少年と白蛇

らる鳥

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 ゴリゴリとすり鉢の中の薬草を丁寧に磨り潰す。
 磨り潰した薬草を大量に鍋に入れ、火にかけながら煮詰めて行く。
 時折灰汁を掬い、煮詰め切ったドロドロの半液体を木の枠に薄く延ばして詰め、風通しの良い場所で天日に晒す。
 こうして乾燥させた物を、最終的には砕いて粉にする。
 そして別の手順を踏んだ他の薬草の粉末と混ぜて、整腸作用のある薬の完成だ。
 僕は少し久しぶりに、エルロー薬店での調薬の依頼を受けていた。
 調薬の仕事を引き受けに来た時、エルローさんにはひどく驚いた顔をされる。
 何でも中級に上がった冒険者が採取や調薬の仕事を引き受けに来るなんて、思っても無かったらしい。
 別にランクが上がっても人が変わる訳じゃ無いのだから、手が空いてたら今まで通りの仕事もして良いと僕は思うのだ。
 勿論それが他の下級冒険者の依頼を奪う事になってしまうなら話は別だけど。
 受ける人居なくて困ってたなら、別に良いよね。
 其れに今日、この仕事を引き受けに来たのは僕だけじゃない。
 今店主のエルローさんとあっちで錬金ポーションの作成をしている、パラクスさんも一緒なのだ。
 何でもパラクスさんは、エルローさんとは錬金術の師を同じにする兄弟弟子になるらしい。
 ならばエルローさんも西のマイレ王国で勉強したのだろうか?
 この大陸にある4つの大国、西のマイレ王国、南西のヨルルム共和国、北東のローレン教国、中央のロイド帝国。
 マイレ王国はこの大陸で最も魔術の発展した国だと言われている。
 王都には魔術学院があり、王を補佐して国を動かすのは7賢人と呼ばれる宮廷魔術師達だとか。
 国境の一部を接するヨルルム共和国とはあまり関係が良くなく、小競り合い程度の戦いはしょっちゅう起きているそうだ。
 このミステン公国を含む小国家群もこの2つの大国の影響は強く受けていた。
 ミステン公国は距離的に近い事もあって、マイレ王国よりの立場を取っている。……だったかな。多分。
 まあなので、僕以外もライサの町の人なら大体そうだとは思うのだけど、マイレ王国で学んだとか聞くと、何だかわからないけど凄いなって思ってしまう。
 前にカリッサさんもマイレ王国の騎士家の出身だって言ってたなあ。

 随分と未処理の薬草が多くあって、調薬作業にはかなりの時間がかかってしまった。
 作業の後にお茶を御馳走になりながら聞いたのだけど、採取は兎も角、やはり調薬を手伝ってくれる冒険者は少ないらしい。
 ルリスさんとクーリさんの話にもなったのだが、採取はとても丁寧にしてくれるそうだ。
 けれど調薬の方はクーリさんは兎も角、ルリスさんの性には合わないらしい。
 二人は常に一緒に行動してるから、一人が合わなきゃもう一人も受けない事になってしまうのだ。
 ……うん、勿体ないなあと思う。折角のペアなのに、長所を活かし合うのではなく、短所が長所を殺してる。
 でも二人で一緒に動いた方がトラブルの際には対処がしやすいのも確かだし、一概に悪いとも言い難い。
 クーリさんは調薬とか好きだと思うんだけどなあ。クーリさんに調薬をして貰う間、ルリスさんには売り子とかして貰ったらどうだろうか。
 あとルリスさんは掃除とかは好きだったし、同じ場所に居ても別々の作業を割り振れば多分上手く回ると思う。
 特に今、エルローさんの奥さんはお腹が随分と大きくなってあまり動けないのだし。
 エルローさんの奥さんは、冬に出産する事になるので少し心配だ。
 冬はただでさえ人に厳しい季節である。出産で体力を使えば、体調を崩す事だってあるかも知れない。
 万全の状態で出産を迎える為に、何か採取の必要な物があれば、今なら少しは遠出だって出来るのだから、頼って欲しいと思う。
 今ならパラクスさんだっているのだし。
 普段は彼方此方を依頼で飛び回るパラクスさんとトーゾーさんの2人だが、ドワーフに頼んでいる刀の完成が間近らしく、約束の期日まではライサの町で過ごす心算らしい。
 僕やカリッサさんは、時折トーゾーさんに訓練を見て貰えるので、二人の町への滞在はとても有り難かった。
 ドワーフの国は、僕も一度は少し見てみたい気もする。


 エルロー薬店から外に出れば、風は随分と冷たい。
 本当に冬はすぐそこまで来てる。寒いとヨルムが外に出たがらないのに。
 パラクスさんは未だ話があるそうなので、エルロー薬店に残ると言ってた。
 兄弟弟子同士の話を邪魔するのも野暮だろうし。
 さて、でも何をしようか。時間は非常に中途半端だ。
 夕食にはまだまだ時間があるし、かといって今からこなせそうな依頼も無いだろう。
 剣の訓練をするにしても、どうせなら誰かに見て貰いながらの方が効率が良い。
 となれば、弓かな。僕はギルドの方へと足を向ける。
 中級に上がった事は知られているので、ギルドの訓練場を使っていても、絡んで来る人も居ないと思うし。
 風が入ってヨルムが寒い思いをしない様、マントの前を合わせながらギルドまでの道を歩く。

