110 / 113
110
しおりを挟むズンッと大きな地響きと共に、アイアスの公都を囲む防壁がヨルムの巨体に押し潰された。
巨大化したヨルムは、前回大きくなった時よりも更にサイズを増している。
頭部が物見の塔を打ち壊し、尻尾が石畳を叩き割り、ヨルムの蛇身はアイアス公都を破壊して行く。
行った事は単純だ。
僕がヨルムを矢にのせて放ち、ヨルムは公都の上空で巨大化しただけ。
後はヨルムの巨体が地に引かれて落下すれば、巨大な質量が公都の防壁を破壊したと言う訳だ。
巨大化したヨルムの頑健さを持ってすれば、あの程度の高さからの落下は大した痛みも無い様で、落下後も元気に暴れて公都を破壊している。
とても単純な手だったけど、思った以上に効果は大きい。僕とヨルムだからこそ行える破壊工作。
しかもこの手段が使えるのは一発限りでは無いのだ。
陽光に耐えれるアンデッドが、大慌てで迎撃に飛び出して来る。
無論あんな低位のアンデッド如きにヨルムの相手が務まろう筈は無いのだが、一々律儀に相手をする意味は無い。
死者の相手は軍に任せれば良いのだ。防壁さえ徹底的に破壊しておけば、人類側の連合軍の公都攻めも容易な物になるだろうし。
「ヨルム、帰還」
アンデッドが接触する直前、ヨルムが僕の意思に応えて姿を消す。
もっと正確に言うならば、ヨルムはあの場から、直接僕の体内に帰還したのだ。
僕とヨルムの間にある契約は召喚契約である。常に一緒に居るから使う機会はあまり無いが、離れた場所から呼び戻す位は実は容易い。
ヨルムが小さい状態で僕の身体から這い出て再び矢に巻き付いたら、弓を引き絞って第二射を放つ。
そして矢が空を舞えば、次の瞬間に再び巨大な姿を空に登場させたヨルムが、先程とは別の場所の防壁を押し潰した。
さぁ、ユルクト・マイアスは僕の存在に気付く前に、後何射行えるだろうか?
五射目を放ち、ヨルムが防壁を押し潰して破壊した時、一瞬だが僕の背筋を怖気が走る。
さっきの五射目で、射撃地点を確認されたのだろう。
怖気を感じたのは余りに一瞬で、気配を感じたってよりは単純に嫌な予感がしただけと言うのが正しい。
でも僕は自分の勘を信じ、すぐさまヨルムを呼び戻して撤退に移った。
此処からが僕にとっての勝負処だ。
防壁の破壊も充分だろう。
あれだけ派手に壊しておけば、単純な労働は出来ても知恵を持たないアンデッドには直せない。
周辺諸国連合による公都攻めまで、精々人を意思無き使い捨ての道具に変えてしまった事を悔めば良いのだ。
地を蹴り、走る。
恐らくだが、ユルクト・マイアスは前回と違って絶対に逃げる僕を諦めないだろう。
あの時僕はヨルムを隠したが、今回は見せた。
明確に脅威となる形で、その存在を知らしめたのだ。
仮に此処で僕を逃がせば、次の被害が防壁だけでは済まないのは確実である。
具体的には、もし今回逃げれたならば次は壊れた防壁から入り込んで、射程内に捉えた公都の城に対してヨルムに同じ事をして貰う心算だった。
故に僕を逃がせば、ユルクト・マイアスは公都を離れる事が出来なくなるだろう。
あんな常識外の破壊工作に対応出来そうなのが彼しかいない以上、そうせざる得ない筈だ。
ユルクト・マイアスは確かに単独で戦況に影響を与えかねない驚異的な人物だが、それでも一人で行える事の数には絶対に限りがあった。
どんなに力を持っていようと、人は一人じゃ不完全な生き物だと宿のおじさんが言っていた。
昔はその言葉の意味は解らなかったけど、今じゃ僕もそう思う。
勿論邪教団が彼以上の人材を隠し持っているのなら、話の前提は大分変わってしまうけれども。
まあ其れは今更考えても仕方のない話である。
不意に、今は僕に巻き付いて居るヨルムが警告の声を発した。
僕は咄嗟にマントを翻し、飛来した黒い艶消しの投げナイフを絡め取って弾く。
大商人であるメルトロさんが用意してくれたこのマントは、飛竜が空を舞う際に身体を支える皮膜で出来ている。
如何に鋭くてもまともに受けさえしなければ、ナイフ如きの刃に傷付くような代物では無いのだ。
されど、流石にナイフの処理をすれば駆ける足は少し鈍った。
「厄介な物を着込みよって、ふん、坊、随分とやってくれたの」
聞こえてきた声は、真横から。
いつの間にか僕と並走していた青年は、相変わらず年寄り臭い口調で僕に語り掛けながら、強烈な回し蹴りを放った。
僕が咄嗟にその蹴りを盾で受け止められたのは、逃走を開始した直後から盾の準備をしてたからだ。
それでも、蹴りを盾で受け止めたにも拘らず、僕の身体は軽々と宙を浮く。
人間離れした膂力だった。下手をすれば中位魔獣にも匹敵しかねない。
まあ僕はカリッサさんで慣れているから、蹴りで宙を浮かされる位では動揺はしないけれども。
追撃に飛んで来た投げナイフを、僕は腰の剣を抜いて払い落す。
未だもう少し逃げなきゃならないが、防戦一方だと少し持ちそうにない。
剣を抜いたのは体術での攻撃を躊躇わせる為だが、果たして目の前の強敵にはどれ程の効果があるだろうか。
「巨大な蛇に飛竜の防具、そして今度はアーティファクトか。坊は色々用意して来たようじゃの。ようやった褒美に降伏して儂の弟子になるか、死ぬかを選ばせてやろうぞ」
