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しおりを挟む今まで僕はずっとヨルムの正体は秘密にして来た。
それは僕自身もヨルムの事を良く知らなかったせいもあるし、厄介事を招くからとヨルムに口止めされたからでもある。
もし此れを尋ねて来たのがカリッサさん以外であったら、僕は何とか誤魔化そうとしたと思う。
勿論カリッサさんが優しく、信用出来る人であると確信してるからでもあるけれど、そう思える人は他にも居なくはない。
なら何故カリッサさんだけが特別なのかと言えば、僕は彼女の秘密を此れまで一方的に知ってたからだ。
食神の祝福の真相を、神と出会って聞いた話。
カリッサさんにとってはとても大事な秘密だった筈なのに、彼女は其れを教えてくれた。
だから僕も抱える秘密を教えたい。でも其れは僕一人の秘密じゃ無くて、ヨルムと共有する物だから。
「ヨルム、良いかな?」
僕は問う。僕の気持ちはヨルムに伝わってる。
逆に気になるのだけど、ヨルム的に神様ってどうなのだろう?
一応、僕は森の女神様を信仰してるし、カリッサさんの話を聞いてからは食神にも割と親近感を持ってるのだけど……。
益体も無い方向に飛んだ思考を咎める様に、ヨルムは顔で僕の頬を押してから、スルスルと床に這い下りる。
そしてあっという間に大きくなって、巨大な大蛇となって見せた。
「まさか、……幻獣?」
カリッサさんは、一目でその正体を見抜いたらしい。流石は神官と言った所だろうか。
僕は初めてヨルムを見た時、絶対に魔物だと思ったのに。
ちょっと悔しかったので、大きくなったヨルムの頭を抱きしめて置く。
小さなヨルムとは何時も触れ合えてるけれど、大きくなったヨルムに触れる機会はめったにないから。
「……そうか。此れは滅多な事では明かせる秘密では無いな。すまなかった。ありがとう。ユー君、そしてヨルム様。貴方達の信用を嬉しく思う」
カリッサさんはそう言って、深々と頭を下げた。
え、ヨルム、様?
ヨルムって様って付く生き物だったの?
不思議に思いながらも、ヨルムを撫でる。うん、ヨルムも様付けで呼ばれるのは嫌そうだ。
「カリッサさん、ヨルム、様は嫌みたい」
一応ヨルムの気持ちは伝えて置こう。
神官に取って、幻獣ってどんな存在なのだろう。
正直僕はあまり神話に興味が無いので、詳しい所は知らないのだ。
「そ、そうかい? わかったよ。でも困ったな。実はクーリちゃんに、ユー君が妙に一線引いて壁を作ってるように感じる、警戒されてるのかなって相談されてね。それもあって聞いたんだけど、此れは彼女には話せないなぁ」
困った様に鼻の頭を掻くカリッサさん。
成程、多分ルリスさんとクーリさん、そしてカリッサさんが3人で浴場に行った時に、その話になったのだろう。
確かに僕は警戒心が強いし、ヨルムの事もあるので、他人に踏み込まないし踏み込ませない様にしている。
そういえばクーリさんは、偶に僕に何かを言いたそうにしてた。
気にさせてしまっていたのだろうか。だとすればとても申し訳ない。
流石にヨルムの事は話せないけれど、もう少し態度には気を付けよう。
久しぶりに大きなヨルムを堪能したので満足だ。顎の下に手を置けば、僕の腕にゆっくりと巻き付きながらヨルムが小さくなって行く。
ずっと話していたので、あまり休憩した気分にはなって無いが、其れでも体の疲労は消えている。
そろそろ探索に戻らなきゃならない。
「クーリさんの事はまた後で相談するとして、これからも宜しくお願いします。知ってるのカリッサさんだけだから、良かったら色々と助けてね」
僕の願いに、カリッサさんはとても嬉しそうな笑顔で頷いてくれた。
人に頼るって難しいけど、秘密を打ち明けたカリッサさんには色々素直に頼れる気がする。
その日の成果はとても大きかった。
此れは協力者を得た話では無く、探索と戦闘の結果得た成果が大きかったって意味である。
カリッサさんが割と加減をしないでグレートソードを振り回すので、駄目になった素材も多いのだけれど、出て来る魔物のランクが高いので、得れる稼ぎは非常に美味しいのだ。
やはり中位以上の魔物になれば、魔石も剥ぎ取れるのがとても有り難い。
得た装飾品も鑑定して貰ったが、此方は其れなりの価値だった。
それと宿に戻ってから聞いた話なのだけど、シチューの肉はヘルハウンドの肉だったそうだ。
……アイツだったのか。散々相手をしただけに、今日はシチューを食べるのも何だか複雑な気分である。
中位魔獣の肉を食べるって経験は確かに贅沢ではあるのだろうけれども。
干し肉も作れると聞いたカリッサさんが、明日は絶対にヘルハウンドの肉を持ち帰ると心に決めていたようなので、明日の狩りは一際激しい物になるのだろう。
うん、今日も早く寝て明日に備えよう。
古代都市探索の一日目は、僕にとって、多分ヨルムにとっても有意義で、そして刺激的で楽しい物に終わった。
明日も良い一日になりますように。
ヘルハウンド(enemy)
rank4
人よりも大きな体格をした黒い犬型の中位魔獣で、炎を吐く特殊能力を持つ。
獲物に対する執着が非常に強く、一度匂いを覚えればどこまでも追いかけて来る。
動きも素早く、戦う場所によっては非常に厄介な強敵となるだろう。
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