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「殿下はいずれ我が国の皇帝となられるお方。だとすれば、身分とは関係なく婚姻がなされるよう国の法そのものを変えてしまえばよろしいじゃありませんか」
この国の婚姻は、身分差が問題になる。
殿下と平民だと思われる騎士との間では、尚更婚姻は許されないだろう。
「何を言っている? そもそも、身分関係なくなど、許されるわけがないだろう」
殿下が呆れたようにため息をついた。
私は首を横に振る。
「殿下、誰が許さないのでしょうか?」
「王族や貴族の尊き血を重んじる人間たちからすれば、争いの種になりかねない」
なるほど、それは一理あるかもしれない。
でも、本当にそうなんだろうか?
「本当にこの国はそのことで揺らぐのでしょうか?」
この国の歴史の中で、王位継承権でいざこざがあったような話は聞いたことはない。
たぶんそれは、『ヴィダル学園の恋人』ってストーリーの中には全く関係のない話だから、そんなことはないのだろうと思う。
そもそもゲームの設定で、王族自体がストーリーと全く関係がないから、何代もの王位継承についての話なんて、考えるわけがないだろうから。
ゲームの進行と無関係になる条件については、縛りは緩いもしくは全くないんじゃないかと思っている。
そもそも、モブだけどストーリーに若干関係ある私が、大前提であるティエリいじめをしてないわけで、ゲームの強制力はあまり影響がないのかもしれないと思い始めているくらいだ。
だけど、殿下と騎士は揃って目を細めた。
……何だろう。許されないことを口にしてしまったんだろうか。
「それは、我が国には王族が不要と言いたいのか」
殿下の低い声に、慌てる。
「そんなつもりはなかったんです。だけど、血にこだわっていたら、いつまでたっても、騎士様は日陰の身になってしまわれるので」
あなたの愛するフィリのためですよ! という気持ちを込めて言ってみた。
「だから……変なことを言い出すな、と言っているだろう」
殿下が私から目を逸らした。
どうやら、私の気持ちは伝わったらしい。良かった!
「殿下」
騎士が殿下に耳打ちする。
一体どんな話をしているかはわからないけど、殿下の目が一瞬見開いた。
「フィリ、それは」
殿下が思わずといった感じで、声を漏らす。
だけど騎士は殿下を見つめて頷いただけだった。
殿下は大きなため息をついた。
しばらく視線を彷徨わせた後、殿下が私をじっと見る。
「我々の秘密を知っているということは、サシャ嬢に私の監視できる範囲にいて貰わないと困るってことになるね」
ニコリと笑った殿下に、背中がひやりとなる。
そうなる可能性は全然考えてなかった!
心の中が見えなきゃよかったのに!
「絶対、絶対口外は致しませんので! 何なら、ヴィダル学園にも顔は出しませんので!」
きっと殿下と顔を合わせることになるのは、ヴィダル学園だ。
ならば、最初から学園に行かなければいいんだ!
だけど、殿下の笑みは揺るがなかった。
「その勘の良さも、色々と役に立ちそうだね? 婚約者、殿?」
「お義姉様、殿下は一体どんな用事だったんですか?」
殿下たちを見送った後、眉を下げたティエリの姿に、思わず縋り付きそうになって、一歩手前で何とか我慢した。
とりあえず、ティエリと同じ空間の空気を吸って癒されようと、深呼吸をする。
癒しの空気を胸に吸い込んだはずなのに、殿下をやり込めなかった悔しさは薄れもしなかった。
どうにもならない自分の立場の弱さが悔しい!
この国の婚姻は、身分差が問題になる。
殿下と平民だと思われる騎士との間では、尚更婚姻は許されないだろう。
「何を言っている? そもそも、身分関係なくなど、許されるわけがないだろう」
殿下が呆れたようにため息をついた。
私は首を横に振る。
「殿下、誰が許さないのでしょうか?」
「王族や貴族の尊き血を重んじる人間たちからすれば、争いの種になりかねない」
なるほど、それは一理あるかもしれない。
でも、本当にそうなんだろうか?
「本当にこの国はそのことで揺らぐのでしょうか?」
この国の歴史の中で、王位継承権でいざこざがあったような話は聞いたことはない。
たぶんそれは、『ヴィダル学園の恋人』ってストーリーの中には全く関係のない話だから、そんなことはないのだろうと思う。
そもそもゲームの設定で、王族自体がストーリーと全く関係がないから、何代もの王位継承についての話なんて、考えるわけがないだろうから。
ゲームの進行と無関係になる条件については、縛りは緩いもしくは全くないんじゃないかと思っている。
そもそも、モブだけどストーリーに若干関係ある私が、大前提であるティエリいじめをしてないわけで、ゲームの強制力はあまり影響がないのかもしれないと思い始めているくらいだ。
だけど、殿下と騎士は揃って目を細めた。
……何だろう。許されないことを口にしてしまったんだろうか。
「それは、我が国には王族が不要と言いたいのか」
殿下の低い声に、慌てる。
「そんなつもりはなかったんです。だけど、血にこだわっていたら、いつまでたっても、騎士様は日陰の身になってしまわれるので」
あなたの愛するフィリのためですよ! という気持ちを込めて言ってみた。
「だから……変なことを言い出すな、と言っているだろう」
殿下が私から目を逸らした。
どうやら、私の気持ちは伝わったらしい。良かった!
「殿下」
騎士が殿下に耳打ちする。
一体どんな話をしているかはわからないけど、殿下の目が一瞬見開いた。
「フィリ、それは」
殿下が思わずといった感じで、声を漏らす。
だけど騎士は殿下を見つめて頷いただけだった。
殿下は大きなため息をついた。
しばらく視線を彷徨わせた後、殿下が私をじっと見る。
「我々の秘密を知っているということは、サシャ嬢に私の監視できる範囲にいて貰わないと困るってことになるね」
ニコリと笑った殿下に、背中がひやりとなる。
そうなる可能性は全然考えてなかった!
心の中が見えなきゃよかったのに!
「絶対、絶対口外は致しませんので! 何なら、ヴィダル学園にも顔は出しませんので!」
きっと殿下と顔を合わせることになるのは、ヴィダル学園だ。
ならば、最初から学園に行かなければいいんだ!
だけど、殿下の笑みは揺るがなかった。
「その勘の良さも、色々と役に立ちそうだね? 婚約者、殿?」
「お義姉様、殿下は一体どんな用事だったんですか?」
殿下たちを見送った後、眉を下げたティエリの姿に、思わず縋り付きそうになって、一歩手前で何とか我慢した。
とりあえず、ティエリと同じ空間の空気を吸って癒されようと、深呼吸をする。
癒しの空気を胸に吸い込んだはずなのに、殿下をやり込めなかった悔しさは薄れもしなかった。
どうにもならない自分の立場の弱さが悔しい!
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