19 / 39
3章 待ちて焦がれる
1
しおりを挟む
楽々浦渚は、気が進まなかった。
しかし、決して多くない友人の誘いを断る勇気を彼女は持ち得なかった。それに、肝試しというイベントも、後になれば良い青春時代の思い出になるだろうという思惑も僅かながら持っていた。
地元から離れた時津大学には、入学時に知り合いはいなかった。同じ高校出身の顔見知り程度の相手なら他の学部に数人いたが、もともと弁当を一緒に食べる仲ではなかった。焦りを覚えながらも、初めての一人暮らしやアルバイトに励んでいる内に、サークルや部活動に参加する機会を逃してしまった。しかし、そのうち同じ法学部に在籍し、なんとなく一緒に昼食を摂るようになった同級生の友人ができた。女子二人と男子二人。夏休みも、共に課題をこなすという名目で大学に集い、長すぎる休暇を潰していた。
そこで廃病院に肝試しに行こうと言いだしたのは、ただ一人、神野辺市出身の谷川純希だった。
「俺、一回行ってみたかったんだよ」
空き教室で駄弁りながら提案した純希に、彼の恋人である星彩華もあまり乗り気ではないようだった。
「でも、そういうとこって警備とかしてるんでしょ。警報とか鳴って捕まったら、うち嫌なんだけど」
「そうだよ」渚も彼女の台詞に乗っかる。「学校に連絡がいったら大変だし」
「だーいじょうぶ」何故か彼は得意げに言った。「そういうのないとこなんだ。俺のダチにも行ったことあるやつ結構いるんだけど、誰も捕まったことないぜ」
「何ていう所なんだ」
友人の長谷部遼太郎が聞くと、待ってましたとばかりに純希は答える。植田記念病院というらしい。
スマートフォンで検索していた遼太郎は、画面に落とした顔をしかめた。
「ちょっと遠くね? しかも山の上だし」
「兄貴の車借りて行こうぜ。俺、運転するし」
四人の中で運転免許を持っているのも、純希だけだった。彼の年の離れた兄は、今年から仕事の関係で地元に越しており、駐車場代を浮かせるために自分の車を実家の車庫に置いているらしい。
「まあ、おまえがいいならいいけど」
遼太郎が承諾し、渚は慌てて「でも」と口にした。
「お兄さんの車でしょ。もし傷とかつけたら大変だし」
「大丈夫大丈夫、気を付けるから」
へらへら笑う純希から、彩華に視線を移す。自慢のネイルを指先で撫でながら、彼女は「どっちでもいーよ」と投げやりに言った。「暇つぶしになるし」
「な、行こうぜ」
「でも、もし何かあったら……」
「もしかして渚ちゃん、ほんとに怖がってんの?」
純希の台詞に、思わず口を閉じる。
「大丈夫だって。地元にも、マジで祟られたやつなんか一人もいねえから」
「怖かったら、車で待ってても構わないよ」
「心配しなくていいって、楽々浦」
いつの間にか誘いに乗る流れで、彩華と遼太郎が励ましの言葉を口にする。どうやら自分以外の三人は怖いとは思っていないらしい。
臆病者のレッテルを貼られるのが嫌で、渚は当日、純希の運転する軽自動車に乗車した。純希の言った通り、植田記念病院は地元で有名な心霊スポットのようで、肝試しに行ったという記事はネット上にたくさん見つかった。人影を見たとか、呻き声を聞いたとか。はたまた、カルテを持ち帰ったら病院から電話がかかってきただとか。どこかで聞いたような噂話が書き連ねてあった。
「大丈夫? 渚」
後部座席に大人しく座る渚に、彩華が心配そうに横から顔を覗き込む。
「マジで気分悪かったら、帰ってもいいよ」
「ううん、平気。心霊スポットとか慣れてなくて」
「あーね。わかるわかる」明るい茶髪を緩く巻いた髪型。それを指先でくるくるといじり、彩華は明るく笑った。「もしもって考えちゃうよねー」
「幽霊とかも考えるけどさあ、ホームレスとかいた方が何倍も怖いよな」
助手席で遼太郎が言う。
「ま、なんかあったら純希盾にして帰ろうぜ」
「俺を置いてったら帰れねーだろ」
カッチン、カッチン。右にウィンカーを出し、車はコンビニエンスストアの駐車場から車道に繰り出した。BGMに、流行りのポップスがかかる。いつもの仲間と、いつもとは違う道。話をしている内に、渚にも遠足時のような高揚感が芽生えていた。
