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しおりを挟む鐘楼の上からはオリガの町がぐるりと見渡せる。
寒さで空気が澄んでいるのだろう。見上げた空はとても青い。
ここ一週間程は本当に忙しかった。盗賊ギルドが奴等に惑わされてなかったのだけが救いだったかな。
表の世界への対処に関しては、奴等の隙は殆ど無い。
最初に傭兵達が冒険者の身分を得て町に入り込み、冒険者として活動している神官達を把握する。
達と言ってもそんなに数が居る訳じゃ無いのだ。
安定して神に尽して生きれる神官と言う身分を得て、尚も冒険者として活動したがる物好きなんて早々は居ない。
その数少ない冒険者の神官達は、調べた状況によると多分仲間の冒険者に殺されてる。
神官が居た筈の冒険者グループのメンバーは、皆惑乱の奇跡、或いは呪いと言うべきだろうか、まあその類の物を受けていたから。
そして次に教会。
押し込んだのは傭兵達、やっぱり傭兵隊の部下達も荷物に偽装して運び込まれてて、神官達を皆殺しに後に教会で生活を送っていた。
教会全体が認識の阻害で隠蔽されていて、人が誰も近付いてこないから隠れ家には丁度良かったのだろうと思う。
そうやって異常を発見出来る目がまず全て殺されたのだ。
後は本当にゆっくりと惑わし、町を汚染して行っている最中だった。
春になって雪の心配が無くなったらアイアス公国軍が国境を破ってオリガの町まで進出して来る予定になってたんじゃないだろうか。
ただ奴等が見落としていたのは裏の目だ。
盗賊ギルドの盗賊達は、認識の阻害を見破る眼は持たずとも、書類の不備から死んだ筈の傭兵が冒険者になってる事に気付き僕を呼ぶ。
そして僕の話を半信半疑ながらも、状況から一定の理がある話だと判断した。
……特に自分達の認識が阻害されていた事を指摘された衝撃が大きかったのが、その判断の理由だと思う。
まあ一度あの神官を怪しんでしまえば、僕の言葉を裏付ける証拠は幾らでも出て来る。
そして盗賊達が本気になって潜みながら調べれば、惑乱の呪いや認識阻害なんて無くても、神官や傭兵如きに彼等が見付かろう筈が無い。
やっぱり盗賊ギルドはとても怖い組織だと思う。
盗賊ギルドからの報告で、事態の収拾の為にライサと公都から神官が派遣される事は決定したそうだ。
けれど今回の件は公には出来ないと言う判断も同時に下される。
何故なら今回の件が公になれば、確実にアイアス公国との戦争の引き金が引かれてしまう事になるから。
邪教の神官を使っての侵攻を企んだ何て公表されれば、アイアス公国は否定はするにしても後に引けなくなるから確実に責めて来る。
ミステン公国だって事件が公になれば面子の為にも報復は絶対に行わなければならない。
故に現段階では事件を公にせず、アイアス公国に対して備える時間を欲していると言うのがミステン公国の現状だ。
特に今、ミステン公国内では戦争の為の物資が不足している。
以前僕も輸送に関わったけど、メルトロさんのパオム商会がマイレ王国に物資を運んでいた件が悪い風に作用したらしい。
つい先日マイレ王国に向かって出発した商隊は、僕等が護衛した時よりも更に多くの物資を積載していたそうだ。
勿論ミステン公国にとって最重要とも言えるマイレ王国との関係を、更に良好とするのに一役も二役も買った件でメルトロさんが罰せられる事は無いだろうけど、少しばかり拗れそうな話だった。
事を公に出来ないと言う事は、神官の派遣は何らかの理由、例えば町の人間の心の慰撫だの何だのの理由が付けれるとは言え、護衛の名目以上の兵力は動かせないと言う事でもある。
特にオリガはアイアス公国との国境の町で、其処に兵力を動かすと色んな意味合いを含んでしまう。
だから奴等の排除は現地、具体的に言えば盗賊ギルドと僕、そして僕を助けに来てくれた3人の仲間で行う事が決まったのだ。
トーゾーさんにパラクスさん、カリッサさんの3人の仲間。
合流した仲間には、勿論叱られた。カリッサさんからの拳骨は、とても軽いコツンとした物だったけど、うん、だからこそ余計に心が痛む。
何故僕が認識阻害を見破れたのかは、カリッサさんが予め呪い避けの奇跡をかけて居てくれた事にすると決まった。
でもそれは盗賊ギルドやミステン公国に対して向けて用意した理由で、トーゾーさんとパラクスさんには、事件が解決したらヨルムの話をちゃんとしようと思う。
