【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco

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決戦編:裏S級との戦い

帰還

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 モニカから白インコを受け取ったフォントメウの審判マーニャは、シャナの師匠フーワ、シャナ、そしてユーリと共に、その日のうちにバンスティンダンジョンへ向かった。大人たちはユーリを置いて行こうとしたが、ユーリが行くと言って聞かなかったので仕方なく連れて行った。
 フォントメウのエルフがバンスティンダンジョンに到着したのは、モニカがインコを飛び立たせた七日後だった。

「遅かったか……」

 彼らが目にしたものは、満身創痍の冒険者たちに薬を与えているアーサーと、山のように積み重なった歪な魔物たちの死体、敵らしき人の死体、そして大きな布に包まれた四つの遺体。

 シルヴェストルを倒したあとに意識を保っていたのは、アーサーとカミーユだけだった。二人は血が噴き出す体を引きずって、残っていた歪な魔物を一体残らず殲滅した。
 その後は意識を失っている冒険者にエリクサーとその他の薬を与え、回復させていた。

 二人は一刻も早くこんな場所から立ち去りたかったが、アーサーと腕を一本失ったカミーユでは、四人の生き残っている仲間と四人の仲間の遺体を運ぶことはできなかったので途方にくれていたのだ。

「あんたら……フォントメウの……」
「マーニャ様……フーワさん……それに……シャナとユーリも……」

 アーサーとカミーユは、洞窟にやってきた人影に咄嗟に剣を構えたが、彼らがフォントメウのエルフだと気付き力を抜いた。
 
「御子が私にインコを飛ばした。助けが遅くなってすまない。二日前にはここに辿り着いていたのだが、ここまで降りてくるのに時間がかかってしまった……」

 マーニャはそう言いながらカミーユとアーサーに回復魔法をかけた。
 カミーユは首を振り、深いため息を吐く。

「いや……マジで助かった……。ありがとなマーニャ。それよか……フォントメウのエルフがこんなところに来て大丈夫なのか? 穢れに弱いんだろう」
「ああ。気分は悪いが定期的に聖水を飲み体を清めているからなんとか大丈夫だ」

 シャナとユーリは左腕を失ったカミーユなどの重傷を負った冒険者たちの姿に心を痛めていた。しかしそれ以上にジルたちの遺体を見て打ちひしがれ、泣き崩れた。

 エルフたちは生存している冒険者に回復魔法をかけた。彼らのおかげで、アーサー、リアーナ、サンプソン、マデリアはほぼ全回復。カミーユは左腕を、カトリナは視力を失ったが、他の怪我は完治した。モニカは全身を骨折していたため完治まではいかないが、一命は取り留めた。

 冒険者たちを回復させたエルフは、灰になったシルヴェストルを見下ろし涙を流した。そしてアーサーたちの元へ戻り、跪く。

「我々の仇である魔物……。倒してくださったこと、感謝する」

 アーサーもカミーユも、唇を震わせて泣くマーニャを見たのは初めてだった。

「これでシャナが脅威にされされることもなくなった……。フォントメウの人々がふとした夜に恐怖で眠れぬことも、なくなった……。心より……感謝する……」

 そしてフーワは、カミーユたちに誓う。

「私たちはお前たちに恩を返さねばならないね。私たち老体のエルフでよければ、好きに使うがいいさ。命を差し出すことも厭わない。私たちはお前たちの盾になろう」

 シャナはずっと泣いている。

「みんなありがとう……。ありがとう……。ああ……これで私は憎しみから解放された……」

 カミーユは起き上がり、リアーナとアーサーを目で指した。

「なあ……。お前らなら、リアーナとアーサーをどうにかできねえか。お前らならもう分かってるだろ。あいつらは……魔物にひどく浸食されちまって……」

 エルフたちは目を見合わせ、申し訳なさそうに首を横に振った。

「ごめんなさい……。私たちエルフでも、彼らはどうにも……」
「救うどころか、私たちでは彼らに触れることすらできない」
「本当はフォントメウで休養をとらせてやりたいんだが、アーサーとリアーナにとってフォントメウの清らかな気は毒にもなりえるだろうさ……」

 シャナ、マーニャ、フーワの言葉にカミーユが項垂れる。
 シャナは優しくカミーユの肩を叩き、立ち上がった。

「力になれずごめんなさい。ひとまず、ここから出ましょう。私たちもイルネーヌ町に行くわ」
「助かる。俺たちだけじゃ……こいつらを運べなかったからな……」

 こうして、冒険者たちは半年以上にわたるバンスティンダンジョン指定依頼を遂行した。
 冒険者とフォントメウのエルフは、大切に布に包んだ仲間たちを背負いバンスティンダンジョンを出た。

 しかし彼らの絶望はこれで終わらなかった。
 到着したイルネーヌ町は……昔の町並みが見る影もなく、煤まみれの崩れ落ちた石造りの家の間に点々とテントが張られていた。

「……は?」
「ど……どういうこと、これ……」

 カミーユとアーサーが立ち尽くす中、ずっとここで暮らしていたサンプソンとマデリアはひどく取り乱した。

「なんだこれは……! 村が焼かれたのか……? 一体だれが……!」
「こんなこと……やるのは王族に決まってる……! 許さない……私たちの町を……! クルドの故郷を……!」

 冒険者たちが帰還したことに気付き、ベニートパーティとダフが門の前に駆けつけた。

「おかえりなさい……! ああ、みんなボロボロじゃないですか……!」

 ベニートたちはすぐに冒険者の数が減っていることと、彼らが背負っている布に包まれたものに気付いた。
 ベニートたちは涙を流し、彼らの死を悼んだ。
 そして冒険者たちを、今彼らが生活しているテントに招き入れた。そこには必要最低限生活できるものが揃っていた。

 そのテントの隣にも大きなテントが張られていた。そこでは村が焼かれたときに重傷を負った住民を治療しているそうだ。回復魔法を使えず、薬の知識もない彼らでは最低限の治療しかできなかった。
 重症患者の話を聞いたエルフとアーサーは、すぐにそちらのテントへ行き、住民の治療を始めた。

 アーサーは薬を調合しながら、怒りで肩を震わせていた。
 様子を見に来たカミーユが、アーサーの瞳孔が猫のように細くなっていることに気付きゾッとする。

「……アーサー……?」

 おそるおそる呼びかけたカミーユに、アーサーは感情が乗っていない声で応えた。

「この町を焼いたのはヴィクス?」
「……ああ、そうらしい」
「そう。……早く終わらせよう、カミーユ。こんなこと、早く……」
「……そう、だな」
「僕は恥ずかしい。民をこんな目に遭わせる王族の血が流れていることが。もううんざりだ」

 アーサーはそれ以上なにも話さず、患者に薬を飲ませ、優しく声をかけた。
 アーサーの魔物のような目を見て意識がある患者がひどいことを言っても、ただ寂しそうに微笑むだけで、薬の調合を止めなかった。

「罵られて当然だ。たとえ僕が魔物みたいになってなかったとしても……」
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