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2巻

2-2

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 買い物を終えた双子が宿に戻ると、カミーユたちがラウンジでくつろいでいた。アーサーとモニカに気付いたジルが、小さく手を振る。

「あ、戻って来た」
「わ! もう来てたんだね! ごめんね、待たせちゃって!」
「荷物置いてすぐに戻って来るねー!」

 アーサーとモニカは二階へ駆け上がると、部屋の入口付近に紙袋を置いて、すぐにラウンジに戻った。
 今日のカミーユパーティは、武具を帯びておらず、普段着を身につけている。カミーユとジルはよれよれのチュニックとズボンという質素な恰好かっこうだったが、リアーナとカトリナはおめかしをしていて、いつもより綺麗きれいに見えた。

「なんだか今日は雰囲気ふんいきが違うね!」
「すごくきれい!」

 キラキラした目で見上げてくる双子に、リアーナがまんざらでもない様子でニカッと笑う。

「いつもは武装だし、化粧けしょうもできないからなー! 休みの日は目一杯オシャレするって決めてんだ!」
「モニカも、今日は可愛い服を買いましょうねェ」

 カトリナの言葉に、ニッコリ笑って頷くモニカ。彼女のまぶしい笑顔を間近くで見てしまったカミーユは、心を落ち着かせるために何度か深呼吸した。

「よし、じゃあ行くか。まずは服屋だな」

 さっそく服屋に入った一行は、ずらりと並んでいる衣類の中から双子に似合いそうな普段着を選ぶ。
 男性陣がアーサーの服をさくさく選んでいく一方、女性陣はモニカに様々な服を試着させて盛り上がっている。

「この黄緑色のスカート可愛いわァ。モニカの髪色にとても似合うと思うの」
「モニカ! 次はこれ着てみろ! 絶対似合うから!」
「ああ、クリーム色のチュニックも素敵すてきだわァ」
「あーーーーすっげー可愛い! モニカ可愛いぞ、オイ!」

 カトリナとリアーナは、試着室に服を放り込んでモニカに着替えさせては、可愛い可愛いと大騒おおさわぎする。途中から買い物を終えたアーサーもその中に加わり、妹に惜しみなく褒め言葉を送る。
 そんなモニカたちの長時間の買い物にゲンナリしたカミーユとジルは、店の外で待っていた。
 しばらくして、ようやくモニカが店から出てきた。その手には、大きな紙袋が三つげられている。

「お待たせえ……」

 カミーユはもたれかかっていた壁から離れ、葉巻の火を消す。

「お、やっと終わったのか。着せ替え人形されて疲れただろ、モニカ」
「うん……。でも、すっごく楽しかった!」
「そうか。せっかくだから、ここで新しい服に着替えたらどうだ?」

 カミーユは再び服屋に入り、店主に頼んで試着室を使わせてもらった。
 モニカはクリーム色のチュニックに、黄緑色のスカートを。アーサーは白いチュニックに、キャメル色のズボンを身につけ、二人ともその上にダークブラウンのガウンを羽織った。
 新しい服の肌触りを確かめながら、アーサーとモニカがうっとりと呟く。

「色が……鮮やかだ……!」
生地きじが……テロテロじゃない……!」
「それなりに良い服を選んだから、しっかりしているし、長く着続けられるわァ」

 モニカのそでのリボンを結びながら、カトリナが言った。そして、新たな服に身を包んだ双子をまじまじと見て、満足そうな表情を浮かべる。

「ンー。二人とも顔立ちが整っているから、服を変えただけでガラッと雰囲気が変わったわァ。とても素敵」
「せっかくだし、髪も整えようぜ! ボッサボサだもん、こいつら」

 リアーナの提案に、大人たちは全員大賛成した。
 今までアーサーは自分で髪を切り、モニカは兄に切ってもらっていたので、あまり見栄みばえが良くなかった。特にアーサーなんて、後ろ髪の一部がほんの少しだけだが禿げている。きっと自分では見えないところを適当に切って、失敗したのだろう。
 リアーナにからかわれて初めてそのことに気付いたアーサーは、理髪店に向かっている間ずっと、顔を真っ赤にして後頭部を手で隠していた。
 双子のめちゃくちゃに切られた髪を見て、店主が悲痛なさけごえを上げる。

