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第七章『背信の黒将』
82 悪魔王と世界を救うVRRPG
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僕がアウネリアとこの部屋に閉じ込められてから、およそ三ヶ月が経過した。
此の部屋は外からモニターできない様に結界を張っているが、まさか中で三ヵ月間の間普通に生活してるとは、反乱軍の人達も思ってないだろう。
因みに今日は訓練は休みの日だ。
訓練強度的に、休みをちゃんと取らないと逆に精神を壊しかねないので、アウネリアに休日の訓練は禁止している。
まあ禁止しなくても、休日に動く余力を残す様な軟弱な訓練は課していないが。
そんな休息の最中、不意にアウネリアがポツリと呟く。
「レプト様、……私は、本当にガユルス将軍に勝てるのでしょうか?」
其の呟きは恐らく言葉通りの意味だけでなく、この狭い空間内で過ごす間に積もった不安の発露だろう。
此処での生活に関しては、僕は出来る限りを彼女に提供していた。
皇女としての生活がどんな物だったのかはちょっとわからないけれど、衣食住の全てに関して上質と呼べる物を用意している。
何せ酸素さえも魔法で浄化と循環を行ってるので、此の場所の生活の全ては僕が司ると言って良い。
娯楽に関しても、大体の物は提供出来た。
絵が描きたいと言えば画材が出せるし、レース編みの用意だって出来る。
流石にテレビなんかは無理だけど、僕の記憶に在る光景を映像として中空に映し出す事だって可能だ。
ファンタジー世界の戦争風景なんて、宇宙を人類が飛び回る時代に生まれたアウネリアにはとても物珍しい物だろう。
此れまで体験してきた話も、そりゃあ人間とは比較にならない程存在してるのだから、其れこそ幾らでも語り続けられた。
しかし其れでも、例え何不自由なくとも、密閉空間に閉じ込められ続ける事は、人の精神にストレスを与え続ける。
恐らく其の積もったストレスが不安となって、アウネリアに弱気な言葉を吐かせたのだ。
だから僕は、彼女の言葉に首をかしげて少しばかり思い悩む。
多分あと三ヶ月もあるのだから、充分に勝てはするだろう。
或いは今の段階でも、既にアウネリアがガユルス将軍を上回ってる可能性だってあった。
何故なら、今のアウネリアの実力は、適当な世界の魔王軍の四天王の一人なら充分に討ち取れる程度になってるから。
其れ位にアウネリアの生神力は成長速度が早い。
勿論ベラは例外だ。あんな強い四天王は何処の世界にもいやしない。
魔王クラスになると流石に厳しいだろうけれど、
「別に大丈夫じゃないかなぁ。今のアウネリアは、大分昔に行った世界の、勇者と同じ位の実力はあるしね」
そう、優れた仲間に囲まれれば、其れをも討伐出来るのだ。
だがその言葉を聞いたアウネリアは、眉根を寄せる。
「魔王とか勇者って言われても良くわかりません。私、まだレプト様にも勝てませんし……」
申し訳なさそうに言うアウネリアだが、成る程、彼女の言い分も尤もだった。
見た事も無い魔王や勇者を比較に出されても、実感できなくて当然だろう。
「僕より強い魔王は多分どの世界にもいないけど、うーん、じゃあ折角だし、見て来る?」
不意の思い付きに、僕はポンと手を打つ。
見た事が無いなら見せれば良いし、狭い場所でストレスが溜まって弱気になってるなら、広い場所に放り出せば良い。
非常に単純な事である。
どうせなら修行も兼ねて、魔王討伐に参加させよう。
と言っても当然、この密閉された空間から出られないのだから、別の世界にアウネリアを連れて行く訳じゃ無い。
記憶にある世界を僕の内部に疑似的に再現し、其処にアウネリアの精神を夢のような形で招き入れる。
此れでアウネリアに不足してる実戦経験を少しでも補う事だって出来るから、ストレスの発散と実力の把握も合わせて、一石三鳥の名案だろう。
まあ普通は思い付いても出来ないのだけれども、其処は其れ、仮にも僕は魔界一つを支配する悪魔王なのだ。
疑似的に世界を再現する位なら、容易いとまでは言わないが、決して不可能でも無かった。
そして夜、眠るアウネリアを送り込むは、遥かな過去に僕が十二の座の悪魔として、魔王討伐を見守った世界。
ただし夜中になる度に盛っていた勇者は、色々と問題があるので削除する。
だからその代役が、神より不思議な力、まあ生神力だが、を授かったって設定のアウネリアが埋めるのだ。
あの世界の魔王は特に勇者じゃなくても倒せる相手なので丁度良い。
僕が見てた時は、十二の座の連続召喚で敢え無い最期を遂げていた。
まあ別にアウネリアはもう子供扱いして良い年齢では無いので、教育に悪いって訳じゃ無いけれど、でも既に死んだ人物の幻影と恋愛でもする事になったら、其れはとても残酷だろう。
勿論女同士でも、世界を救う旅を通して友情は芽生えるかも知れないが、だが其れでもあの世界はちゃんと既に救われた。
そう言って飲み込んで貰おうと思ってる。
再現世界で動き回るアウネリアは、実にのびのびと楽しそうだ。
やはり狭い場所にずっと押し込められていたのが窮屈だったのだろう。
元よりこの三ヶ月で戦闘力を急上昇させていた彼女は、単なる魔物が相手なら、軍を成していようがほぼ無双状態である。
生神力で中空に造った足場を蹴って上空から切り込み、力場の剣でトロールを真っ二つに切り裂く。
ゴブリン等の小型妖魔が遠間から次々に弓を射かけるが、感応で其れを察したアウネリアはまるですり抜けるかの様に矢の雨を回避し、彼女が剣を振う度に魔物の悲鳴が辺りに響いた。
圧倒的な強さを見せつけるアウネリアに魔物が怯めば、女魔術師や女神官等も援護を放ち、其れから程無く、魔物軍は戦意を失い崩壊する。
部隊長格を討てば、そのうち四天王が出張って来る。
確かあの世界の四天王は、一人目が僕の吹き飛ばしたリッチキングで、二人目が炎の大精霊、三人目が魔族の将軍で、四人目が魔竜だった。
リッチキングと炎の大精霊には少し苦戦するかも知れない。
何故ならその二人には、物理的な攻撃が然程意味を成さないから。
勿論工夫次第なのだけれど、アウネリアは其れに気付けるだろうか?
何にせよ、再現世界を救えたならば、その経験は例え疑似であっても彼女の自信と力になる。
彼女が一体どんな風にあの世界をクリアするのか、僕ものんびり観戦して楽しもうと思う。
此の部屋は外からモニターできない様に結界を張っているが、まさか中で三ヵ月間の間普通に生活してるとは、反乱軍の人達も思ってないだろう。
因みに今日は訓練は休みの日だ。
訓練強度的に、休みをちゃんと取らないと逆に精神を壊しかねないので、アウネリアに休日の訓練は禁止している。
まあ禁止しなくても、休日に動く余力を残す様な軟弱な訓練は課していないが。
そんな休息の最中、不意にアウネリアがポツリと呟く。
「レプト様、……私は、本当にガユルス将軍に勝てるのでしょうか?」
其の呟きは恐らく言葉通りの意味だけでなく、この狭い空間内で過ごす間に積もった不安の発露だろう。
此処での生活に関しては、僕は出来る限りを彼女に提供していた。
皇女としての生活がどんな物だったのかはちょっとわからないけれど、衣食住の全てに関して上質と呼べる物を用意している。
何せ酸素さえも魔法で浄化と循環を行ってるので、此の場所の生活の全ては僕が司ると言って良い。
娯楽に関しても、大体の物は提供出来た。
絵が描きたいと言えば画材が出せるし、レース編みの用意だって出来る。
流石にテレビなんかは無理だけど、僕の記憶に在る光景を映像として中空に映し出す事だって可能だ。
ファンタジー世界の戦争風景なんて、宇宙を人類が飛び回る時代に生まれたアウネリアにはとても物珍しい物だろう。
此れまで体験してきた話も、そりゃあ人間とは比較にならない程存在してるのだから、其れこそ幾らでも語り続けられた。
しかし其れでも、例え何不自由なくとも、密閉空間に閉じ込められ続ける事は、人の精神にストレスを与え続ける。
恐らく其の積もったストレスが不安となって、アウネリアに弱気な言葉を吐かせたのだ。
だから僕は、彼女の言葉に首をかしげて少しばかり思い悩む。
多分あと三ヶ月もあるのだから、充分に勝てはするだろう。
或いは今の段階でも、既にアウネリアがガユルス将軍を上回ってる可能性だってあった。
何故なら、今のアウネリアの実力は、適当な世界の魔王軍の四天王の一人なら充分に討ち取れる程度になってるから。
其れ位にアウネリアの生神力は成長速度が早い。
勿論ベラは例外だ。あんな強い四天王は何処の世界にもいやしない。
魔王クラスになると流石に厳しいだろうけれど、
「別に大丈夫じゃないかなぁ。今のアウネリアは、大分昔に行った世界の、勇者と同じ位の実力はあるしね」
そう、優れた仲間に囲まれれば、其れをも討伐出来るのだ。
だがその言葉を聞いたアウネリアは、眉根を寄せる。
「魔王とか勇者って言われても良くわかりません。私、まだレプト様にも勝てませんし……」
申し訳なさそうに言うアウネリアだが、成る程、彼女の言い分も尤もだった。
見た事も無い魔王や勇者を比較に出されても、実感できなくて当然だろう。
「僕より強い魔王は多分どの世界にもいないけど、うーん、じゃあ折角だし、見て来る?」
不意の思い付きに、僕はポンと手を打つ。
見た事が無いなら見せれば良いし、狭い場所でストレスが溜まって弱気になってるなら、広い場所に放り出せば良い。
非常に単純な事である。
どうせなら修行も兼ねて、魔王討伐に参加させよう。
と言っても当然、この密閉された空間から出られないのだから、別の世界にアウネリアを連れて行く訳じゃ無い。
記憶にある世界を僕の内部に疑似的に再現し、其処にアウネリアの精神を夢のような形で招き入れる。
此れでアウネリアに不足してる実戦経験を少しでも補う事だって出来るから、ストレスの発散と実力の把握も合わせて、一石三鳥の名案だろう。
まあ普通は思い付いても出来ないのだけれども、其処は其れ、仮にも僕は魔界一つを支配する悪魔王なのだ。
疑似的に世界を再現する位なら、容易いとまでは言わないが、決して不可能でも無かった。
そして夜、眠るアウネリアを送り込むは、遥かな過去に僕が十二の座の悪魔として、魔王討伐を見守った世界。
ただし夜中になる度に盛っていた勇者は、色々と問題があるので削除する。
だからその代役が、神より不思議な力、まあ生神力だが、を授かったって設定のアウネリアが埋めるのだ。
あの世界の魔王は特に勇者じゃなくても倒せる相手なので丁度良い。
僕が見てた時は、十二の座の連続召喚で敢え無い最期を遂げていた。
まあ別にアウネリアはもう子供扱いして良い年齢では無いので、教育に悪いって訳じゃ無いけれど、でも既に死んだ人物の幻影と恋愛でもする事になったら、其れはとても残酷だろう。
勿論女同士でも、世界を救う旅を通して友情は芽生えるかも知れないが、だが其れでもあの世界はちゃんと既に救われた。
そう言って飲み込んで貰おうと思ってる。
再現世界で動き回るアウネリアは、実にのびのびと楽しそうだ。
やはり狭い場所にずっと押し込められていたのが窮屈だったのだろう。
元よりこの三ヶ月で戦闘力を急上昇させていた彼女は、単なる魔物が相手なら、軍を成していようがほぼ無双状態である。
生神力で中空に造った足場を蹴って上空から切り込み、力場の剣でトロールを真っ二つに切り裂く。
ゴブリン等の小型妖魔が遠間から次々に弓を射かけるが、感応で其れを察したアウネリアはまるですり抜けるかの様に矢の雨を回避し、彼女が剣を振う度に魔物の悲鳴が辺りに響いた。
圧倒的な強さを見せつけるアウネリアに魔物が怯めば、女魔術師や女神官等も援護を放ち、其れから程無く、魔物軍は戦意を失い崩壊する。
部隊長格を討てば、そのうち四天王が出張って来る。
確かあの世界の四天王は、一人目が僕の吹き飛ばしたリッチキングで、二人目が炎の大精霊、三人目が魔族の将軍で、四人目が魔竜だった。
リッチキングと炎の大精霊には少し苦戦するかも知れない。
何故ならその二人には、物理的な攻撃が然程意味を成さないから。
勿論工夫次第なのだけれど、アウネリアは其れに気付けるだろうか?
何にせよ、再現世界を救えたならば、その経験は例え疑似であっても彼女の自信と力になる。
彼女が一体どんな風にあの世界をクリアするのか、僕ものんびり観戦して楽しもうと思う。
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