植田記念病院は、山道を十五分ほど上った場所にあった。急に視界が開けたかと思うと、雑草が伸び放題の駐車場に出る。明るい月をバックに、五階建ての元総合病院がそびえ立っていた。
夜の廃病院は、取り残されれば気が触れそうなほどに不気味だった。仲間がいる心強さがなければ、一歩も動けないだろう。
四人は病院の周囲を散策し、一階から院内を探索することにした。今まで何人もの輩が肝試しに訪れたのだろう。荒れた受付の壁にはスプレーで落書きがされ、ソファーの背は破れていた。割れた窓ガラスが散乱し、空き缶や煙草の吸殻がポイ捨てされている。奥に続く廊下はどこまでも暗く、先頭の純希が持つ懐中電灯の光が闇に吸い込まれる。その後ろに渚と彩華が並び、最後に背の高い遼太郎が続く。
四人は常に喋り続けた。流石に静まり返ると怖すぎる。その恐怖を忘れるように、無意識のうちに声を大きくし、いつも以上に意味のない会話を繰り返した。
「地下はヤバすぎるでしょ、地下は」
彩華が言ってくれたので、渚は心の底から安堵した。純希や遼太郎も同じ気持ちだったのか、地下に下りる階段を進もうと言いだす者はいなかった。誰も実際に入ったことはないが、大きな病院の地下には霊安室があるという知識はある。遺体などここにあるはずがなくても、立ち寄ろうという勇気はなかった。
診察室、控室、手術室。三階より上はほとんどが病室だった。わざわざ誰がいたずらしたのか、空のベッドがひっくり返っている。
懐中電灯の光の輪に入ったものを見て、渚は思わず悲鳴を上げて彩華にしがみついた。気が付いた彩華も甲高い声をあげる。
恐らく、過去に忍び込んだ者がひと手間加えたのだろう。ベッドのマットレスの上に一体の人形が足を投げ出して座り、周囲を折り鶴が囲んでいる。まるで何かの儀式を行っているようだ。
「ねえ、もう帰ろう」
渚の震える声に、彩華も頷いた。
「純希、早く帰ろーよ、これ以上はうちも無理」
「なんだよ。こんなのいたずらだって」
懐中電灯を振ってみせる純希の顔も、引きつっている。女の子の前で弱気なんて見せられない、そんな強がりが見る者にもありありと伝わってくる。
「関係ないでしょ、怖いものは怖いんだって!」
「あとちょっとだってのによー」
こんなところで言い争いを始めるカップル。「まあまあ」と月並みな台詞と共に、遼太郎が割って入る。
「そんじゃ、あと一部屋だけ見て帰ろうや」
彼の台詞に純希は渋々頷き、彩華と渚も、あと一部屋だけならばと抱き合ったまま頷いた。四人で固まり、隣の角部屋に入る。ベッドが一台しかない個室だ。割れたガラスを踏む四人の足音がパリパリと鳴る。他の部屋と同様に荒れたそこで、純希が膝を折ってしゃがんだ。
「見ろよこれ」
立ち上がる彼が手にしているのは、一台の携帯電話だった。二つ折りのそれをぱかりと開く。ぱらぱらと細かな砂が零れ落ちる。上半分の画面は当然の如く真っ暗で、下半分に並ぶボタンの隙間にも砂や埃が入り込んでいた。
「ガラケーじゃん」
彩華と共に覗き込み、渚も「ほんとだ」と呟く。薄いピンク色の、所謂ガラパゴスケータイ。一体だれの物だろう。
「ちょっと、何してんの!」
流れるようにそれをズボンのポケットに滑り込ませた純希を見て、彩華が声をあげた。
「戦利品だよ、戦利品」
「それはダメでしょ!」
「ケータイは流石にやめときなよ」
女子二人の意見がシンクロした。しかし純希には何が駄目なのかいまいちわからないらしい。「だってゴミだろ」そんなことを言う。
「信じらんない。呪われるならあんただけ呪われてよね」
「は? 呪われるとかあるわけねえだろ」
「仲良しカップルさん、さっさと帰ろーや」遼太郎が大あくびをした。「帰って寝たいんだわ」
結局、純希はその携帯電話をポケットに入れて持って帰ってしまった。彩華や渚にいたっても、気持ちは悪いが本当に悪影響が生じるなどとは本気にしていなかったのである。