「なんだいこのひどい有様ありさまは! どうしろってんだい、まったく!」

 ぶつくさ文句を垂れていたものの、さすがはプロと言うべきか、店主は双子の髪をきっちり整えてみせた。
 前髪が目の下まで伸び、後ろ髪が肩にかかっていたアーサーはさっぱり短髪にして、後ろ髪が膝下まで伸びていたモニカは、お尻の下あたりまでカットした。ヘアケアもしっかりしてくれたので、ギシギシだった二人の髪が今ではふんわりさらさらだ。
 カットが終わり、互いを見た双子は、以前とは見違えるほどの相方の可愛さに、ピョンピョン飛び跳ねた。大人たちも、変貌へんぼうした二人の可愛さにうめごえを漏らす。

「どうしようこんなに可愛くなってしまったら人さらいにあってしまうんじゃないかな。やっぱり前までのボロ服を着せておいた方がこの子たちのためだと思うんだけど」

 過保護すぎるジルの発言に、カトリナが苦笑する。

「だめよォ、ジル。そんなこと言わないの。可愛い子どもには、可愛い格好をさせないともったいないじゃない」

 カミーユとリアーナもジルの意見には取り合わず、双子を防具屋へ連れて行った。
 防具屋のドアノブを握ったカミーユが、アーサーに声をかける。

「さて、次は防具だ。お前ら、持ってないだろ?」
「うん。いつもと同じ服でクエストに行ってたよ」
「G級までだったらそれで大丈夫かもしれないが、F級になると魔物の強さが段違いになるからな。ちゃんと装備を整えないと危ないぞ」

 カミーユたちが入店すると、店主のおじさんが手をみながら近づいてくる。

「いらっしゃいませ、カミーユパーティの皆様……と、こちらのお子様は……?」
「アーサーとモニカだ。一年前まで薬屋で働いてたんだが、聞いたことないか?」
「ああ! エリクサーを開発した少年少女ですか!? お初にお目にかかります」

 店主は帽子を取って、アーサーとモニカに礼儀正しく挨拶をした。

「今日はこいつらの防具を買いに来た。子ども用の防具はあるか?」
「薬師なのに、防具が必要なのですか?」
「こいつらは冒険者でもあるんだ。先日F級になった」

 いぶかしがる店主に自慢げに答え、カミーユは双子の頭を撫でる。

「そうでしたか! これは失礼を。お持ちいたしますので、しばらくお待ちください」

 深々と頭を下げた店主は、すぐにサイズが小さい防具を数点取り出し、カウンターに並べた。

「子ども用の防具はあまり多くありませんが、質の良いものばかり揃えておりますよ」

 大人たちに言われるがまま、双子は防具を身につけてみた。
 カミーユたちは、「これは重すぎる」「これは防御力が低そうだ」などと、うんうんうなって選定する。
 最終的に、モニカは軽くて魔法攻撃に強いエイクスュルニルの革、アーサーは厚く丈夫なベヒーモスの革で作られたチョッキとブーツを購入した。他にも、丈夫な生地で作られているジャケットやズボン、インナーや靴下などを、カトリナがせっせとかごに放り込んでいく。

「防具は実用性が最も大切だけど、見た目にもこだわりたいのよねェ」
「分かるー! テンション上がるもんな!!」

 カトリナに全力で同意するリアーナを見て、まーた始まった、とカミーユとジルがため息をついた。カトリナとリアーナは身につけるものに拘りを持っているので、いつも買い物が長いのだ。

「モニカは短パンにするぞ! それとニーハイソックスだ! あたしとお揃いで!」
「いいわねェ。きっと似合うわァ。それに、インナーは肩をちょっと出したものが可愛いと思うのよ」
「ぎゃー! 絶対可愛いぞ、それ! 大賛成だ!」
「おいお前ら、なぜ守らねえといけないところを露出ろしゅつさせようとしてるんだ!?」

