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二十二話
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騎士6人と一般のルディエ住民20人、プラスユグリ村の村娘1人と異世界人の魂の入ってるカテゴリー不明の俺1人。これだけの人数での移動はそりゃあ大変だ…と思ってました。
騎士達に進行ルートを指示してもらい、俺が先に立って熱感知で敵を見つけて片っ端から潰していく。避難民には騎士達が張り付いているので大丈夫とは思うが、一応行動する時には周りや背後にも警戒しておく。
そんな感じで俺1人で黒ローブを8人倒したところで、ルディエ城までは残り通り2つ抜ければ辿り着く所まで進んだ。
避難民に近付けた黒ローブは1人も居ないし、ここまでの所要時間15分くらいか。相場は知らんが順調でしょ。
「凄えな兄ちゃん! こんな小さいのにとんでもなく強いな!?」
「まあ、それなりに。あと小さいは余計だ」
避難民とも話すくらいの余裕はある。
皆最初は挙動不審に周りを気にしたりしていたが、今では大分緊張が緩和されたようで幾分か顔に表情が戻っている。
「あんまりルディエじゃ見ないけど、どこの人かしら? 冒険者の人?」
「ノーコメント」
避難民の緊張が和らいでも、俺まで緊張解くわけにはいかんしなあ。…っと。
「止まって」
「敵か!?」
「いや、まだ遠いけど。多分城の前辺りに人がたくさん居る。戦ってるっぽいからこの人数で近付くのは危ないかも」
避難民達の緩んでいた緊張の糸がもう一度張り直される。
一方、騎士達は必要以上に緊迫した空気は出さない。護ってる側の緊張は更に避難民を怯えさせると分かってるんだろう。俺もそれに習っていつも通りの態度を貫く。
「とりあえず俺が先に行って様子見てくるよ。やれそうなら城の前の敵も排除してくる」
「1人で大丈夫か?」
「大丈夫は大丈夫だけど、他の騎士達の顔繋ぎに誰か一緒に来て欲しいな」
ブレイブソードを持ってる事に関しての説明とか、いちいちするのが面倒くさいし時間の無駄だ。
「それならば、私が行こう」
「副団長!」
明弘さんの死を告げた騎士…って、アンタ副団長やったん!? 平かと思ったら意外と偉い人だった!! 結構無礼な口叩いちゃったけど、流してくれてると良いな…。
「この場は任せる」
「「「「はっ!」」」」
「…ええっと…じゃあ、行きましょうか…?」
「君、どうして突然敬語に…」
だって…偉い人だったし。明弘さんの代理が無礼な奴とか思われたら困るし。そもそも俺が無礼な態度取ると、ロイド君の無礼になるじゃん……言葉使いも出来るだけ気を付けよう…うん、あくまで出来るだけだけど…。
「あ……の…」
袖を引っ張られた。
振り返るまでもなく分かってるイリスだ。熱感知で、後ろから近付いて来てたのは知ってたしな。
「どうした?」
「私は…?」
「イリスも留守番組、ここで皆と待っててくれ」
「……はい…」
歯切れ悪いな。まあ、こんな状況で俺―――って言うか、ロイド君と離れるのが不安なのか。つっても、危ない場所に行くから連れてくわけにも行かない。
「大丈夫だ。さっきと同じ、なんかあったら大声で呼べ」
「…うん」
「んじゃ、副団長さん行きましょうか」
「うむ」
皆をその場に残して2人で移動する。物陰から物陰に…。
なんか、忍者にでもなった気分。ああ、なんか状況を忘れて、昔カグと一緒に忍者ごっこをした事を思い出してしまった。
気緩めてる場合じゃねえって、警戒警戒…。
敵とのエンカウントがないまま城の手前まで到着。
さて、状況はっと。
建物の陰からこっそり顔を出す。熱感知で大まかな状況は理解できるけど、人が入り乱れて戦闘してると何が何やら分からんからな。
そういや、城の前まで来た事なかったなー。とか思いつつ城の前の広場の状況を観察する。
まあ、城への感想は置いとくとして…。
城門前に軽装の兵士達が陣取って敵の侵入を防ぎ、重装甲の騎士達が広場のあちこちで黒ローブと対峙していて、その中に恰好がバラバラの人達が混じっている。って、アレ? アルトさんとレイアさんじゃねえか? とすると、あの人達は他の冒険者か?
