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第11話 知られた秘密
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里美は、黒田課長の件は知らなかった。夫が、妻の耳に入れる事でもないと思ったからだ。
黒田課長が、会社を解任されてからしばらくして
『もしもし、柏木里美さんでしょうか』
知らない電話番号が気になりながらも
『はい、柏木里美です』
『世田谷警察ですが、お聞きしたいことがあり、署まで来て頂けないでしょうか』
丁寧な良い様に
『どのような件で』
『電話では、ちょっと言いにくい事です。確認だけなのでお手間は取らせません』
『分かりました。いつどこへ行けば、宜しいでしょうか』
里美は、全く心当たりがない事なので、その日の夕方、
「ねえ、あなた。心配だから言っておくんだけど」
「どうしたの」
「警察から電話が有ってね、確認したいことがあるので、署まで来て欲しいって言われた」
「えっ」
妻が何を言っているのか、理解出来ずにいると
「私も全然分からないから、取敢えず行ってみる」
「一人で大丈夫か」
「大変なことだったら、すぐに連絡する。それに、事が大変だったら警察が来るでしょ。TVでやっているみたいに。だから大したことではないと思う」
「そうか。終わったら電話くれ。心配だから」
「もちろん、するわ」
次の日、
「お忙しい所、ご足労頂きすみません」
門真という女性警察官が対応してくれた。身元確認をした後、小さな小部屋に入った。
「あの確認したい事って」
「これを見て頂けますか」
画面に映された映像は、私と、あいつが、行為をしている場面だった。
「えっ、そんな………。どうして、これを」
「自分の部下の昇進を匂わせて、その妻に性行為を強要した男が持っていたUSBメモリに入っていた映像です。スマホの電話番号から調べ、あなたを特定しました」
「そんな………」
「この映像を見る限り、失礼ですが、脅されているというより、あなたが積極的に行っている様に見えます。本来、双方の同意による行為であれば、民事の為、警察は不介入ですが、被疑者の所持内容を確認の為、ご足労願いました」
「これは、同意による行為と判断して良いですね」
「………。違います。違います」
涙が出て来てしまった。あの時の事を話せば、夫はどうなるのだろうか。でも離さなければ、浮気にしか見えない。
私は、浩一を愛している。これが世に出れば、飛んでもない事になる。どうすれば。
呆然としている私に女性警察官が、
「もし、理由があるなら話してください。このような映像が外に出る事は絶対ありません」
「本当ですか」
私は、夫の課長職考査を良い方に持って行く為に、夫の上司である黒田課長から性行為を強要された事。
拒否すれば、課長職はおろか、左遷もあり得ると言われた事。そして、この男が温泉旅行の時に私を犯した犯人である事等を、いきさつを交えて話した。
「分かりました。それを証明することはできますか」
「出来ません」
「そうですか」
女性警察官は、しばらく部屋の外に出た後、
「最後に一つお聞きします。黒田を婦女暴行罪で起訴しますか」
「わかりません。いえしたくありません」
「分かりました。もうお帰りになって結構です」
「あの、この事は主人には内緒にして頂けますか」
「それは、問題ありません。ご主人は、部外者になります」
私は、直ぐに夫に連絡した。黒田の件で同じような事が起きていないかと確認されただけだと言っておいた。
主人は、ありえない事だと、一笑に伏して話を終えた。
夫に嘘をついてしまった。
それから一か月間は、何事もなく、時間が過ぎた。警察が言っていた通り、夫が、あの事を知る機会はなかったと思い安心していた。
食事を終え、ウィスキーを片手に考え込む夫の姿に
「あなた、どうしたんですか。最近、遠くを見る事が多いですよ」
「ああ、最近土田の様子がおかしくてな。話しかけても避ける様な感じなんだ」
「えっ、あの土田さんが」
「理由は、分からない。特にあいつと僕の間で何かあった訳じゃないんだが」
また、警察から連絡が有った。
『もしもし、柏木里美さんですか』
『私、世田谷警察署の門真と言います。以前、柏木さんからお話をした頂いた時の担当です』
『はい、今度は、どのような用件ですか』
『以前、柏木さんが温泉で性行為を強要されたと言われましたが、あの時の共犯が見つかりました。その時に、麻薬成分の入った薬品の使用が分かった為、今度は、被害者として話を伺いたく………』
私は、スマホを落としてしまった。
そんな。なぜ、今になって。あれから一年も経つのに………。
「土田が解雇というのはどういうことですか」
人事課からの連絡で、急遽その理由を聞く為に、人事課長に強め寄っていた。
「柏木課長。落着き給え。ここでは、話せない事がある。別室で」
「柏木君、人事課長というのは嫌な事も随分耳にしないといけない立場でね。
実は、警察から連絡が有った。土田夫妻が、性行為強要ほう助。麻薬取締法違反で逮捕された」
「えっ、………」
「その様子では、何も知らないらしいな。非常に言いづらい事だが、その性行為を強要された相手は、君の妻である里美さんだ」
「………」
「黒田元課長からも性行為を強要されていたらしい」
「………。済みません。失礼します」
急いで人事課の小部屋を出ると、直ぐに外に出て、里美に電話した。
『はい、あなた』
『里美、仕事をすぐに早退して家に戻りなさい。緊急の用事が出来た。直ぐにだ』
『えっ、ええ。分かりました。直ぐに戻ります』
「里美、どういうことか、詳しく話してくれないか」
「どういうことって」
「お前が、去年行った温泉旅行で、犯された事。黒田元課長の依頼に応じて体を提供したことだ」
夫は、今まで見たこともない形相で夫は私を睨みながら言った。
―――――
ついに夫にバレてしまいました。
次回は、波乱の回になりそうです。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
黒田課長が、会社を解任されてからしばらくして
『もしもし、柏木里美さんでしょうか』
知らない電話番号が気になりながらも
『はい、柏木里美です』
『世田谷警察ですが、お聞きしたいことがあり、署まで来て頂けないでしょうか』
丁寧な良い様に
『どのような件で』
『電話では、ちょっと言いにくい事です。確認だけなのでお手間は取らせません』
『分かりました。いつどこへ行けば、宜しいでしょうか』
里美は、全く心当たりがない事なので、その日の夕方、
「ねえ、あなた。心配だから言っておくんだけど」
「どうしたの」
「警察から電話が有ってね、確認したいことがあるので、署まで来て欲しいって言われた」
「えっ」
妻が何を言っているのか、理解出来ずにいると
「私も全然分からないから、取敢えず行ってみる」
「一人で大丈夫か」
「大変なことだったら、すぐに連絡する。それに、事が大変だったら警察が来るでしょ。TVでやっているみたいに。だから大したことではないと思う」
「そうか。終わったら電話くれ。心配だから」
「もちろん、するわ」
次の日、
「お忙しい所、ご足労頂きすみません」
門真という女性警察官が対応してくれた。身元確認をした後、小さな小部屋に入った。
「あの確認したい事って」
「これを見て頂けますか」
画面に映された映像は、私と、あいつが、行為をしている場面だった。
「えっ、そんな………。どうして、これを」
「自分の部下の昇進を匂わせて、その妻に性行為を強要した男が持っていたUSBメモリに入っていた映像です。スマホの電話番号から調べ、あなたを特定しました」
「そんな………」
「この映像を見る限り、失礼ですが、脅されているというより、あなたが積極的に行っている様に見えます。本来、双方の同意による行為であれば、民事の為、警察は不介入ですが、被疑者の所持内容を確認の為、ご足労願いました」
「これは、同意による行為と判断して良いですね」
「………。違います。違います」
涙が出て来てしまった。あの時の事を話せば、夫はどうなるのだろうか。でも離さなければ、浮気にしか見えない。
私は、浩一を愛している。これが世に出れば、飛んでもない事になる。どうすれば。
呆然としている私に女性警察官が、
「もし、理由があるなら話してください。このような映像が外に出る事は絶対ありません」
「本当ですか」
私は、夫の課長職考査を良い方に持って行く為に、夫の上司である黒田課長から性行為を強要された事。
拒否すれば、課長職はおろか、左遷もあり得ると言われた事。そして、この男が温泉旅行の時に私を犯した犯人である事等を、いきさつを交えて話した。
「分かりました。それを証明することはできますか」
「出来ません」
「そうですか」
女性警察官は、しばらく部屋の外に出た後、
「最後に一つお聞きします。黒田を婦女暴行罪で起訴しますか」
「わかりません。いえしたくありません」
「分かりました。もうお帰りになって結構です」
「あの、この事は主人には内緒にして頂けますか」
「それは、問題ありません。ご主人は、部外者になります」
私は、直ぐに夫に連絡した。黒田の件で同じような事が起きていないかと確認されただけだと言っておいた。
主人は、ありえない事だと、一笑に伏して話を終えた。
夫に嘘をついてしまった。
それから一か月間は、何事もなく、時間が過ぎた。警察が言っていた通り、夫が、あの事を知る機会はなかったと思い安心していた。
食事を終え、ウィスキーを片手に考え込む夫の姿に
「あなた、どうしたんですか。最近、遠くを見る事が多いですよ」
「ああ、最近土田の様子がおかしくてな。話しかけても避ける様な感じなんだ」
「えっ、あの土田さんが」
「理由は、分からない。特にあいつと僕の間で何かあった訳じゃないんだが」
また、警察から連絡が有った。
『もしもし、柏木里美さんですか』
『私、世田谷警察署の門真と言います。以前、柏木さんからお話をした頂いた時の担当です』
『はい、今度は、どのような用件ですか』
『以前、柏木さんが温泉で性行為を強要されたと言われましたが、あの時の共犯が見つかりました。その時に、麻薬成分の入った薬品の使用が分かった為、今度は、被害者として話を伺いたく………』
私は、スマホを落としてしまった。
そんな。なぜ、今になって。あれから一年も経つのに………。
「土田が解雇というのはどういうことですか」
人事課からの連絡で、急遽その理由を聞く為に、人事課長に強め寄っていた。
「柏木課長。落着き給え。ここでは、話せない事がある。別室で」
「柏木君、人事課長というのは嫌な事も随分耳にしないといけない立場でね。
実は、警察から連絡が有った。土田夫妻が、性行為強要ほう助。麻薬取締法違反で逮捕された」
「えっ、………」
「その様子では、何も知らないらしいな。非常に言いづらい事だが、その性行為を強要された相手は、君の妻である里美さんだ」
「………」
「黒田元課長からも性行為を強要されていたらしい」
「………。済みません。失礼します」
急いで人事課の小部屋を出ると、直ぐに外に出て、里美に電話した。
『はい、あなた』
『里美、仕事をすぐに早退して家に戻りなさい。緊急の用事が出来た。直ぐにだ』
『えっ、ええ。分かりました。直ぐに戻ります』
「里美、どういうことか、詳しく話してくれないか」
「どういうことって」
「お前が、去年行った温泉旅行で、犯された事。黒田元課長の依頼に応じて体を提供したことだ」
夫は、今まで見たこともない形相で夫は私を睨みながら言った。
―――――
ついに夫にバレてしまいました。
次回は、波乱の回になりそうです。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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