相手の言葉を待たずに、僕は腰の革袋を投げつけて、ユルクト・マイアスが身を反らした隙に更に逃げる。
革袋の中身は単なる小麦を挽いた粉だが、手で叩き落とそうとしたりナイフで切り払ってくれれば、目潰し位にはなっただろうに、やはり相手に油断は無い。
でも今は其れが有り難かった。
彼は此方の手札を警戒してる。だから確実に仕留める為に、体力と手札を削る様に圧力をかけて来るのだ。
僕は体力と手札を消費しながらも、少しでも駆けて距離を稼ぐ。
「そろそろ限界と言った所かの。反撃も単調になっておるぞ。此れで最後じゃ、降伏か死かを選べい」
確かに、逃げるのも限界が近かった。
彼の言う通り、小細工の種も尽きている。
でも此れも計算通りだ。最後の仕事を果たすとしよう。
僕は、盾を構え、剣の切っ先を彼に向けた。
「いいえ、死ぬのは貴方だ。アイアス盗賊ギルド先代マスター、ユルクト・マイアス。この戦争は人が勝利します」
僕の言葉を強がりと受け取ったのか、彼の顔に嘲笑が浮かぶ。
次の瞬間、バチリと雷光が宙を走り、咄嗟に身を翻そうとした彼、ユルクト・マイアスの片腕を焼いた。
ユーディッド
age14
color hair 茶色 eye 緑色
job 狩人/戦士 rank6(中級冒険者)
skill
片手剣6 盾5(↑) 格闘術5(↑) 弓7 短剣4 逆手武器3
野外活動7(↑) 隠密7(↑) 気配察知7 罠4 鍵知識3 調薬2 乗馬1
unknown 召喚術(ヨルム) 集中(射撃精度上昇、精密作業時の精度上昇)
所持武装
ロングソード『白牙』(アーティファクト) ドワーフ製の複合弓(最高)
鋼の短剣(最高) ミスリルの短剣(最高) 飛竜の鱗の盾(最高)
飛竜の皮膜のマント(最高) 高位魔獣革の部分鎧(最高) デススパイダーシルクの手袋(最高)
ヨルム
age? rank9(↑)(上位相当)
skill 縮小化 巨大化 硬化 再生 毒分泌 特殊感覚 脱皮
unknown 契約(ユーディッド) 感覚共有(ユーディッド) skill共有(硬化+再生・ユーディッド)
カリッサ・クラム(guest)
age19
color hair 赤色 eye 赤色 (skin 褐色)
job 神官(食神)/戦士 rank6(中級冒険者)
skill 両手剣7 片手剣4 槌鉾5 格闘術5 神聖魔法7 野外活動2 気配察知2 調理5 乗馬3 その他
unknown 食神の祝福(身体能力上昇、食料消費3倍) 食神の加護(身体能力上昇、発動時は体力消耗)
所持武装 鋼のグレートソード(高) 鋼の槌鉾(高) 鋼のコートオブプレート(高)
朽多 藤蔵(guest)
age26
color hair 黒色 eye 黒色
job 侍 rank7(中級冒険者)
skill 朽多派一刀流9(10/8) 片手剣4 柔術7 野外活動3 気配察知6 その他
unknown 闘気・中(発動時に体力消耗。身体能力、攻撃力、防御力を中上昇)
所持武装 ドワーフ製の刀(最高) 高位魔獣の革鎧(最高)
パラクス(guest)
age25
color hair 金色 eye 緑色
job 魔術師/錬金術師 rank6(中級冒険者)
skill 術式魔術7 術式研究7 錬金術5 野外活動4 気配察知4 雑学知識5 その他
unknown なし
所持武装 ミスリルスタッフ(最高) 魔術師のローブ(並)
此れまでの訓練と経験により、ユーディッドの盾、格闘術、野外活動、隠密が上昇しました。
ヨルムのrankが上昇しました。skill共有の種類が増加しました。
またカリッサ・クラム、朽多 藤蔵、パラクスのステータスが更新されています。
1
あなたにおすすめの小説
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~
みちのあかり
ファンタジー
同じゼミに通う王子から、ありえないプロポーズを受ける貧乏奨学生のレイシア。
何でこんなことに? レイシアは今までの生き方を振り返り始めた。
第一部(領地でスローライフ)
5歳の誕生日。お父様とお母様にお祝いされ、教会で祝福を受ける。教会で孤児と一緒に勉強をはじめるレイシアは、その才能が開花し非常に優秀に育っていく。お母様が里帰り出産。生まれてくる弟のために、料理やメイド仕事を覚えようと必死に頑張るレイシア。
お母様も戻り、家族で幸せな生活を送るレイシア。
しかし、未曽有の災害が起こり、領地は借金を負うことに。
貧乏でも明るく生きるレイシアの、ハートフルコメディ。
第二部(学園無双)
貧乏なため、奨学生として貴族が通う学園に入学したレイシア。
貴族としての進学は奨学生では無理? 平民に落ちても生きていけるコースを選ぶ。
だが、様々な思惑により貴族のコースも受けなければいけないレイシア。お金持ちの貴族の女子には嫌われ相手にされない。
そんなことは気にもせず、お金儲け、特許取得を目指すレイシア。
ところが、いきなり王子からプロポーズを受け・・・
学園無双の痛快コメディ
カクヨムで240万PV頂いています。
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる