虹色

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観測者「萩野誠一」

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 世の中には悩みが溢れている。人間関係や金銭問題、仕事のことに学校のことプライベートのこと。
 多岐に渡り、解決の糸口もわからないものが多い。だからこそ悩みに悩まされる人が多くいて、世の中全体が落ち込んでいるのであろう。
 かく言う私も悩める人間の一人であるが、深く悩んだところで解決には至らないことを悟っているので今は触れずとも良かろう。
 悩みには大小ある。悩んでる本人はとても大事のように思っていても、周りからしてみればなんだそんなもの、ということだってある。こうしたら解決じゃないか?という答えのようなトドメを刺せるのが他人だからなのだろう。
 そう、こうしたらいいんだって答えは割と早い段階で皆辿り着いているのだ。問題は一歩が踏み出せるかどうか。それまでの安定していた状態をまるっきり壊してしまうことになるかもしれないという不安が躊躇わせていることが殆どだ。恐れずに一歩を踏み出せば、良かれ悪しかれ状況は変わり、転機になるかもしれないのに。保身に走るのは国民性か。
 
 私は人々の悩みに付き合うことを生業としている。所謂カウンセラーだ。
 相談を受け、その悩みに対してある程度の方針を示してやったり、解決への糸口を見出している。
 来客は様々で、そんなことで悩むのか?というくらいのものもあれば、こんなとこでは手に負えないぞ?という場合もある。
 無論、来客を無下に扱うことはしない。頼ってきてくれている以上は、こちらも親身に対応するように心掛けている。その甲斐あってか、客足は途絶えず、経営も上手くいっている。
 
 今日も新しい案件が来ている。どんな悩みが舞い込んできたのだろうか。
 依頼書を確認し、どの依頼から対応していくかを決める。
 めんどくさいかどうかではなく、興味が持てるかどうかで順番を決めている。興味があるものほど後にする。
 スムーズに済むかどうかはまた別の話なのが厄介なのだが、興味のないことに対しては、いかに早く納得させるかを考えて対応するから計画通り進むことが殆どだ。
 
 特に興味のない案件を角の立たないようにそつなくこなし、待ち望んだ案件に手をかける。
 どうやら解決策を示すことは出来ても、簡単に同意することはなさそうなクライアントだった。
 話はじっくり聞き、解決に向かわせるためにどうしたらいいかも何パターンも考え、答えを示してやった。
 しかし、最初の印象通り、納得はせず、渋るばかり。
 この時のクライアントをどう収拾つけるのか。私の唯一と言っていい悩みがこれである。
 悩んだところでクライアント次第なので、どうにもならないと割り切ったのはもう随分前のことだ。
 そしてそれ以外ではさしたる悩みもなく、つまらない人生だった。だからこそ人の悩みを聞くという仕事を選び、人生を彩っているのだ。
 人の悩みを自分のために。私は割と屑のような人生を送っているのかもしれないな。
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