 カミーユのツッコミに水を差されたカトリナとリアーナが、頬をふくらませて同時に答える。

「「可愛いからに決まってるでしょ」」

 深いため息を吐くカミーユに構わず、二人は同じ調子でアーサーの装備品も選んでいく。
 アーサーには肩を出させたり、短パンを穿かせたりすることはなかったが、カトリナの強い希望でハーフグローブを購入した。

「どうして手の平の半分も露出してる手袋をはめさせるんだ? 意味があるのか? それに」
「あるわァ。これをはめることで、ちょっぴりセクシーになるもの」
「なぜ冒険者をしてる時にセクシーさが必要になるんだ、え?」

 籠の中のハーフグローブを、まるで臭いものでもあるかのようにまみ上げるカミーユ。
 カトリナは「分かってないわねェ」とため息を吐くが、すぐ商品棚に目を戻し、細くて短いベルトを一本手に取る。

「太ももに短剣を挿すためのベルトもつけましょうねェ。これもセクシーになるから」
「セクシーにはなんねえだろ。お前はアーサーに何を求めてるんだ」

 そんなカミーユの声を無視し、その後もカトリナとリアーナは、モニカの髪をまとめるリボンや、杖を挿すためのベルト、アーサーの矢筒やづつ、剣を挿すためのベルト等を選んだ。
 カトリナがカウンターで支払いを済ませた頃には、夕方になっていた。

「お前らな、ここで時間使いすぎなんだよ! まだ武器も買わないといけねえんだぞ!!」

 ものすごい勢いで葉巻を灰にしていたカミーユが、上機嫌で出てきた女性陣に苛立いらだちの声を浴びせた。
 カトリナは腕時計をチラッと見て、思っていたよりも三時間ほど進んでいる時計の針に驚いた。

「まぁ! もうこんな時間なのォ? みんな小腹が空いたんじゃない? 最近できたカフェで食事をとりましょう。あそこの料理、なかなかおいしいのよねェ」
「カフェ!? 行きたーい!」
「おなかすいたー!」

 繰り返し試着をさせられて疲れ切っていた双子が、嬉しさのあまりカトリナに抱きついた。
 カミーユとジルはすぐにでも武器屋に行きたかったが、双子にそんなに喜ばれては反対できない。ため息をつきながらも、双子の手を引いて歩くカトリナとリアーナの後ろをついていった。


「いらっしゃい、カトリナさん。……と、今日は大人数ですね」

 カフェの店主は、入ってきたカミーユの巨躯きょくと不機嫌そうな表情を見て、ブルッと体を震わせた。
 当のカミーユは、物珍しげに店内を見回している。

「ほー。こんなところにカフェなんてできたのか。洒落しゃれてるじゃねえか」
「半年前にできたのよォ。落ち着く音楽と、アンティークなインテリアが素敵でしょう?」
「なんだかなつかしいね、この感じ」

 ジルは椅子に腰かけて、テーブルの隅に置いてある上等なシュガーポットを指でなぞった。ほんのり微笑むジルを見て、カトリナがクスクス笑う。

「私の実家を思い出した?」
「うん。このシュガーポット、奥様がお好きだったものに似てる」
「ええ、そうね。同じ陶器職人が作ったものだわ」

 カトリナとジルとのやりとりを聞き、モニカが首を傾げる。

「あれ? ジルは、カトリナの実家で一緒に住んでたの?」
「うん。住んでたというより、お世話になってた」

 ジルが頷くと、カトリナが懐かしそうに続ける。

「ジルが十六歳の頃かしら? ボロボロのガリガリで野垂のたにしそうになっていた彼を、私が拾ったのォ。でも、お世話になっていたのは私の方よォ。ジルはお付きの騎士として、いつも私を守ってくれていたんだもの」
「騎士なんて職に就けたのも、カトリナと侯爵こうしゃくのおかげだよ」
「キシ……? コウシャク……?」

 話を聞けば聞くほど難しい言葉が出てきて、モニカには余計に分からなくなっていく。助けを求めて兄に目をやるが、どうやらアーサーも理解が追いついていないようだった。
 ぽかんとしている二人の様子に気付いたカミーユが補足する。

「あ? 言ってなかったか? カトリナは貴族の出なんだ」
「「えぇーーーー!?」」
「オーヴェルニュ家だったか? バンスティン国北部の貴族だ。カトリナのおやっさんが侯爵。ちなみにオーヴェルニュ家は、バンスティン国三大美人家系とも言われてるな。それは、カトリナを見たら納得だろ?」

 カトリナが美人家系なのはすぐに納得できたが、貴族の出身だったことは、なかなか呑み込めない。
 アーサーは真っ先に浮かんだ疑問を口に出す。

「ど、どうして貴族のカトリナが、冒険者をしてるの……?」
「俺がスカウトした。カトリナは元々S級アーチャーだったんだ。アーチャーってのは、貴族や王族を護衛したり、うたげの余興に弓術を披露ひろうしたりする、はなやかな職種なんだがな。カトリナの弓術にれた俺は、どうしても俺のパーティに欲しくて、何度も何度もオーヴェルニュ家を訪れた」
「お父様は猛反対だったわ」

 その時のことを思い出して、カトリナは苦笑いを浮かべ、ジルはジトッとした目でカミーユをにらんだ。

「当然だよ。誰が自分の大切な娘を、アーチャーから冒険者に転職させたいと思う?」

 ジルの話によると、冒険者は大銀貨五枚を支払えば誰でもなれるが、アーチャーや騎士はある程度の地位と膨大ぼうだいな費用が必要な、名誉ある職業らしい。

「それなのに、どうしてカトリナとジルは、冒険者に転職したの?」

 モニカの質問に、カトリナは目尻を下げて答える。

「私だって、始めは冒険者になろうなんて微塵みじんも考えていなかったわァ。でも、カミーユに連れて行かれたのよォ。防壁が崩れた、ある貧しい町に。そこでは魔物が暴れていて、町民を襲っていた。貴族として育ち、アーチャーとしても貴族の相手しかしたことがなかった私は、そんな町があることを知らなかった」

 町のひどい有様を見たカトリナは、その場で泣き崩れたという。

「あの時、カミーユがこう言ったわァ。『冒険者は、こういう人々を守るための存在なんだ』って。そして彼は、町を荒らす魔物をあっという間に殲滅せんめつしたの」

 カトリナが敬慕けいぼに満ちた目でカミーユを見た。
 そんな視線を送られたカミーユは、困ったように頭をいて目をらす。

「庶民を守るための存在。それこそ貴族のあるべき姿だと思ったわァ。だから私は、お父様の反対を押し切って冒険者になったの」
「そうだったんだぁ……!」

 カトリナが冒険者になった経緯けいいを聞き、アーサーとモニカはもっとカトリナのことが好きになった。

「僕たちもそんな冒険者になりたいね、モニカ」
「うん! 困ってる人をいっぱい助けようね!」

 ちなみにジルは、カトリナを守り続けるために、騎士を辞めて彼女と同じ冒険者になった。彼は、自分をパーティに入れないとカトリナを冒険者になんてさせない、と言ってカミーユをおどしたのだそうだ。
 当初、カミーユは、未熟だったジルを不要だと考えていた。しかし、ジルのたくみな暗殺術、身軽さ、聴覚の良さ、頭の良さは、磨けばS級冒険者として申し分ないものになるだろうと判断して、最終的には彼もパーティに招き入れたらしい。

「へぇー! ジルはカトリナが大好きなんだね!」
「そういうのじゃない。命の恩人ってだけ」

 モニカの言葉を否定して、ジルはぷいとそっぽを向いた。モニカは「ジルが恥ずかしがってるー!」とひとしきり面白がったあと、今度はリアーナに質問を投げ掛ける。

「ねえねえ、リアーナはどうして冒険者になったのー!?」
「お! あたしかー? あたしはな――」

 ――と、盛り上がる会話をさえぎって、メモを持ったカフェの店主が、テーブルの前に立った。

「すみません、お客さん。そろそろ注文していただけると嬉しいんですけど……」

 すっかり話に夢中になっていた六人は、慌てて飲み物と軽食を注文した。

「ごめんなさいねェ。すっかり話し込んじゃって」

 謝るカトリナに、キッチンに立った店主が営業スマイルを向ける。

「いえいえ。カフェはゆっくりお話をしてもらう場所ですからね。俺の方こそ、話の腰を折ってしまってすみません」

 じーっと店主の顔を見ていたカミーユが口を開く。

「兄ちゃん、ポントワーブの人か? 見ない顔だが」
「はい。自分の店を持ちたくて、半年前に引っ越して来まして。ここは良い町ですね。のどかだし、平和で優しい人ばかり」
「そうだろう。こんな田舎いなかくせえ町に、こんな洒落たカフェを構えてくれてありがとな」
「そう言ってもらえると、俺も嬉しいです」

