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村との出会いと初仕事
神様
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僕の為に用意してくれたらしい建物の中で考え事をしていた。横には、マリアとニーレがすやすやと眠っていた。
それは、オリエンスに似た誰かの夢の事だ。
あれ程まで似ていると考えざるを得ない。炎の中で笑っていた声を思い出すだけで鳥肌が静かに現れる。
「ねぇ、オリエンス…」
『…』
「オリエンス……?」
『……』
返ってくるのは静寂。思考を読んだのか、それとも何なのか。
「…少し、風に当たろう。」
マリア達の頭をそっと撫でると、ゆっくり立ち上がり、月に照らされ明るく光る外へと向かった。
「…おや。」
「あ…どうも。」
マラルラが、木に凭れて本を読んでいるらしかった。言語は何故か日本語だ。これも転生オプションとやらなのかな。
「他の皆は?」
「嗚呼、そこの低木の傍で眠っているよ。アルヴァ君とイーデリックは君が出てきた建物の隣に。」
「そうなんだ。なんだか申し訳ないな~、皆に野宿させてるなんて。」
あはは、と苦笑いしてみた。マラルラは細い目を少し開くと、優しい声音を響かせた。
「僕は、村長が野宿する事の方が大問題だと思うけれどね。それに、君はもっと幸せになるべきだと思うな。こんな貧しい村は、捨てたって朽ち果てるだけさ。街に行った方が、君にとっては益が多い。」
「…今のは本音?」
「……勿論、だとも。」
目を閉じ、視線を逸らすマラルラに、僕は目を見開いた。彼は、自分達を捨ててもいいなんて言いそうな人じゃない。朽ち果てるだけと見捨てるような、そんな人には見えないのに──
「マラルラさん、僕は」
「君は、ここに居るべき人材じゃない。そうだなぁ。楽しい場所に行って欲しいと僕は思うよ。具体的には…洋服店で店長、なんて似合うと思うのだけれど、どうだい。」
「突然…何を、言って……」
「役場の受付も似合うと思うよ。果物を売ってる姿とかも想像しやすい。君はそういった職に就くべきだよ。」
「マラルラさん…?」
「それから君は、カフェなんかを作るといいかもしれな」
「マラルラさん!」
「……」
まるで我が子の未来を考えてるかのような口調で話していたが、段々と表情が曇りゆくマラルラを、見過ごせなかった。辛かった。なんだか、可哀想に見えた。
「…すまない。柄でもないことをしたね。反省するよ。」
ははは、と苦笑いを浮かべてこちらを向くマラルラの姿は、本当に悲しそうな表情をしていた。手に持った本の方に向き直すと、両目を手で押えて、小さく溜息を吐いた。
「過去に…俺が小さい頃だ。君のように空から人が降ってきた。当時の村は、何とも言えない姿だった。建物は…今より3つはあったかな。」
突然、過去の話を語り始めた。口調も、少し変わっていた。これが本来の姿かと思うと、少しだけ安心を持てた気がする。僕は、彼と向き合うように座った。
「彼…否、彼女は、魔人だった。フリルが沢山あしらわれた、可愛らしい服装で、黒く長い髪には少しウェーブがあって、前髪の間から二本の角が生えた、とても美しい女性だった。多分、初恋だ。」
細い双眸を星空に向けて、小さく口角を上げた。
「俺らの村を救おうと、近くの村まで歩いて行って、物品を貰おうとしてた。だが、彼女は魔人。人ならざる者。その村の人らは、彼女を酷く恐れたらしい。帰ってきた彼女は、髪の長さがバラバラで、美しいフリルやレースは、引き裂かれてたよ。」
はは、と乾いた笑い声を出したマラルラは、ポケットから少し黒くなったレースを取り出して、見つめていた。
「服はアルヴァが直したから良かったけど、俺は許せなくなって、もう一度行ってくると辛そうに笑う彼女に着いてった。ただ、俺は不可視の魔法をかけられてね、見守る事しか出来なかった。」