しかし、決して多くない友人の誘いを断る勇気を彼女は持ち得なかった。それに、肝試しというイベントも、後になれば良い青春時代の思い出になるだろうという思惑も僅かながら持っていた。
地元から離れた時津大学には、入学時に知り合いはいなかった。同じ高校出身の顔見知り程度の相手なら他の学部に数人いたが、もともと弁当を一緒に食べる仲ではなかった。焦りを覚えながらも、初めての一人暮らしやアルバイトに励んでいる内に、サークルや部活動に参加する機会を逃してしまった。しかし、そのうち同じ法学部に在籍し、なんとなく一緒に昼食を摂るようになった同級生の友人ができた。女子二人と男子二人。夏休みも、共に課題をこなすという名目で大学に集い、長すぎる休暇を潰していた。
そこで廃病院に肝試しに行こうと言いだしたのは、ただ一人、神野辺市出身の谷川純希だった。
「俺、一回行ってみたかったんだよ」
空き教室で駄弁りながら提案した純希に、彼の恋人である星彩華もあまり乗り気ではないようだった。
「でも、そういうとこって警備とかしてるんでしょ。警報とか鳴って捕まったら、うち嫌なんだけど」
「そうだよ」渚も彼女の台詞に乗っかる。「学校に連絡がいったら大変だし」
「だーいじょうぶ」何故か彼は得意げに言った。「そういうのないとこなんだ。俺のダチにも行ったことあるやつ結構いるんだけど、誰も捕まったことないぜ」
「何ていう所なんだ」
友人の長谷部遼太郎が聞くと、待ってましたとばかりに純希は答える。植田記念病院というらしい。
スマートフォンで検索していた遼太郎は、画面に落とした顔をしかめた。
「ちょっと遠くね? しかも山の上だし」
「兄貴の車借りて行こうぜ。俺、運転するし」
四人の中で運転免許を持っているのも、純希だけだった。彼の年の離れた兄は、今年から仕事の関係で地元に越しており、駐車場代を浮かせるために自分の車を実家の車庫に置いているらしい。
「まあ、おまえがいいならいいけど」
遼太郎が承諾し、渚は慌てて「でも」と口にした。
「お兄さんの車でしょ。もし傷とかつけたら大変だし」
「大丈夫大丈夫、気を付けるから」
へらへら笑う純希から、彩華に視線を移す。自慢のネイルを指先で撫でながら、彼女は「どっちでもいーよ」と投げやりに言った。「暇つぶしになるし」
「な、行こうぜ」
「でも、もし何かあったら……」
「もしかして渚ちゃん、ほんとに怖がってんの?」
純希の台詞に、思わず口を閉じる。
「大丈夫だって。地元にも、マジで祟られたやつなんか一人もいねえから」
「怖かったら、車で待ってても構わないよ」
「心配しなくていいって、楽々浦」
いつの間にか誘いに乗る流れで、彩華と遼太郎が励ましの言葉を口にする。どうやら自分以外の三人は怖いとは思っていないらしい。
臆病者のレッテルを貼られるのが嫌で、渚は当日、純希の運転する軽自動車に乗車した。純希の言った通り、植田記念病院は地元で有名な心霊スポットのようで、肝試しに行ったという記事はネット上にたくさん見つかった。人影を見たとか、呻き声を聞いたとか。はたまた、カルテを持ち帰ったら病院から電話がかかってきただとか。どこかで聞いたような噂話が書き連ねてあった。
「大丈夫? 渚」
後部座席に大人しく座る渚に、彩華が心配そうに横から顔を覗き込む。
「マジで気分悪かったら、帰ってもいいよ」
「ううん、平気。心霊スポットとか慣れてなくて」
「あーね。わかるわかる」明るい茶髪を緩く巻いた髪型。それを指先でくるくるといじり、彩華は明るく笑った。「もしもって考えちゃうよねー」
「幽霊とかも考えるけどさあ、ホームレスとかいた方が何倍も怖いよな」
助手席で遼太郎が言う。
「ま、なんかあったら純希盾にして帰ろうぜ」
「俺を置いてったら帰れねーだろ」
カッチン、カッチン。右にウィンカーを出し、車はコンビニエンスストアの駐車場から車道に繰り出した。BGMに、流行りのポップスがかかる。いつもの仲間と、いつもとは違う道。話をしている内に、渚にも遠足時のような高揚感が芽生えていた。
植田記念病院は、山道を十五分ほど上った場所にあった。急に視界が開けたかと思うと、雑草が伸び放題の駐車場に出る。明るい月をバックに、五階建ての元総合病院がそびえ立っていた。
夜の廃病院は、取り残されれば気が触れそうなほどに不気味だった。仲間がいる心強さがなければ、一歩も動けないだろう。
四人は病院の周囲を散策し、一階から院内を探索することにした。今まで何人もの輩が肝試しに訪れたのだろう。荒れた受付の壁にはスプレーで落書きがされ、ソファーの背は破れていた。割れた窓ガラスが散乱し、空き缶や煙草の吸殻がポイ捨てされている。奥に続く廊下はどこまでも暗く、先頭の純希が持つ懐中電灯の光が闇に吸い込まれる。その後ろに渚と彩華が並び、最後に背の高い遼太郎が続く。
四人は常に喋り続けた。流石に静まり返ると怖すぎる。その恐怖を忘れるように、無意識のうちに声を大きくし、いつも以上に意味のない会話を繰り返した。
「地下はヤバすぎるでしょ、地下は」
彩華が言ってくれたので、渚は心の底から安堵した。純希や遼太郎も同じ気持ちだったのか、地下に下りる階段を進もうと言いだす者はいなかった。誰も実際に入ったことはないが、大きな病院の地下には霊安室があるという知識はある。遺体などここにあるはずがなくても、立ち寄ろうという勇気はなかった。
診察室、控室、手術室。三階より上はほとんどが病室だった。わざわざ誰がいたずらしたのか、空のベッドがひっくり返っている。
懐中電灯の光の輪に入ったものを見て、渚は思わず悲鳴を上げて彩華にしがみついた。気が付いた彩華も甲高い声をあげる。
恐らく、過去に忍び込んだ者がひと手間加えたのだろう。ベッドのマットレスの上に一体の人形が足を投げ出して座り、周囲を折り鶴が囲んでいる。まるで何かの儀式を行っているようだ。
「ねえ、もう帰ろう」
渚の震える声に、彩華も頷いた。
「純希、早く帰ろーよ、これ以上はうちも無理」
「なんだよ。こんなのいたずらだって」
懐中電灯を振ってみせる純希の顔も、引きつっている。女の子の前で弱気なんて見せられない、そんな強がりが見る者にもありありと伝わってくる。
「関係ないでしょ、怖いものは怖いんだって!」
「あとちょっとだってのによー」
こんなところで言い争いを始めるカップル。「まあまあ」と月並みな台詞と共に、遼太郎が割って入る。
「そんじゃ、あと一部屋だけ見て帰ろうや」
彼の台詞に純希は渋々頷き、彩華と渚も、あと一部屋だけならばと抱き合ったまま頷いた。四人で固まり、隣の角部屋に入る。ベッドが一台しかない個室だ。割れたガラスを踏む四人の足音がパリパリと鳴る。他の部屋と同様に荒れたそこで、純希が膝を折ってしゃがんだ。
「見ろよこれ」
立ち上がる彼が手にしているのは、一台の携帯電話だった。二つ折りのそれをぱかりと開く。ぱらぱらと細かな砂が零れ落ちる。上半分の画面は当然の如く真っ暗で、下半分に並ぶボタンの隙間にも砂や埃が入り込んでいた。
「ガラケーじゃん」
彩華と共に覗き込み、渚も「ほんとだ」と呟く。薄いピンク色の、所謂ガラパゴスケータイ。一体だれの物だろう。
「ちょっと、何してんの!」
流れるようにそれをズボンのポケットに滑り込ませた純希を見て、彩華が声をあげた。
「戦利品だよ、戦利品」
「それはダメでしょ!」
「ケータイは流石にやめときなよ」
女子二人の意見がシンクロした。しかし純希には何が駄目なのかいまいちわからないらしい。「だってゴミだろ」そんなことを言う。
「信じらんない。呪われるならあんただけ呪われてよね」
「は? 呪われるとかあるわけねえだろ」
「仲良しカップルさん、さっさと帰ろーや」遼太郎が大あくびをした。「帰って寝たいんだわ」
結局、純希はその携帯電話をポケットに入れて持って帰ってしまった。彩華や渚にいたっても、気持ちは悪いが本当に悪影響が生じるなどとは本気にしていなかったのである。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる