転生したら何も無い廃れた村の長になりました。

松宮砂糖

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村との出会いと初仕事

どう足掻いてもラヴィなんだから

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 甲高い笑い声と、オリエンスのような声の女性の台詞は、僕の頭の中を駆けていた。

 『あなた達も何れはこうなるのよ…か。』

 誰もいない空間で、ポツリとその言葉を吐き捨てた。誰もいないからこそ、吐き捨てた言葉だった。

 「…っ!?」

 息を吸うような声が聞こえた。そうだった。ここはオリエンスの空間だった。誰もいないという訳ではなかったんだった。
 『どうかしたの?オリエンス。目覚めたけど、全ては終わった?』
 (…なんでもありません。必要な手続き、書類の作成は完了致しました。僅かな私の自腹を切り、少しの布と多めの食料くらいは手に入れましたよ。なんとか。)
 その言葉に安堵し、胸をそっと撫で下ろす。恐らく、今は帰り道だろうな。
 「ねぇ、ラヴィ。」
 幼く可愛らしい声が無限空間に響き渡る。そのの主は、マリアだった。
 「どうかしたの?」
 現在僕のなりすましをしているオリエンスが応える。恐らく、最高の笑顔だろう。その瞬間、聞こえていた足音が一つ減った。

 「…ううん。あなた、誰?」
 「……スリープ。」

 ドサッと、何かが倒れる大きな音が響く。

 『オ、オリエンス?!何してるの?!」 』
 「悟られてはまずいではありませんか。少しの記憶操作ですよ。」
 『それ終わったら代わって!』
 「……」
 返事がなかった。多分、嫌だろうがこの場合、変わってくれるだろう。
 数分間、静寂な時間な時間が続く。目の前のモニターには、寝かされたマリアの頭上に魔法陣が浮かび上がっている様子が映し出されていた。僕はと言うと、不安げに眉を下げてその様子を見ていた。1つ瞬きをした時──

**

 「……あ。」
 僕は、立膝の状態でマリアの寝顔を眺めていた。
 『全て終わりましたよ!ラヴィ・ソルティア様!さあ!あなたの番です!頑張ってくださいね!』
 眠る前のあの様子から元に戻ったオリエンスの様子は、不思議で不気味だったけれど、僕に謎の安心感をもたらした。
 「…うん!やってみる!」
 頭上に向かってそう叫ぶと、マリアの肩を揺すり始める。
 「お~い!マリア~!急に寝ちゃってどうしたの~?」
 「んん…ラヴィ……突然…眠気に襲われたの…。」
 そう言い終えると、マリアは大きな欠伸をひとつ。大きな安心感がラヴィの身を優しく包み込む。
 「そっか…それじゃあ、帰ろうか。」
 上手くできない笑顔。どうしても、他人の顔じゃ上手に笑えない。否、僕は元々笑い方なんて忘れてしまっていた。口角を上げて、目を細める。それだけでも笑顔になっていると信じている。
 「無理して笑わないで。」
 「……な」
 「ラヴィはどう足掻いてもラヴィなんだから、無理して笑う必要なんてないよ。」
 僕の言葉を遮り、彼女は凛とした様子でそう呟いた。正確には、呟くように伝えてきた。無理して笑わないで、なんて前世で言われたかったよ。
 「ありがとう、マリア。無理なんてしてないから。」
 また、笑顔を作る。僕の作った笑顔を見たマリアは、不機嫌そうに僕の頬を抓る。
 「いぃ…ちょっと!」
 「私、ラヴィには無理して欲しくない。」
 「どうして?」
 「…私の記憶の片隅にいる人に、そっくりだから。」
 「記憶の片隅…?そうなんだね。」
 記憶の片隅にいる人、とはきっとオリエンスの事だろう。オリエンスは過去にこの村の復興を手助けたとの情報もあったことから。でも、その頃にマリアは居たのだろうか……?
 「行こう。皆待ってる。」
 沈む太陽を真っ直ぐ見つめたマリアは、眩しそうに目元を手で隠しながら歩き始める。慌てて走って追いかけた。

