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レイーアの戸惑い
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「レイーア・ガリヴァと申します。よろしくお願い致します」
固い笑顔を見せ礼を取るレイーアを、同じく固い笑顔で向かい入れるクーン男爵夫妻。
この場で満面の笑みを見せているのは、マットだけ。
そしてすべての真実を知るのもマットだけ。
いや、クーン夫妻はギリギリことの真相の根底を知っている。
本当に何も知らないのは、レイーアだけだ。
「歓迎するよ、レイーア嬢」
クーン男爵は、レイーアの手をとって、その視線に言葉をのせた。
『本当にうちの息子でいいのかな? 大丈夫? 騙されてない?』
「歓迎するわ。レイーアさん」
クーン男爵夫人も、その視線に言葉をのせた。
『うちの息子、ちょっと思い込みと強引さがあるみたいだけど、無理やり……ではなかったかしら?』
その視線を受けたレイーアは悟る。
そして、クーン男爵夫妻を真剣な顔で見た。
「あの……私ではマットさんの妻として足りないところも色々あると思います。年も上だし……。でも、マットさんを必ず幸せにしますので、結婚をお許しいただけないでしょうか?」
クーン男爵夫妻だって、マットが没落貴族しかも年上の相手をつれてきて戸惑っているに違いない。そう、レイーアは悟った。
「もちろんだとも!」
クーン男爵は、なんだか泣きそうになった。
『なんていい子だ!』
「もちろんよ!」
クーン男爵夫人は、心が震えた。
『今どきこんな純真な子がいるなんて!』
レイーアはその雰囲気から、自分が受け入れられたのを悟った。
心のなかでホッと息つく。
「これからよろしくお願いします。お義父様、お義母様」
レイーアの笑みは、本当の笑みに戻った。
でも、なんだかレイーアが想像していた結婚の挨拶とは違っている気がした。
レイーアの戸惑い?
マットと結婚することになった翌日、レイーアは新居から出勤した。
マットは今日は早く行くんだと言って、とっくに城に行ってしまった。
レイーアは遅出だったので、ゆっくりと出勤している。
昨日の夜、マットの体力は有り余っていたようだが、1回で遠慮してもらったので、レイーアの足取りはしっかりしている。
でも、新婚というウキウキほわほわした感じよりも、戸惑い多めの少々気鬱さがあった。
朝になって思い出したのだ。
マットが人気があったことを。
だから、レイーアがたまたまマットと話すことがあった時も、マットびいきの人たちは何を話していたのか根掘り葉掘り聞いてくる。
あのときは、マットに人気があることを理解する位でしかなかったが、当事者となれば別だ。
どんなことを言われるのか、気鬱な気分が城に近づく度に増す。
「おはようございます」
レイーアが城について始めに顔を合わせたのは、よりにもよってマットの熱心なファンの同僚だった。
レイーアは身構える。
「おはようございます。レイーアさん……おめでとう」
嫌みも何もない表情で告げられて、レイーアは戸惑う。
「ありがとうございます!」
レイーアは予想外のこともあって、余計に嬉しくなった。
頬が緩む。
そのあとも、レイーアは同僚たちに祝福されることはあれ、嫌みを言われることはなかった。
レイーアの悪い想像は杞憂に終わりそうだとホッとした。
「レイーア、おめでとう!」
「あ、カーサさん、ありがとうございます!」
声をかけてきたのは、レイーアが一番お世話になっていて、かつなついている先輩だった。
「でも、水くさいわね。言ってくれればいいのに」
微笑むカーサに、レイーアは曖昧に笑う。昨日突然降ってわいてきた出来事のため、レイーアにも言いようがなかった。
「8年も純愛を貫いたって言われたら、ファンも黙るしかないわよ」
カーサの言葉に、レイーアは首をかしげる。
「8年?」
「そう、マット君が中等部に入った時から密かに愛を育んでたんだって? マット君と年が離れているのを気にしてレイーアがなかなか素直になってくれなくて、困ったんだって、マット君が」
カーサの言葉に、レイーアはぱちくりとまばたきをした。
そんな事実は、あったような気がしなかった。
固い笑顔を見せ礼を取るレイーアを、同じく固い笑顔で向かい入れるクーン男爵夫妻。
この場で満面の笑みを見せているのは、マットだけ。
そしてすべての真実を知るのもマットだけ。
いや、クーン夫妻はギリギリことの真相の根底を知っている。
本当に何も知らないのは、レイーアだけだ。
「歓迎するよ、レイーア嬢」
クーン男爵は、レイーアの手をとって、その視線に言葉をのせた。
『本当にうちの息子でいいのかな? 大丈夫? 騙されてない?』
「歓迎するわ。レイーアさん」
クーン男爵夫人も、その視線に言葉をのせた。
『うちの息子、ちょっと思い込みと強引さがあるみたいだけど、無理やり……ではなかったかしら?』
その視線を受けたレイーアは悟る。
そして、クーン男爵夫妻を真剣な顔で見た。
「あの……私ではマットさんの妻として足りないところも色々あると思います。年も上だし……。でも、マットさんを必ず幸せにしますので、結婚をお許しいただけないでしょうか?」
クーン男爵夫妻だって、マットが没落貴族しかも年上の相手をつれてきて戸惑っているに違いない。そう、レイーアは悟った。
「もちろんだとも!」
クーン男爵は、なんだか泣きそうになった。
『なんていい子だ!』
「もちろんよ!」
クーン男爵夫人は、心が震えた。
『今どきこんな純真な子がいるなんて!』
レイーアはその雰囲気から、自分が受け入れられたのを悟った。
心のなかでホッと息つく。
「これからよろしくお願いします。お義父様、お義母様」
レイーアの笑みは、本当の笑みに戻った。
でも、なんだかレイーアが想像していた結婚の挨拶とは違っている気がした。
レイーアの戸惑い?
マットと結婚することになった翌日、レイーアは新居から出勤した。
マットは今日は早く行くんだと言って、とっくに城に行ってしまった。
レイーアは遅出だったので、ゆっくりと出勤している。
昨日の夜、マットの体力は有り余っていたようだが、1回で遠慮してもらったので、レイーアの足取りはしっかりしている。
でも、新婚というウキウキほわほわした感じよりも、戸惑い多めの少々気鬱さがあった。
朝になって思い出したのだ。
マットが人気があったことを。
だから、レイーアがたまたまマットと話すことがあった時も、マットびいきの人たちは何を話していたのか根掘り葉掘り聞いてくる。
あのときは、マットに人気があることを理解する位でしかなかったが、当事者となれば別だ。
どんなことを言われるのか、気鬱な気分が城に近づく度に増す。
「おはようございます」
レイーアが城について始めに顔を合わせたのは、よりにもよってマットの熱心なファンの同僚だった。
レイーアは身構える。
「おはようございます。レイーアさん……おめでとう」
嫌みも何もない表情で告げられて、レイーアは戸惑う。
「ありがとうございます!」
レイーアは予想外のこともあって、余計に嬉しくなった。
頬が緩む。
そのあとも、レイーアは同僚たちに祝福されることはあれ、嫌みを言われることはなかった。
レイーアの悪い想像は杞憂に終わりそうだとホッとした。
「レイーア、おめでとう!」
「あ、カーサさん、ありがとうございます!」
声をかけてきたのは、レイーアが一番お世話になっていて、かつなついている先輩だった。
「でも、水くさいわね。言ってくれればいいのに」
微笑むカーサに、レイーアは曖昧に笑う。昨日突然降ってわいてきた出来事のため、レイーアにも言いようがなかった。
「8年も純愛を貫いたって言われたら、ファンも黙るしかないわよ」
カーサの言葉に、レイーアは首をかしげる。
「8年?」
「そう、マット君が中等部に入った時から密かに愛を育んでたんだって? マット君と年が離れているのを気にしてレイーアがなかなか素直になってくれなくて、困ったんだって、マット君が」
カーサの言葉に、レイーアはぱちくりとまばたきをした。
そんな事実は、あったような気がしなかった。
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