10 / 17
第10話 昇進と代償
しおりを挟む
里美が、黒田課長に遊ばれている頃、
「里美、何とか、プロジェクトが立ち直って来た。客先もリカバリープランに満足している。一時調子の悪かった、メンバも最近は親密になった。土田なんか、体調不良でとか、訳の分からない事言っていたけどな」
約束通り動いているんだ。
「良かったわね。あなた」
「これで課長職レースも一段と有利になって来た」
「ねえ、課長職レースって何人いるの」
「うちの部では、僕と、もう一人。でもあいつは、はなから当て馬と言われていて、最初から昇進のつもりもないみたいだし、周りもそう見ていたからな」
「えっ」
「だから、プロジェクトの件は心配したけど、これで安心だ。まあ、プロジェクトの遅延は僕一人の理由ではないから、課長職考査にあまり響かないとは思うけど」
そんな。騙された。でももう遅い。今更、反抗しても上手く行かない。下手に邪魔されたら、今までの事が。
「どうしたんだ。そんな怖い顔して。いずれにしろ、今月末には、内定が有る。昇進したら、一度美味しいものを食べに行こうか」
「うん。昇進してね」
最近、あの時の里美の体の反応が良くなっている。前よりも激しく求めてくるし。
「里美。赤ちゃんほしい?」
「うん、絶対。今夜も、しよしよ」
やっぱり、赤ちゃんが欲しいからかな。まあ、頑張るしかないか。
二月の終りに、僕は黒田課長に呼ばれた。
「おめでとう。柏木君。課長昇進が決定した。まだ内定だが、稟議は社長まで通っている。よほど何かない限り、確定だ。良かったな」
「ありがとうございます。これも黒田課長のおかげです」
「私も陰で努力したからな。これからも宜しく頼む」
「あの、黒田課長は」
「ああ、私は、まだ昇進は無理だ。プロジェクト統括部品質管理課長としてスライドだ」
「プ統の品質管理課長ですか。栄転じゃないですか。おめでとうございます」
「まあな」
「柏木、聞いたぞ。内定だってな。おめでとう」
「ありがとう。でも土田との関係は変わらないよ」
「何言っている。一介の主任と課長様じゃ、月とすっぽんだ。俺の上司になるんだ。お手柔らかにな」
「ははっ、飲んだ時は同期だよ」
「そうだな」
「ただいま」
「お帰りなさい」
夫が私をじっと見ている。
「どうしたんですか」
いきなり抱き着かれた。
「里美、課長に内定だ」
「えーっ、おもでとうございます。嬉しい」
私も思い切り抱き着いた。
あいつとは、先週で終わりだと言っていた。気持ちの悪い男だったけど、約束は守るのか。
今までの嫌悪感が一瞬だけ揺らいだ。でも録画したメモリを貰っていない。早くしないと。
お風呂も上がり、二人でリビングでくつろいでいる。もちろん、お風呂では、ちょっとサービス。
夫には、ばれない様に、下手にしている。あいつとしている内に自分でもあの行為を好きになってしまっている。気を付けないと。
「ふふっ、何処に連れて行ってくれるの。お食事」
「そうだな。どこがいい」
あいつとの場所は避けたい。
「そうね。溜池当たりの有名は、ホテルで食事。そしてその後も。どう」
上目遣いに夫を見る。もちろん、胸は思い切り見える様にね。夫だもの。
ふふっ、直ぐに胸に目が行った。胸元を塞いで
「だーめ。私の質問に答えてくれたらね」
「えーっ、……分かったよ。じゃあ、そこで。今週末で予約しておく」
「嬉しい」
思い切り夫に抱き着いた。
その後は、えへへーっ。
いつもより熱く、夫に抱いて貰った。私も体が激しく反応してしまったけど。
里美の体は、前から敏感だったけど、こんなに敏感だったっけ。やっぱり赤ちゃん欲しいからかな。
四月に入り、僕は正式に課長になった。開発第一部開発第一課長だ。このラインは、出世コースだ。
二ヶ月ほど、課長研修が続いた。そんな中だった。