 店主との会話を終えたカミーユは、双子たちに視線を戻してささやいた。

「アーサー、モニカ。リアーナが冒険者になった理由はまた今度だ。お前らにだったら教えても構わねえが、他のやつらには聞かせたくねえ」

 そう言って、彼は親指でカフェの店主を指さした。リアーナも小声で「ちょっとワケアリでさ」と苦笑いする。アーサーとモニカはコクコク頷き、「じゃあ、また今度教えてねっ」とお願いした。
 しばらくすると、飲み物とじゃがいものバター焼き、パン、肉の腸詰ちょうづめがテーブルに載せられた。
 腸詰めを豪快ごうかいに頬張りながら、カミーユが双子に尋ねる。

「お前ら、今どんな武器使ってるんだ?」

 アーサーはアイテムボックスから弓と剣、モニカは杖を取り出した。
 アーサーがやけに豪華ごうかな短剣を愛用していたことを知っていたカミーユが、探るような目を彼に向ける。

「短剣はどうした?」
「あれは、えっと、失くした」

 アーサーはだらだらと冷や汗を垂らし、少し不自然なで答える。

「……やっぱりな」
「え?」
「なんでもねえ」

 カミーユは短剣の話題を切り上げると、テーブルに置かれた剣を握る。

「で? なんだこの剣。ボロッボロの安物じゃねえか!」
「これはオークが持ってた剣だよ。倒した時に拾ったんだー」
「拾いもんかよ……」

 アーサーの弓を眺めていたカトリナも、うーんと眉間みけんしわを寄せている。

「弓は上等な物だけど、かなり年季が入っているわねェ」

 一方リアーナは、モニカの杖に感心している様子だ。

「モニカの杖は問題ねーな! むしろすげえ良いもんだ!」
「シャナが作った杖なんだよ! いいでしょー!」
「モニカの杖はそのままで良いんだね。じゃあ食べ終わったら、アーサーの武器を買いに行こうか」

 ジルがそう言うと、カミーユが「そうだな。この剣はやべえ」と苦い顔をしてアーサーに武器を返した。
 軽食を済ませた六人は、店を閉めようとしていた武器屋にすべんだ。
 主にカミーユとカトリナが、アーサーに合う武器を選んだ。小一時間悩んだ末に、重みのある短剣と、軽く薄い剣、小ぶりでしなやかな弓を購入することにした。
 新しい武器を手に入れたアーサーは大喜びで、早速武器を身につけて妹に自慢している。
 キャッキャとはしゃぐ双子を引きずり、カミーユたちは高級なレストランへ入った。

「もっと食え。どうせ俺らがいない間、しょうもないもんしか食ってなかったんだろ」
「そうだぞー? そんなんだから背が伸びないんだぞ!」

 カミーユとリアーナが次々と注文して、双子の前に料理を並べた。
 大きな皿に小さな肉がちょこんと載っているだけの料理を初めて見たアーサーとモニカにとって、それらは不思議で仕方なかった。首を傾げながらその肉を手で摘まみ、口に運ぶ。
 彼らの隣では、カトリナがナイフとフォークで小さな肉をさらに細かく切り分けていた。
 三人を見比べていたカミーユは、ヘッと笑い、肉にフォークを突き刺して一口で呑み込む。

「うまいが、こんな量じゃ食った気になんねえなあ」
「分かる! 骨付きの巨大肉を丸かじりしてぇー!」

 皿ごと口に運び、料理を一呑みにしていたリアーナが、物足りないと不満の声を上げた。
 双子もそちらの方が魅力的みりょくてきに聞こえ、じゅるりとよだれを垂らす。
 そんな野蛮人と野生児に囲まれていても、ジルは無表情で、カトリナは楽しげに笑うだけだ。


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