「なにか、あったんですか…?」
「…嗚呼、そこで彼女は、二本の角を折られ、体に穴を開けられていたよ。助けようとした時には遅くて、川に投げ捨てられたんだけどね。」
ひっ、と声を上げた。体に穴を開けられた。つまりは殺されたということ。何もそこまでする必要はないだろうに──。
「でも、その話をどうして僕に…?今話した事は、さっきまでの会話と関係ないんじゃ……。」
「…君は、人間じゃないから。」
「……え?」
「あれ、自覚なかったのかい?体内に死神飼ってる時点で色々お察しだが、君は人間じゃない。だから…彼女──彼のように…」
「……」
嗚呼、僕が心配なんだ。僕が人間じゃないと嘘をついてまで、僕には幸せに暮らして欲しいのかな。
「心配しないで、マラルラ。」
僕は、手に握られたレースを両手で握った。
「僕は人間だよ。心も体も。体の中に居るのは死神かもしれないけど、それでも僕自身は人間だよ。だから、多分何処にも行かない。」
「…そうかい。」
安心に似た笑みを浮かべた事を視認した後、僕もなるべく優しい笑顔を浮かべた。
「ラヴィ。いい事を教えてあげよう。」
レースをポケットに戻し、立ち上がったマラルラ。左目を開くと、深緑の瞳で僕を真っ直ぐと見つめた。
「笑顔は、作る物じゃない。」
「……」
その一言を残して、彼の愛しの家族の元に歩いて行った。
やはり僕は、ちゃんと笑えていないらしい。
「…あ~。教えてよ神様。」
まるで、昔、笑えていた『私』に問うかのように、僕は呟いた。
「どうしたら、笑えるの?」
誰も答えてくれない事くらい、昔から知っていた。神様は答えてくれない。そんな事は知っている。僕に手を差し伸べてはくれない。そもそも、神様なんて存在してはいけない。
現実はそう、甘くはないらしい。
「…馬鹿みたい。もう一回寝よ。」
頬を両手で触りながら、建物の中に戻った。
*
「ねぇ、樹彦さん。あの子が…愛が死んだのは、誰のせいなのかしら。」
その声に、思わず目を開けた。僕が寝ていたのは、ソファの上。起き上がって、立ち上がって、2人の座るテーブルに行こうとした。
──なに、これ。
大きな鉄球が、脚につけられて、歩けなかった。
「…俺達のせいではない。学校も、虐めは無かったと言っている。自殺なんかじゃない。事故だ。」
──お母さん…お父さん……!
真実を教えてあげたい。食卓に向き合って座る二人に、全て教えたい。殺ったのは……
僕を殺めたのは……?
あれ、名前は?そういえば聞こえなかったんだったっけか…。
「そうよね。けれど、あの子、死ぬ時まで迷惑かけるわね。面倒だわ。」
──え?
「そうだな。俺らが電車の遅延代を払わなきゃいけないんだから。金がない時に。」
はぁ、と父親は溜息を吐いた。母親は、勢い良く机を叩いた。
「それは貴方のせいでしょう?!若い女に使うからそうなるのよ…!」
「関係ないだろ!大体、友梨奈がパチンコになんか行くからじゃないのか!」
「パチンコくらいやらせなさいよ!大当たりしたら儲けられるのよ…?!」
──はは。はははは。
思わず、笑ってしまった。何も変わってない。屑両親のままで本当に安心した。
──さよなら出来て良かった。
「…今、愛の声がしなかったかしら?」
──もう一度、さよならだ。
「確かに、したかもしれないな…。」
──二人共、塩野愛に囚われずに、さっさと離婚してしまえよ。
「…違うわ。愛の声なんて聞こえなかったわ。気の所為よ。」
「……そう、だな。」
最後まで、届く事はないのか。僕の本音は。
*
「…ラヴィ。」
「おばさ~んっ!朝だよ~っ!!」
「…ぅぁ……」
「何その声。」
「おばさん変なの~!」
嗚呼、違う。
僕の居場所は彼処じゃない。
紛れもない、此処だった。
「ニーレちゃん、お母さんとお父さんを起こしに行ってあげて。起きてたら、おはようって飛びついて来て。」