大きく息を吸い、矢を番える。
今、下の教会ではトーゾーさんが片っ端から傭兵を斬っていた。『人斬り』の本領発揮だ。
奴等の戦力は傭兵達と、あの神官のみ。たったそれだけで、よくもまあ此処まで町を引っ掻き回してくれたものだと思う。
もしも奴等の目論見が上手く行っていたら、オリガの町、或いは攻め込まれたミステン公国の民衆は、惑乱と犠牲の邪神の供物となって居たかも知れない。
とても怖い話だった。
「ヨルム、目を貸して」
僕の言葉に、ヨルムが肯定の意思を伝えてくれる。
とてもはっきりと見えた。遥か遠くなのに、その表情までもが認識出来てしまう。
あの神官は、今急ぎ足で此方へと向かって来て居た。
邪神のお告げがあったのか、或いは認識阻害の隠蔽が破られた事を察したのか。
合流されれば厄介だった。万一トーゾーさんが惑わされれば、誰も止められる気がしない。
カリッサさんが居れば惑乱の呪いは祓えるだろうが、トーゾーさんを相手に呪い祓いを行うチャンスがあるかどうかは謎である。
だからアレを仕留めるのは僕の役目だ。
弓を引く。距離は遠い。風も強い。此方は高所。
条件はとても悪いけど、今僕は仲間達に任されて此処にいる。与えられた役割を、その信頼を裏切る心算は、毛頭なかった。
更にヨルムの目を借りているのだ。其処までして貰って外したらちょっと恥ずかしい。
心静かに研ぎ澄ませ、呼吸は細く、そして放つ。
ああ、うん。もう見なくても判る。良い感じに射れた。此れは間違いなく当たる筈……、ほら命中だ。
我ながら一寸凄いかも知れない。
ヨルムに借りた視界のその先で、喉に矢を受けた邪教の神官が驚きに目を見開いたまま絶命している。
恐らく彼はかなり高位の神官だったのだろう。その存在は間違いなくミステン公国の脅威だった。
でもそんな恐ろしい邪神の神官であっても、相手に気付けなければこんな物である。
やっぱり盗賊の技術はもっと高める必要があった。
仲間達をあんな風に死なせない為にも、罠や隠れた相手、そして狙撃に気付くのは僕の役目だ。
だからそろそろ、カリッサさん機嫌直してくれないかな。
ユーディッド
age13
color hair 茶色 eye 緑色
job 狩人/戦士 rank4(中級冒険者)
skill
片手剣5 盾4 格闘術4 弓6 短剣3 逆手武器2
野外活動5 隠密5(↑) 気配察知6(↑) 罠3 鍵知識2 調薬2
unknown 召喚術(ヨルム)
所持武装
鋼のブロードソード(高) 鋼のショートソード(高) 複合弓(高)
革の小盾(高) 中位魔獣の毛皮マント(高) 革の部分鎧(高) デススパイダーシルクの手袋(最高)
ヨルム
age? rank7(上位相当)
skill 縮小化 巨大化 硬化 再生 毒分泌 特殊感覚 脱皮
unknown 契約(ユーディッド) 感覚共有(ユーディッド)
カリッサ・クラム(guest)
age18
color hair 赤色 eye 赤色 (skin 褐色)
job 神官(食神)/戦士 rank6(中級冒険者)
skill 両手剣6 片手剣4 槌鉾5 格闘術4 神聖魔法6 野外活動2 気配察知2 調理4 乗馬3 その他
unknown 食神の祝福(身体能力上昇、食料消費3倍)
所持武装 鋼のグレートソード(高) 鋼の槌鉾(高) 鋼のコートオブプレート(高)
朽多 藤蔵(guest)
age26
color hair 黒色 eye 黒色
job 侍 rank6(中級冒険者)
skill 朽多派一刀流8(9/7) 片手剣4 柔術6 野外活動3 気配察知6 その他
unknown 闘気・中(発動時に体力消耗。身体能力、攻撃力、防御力を中上昇)
所持武装 ドワーフ製の刀(最高) 中位魔獣の革鎧(高)
パラクス(guest)
age24
color hair 金色 eye 緑色
job 魔術師/錬金術師 rank6(中級冒険者)
skill 術式魔術7 術式研究6 錬金術5 野外活動3 気配察知4 雑学知識5 その他
unknown なし
所持武装 シルバースタッフ(並) 魔術師のローブ(並)
これまでの訓練と経験によりユーディッドの隠密、気配察知が上昇しました。
またカリッサ・クラム、朽多 藤蔵、パラクスのステータスも更新されています。
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