にしても黒ローブの数が多いな、20人くらいか…。いや、それより気になるのは騎士3人を相手どっている赤い鎧の金髪。
見覚えがある。と言うか、あり過ぎる。俺に炎の魔法ブチかまして地下に落とした奴だ。
「君? 大丈夫か? 顔色が…」
「…大丈夫です」
地下での痛みが脳裏で再生される。
……引っ込んでろよ。死への恐怖を思い出すと、ビビって足が動かなくなりそうだ。
「じゃあ、俺が先に突っ込んで敵片っ端から潰して行くので」
「君が強いのは理解しているが、無理をしない方が良い。特にあの赤い鎧は魔道皇帝の側近の1人だ。先日アキヒロ様に敗れはしたが、その強さはルーク級に匹敵する」
「まあ、何とかしますよ。コッチはその明弘さんの代理ですから」
個人的に野郎を殴り飛ばさないと気が済まない事情があるしな。
側近ってんなら、アイツを潰せば敵の戦意も削げるかもだし。
「行きます!」
広場に飛び出す。
何人かが俺に気付くが、皆自分の事で手一杯で何かしら俺に対して行動を起こす人間はいない。
好都合。
目指すのは広場中央。
ここでアルトさんとレイアさんが俺に気付いて何か叫んだ。距離があって良く聞こえなかったけど、多分「逃げろ(て)!!」って言ったんだと思う。
それはともかく、俺の手札で最強なのは間違いなく魔炎だ。火力も範囲も自由自在で連射も利く。ただし、距離に関しては少し縛りがあって、多分半径30mくらいが限界。この広場の直径が50m程、中心に立てば広場のどこにでも発火させられる。
さっきの避難民を助けて戦った時に、炎を見せ過ぎると相手が耐性魔法で対処してくる事を学んだので、それに対しての俺なりのアンサーを出してみた。
さて、ここら辺が中心かな。
「全員纏めて―――」
視界の中の黒いローブは7人。
「灰になれっ!!」
右手を横に振る。
何が起こったのか分からずに炎に呑まれる7人。
視線を横にずらして次の敵を視界に入れる。
次は5人!
手を振る。敵が燃える。視線を横に移動。同じ行動を更に2度繰り返して止まる。
10秒もかからずに広場にいた敵が火の海に沈んだ。
「ふぃー…」
コレが俺のアンサーだ。
相手がコッチの炎に対処してくるってんなら、対処する間もなく焼き殺す。先手必勝は子供の喧嘩も殺し合いも変わらんだろ。
とか思って余裕こいてたら、右斜め後ろから高温な塊が突っ込んでくる。
「おっと!?」
あっぶね!? 何とか避けたけど何だったの、今の? 火の球? …って、ああ、炎熱は別に避ける必要ないんだっけ。体が咄嗟に反応しちまう。
「何者だ小僧!」
さっきの火の球を俺に寄越してくれた犯人がノシノシと肩で風を切って歩いて来る。
赤い鎧に金髪。
コイツも黒ローブと一緒に焼いたんだけどな…ほら、体のあちこちが焦げてるし。いや、ちょっと待て…人を灰に出来るくらいの火力出したのにこのダメージは少な過ぎる。こんにゃろうめ、最初っから炎耐性張ってやがったな…。
「名乗るほどの者じゃないよ。んな事よりオッサン何で片腕ねえの?」
前に明弘さんと戦ってた時には両腕あったと思うんだが。明弘さんが斬り落としたのか?
「黙れ!!」
「何で怒んの……。カリカリすんなよ、牛乳飲め」
「ふざけた小僧だっ! 殺すぞ!!」
殺す、ね。
ゆっくりとブレイブソードを構える。
「2度も殺されちゃたまんねえよ。悪いけど、今度死ぬのはお前の番だぜ」
「2度? 何を言って……なっ!? それはブレイブソードだと!?」
「話は終わり。コッチもあんまりのろくさやってる時間がねえからな」
「良いだろう。貴様が何者であろうともブレイブソードを持つ人間は生かしておかん!! 【デスペラード・フレア】!!!!」
この魔法は1度見たな。まさしく俺が殺された魔法だ
ブレイブソードで消せるけど、ここはあえて――――。
剣を下げて歩き出す。
炎の塊が俺を呑み込む。
「はっはっは! 我が最高の火炎魔法で死ねた事を光栄に思うが良い!」
炎の塊を素通りして更に歩く。
「は…ど、う言う事だ…耐性魔法…!? いや、違うブレイブソードの力か!?」
的外れたバーロー。
「貴様いったい…!」
「ぬるいんだよ炎が」
駆けだす。
男が慌てて後ろに退こうとするが逃がさない。そもそも、スキルで身体能力を強化している俺とコイツとではスピードが違い過ぎる。すぐさま間合いを詰めてブレイブソードを振る。
「ぐぉ…!」
左肩に深く食い込み血が噴き出す。
けど鎧に救われたな。硬くて刃がそれ以上入っていかない。
「舐めるな!! 【クリメイション】!!」
超至近距離で魔法が発動。
視界が一瞬で真っ赤に染まる。
だが、それだけだ。火傷1つのダメージもない。
「ひッ!?」
「だから、ぬるいんだよ炎が。人を焼く時は―――」
無造作に手を伸ばして男の体に触れる。
鎧の内側から炎が溢れだし、空気と魔素を喰らって一瞬にして赤い悪魔が膨れ上がる。
「い、ぃぎゃあ!!」
短い悲鳴を上げて、炎に抱かれたまま地面に倒れる男。
「こうだ」
黒焦げになった鎧を見降ろしながら、内心ホッと一息吐く。
相手の炎熱耐性が魔法によって付与されたもので良かった…。恰好つけて戦った手前、今ので仕留め切れなかったら相当間抜けだもんなあ…。
「ロイド君!」
「アルトさん、レイアさん。ども、無事そうで何よりです」
「コッチのセリフよ! 大丈夫なの!?」
「いやいやいや! それより何だよ今の炎!? どんな魔法だよ!?」
「えー…色々あって以下略」
「イカリャクって何!?」
説明が面倒くさいので察して下さいって意味です。
「あー、話は待っといて貰えますか? ちょっと避難民呼んでくるんで」
「避難民って、ロイド君も避難民じゃないの?」
「俺は避難してる場合じゃないんで」
何人かの兵士を警戒に出して、残った騎士と兵士を一度集めて何やら話している副団長さん。偉い人だからなあ、コレからの状況対応のアレやコレやで忙しそうだな。
しゃーない、俺1人で呼びに行ってくるか。と元来た道に足を向ける。
騎士達に進行ルートを指示してもらい、俺が先に立って熱感知で敵を見つけて片っ端から潰していく。避難民には騎士達が張り付いているので大丈夫とは思うが、一応行動する時には周りや背後にも警戒しておく。
そんな感じで俺1人で黒ローブを8人倒したところで、ルディエ城までは残り通り2つ抜ければ辿り着く所まで進んだ。
避難民に近付けた黒ローブは1人も居ないし、ここまでの所要時間15分くらいか。相場は知らんが順調でしょ。
「凄えな兄ちゃん! こんな小さいのにとんでもなく強いな!?」
「まあ、それなりに。あと小さいは余計だ」
避難民とも話すくらいの余裕はある。
皆最初は挙動不審に周りを気にしたりしていたが、今では大分緊張が緩和されたようで幾分か顔に表情が戻っている。
「あんまりルディエじゃ見ないけど、どこの人かしら? 冒険者の人?」
「ノーコメント」
避難民の緊張が和らいでも、俺まで緊張解くわけにはいかんしなあ。…っと。
「止まって」
「敵か!?」
「いや、まだ遠いけど。多分城の前辺りに人がたくさん居る。戦ってるっぽいからこの人数で近付くのは危ないかも」
避難民達の緩んでいた緊張の糸がもう一度張り直される。
一方、騎士達は必要以上に緊迫した空気は出さない。護ってる側の緊張は更に避難民を怯えさせると分かってるんだろう。俺もそれに習っていつも通りの態度を貫く。
「とりあえず俺が先に行って様子見てくるよ。やれそうなら城の前の敵も排除してくる」
「1人で大丈夫か?」
「大丈夫は大丈夫だけど、他の騎士達の顔繋ぎに誰か一緒に来て欲しいな」
ブレイブソードを持ってる事に関しての説明とか、いちいちするのが面倒くさいし時間の無駄だ。
「それならば、私が行こう」
「副団長!」
明弘さんの死を告げた騎士…って、アンタ副団長やったん!? 平かと思ったら意外と偉い人だった!! 結構無礼な口叩いちゃったけど、流してくれてると良いな…。
「この場は任せる」
「「「「はっ!」」」」
「…ええっと…じゃあ、行きましょうか…?」
「君、どうして突然敬語に…」
だって…偉い人だったし。明弘さんの代理が無礼な奴とか思われたら困るし。そもそも俺が無礼な態度取ると、ロイド君の無礼になるじゃん……言葉使いも出来るだけ気を付けよう…うん、あくまで出来るだけだけど…。
「あ……の…」
袖を引っ張られた。
振り返るまでもなく分かってるイリスだ。熱感知で、後ろから近付いて来てたのは知ってたしな。
「どうした?」
「私は…?」
「イリスも留守番組、ここで皆と待っててくれ」
「……はい…」
歯切れ悪いな。まあ、こんな状況で俺―――って言うか、ロイド君と離れるのが不安なのか。つっても、危ない場所に行くから連れてくわけにも行かない。
「大丈夫だ。さっきと同じ、なんかあったら大声で呼べ」
「…うん」
「んじゃ、副団長さん行きましょうか」
「うむ」
皆をその場に残して2人で移動する。物陰から物陰に…。
なんか、忍者にでもなった気分。ああ、なんか状況を忘れて、昔カグと一緒に忍者ごっこをした事を思い出してしまった。
気緩めてる場合じゃねえって、警戒警戒…。
敵とのエンカウントがないまま城の手前まで到着。
さて、状況はっと。
建物の陰からこっそり顔を出す。熱感知で大まかな状況は理解できるけど、人が入り乱れて戦闘してると何が何やら分からんからな。
そういや、城の前まで来た事なかったなー。とか思いつつ城の前の広場の状況を観察する。
まあ、城への感想は置いとくとして…。
城門前に軽装の兵士達が陣取って敵の侵入を防ぎ、重装甲の騎士達が広場のあちこちで黒ローブと対峙していて、その中に恰好がバラバラの人達が混じっている。って、アレ? アルトさんとレイアさんじゃねえか? とすると、あの人達は他の冒険者か?
にしても黒ローブの数が多いな、20人くらいか…。いや、それより気になるのは騎士3人を相手どっている赤い鎧の金髪。
見覚えがある。と言うか、あり過ぎる。俺に炎の魔法ブチかまして地下に落とした奴だ。
「君? 大丈夫か? 顔色が…」
「…大丈夫です」
地下での痛みが脳裏で再生される。
……引っ込んでろよ。死への恐怖を思い出すと、ビビって足が動かなくなりそうだ。
「じゃあ、俺が先に突っ込んで敵片っ端から潰して行くので」
「君が強いのは理解しているが、無理をしない方が良い。特にあの赤い鎧は魔道皇帝の側近の1人だ。先日アキヒロ様に敗れはしたが、その強さはルーク級に匹敵する」
「まあ、何とかしますよ。コッチはその明弘さんの代理ですから」
個人的に野郎を殴り飛ばさないと気が済まない事情があるしな。
側近ってんなら、アイツを潰せば敵の戦意も削げるかもだし。
「行きます!」
広場に飛び出す。
何人かが俺に気付くが、皆自分の事で手一杯で何かしら俺に対して行動を起こす人間はいない。
好都合。
目指すのは広場中央。
ここでアルトさんとレイアさんが俺に気付いて何か叫んだ。距離があって良く聞こえなかったけど、多分「逃げろ(て)!!」って言ったんだと思う。
それはともかく、俺の手札で最強なのは間違いなく魔炎だ。火力も範囲も自由自在で連射も利く。ただし、距離に関しては少し縛りがあって、多分半径30mくらいが限界。この広場の直径が50m程、中心に立てば広場のどこにでも発火させられる。
さっきの避難民を助けて戦った時に、炎を見せ過ぎると相手が耐性魔法で対処してくる事を学んだので、それに対しての俺なりのアンサーを出してみた。
さて、ここら辺が中心かな。
「全員纏めて―――」
視界の中の黒いローブは7人。
「灰になれっ!!」
右手を横に振る。
何が起こったのか分からずに炎に呑まれる7人。
視線を横にずらして次の敵を視界に入れる。
次は5人!
手を振る。敵が燃える。視線を横に移動。同じ行動を更に2度繰り返して止まる。
10秒もかからずに広場にいた敵が火の海に沈んだ。
「ふぃー…」
コレが俺のアンサーだ。
相手がコッチの炎に対処してくるってんなら、対処する間もなく焼き殺す。先手必勝は子供の喧嘩も殺し合いも変わらんだろ。
とか思って余裕こいてたら、右斜め後ろから高温な塊が突っ込んでくる。
「おっと!?」
あっぶね!? 何とか避けたけど何だったの、今の? 火の球? …って、ああ、炎熱は別に避ける必要ないんだっけ。体が咄嗟に反応しちまう。
「何者だ小僧!」
さっきの火の球を俺に寄越してくれた犯人がノシノシと肩で風を切って歩いて来る。
赤い鎧に金髪。
コイツも黒ローブと一緒に焼いたんだけどな…ほら、体のあちこちが焦げてるし。いや、ちょっと待て…人を灰に出来るくらいの火力出したのにこのダメージは少な過ぎる。こんにゃろうめ、最初っから炎耐性張ってやがったな…。
「名乗るほどの者じゃないよ。んな事よりオッサン何で片腕ねえの?」
前に明弘さんと戦ってた時には両腕あったと思うんだが。明弘さんが斬り落としたのか?
「黙れ!!」
「何で怒んの……。カリカリすんなよ、牛乳飲め」
「ふざけた小僧だっ! 殺すぞ!!」
殺す、ね。
ゆっくりとブレイブソードを構える。
「2度も殺されちゃたまんねえよ。悪いけど、今度死ぬのはお前の番だぜ」
「2度? 何を言って……なっ!? それはブレイブソードだと!?」
「話は終わり。コッチもあんまりのろくさやってる時間がねえからな」
「良いだろう。貴様が何者であろうともブレイブソードを持つ人間は生かしておかん!! 【デスペラード・フレア】!!!!」
この魔法は1度見たな。まさしく俺が殺された魔法だ
ブレイブソードで消せるけど、ここはあえて――――。
剣を下げて歩き出す。
炎の塊が俺を呑み込む。
「はっはっは! 我が最高の火炎魔法で死ねた事を光栄に思うが良い!」
炎の塊を素通りして更に歩く。
「は…ど、う言う事だ…耐性魔法…!? いや、違うブレイブソードの力か!?」
的外れたバーロー。
「貴様いったい…!」
「ぬるいんだよ炎が」
駆けだす。
男が慌てて後ろに退こうとするが逃がさない。そもそも、スキルで身体能力を強化している俺とコイツとではスピードが違い過ぎる。すぐさま間合いを詰めてブレイブソードを振る。
「ぐぉ…!」
左肩に深く食い込み血が噴き出す。
けど鎧に救われたな。硬くて刃がそれ以上入っていかない。
「舐めるな!! 【クリメイション】!!」
超至近距離で魔法が発動。
視界が一瞬で真っ赤に染まる。
だが、それだけだ。火傷1つのダメージもない。
「ひッ!?」
「だから、ぬるいんだよ炎が。人を焼く時は―――」
無造作に手を伸ばして男の体に触れる。
鎧の内側から炎が溢れだし、空気と魔素を喰らって一瞬にして赤い悪魔が膨れ上がる。
「い、ぃぎゃあ!!」
短い悲鳴を上げて、炎に抱かれたまま地面に倒れる男。
「こうだ」
黒焦げになった鎧を見降ろしながら、内心ホッと一息吐く。
相手の炎熱耐性が魔法によって付与されたもので良かった…。恰好つけて戦った手前、今ので仕留め切れなかったら相当間抜けだもんなあ…。
「ロイド君!」
「アルトさん、レイアさん。ども、無事そうで何よりです」
「コッチのセリフよ! 大丈夫なの!?」
「いやいやいや! それより何だよ今の炎!? どんな魔法だよ!?」
「えー…色々あって以下略」
「イカリャクって何!?」
説明が面倒くさいので察して下さいって意味です。
「あー、話は待っといて貰えますか? ちょっと避難民呼んでくるんで」
「避難民って、ロイド君も避難民じゃないの?」
「俺は避難してる場合じゃないんで」
何人かの兵士を警戒に出して、残った騎士と兵士を一度集めて何やら話している副団長さん。偉い人だからなあ、コレからの状況対応のアレやコレやで忙しそうだな。
しゃーない、俺1人で呼びに行ってくるか。と元来た道に足を向ける。
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