半濁音の響く日々

nya_n

文字の大きさ
上 下
2 / 7

強豪ではないのだけれど

しおりを挟む
 勝負は一瞬の判断で左右される。
 スパンッ!と打ち抜かれたストレートはラケットにボールを触れさせることなく、華麗に決まる。
「っしゃ!これで俺の二連勝っ! 」
「マジかよ…最近益々キレが良くなってんじゃねえの? 」
「カッカッカッ!あったりまえだろ!日々絶好調更新中だぜ?! 」
「相変わらず意味ワカンねぇよ」

 私立乾山高校の体育館。放課後には毎日ピンポン球を打つ心地よい打球音が響いている。
 二年生の主力選手、神楽坂真琴は常に全力で打たねば気が済まない、ちょっと面倒なやつ。
「真琴ー、試合形式以外の練習もちゃんとやろーや」
「オレは試合してこそ伸びるタイプなんだよ」
「試合形式も得るもの多いけど、基本を疎かにしたら足元すくわれんぞー」
「そういうのは勝ってから言えっての! 」
 事実、真琴を打ち負かせる者は部内にはいなかった。
 三年生からは疎まれることもあるが、実力が伴っている分強くは言えないでいる。
 もうすぐ夏の大会を迎えるにあたり、部内には張り詰めた空気が流れている。
 乾山高校は毎年可もなく不可もなくといった成績で県内でも目立つことがなかった。
 しかし、真琴が入部してから他校から注目されるようになる。
 新人戦、団体はそこまでの結果が残せなかったものの、個人戦においては他の有力選手を押し退け、真琴が優勝したのだ。
 他校からしても、ただのダークホースの優勝くらいなら気にとめることもなかっただろう。
 注目されるに至ったのは、真琴が一セットも落とすことなく優勝したからだ。
 それからというもの、真琴は公式戦で毎回マークされるようになり、真琴のついでで乾山高校自体が注目を集めることとなった。
 以来、強豪校ではないにしても要注意校という形で乾山高校は認識されている。部内の人間からしたらいい迷惑であった。
しおりを挟む

処理中です...