったなあ。お店で売ってるの見たことないし」
「麻袋で充分だもんね!カミーユたちやベニートたちも麻袋だし!」
「そもそも商人ギルドとかかわりがない冒険者さんは手に入れる術もありません。手に入ったとしても、お財布は複雑な作りで高価なものですから。冒険者さんはだいたい麻袋ですませるイメージです。紛失や破損の可能性が高いですからね。ですがカトリナさんはお財布を持っていらっしゃるはずですよ。数年に一度、こちらの商人ギルドへいらっしゃって気に入ったのがあれば購入されています」
「そうだったんだ!」
「はい。このあたりで財布を仕入れている商人ギルドはこちらだけですし、ルアンの商人ギルドが仕入れている財布は上等品でしてね。観光に来られた他地区の貴族の方にも人気なんですよ」
そんな話をしているうちに従業員が戻って来た。トレーに乗せた上質な皮袋ふたつをギルドマスターへ渡し、双子に会釈をしてから部屋の隅に立った。
「こちらは先月仕入れたとっておきの財布でしてね。見ていただけますか?」
アーサーとモニカは興味津々で頷いた。カユボティや学院の生徒たちが持っている財布を目にしたことはあったが、じっくりと見たことはない。ギルドマスターが革袋から両手のひらにおさまるサイズのオルゴールのようなものを取り出した。
「わぁぁ…っ!」
「か…かわいい…っ!!」
ひとつはダークブラウンの木製で、木目が美しく表面がツヤツヤしている。蓋の淵には幾何学模様が彫られており、アーサーは一目でその財布を気に入った。
もうひとつは白色の陶器製で、ベビーブルー色の花模様の装飾が施されている。角が丸まっており女性らしいフォルムをしていてモニカの目がキラキラと輝いた。
二人の反応を見て、ギルドマスターはにっこり笑った。
「どうやらお気に召したようですね。中もご覧になってください」
財布をパカッと開くと4列のくぼみがあった。このくぼみの中に、小銀貨、大銀貨、金貨をそれぞれ10枚ずつと、白金貨を5枚入れられるようになっているそうだ。
「ちょっとしたお買い物のときにはここから硬貨を取り出してください。このお財布ひとつで全種類の硬貨を持ち運べますので、支払いのときにとても便利ですよ」
「本当だ!これだったら麻袋をいくつも取り出して支払い、とかしなくてもいいね!」
「はい。ですがお財布の魅力はそれだけではありません。この引き出しには…」
ギルドマスターはそう言いながら、財布の下部にある浅い引き出しをあけた。その中は4つに仕切られていて、それぞれ磁石で開閉できる蓋がついている。彼はひとつの蓋を開けて双子に見せた。
「仕切られた4つの空間それぞれに空間魔法が施されております。この中には約1000枚の硬貨をおさめることができます」
「おーー!!」
「すごい…!!」
「驚くのはまだ早いですよ。さらに、この蓋全体に特殊な磁力を使っているので…見ててくださいね」
ギルドマスターが小銀貨を100枚ほどその中に放り込み蓋を閉めた。ゆっくり開くと、蓋に10枚の小銀貨がくっついている。
「わっ!」
「蓋を開けるだけで10枚の硬貨を取り出すことができるようになってます。さすがに白金貨数百枚の支払いとなると効率が悪いですが、それなりのお買い物まではこのお財布でことたりるかと。…いかがですか?」
双子が商人ギルドの受付で立っているとギルドマスターが手を揉みながら近づいてきた。作り笑いをはりつけ、ヘコヘコと頭を下げて、双子を個室へ案内する。ジッピンへ行く前に外貨両替をするために通された部屋と同じだった。双子がソファに腰かけたのを確認してから、ギルドマスターは分厚い紙束をテーブルに置いた。
「まず、長旅おつかれさまでした。カユボティさんから伺っておりますよ。お二人ともジッピンでとても活躍されたとか」
「いえいえ」
「それほどでも」
アーサーとモニカはまんざらでもなさそうにモジモジした。かわいらしい反応にギルドマスターはクスクス笑いながら本題に入る。
「さて、本日おいでくださったのは、ジッピンの輸入品の代金をお支払いいただくためで間違いないでしょうか?」
「はい!」
「ありがとうございます。こちらが商品の一覧表です。版画が500枚、髪飾りが50本、雑貨が220個、ドレスが10着。お間違いないでしょうか?」
「はい、間違いないです!」
「では、代金をお伝えいたしますね。版画500枚で白金貨3枚。髪飾り50本で金貨28枚。雑貨220個で白金貨4枚。ドレス10着で白金貨50枚。最後に商人ギルドの手数料として金貨6枚。合計白金貨60枚と金貨4枚です」
「はあい!」
元気に返事をして、アーサーがアイテムボックスからボロボロの麻布を2つ取り出した。白金貨を入れている袋と金貨が入っている袋のようで、モニカと分担してそれぞれの袋から硬貨を1枚ずつ数えて取り出している。それを見ていたギルドマスターが、双子から代金を受け取りながら尋ねた。
「あの、アーサーさんとモニカさんは…もしかしてまだお財布をお持ちでないのでしょうか?」
「えっ?」
「お財布…。ああ、学院でみんなが持ってたやつかなあ」
「あー!カユボティやヴァジーが持ってたやつ?!」
「ええ。そうです」
「持ってないです!」
「そうですか、お二人ほどの方がまだお持ちでないとは…。意外です」
「え、そんなにおかしなことですか…?」
「いえ、申し訳ありません。誤解を生む言い方をしてしまいました。確かに財布はまだ普及していませんから持っていないことはおかしなことではありません。持っているのはこの国でもほんの一部。貴族や資産家、優秀な商人くらいでしょうか。…しばらくお待ちを」
ギルドマスターが指を鳴らすと、どこからか制服を着た女性がやってきた。商人ギルドで働いている人だろう。耳元でギルドマスターが何かささやくと、小さく頷き応接間を出た。彼女が戻ってくるまでの間、アーサーとモニカが財布について話しているのをギルドマスターがニコニコ眺めていた。
「お財布かあ。考えたことなかったなあ。お店で売ってるの見たことないし」
「麻袋で充分だもんね!カミーユたちやベニートたちも麻袋だし!」
「そもそも商人ギルドとかかわりがない冒険者さんは手に入れる術もありません。手に入ったとしても、お財布は複雑な作りで高価なものですから。冒険者さんはだいたい麻袋ですませるイメージです。紛失や破損の可能性が高いですからね。ですがカトリナさんはお財布を持っていらっしゃるはずですよ。数年に一度、こちらの商人ギルドへいらっしゃって気に入ったのがあれば購入されています」
「そうだったんだ!」
「はい。このあたりで財布を仕入れている商人ギルドはこちらだけですし、ルアンの商人ギルドが仕入れている財布は上等品でしてね。観光に来られた他地区の貴族の方にも人気なんですよ」
そんな話をしているうちに従業員が戻って来た。トレーに乗せた上質な皮袋ふたつをギルドマスターへ渡し、双子に会釈をしてから部屋の隅に立った。
「こちらは先月仕入れたとっておきの財布でしてね。見ていただけますか?」
アーサーとモニカは興味津々で頷いた。カユボティや学院の生徒たちが持っている財布を目にしたことはあったが、じっくりと見たことはない。ギルドマスターが革袋から両手のひらにおさまるサイズのオルゴールのようなものを取り出した。
「わぁぁ…っ!」
「か…かわいい…っ!!」
ひとつはダークブラウンの木製で、木目が美しく表面がツヤツヤしている。蓋の淵には幾何学模様が彫られており、アーサーは一目でその財布を気に入った。
もうひとつは白色の陶器製で、ベビーブルー色の花模様の装飾が施されている。角が丸まっており女性らしいフォルムをしていてモニカの目がキラキラと輝いた。
二人の反応を見て、ギルドマスターはにっこり笑った。
「どうやらお気に召したようですね。中もご覧になってください」
財布をパカッと開くと4列のくぼみがあった。このくぼみの中に、小銀貨、大銀貨、金貨をそれぞれ10枚ずつと、白金貨を5枚入れられるようになっているそうだ。
「ちょっとしたお買い物のときにはここから硬貨を取り出してください。このお財布ひとつで全種類の硬貨を持ち運べますので、支払いのときにとても便利ですよ」
「本当だ!これだったら麻袋をいくつも取り出して支払い、とかしなくてもいいね!」
「はい。ですがお財布の魅力はそれだけではありません。この引き出しには…」
ギルドマスターはそう言いながら、財布の下部にある浅い引き出しをあけた。その中は4つに仕切られていて、それぞれ磁石で開閉できる蓋がついている。彼はひとつの蓋を開けて双子に見せた。
「仕切られた4つの空間それぞれに空間魔法が施されております。この中には約1000枚の硬貨をおさめることができます」
「おーー!!」
「すごい…!!」
「驚くのはまだ早いですよ。さらに、この蓋全体に特殊な磁力を使っているので…見ててくださいね」
ギルドマスターが小銀貨を100枚ほどその中に放り込み蓋を閉めた。ゆっくり開くと、蓋に10枚の小銀貨がくっついている。
「わっ!」
「蓋を開けるだけで10枚の硬貨を取り出すことができるようになってます。さすがに白金貨数百枚の支払いとなると効率が悪いですが、それなりのお買い物まではこのお財布でことたりるかと。…いかがですか?」
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