***

 村に戻った時には太陽の出番は終わりかけていた。村の皆は、僕らのお迎えをしてくれた。そこには、シャーロリらも居た。その後ろには、取ってきたであろう木材の姿。
 「お帰りなさいませ。」
 「皆、ただいま!」
 元気な声を出したは良いが、表情は作ったモノ。笑顔を貼り付けた。
 「あ、アルヴァさん!これ君に!」
 そう言って、僕はオリエンスが買ったらしい布を手渡した。
 「ひぇっ?!あ、う、え、えと…あり…がとうござ…いいま……」
 震える声と震える手。どこか僕に似てい…いや、気の所為。これは本当に。とはいえ、昔、こんな時期もあったなぁなんて懐かしさに浸りながら、オリエンスの自腹で買ったもののうちの2つ目を取り出す。
 「はい!スクロッドさん!」
 「な、なな、なんですかこれは…?!」
 「見ればわかるでしょ?食料だよ、食料。これで数日は持つと思う!」
 「ああぁぁぁ…ありがとうございます…」
 ふへへ、と微笑むと、シャーは頬を林檎のような紅さを頬に浮かべ、優しい笑顔を浮かべた。
 顔が少し悲鳴をあげ始めたから、僕はシャーロリから目を離し、一人一人と目を合わせる。一つ頷くと、小さく息を吸った。
 「この村を復興するなんて、最初は子供の夢程度の軽い気持ちだった。」
 和やかな雰囲気の皆の表情が、真剣に変わるのを僕はハッキリと分かった。大きく息を吸うと、続きの言葉を紡ぐ。
 「もっと大きく思わなきゃ行けないし、正直村の復興なんて僕には無理だと思う。でもね、僕は子供なんだ。考え方もそうだし、気持ちだって子供のまんま。だからさ、僕のやり方は理想が多いと思う。こんなこと初めてのことだから成功なんて少ないと思う。けど…でも……」
 言葉を出そうとすると、視界が滲み始める。真剣に話を聞いてくれてるのが逆にプレッシャーとなってしまった。思わず俯いて涙を堪えて黙り込む。僕なんかが、
 「なぁに言ってんだ、村長。」
 「……え?」
 ドレイアズが僕の肩にぽん、と手を乗せた。
 「僕達は、そんなの気にしないさ。結果良ければ全て良し、って奴だよ。ソルティアさん。」
 今度はマラルラが僕の傍に近寄り、背中を摩った。
 「緊張しないで。ラヴィ。最後まで話して。」
 今度はマリアが僕の頭の上に手を置いて、ゆっくり動かした。僕は3人の温かさに堪えていた涙を流した。
 「しょ、所詮は僕の子供の遊びのようなものになると思う…それでも…それでも、僕についてきてくれる…?」
 涙を拭き、顔を上げる。必死に笑顔を作り、皆とまた目を合わせようと見渡す。真剣な表情をした皆を見ると、笑顔が消えそうになった。また俯こうとしたその時、
 「勿論でございますよ。ラヴィ・ソルティア様。貴女様は村長です。ラヴィ様の意見に背く者など、ここには居ません。」
 優しい笑顔を浮かべたシャーロリが、歩み寄ってきた。と、勢いよく視界が揺らぐ。
 「そうだぜラヴィさんっ!あんたが何言おうと俺は着いていくぞ。この村はもう、お前のもんだからな。」
 頭をがし、と掴まれ、撫でるように手を動かすドレイアズ。僕は、「あわわわ…」と声を上げて目を回していた。
 「や、やや…やめ……」
 「あ、嗚呼すまん。」
 アルヴァデウスが僕からドレイアズを引き剥がし、指の先をちょんちょんとつついていた。そんな様子に、自分の首元を押えて謝るドレイアズ。そんな場所に、笑いが響く。僕も釣られて心の底から笑う。
 「なにかあってもみんなおばさんのみかた。」
 ニーレがそう言って、僕の頭に手を伸ばした。「ありがとう」と呟いてその手を握った。不満そうにマリアがまたこちらに近づいてきた。
 「……無理して笑わないで。」
 「痛た…うん、気をつけるよ。」
 頬を抓られ、声を上げながら、また笑顔を繕う。今度は力を強めて頬を引っ張ってきた。流石に笑うのは辞めた。
 「明日から本格始動するよ。今夜は解散!」
 パチン、と手を鳴らした後暫くは、小さなお祭り状態が続いた。僕はその様子を見ながら、そっと目を閉じた。
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