「うんっ!」
元気に外に走っていく姿を見つめた。マリアも、サファイアの双眸でニーレを見つめていた。
「…笑ってたよ。」
「……何の事?マリア。」
「寝言で、凄く楽しそうに。嬉しそうに。けど、凄く哀しそうに。笑ってた。」
声が出なくなった。それだけで──そんな事で笑えるのか、僕は。
「でも泣いてたよ。ラヴィ、変だった。」
そう吐き捨てて、外に歩いて行った。
「オリエンス。」
『如何しましたか?あ、否、おはようございますっ!』
「…僕って変なんだ。」
『そりゃあ、この村の人からすれば、空から降ってきた美少女なんて変に決まっているじゃ…』
「そういうの、いいよ。」
『……』
「オリエンス。直接話そう。」
『…来るのですか?此方に。』
僕はゆっくりと頷いた。
『歓迎しましょう。ラヴィ・ソルティア様。否、』
オリエンスは小さく息を吸い、間を取った。次の言葉は分かっていたから、僕はふっと口角を上げた。
『塩野──愛様。』
*
「あ…」
瞬きしたその場所は、どこまでも広がって見える虚無の世界。『無限空間』だった。
「いらっしゃいませ。」
背後から突如声が掛かる。ゆっくりと後ろを振り向くと、〝ラヴィ・ソルティア〟の姿があった。
「自分の姿は、確認されましたか?」
「嗚呼、私、なんだよね。視界の端に見える髪で察したよ。」
「そうですか。」
彼女は深々と会釈すると、にんまりと口角を上げた。僕の現在の姿は生前の〝私〟。つまりは、愛という訳だ。
「改めまして、オリエンスと申します。」
「…塩野愛。初めまして。本当の、オリエンス。」
夢の中で見た、オリエンスと良く似た女性が目の前に居る。つまりあの夢は。
「ところでさ、オリエンス。」
「はい。」
次の質問は、既にバレているらしい。不気味な程に上げられた口角は、悪魔という言葉が相応しいだろう。
「真実を、教えてよ。僕は誰なの?神様。」
それは、オリエンスに似た誰かの夢の事だ。
あれ程まで似ていると考えざるを得ない。炎の中で笑っていた声を思い出すだけで鳥肌が静かに現れる。
「ねぇ、オリエンス…」
『…』
「オリエンス……?」
『……』
返ってくるのは静寂。思考を読んだのか、それとも何なのか。
「…少し、風に当たろう。」
マリア達の頭をそっと撫でると、ゆっくり立ち上がり、月に照らされ明るく光る外へと向かった。
「…おや。」
「あ…どうも。」
マラルラが、木に凭れて本を読んでいるらしかった。言語は何故か日本語だ。これも転生オプションとやらなのかな。
「他の皆は?」
「嗚呼、そこの低木の傍で眠っているよ。アルヴァ君とイーデリックは君が出てきた建物の隣に。」
「そうなんだ。なんだか申し訳ないな~、皆に野宿させてるなんて。」
あはは、と苦笑いしてみた。マラルラは細い目を少し開くと、優しい声音を響かせた。
「僕は、村長が野宿する事の方が大問題だと思うけれどね。それに、君はもっと幸せになるべきだと思うな。こんな貧しい村は、捨てたって朽ち果てるだけさ。街に行った方が、君にとっては益が多い。」
「…今のは本音?」
「……勿論、だとも。」
目を閉じ、視線を逸らすマラルラに、僕は目を見開いた。彼は、自分達を捨ててもいいなんて言いそうな人じゃない。朽ち果てるだけと見捨てるような、そんな人には見えないのに──
「マラルラさん、僕は」
「君は、ここに居るべき人材じゃない。そうだなぁ。楽しい場所に行って欲しいと僕は思うよ。具体的には…洋服店で店長、なんて似合うと思うのだけれど、どうだい。」
「突然…何を、言って……」
「役場の受付も似合うと思うよ。果物を売ってる姿とかも想像しやすい。君はそういった職に就くべきだよ。」
「マラルラさん…?」
「それから君は、カフェなんかを作るといいかもしれな」
「マラルラさん!」
「……」
まるで我が子の未来を考えてるかのような口調で話していたが、段々と表情が曇りゆくマラルラを、見過ごせなかった。辛かった。なんだか、可哀想に見えた。
「…すまない。柄でもないことをしたね。反省するよ。」
ははは、と苦笑いを浮かべてこちらを向くマラルラの姿は、本当に悲しそうな表情をしていた。手に持った本の方に向き直すと、両目を手で押えて、小さく溜息を吐いた。
「過去に…俺が小さい頃だ。君のように空から人が降ってきた。当時の村は、何とも言えない姿だった。建物は…今より3つはあったかな。」
突然、過去の話を語り始めた。口調も、少し変わっていた。これが本来の姿かと思うと、少しだけ安心を持てた気がする。僕は、彼と向き合うように座った。
「彼…否、彼女は、魔人だった。フリルが沢山あしらわれた、可愛らしい服装で、黒く長い髪には少しウェーブがあって、前髪の間から二本の角が生えた、とても美しい女性だった。多分、初恋だ。」
細い双眸を星空に向けて、小さく口角を上げた。
「俺らの村を救おうと、近くの村まで歩いて行って、物品を貰おうとしてた。だが、彼女は魔人。人ならざる者。その村の人らは、彼女を酷く恐れたらしい。帰ってきた彼女は、髪の長さがバラバラで、美しいフリルやレースは、引き裂かれてたよ。」
はは、と乾いた笑い声を出したマラルラは、ポケットから少し黒くなったレースを取り出して、見つめていた。
「服はアルヴァが直したから良かったけど、俺は許せなくなって、もう一度行ってくると辛そうに笑う彼女に着いてった。ただ、俺は不可視の魔法をかけられてね、見守る事しか出来なかった。」
「なにか、あったんですか…?」
「…嗚呼、そこで彼女は、二本の角を折られ、体に穴を開けられていたよ。助けようとした時には遅くて、川に投げ捨てられたんだけどね。」
ひっ、と声を上げた。体に穴を開けられた。つまりは殺されたということ。何もそこまでする必要はないだろうに──。
「でも、その話をどうして僕に…?今話した事は、さっきまでの会話と関係ないんじゃ……。」
「…君は、人間じゃないから。」
「……え?」
「あれ、自覚なかったのかい?体内に死神飼ってる時点で色々お察しだが、君は人間じゃない。だから…彼女──彼のように…」
「……」
嗚呼、僕が心配なんだ。僕が人間じゃないと嘘をついてまで、僕には幸せに暮らして欲しいのかな。
「心配しないで、マラルラ。」
僕は、手に握られたレースを両手で握った。
「僕は人間だよ。心も体も。体の中に居るのは死神かもしれないけど、それでも僕自身は人間だよ。だから、多分何処にも行かない。」
「…そうかい。」
安心に似た笑みを浮かべた事を視認した後、僕もなるべく優しい笑顔を浮かべた。
「ラヴィ。いい事を教えてあげよう。」
レースをポケットに戻し、立ち上がったマラルラ。左目を開くと、深緑の瞳で僕を真っ直ぐと見つめた。
「笑顔は、作る物じゃない。」
「……」
その一言を残して、彼の愛しの家族の元に歩いて行った。
やはり僕は、ちゃんと笑えていないらしい。
「…あ~。教えてよ神様。」
まるで、昔、笑えていた『私』に問うかのように、僕は呟いた。
「どうしたら、笑えるの?」
誰も答えてくれない事くらい、昔から知っていた。神様は答えてくれない。そんな事は知っている。僕に手を差し伸べてはくれない。そもそも、神様なんて存在してはいけない。
現実はそう、甘くはないらしい。
「…馬鹿みたい。もう一回寝よ。」
頬を両手で触りながら、建物の中に戻った。
*
「ねぇ、樹彦さん。あの子が…愛が死んだのは、誰のせいなのかしら。」
その声に、思わず目を開けた。僕が寝ていたのは、ソファの上。起き上がって、立ち上がって、2人の座るテーブルに行こうとした。
──なに、これ。
大きな鉄球が、脚につけられて、歩けなかった。
「…俺達のせいではない。学校も、虐めは無かったと言っている。自殺なんかじゃない。事故だ。」
──お母さん…お父さん……!
真実を教えてあげたい。食卓に向き合って座る二人に、全て教えたい。殺ったのは……
僕を殺めたのは……?
あれ、名前は?そういえば聞こえなかったんだったっけか…。
「そうよね。けれど、あの子、死ぬ時まで迷惑かけるわね。面倒だわ。」
──え?
「そうだな。俺らが電車の遅延代を払わなきゃいけないんだから。金がない時に。」
はぁ、と父親は溜息を吐いた。母親は、勢い良く机を叩いた。
「それは貴方のせいでしょう?!若い女に使うからそうなるのよ…!」
「関係ないだろ!大体、友梨奈がパチンコになんか行くからじゃないのか!」
「パチンコくらいやらせなさいよ!大当たりしたら儲けられるのよ…?!」
──はは。はははは。
思わず、笑ってしまった。何も変わってない。屑両親のままで本当に安心した。
──さよなら出来て良かった。
「…今、愛の声がしなかったかしら?」
──もう一度、さよならだ。
「確かに、したかもしれないな…。」
──二人共、塩野愛に囚われずに、さっさと離婚してしまえよ。
「…違うわ。愛の声なんて聞こえなかったわ。気の所為よ。」
「……そう、だな。」
最後まで、届く事はないのか。僕の本音は。
*
「…ラヴィ。」
「おばさ~んっ!朝だよ~っ!!」
「…ぅぁ……」
「何その声。」
「おばさん変なの~!」
嗚呼、違う。
僕の居場所は彼処じゃない。
紛れもない、此処だった。
「ニーレちゃん、お母さんとお父さんを起こしに行ってあげて。起きてたら、おはようって飛びついて来て。」
「うんっ!」
元気に外に走っていく姿を見つめた。マリアも、サファイアの双眸でニーレを見つめていた。
「…笑ってたよ。」
「……何の事?マリア。」
「寝言で、凄く楽しそうに。嬉しそうに。けど、凄く哀しそうに。笑ってた。」
声が出なくなった。それだけで──そんな事で笑えるのか、僕は。
「でも泣いてたよ。ラヴィ、変だった。」
そう吐き捨てて、外に歩いて行った。
「オリエンス。」
『如何しましたか?あ、否、おはようございますっ!』
「…僕って変なんだ。」
『そりゃあ、この村の人からすれば、空から降ってきた美少女なんて変に決まっているじゃ…』
「そういうの、いいよ。」
『……』
「オリエンス。直接話そう。」
『…来るのですか?此方に。』
僕はゆっくりと頷いた。
『歓迎しましょう。ラヴィ・ソルティア様。否、』
オリエンスは小さく息を吸い、間を取った。次の言葉は分かっていたから、僕はふっと口角を上げた。
『塩野──愛様。』
*
「あ…」
瞬きしたその場所は、どこまでも広がって見える虚無の世界。『無限空間』だった。
「いらっしゃいませ。」
背後から突如声が掛かる。ゆっくりと後ろを振り向くと、〝ラヴィ・ソルティア〟の姿があった。
「自分の姿は、確認されましたか?」
「嗚呼、私、なんだよね。視界の端に見える髪で察したよ。」
「そうですか。」
彼女は深々と会釈すると、にんまりと口角を上げた。僕の現在の姿は生前の〝私〟。つまりは、愛という訳だ。
「改めまして、オリエンスと申します。」
「…塩野愛。初めまして。本当の、オリエンス。」
夢の中で見た、オリエンスと良く似た女性が目の前に居る。つまりあの夢は。
「ところでさ、オリエンス。」
「はい。」
次の質問は、既にバレているらしい。不気味な程に上げられた口角は、悪魔という言葉が相応しいだろう。
「真実を、教えてよ。僕は誰なの?神様。」
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