「柏木、ちょっといいか」
「なんだ」
土田が少し青い顔をしている。
外まで出て来た。
「ここなら問題ない。小耳に挟んだんだが、黒田課長が、解雇された」
「なんだってー!」
周りの人が驚いたように僕達を見た。
「声が大きい」
「だって、黒田課長は、プ統の品質管理課長として栄転したんだろう。解雇される様な事したのか」
「いや、どうも、部を移動前にしたことが、上層部にバレたらしい。それも警察沙汰だ」
「………意味が分からない」
「ここからは、内部情報だ。どうも、部下の昇進を餌にその部下の妻に強引に関係を迫ったらしい。もちろん、その妻は断ったらしいのだが、夫が急に仕事の事で上手く行かなくなった。黒田課長は、自分ならそれを元に戻せるとして妻に再度迫ったそうだ。
妻は、仕方なく抱かれたらしいが、なんとそれを妻が録画したらしい。
それからが、この奥さんの凄い所で、夫に理由を話して、警察にその録画を持って行ったらしい。そして自分は、夫の仕事を理由に性行為を強要されたと」
「………凄い。豪傑な奥さんだな。でも夫は怒ったんじゃないか」
「逆らしいよ。夫がだらしないから、私がこんなことしなくてはならなかったと言って、慰謝料を払うか、そのまま夫として私を大切にしろと言ったらしい」
「凄いな。ドラマ出来そうだ」
「いやあ、俺も聞いてビビったよ」
「ところで、そんな情報どこから」
「ふん。出世は興味ないが、人間関係を作るのは楽しいんでね」
「凄いな。土田は」
「まあ、上手く俺を引っ張ってくれ。役に立つぞ」
「おい。出世も他力か」
「いやいや、ウィン、ウィンの関係さ」
「まったく」
僕は、それまで、自分には関係ない事だと思っていた。
―――――
黒田課長は、自業自得ですね。
何か、柏木夫妻に暗雲が。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
「里美、何とか、プロジェクトが立ち直って来た。客先もリカバリープランに満足している。一時調子の悪かった、メンバも最近は親密になった。土田なんか、体調不良でとか、訳の分からない事言っていたけどな」
約束通り動いているんだ。
「良かったわね。あなた」
「これで課長職レースも一段と有利になって来た」
「ねえ、課長職レースって何人いるの」
「うちの部では、僕と、もう一人。でもあいつは、はなから当て馬と言われていて、最初から昇進のつもりもないみたいだし、周りもそう見ていたからな」
「えっ」
「だから、プロジェクトの件は心配したけど、これで安心だ。まあ、プロジェクトの遅延は僕一人の理由ではないから、課長職考査にあまり響かないとは思うけど」
そんな。騙された。でももう遅い。今更、反抗しても上手く行かない。下手に邪魔されたら、今までの事が。
「どうしたんだ。そんな怖い顔して。いずれにしろ、今月末には、内定が有る。昇進したら、一度美味しいものを食べに行こうか」
「うん。昇進してね」
最近、あの時の里美の体の反応が良くなっている。前よりも激しく求めてくるし。
「里美。赤ちゃんほしい?」
「うん、絶対。今夜も、しよしよ」
やっぱり、赤ちゃんが欲しいからかな。まあ、頑張るしかないか。
二月の終りに、僕は黒田課長に呼ばれた。
「おめでとう。柏木君。課長昇進が決定した。まだ内定だが、稟議は社長まで通っている。よほど何かない限り、確定だ。良かったな」
「ありがとうございます。これも黒田課長のおかげです」
「私も陰で努力したからな。これからも宜しく頼む」
「あの、黒田課長は」
「ああ、私は、まだ昇進は無理だ。プロジェクト統括部品質管理課長としてスライドだ」
「プ統の品質管理課長ですか。栄転じゃないですか。おめでとうございます」
「まあな」