 辿り着いたギルドは、中途半端な時間のせいだろう。とても人が少ない。
「あら、ユーさんじゃないですか。どうされたんですか?」
 待合のテーブルを拭い掃除していた、ギルドの受付嬢であるエミリアさんがニコニコとしながらやって来る。
 うん、暇だったのかな。
 折角なので此処最近の依頼の終了証明もついでに提出し、それから訓練場を使用したい旨を告げた。
 こうやって終了証明を出す事で、依頼は初めて達成された事になるのだ。
 僕は毎日ギルドに来るのが面倒臭いので、雑用依頼等の終了証明はある程度纏めて出すようにしてるけど。
「はい、確かに受け取りました。あら、今日は調薬の依頼ですか。ユーさんはランクが上がっても働き者ですね」
 終了証明をざっくり確認したエミリアさんは笑いながらそう言い、受付に戻って訓練所の使用手続きを取ってくれる。
 別に僕は自分を働き者だとは思わない。
 他の冒険者よりも、あれこれと動き回っているのは確かだけど、そうしないと逆に時間を持て余すのだ。
 パラクスさんみたいに本を読み耽ったりもしないし、カリッサさんみたいに買い物や料理が好きだったりもしない。
 カリッサさんは食べる事が一番好きだが、材料を買い揃えて作る事も趣味にしていた。
 トーゾーさんは今日は娼館に行ってるみたいだけど、あれ、思い出したが前に今度連れてってくれるって言ってたような気がする。
 まあさて置き、要するに時間を使う事が苦手なのだ。
 食べる事、誰かと話す事、ヨルムとじゃれる事。此れ位しか思い浮かばない。
 他に何をしようとなれば、訓練か依頼、或いは狩りに出ようとなってしまう。

 訓練所に入り、的から歩いて60歩の位置に陣取る。
 建物内に入ったからだろう。ヨルムが顔を出し、僕が何をするのかと興味深げに此方を見つめて来る。
「早打ちの練習だよ。ヨルム。夕食までまだ時間があるし、少しね」
 といっても実際にはギルドの訓練所内、或いは町中ではと言い換えても良いけれど、早打ちくらいしか訓練出来ない。
 訓練所の広さじゃ、端に陣取っても当てるのはもうそんなに難しくないからだ。
 勿論町中では訓練所以外に弓を撃てる場所は存在し無かった。
 的に対して感覚を確かめたり調整は出来るけど、それよりも町の外で何かを狩る方が練習になってると僕は思う。
 訓練所の的は藁を編んで作られた円形の的だ。
 矢筒から矢を引き抜き、構えて一呼吸、放つ。次の呼吸を終える前に同じ様に矢を引き抜いて構え、一呼吸してから放つ。
 取り敢えず10本を連続して射った。
 連続して射ってはいるが、今回は早さよりも確実さを重視した。此処からどれだけ、安定性を崩さずに射撃間隔を短く出来るか。
 安定性と射撃速度のバランスも取れたならば、次はその状態で連続して射れる本数を増やして行く。
 矢は訓練用の物を大量に用意してある。一応有料ではあるけれど、此処の訓練所の矢は安い。
 あまり大量に射撃を行うと手指を痛めたりするけれど、デススパイダーの糸で作った手袋が僕の手を守ってくれていた。
 つまり、思う存分撃ち放題だ。
 
 その暫く後、僕は調子に乗って打ちまくり、的を破壊し過ぎて怒られる事になる。
 使い捨ての的だけど、大量に壊されても他の訓練希望者が困るのだとか。
 全く持ってその通りで、何時もの笑顔を消してプリプリ怒るエミリアさんに、僕はただ頭を下げ続けた。
 そしてしょんぼりして夕食の時間に宿に帰った僕を待っていたのは、随分と真剣な顔をしたトーゾーさん。
 彼は僕を見るや否や、手を引いて隅の席へと連れて行きこう言った。
「ユー殿。頼む。パラクスや、カリッサ殿には内緒で、一緒に依頼を受けてくれないだろうか」
 と。
 ……え、二人には内緒って、一体何の依頼だろうか。



 ユーディッド
 age13
 color hair 茶色 eye 緑色
 job 狩人/戦士 rank4(中級冒険者)
 skill 片手剣4 盾3 格闘術3 弓6 野外活動5 隠密4 気配察知5 罠3 鍵知識2 調薬2(↑)
 unknown 召喚術(ヨルム)
 所持武装 
 鋼のブロードソード(高) 鋼のショートソード(高) 複合弓(高) 
 革の小盾(高) 中位魔獣の毛皮マント(高) 革の部分鎧(高) デススパイダーシルクの手袋(最高)


 ヨルム
 age? rank7(上位相当)
 skill 縮小化 巨大化 硬化 再生 毒分泌 特殊感覚
 unknown 契約(ユーディッド) 感覚共有(ユーディッド)



 此れまでの経験と訓練により、調薬が上昇しました。
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