夏の海の出来事

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第10話 昇進と代償

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里美が、黒田課長に遊ばれている頃、

「里美、何とか、プロジェクトが立ち直って来た。客先もリカバリープランに満足している。一時調子の悪かった、メンバも最近は親密になった。土田なんか、体調不良でとか、訳の分からない事言っていたけどな」

約束通り動いているんだ。

「良かったわね。あなた」
「これで課長職レースも一段と有利になって来た」
「ねえ、課長職レースって何人いるの」
「うちの部では、僕と、もう一人。でもあいつは、はなから当て馬と言われていて、最初から昇進のつもりもないみたいだし、周りもそう見ていたからな」
「えっ」

「だから、プロジェクトの件は心配したけど、これで安心だ。まあ、プロジェクトの遅延は僕一人の理由ではないから、課長職考査にあまり響かないとは思うけど」

そんな。騙された。でももう遅い。今更、反抗しても上手く行かない。下手に邪魔されたら、今までの事が。

「どうしたんだ。そんな怖い顔して。いずれにしろ、今月末には、内定が有る。昇進したら、一度美味しいものを食べに行こうか」
「うん。昇進してね」


最近、あの時の里美の体の反応が良くなっている。前よりも激しく求めてくるし。
「里美。赤ちゃんほしい?」
「うん、絶対。今夜も、しよしよ」

やっぱり、赤ちゃんが欲しいからかな。まあ、頑張るしかないか。


二月の終りに、僕は黒田課長に呼ばれた。
「おめでとう。柏木君。課長昇進が決定した。まだ内定だが、稟議は社長まで通っている。よほど何かない限り、確定だ。良かったな」
「ありがとうございます。これも黒田課長のおかげです」
「私も陰で努力したからな。これからも宜しく頼む」

「あの、黒田課長は」
「ああ、私は、まだ昇進は無理だ。プロジェクト統括部品質管理課長としてスライドだ」
「プ統の品質管理課長ですか。栄転じゃないですか。おめでとうございます」
「まあな」


「柏木、聞いたぞ。内定だってな。おめでとう」
「ありがとう。でも土田との関係は変わらないよ」
「何言っている。一介の主任と課長様じゃ、月とすっぽんだ。俺の上司になるんだ。お手柔らかにな」
「ははっ、飲んだ時は同期だよ」
「そうだな」

「ただいま」
「お帰りなさい」

夫が私をじっと見ている。
「どうしたんですか」

いきなり抱き着かれた。
「里美、課長に内定だ」
「えーっ、おもでとうございます。嬉しい」

私も思い切り抱き着いた。
あいつとは、先週で終わりだと言っていた。気持ちの悪い男だったけど、約束は守るのか。
今までの嫌悪感が一瞬だけ揺らいだ。でも録画したメモリを貰っていない。早くしないと。


お風呂も上がり、二人でリビングでくつろいでいる。もちろん、お風呂では、ちょっとサービス。

夫には、ばれない様に、下手にしている。あいつとしている内に自分でもあの行為を好きになってしまっている。気を付けないと。

「ふふっ、何処に連れて行ってくれるの。お食事」
「そうだな。どこがいい」

あいつとの場所は避けたい。

「そうね。溜池当たりの有名は、ホテルで食事。そしてその後も。どう」

上目遣いに夫を見る。もちろん、胸は思い切り見える様にね。夫だもの。
ふふっ、直ぐに胸に目が行った。胸元を塞いで

「だーめ。私の質問に答えてくれたらね」
「えーっ、……分かったよ。じゃあ、そこで。今週末で予約しておく」
「嬉しい」
思い切り夫に抱き着いた。

その後は、えへへーっ。
いつもより熱く、夫に抱いて貰った。私も体が激しく反応してしまったけど。

里美の体は、前から敏感だったけど、こんなに敏感だったっけ。やっぱり赤ちゃん欲しいからかな。


四月に入り、僕は正式に課長になった。開発第一部開発第一課長だ。このラインは、出世コースだ。
二ヶ月ほど、課長研修が続いた。そんな中だった。

「柏木、ちょっといいか」
「なんだ」
土田が少し青い顔をしている。


外まで出て来た。
「ここなら問題ない。小耳に挟んだんだが、黒田課長が、解雇された」
「なんだってー!」

周りの人が驚いたように僕達を見た。
「声が大きい」
「だって、黒田課長は、プ統の品質管理課長として栄転したんだろう。解雇される様な事したのか」
「いや、どうも、部を移動前にしたことが、上層部にバレたらしい。それも警察沙汰だ」


「………意味が分からない」
「ここからは、内部情報だ。どうも、部下の昇進を餌にその部下の妻に強引に関係を迫ったらしい。もちろん、その妻は断ったらしいのだが、夫が急に仕事の事で上手く行かなくなった。黒田課長は、自分ならそれを元に戻せるとして妻に再度迫ったそうだ。

 妻は、仕方なく抱かれたらしいが、なんとそれを妻が録画したらしい。

それからが、この奥さんの凄い所で、夫に理由を話して、警察にその録画を持って行ったらしい。そして自分は、夫の仕事を理由に性行為を強要されたと」

「………凄い。豪傑な奥さんだな。でも夫は怒ったんじゃないか」
「逆らしいよ。夫がだらしないから、私がこんなことしなくてはならなかったと言って、慰謝料を払うか、そのまま夫として私を大切にしろと言ったらしい」


「凄いな。ドラマ出来そうだ」
「いやあ、俺も聞いてビビったよ」

「ところで、そんな情報どこから」
「ふん。出世は興味ないが、人間関係を作るのは楽しいんでね」
「凄いな。土田は」
「まあ、上手く俺を引っ張ってくれ。役に立つぞ」
「おい。出世も他力か」
「いやいや、ウィン、ウィンの関係さ」
「まったく」

僕は、それまで、自分には関係ない事だと思っていた。


―――――

黒田課長は、自業自得ですね。

何か、柏木夫妻に暗雲が。

次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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