「柏木、聞いたぞ。内定だってな。おめでとう」
「ありがとう。でも土田との関係は変わらないよ」
「何言っている。一介の主任と課長様じゃ、月とすっぽんだ。俺の上司になるんだ。お手柔らかにな」
「ははっ、飲んだ時は同期だよ」
「そうだな」
「ただいま」
「お帰りなさい」
夫が私をじっと見ている。
「どうしたんですか」
いきなり抱き着かれた。
「里美、課長に内定だ」
「えーっ、おもでとうございます。嬉しい」
私も思い切り抱き着いた。
あいつとは、先週で終わりだと言っていた。気持ちの悪い男だったけど、約束は守るのか。
今までの嫌悪感が一瞬だけ揺らいだ。でも録画したメモリを貰っていない。早くしないと。
お風呂も上がり、二人でリビングでくつろいでいる。もちろん、お風呂では、ちょっとサービス。
夫には、ばれない様に、下手にしている。あいつとしている内に自分でもあの行為を好きになってしまっている。気を付けないと。
「ふふっ、何処に連れて行ってくれるの。お食事」
「そうだな。どこがいい」
あいつとの場所は避けたい。
「そうね。溜池当たりの有名は、ホテルで食事。そしてその後も。どう」
上目遣いに夫を見る。もちろん、胸は思い切り見える様にね。夫だもの。
ふふっ、直ぐに胸に目が行った。胸元を塞いで
「だーめ。私の質問に答えてくれたらね」
「えーっ、……分かったよ。じゃあ、そこで。今週末で予約しておく」
「嬉しい」
思い切り夫に抱き着いた。
その後は、えへへーっ。
いつもより熱く、夫に抱いて貰った。私も体が激しく反応してしまったけど。
里美の体は、前から敏感だったけど、こんなに敏感だったっけ。やっぱり赤ちゃん欲しいからかな。
四月に入り、僕は正式に課長になった。開発第一部開発第一課長だ。このラインは、出世コースだ。
二ヶ月ほど、課長研修が続いた。そんな中だった。
「柏木、ちょっといいか」
「なんだ」
土田が少し青い顔をしている。
外まで出て来た。
「ここなら問題ない。小耳に挟んだんだが、黒田課長が、解雇された」
「なんだってー!」
周りの人が驚いたように僕達を見た。
「声が大きい」
「だって、黒田課長は、プ統の品質管理課長として栄転したんだろう。解雇される様な事したのか」
「いや、どうも、部を移動前にしたことが、上層部にバレたらしい。それも警察沙汰だ」
「………意味が分からない」
「ここからは、内部情報だ。どうも、部下の昇進を餌にその部下の妻に強引に関係を迫ったらしい。もちろん、その妻は断ったらしいのだが、夫が急に仕事の事で上手く行かなくなった。黒田課長は、自分ならそれを元に戻せるとして妻に再度迫ったそうだ。
妻は、仕方なく抱かれたらしいが、なんとそれを妻が録画したらしい。
それからが、この奥さんの凄い所で、夫に理由を話して、警察にその録画を持って行ったらしい。そして自分は、夫の仕事を理由に性行為を強要されたと」
「………凄い。豪傑な奥さんだな。でも夫は怒ったんじゃないか」
「逆らしいよ。夫がだらしないから、私がこんなことしなくてはならなかったと言って、慰謝料を払うか、そのまま夫として私を大切にしろと言ったらしい」
「凄いな。ドラマ出来そうだ」
「いやあ、俺も聞いてビビったよ」
「ところで、そんな情報どこから」
「ふん。出世は興味ないが、人間関係を作るのは楽しいんでね」
「凄いな。土田は」
「まあ、上手く俺を引っ張ってくれ。役に立つぞ」
「おい。出世も他力か」
「いやいや、ウィン、ウィンの関係さ」
「まったく」
僕は、それまで、自分には関係ない事だと思っていた。
―――――
黒田課長は、自業自得ですね。
何か、柏木夫妻に暗雲が。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる