11 / 15
第十一話 影の訪問者
しおりを挟む
深夜。
部屋の明かりを消すと、闇が濃く沈む。
だが、そこにあったはずの影が、やはり消えない。
──お前はまだ、人間の影を持たない。
耳元で囁く声。 あの、妖怪の幹部格の声が、空気を震わせる。
「……来たか」
振り返ると、部屋の隅から黒煙のような影が立ち上がり、男の形を取った。 髪は銀白、瞳は燃える赤。 以前路地で会った男だ。だが、今回は空気そのものが押し潰されるような圧迫感がある。
「……お前は、力を暴走させたな」 男の声は低く、微笑を浮かべながらも冷たかった。
「……俺は止めようとした。制御できなかっただけだ」
「愚かだ」 男が手をかざすと、部屋の壁に影の渦が走った。 床も壁も歪み、光が飲み込まれる。 だが不思議なことに、俺に直接触れられる気配はない。 ──俺は喰われない。
「面白い……やはり、器としては異質だ」 赤い瞳が俺を見据える。 「だが、お前の力が未熟なうちは、我々の道具として使える。……覚えておけ、佐伯涼介」
言葉が冷たく響く。 男の影が一瞬、俺の中に入り込もうとする。 だが触れた瞬間、俺の胸の奥で眠っていた力が反応する。
──熱が全身を駆け抜ける。 手のひらから青白い光が迸り、男の影を弾き飛ばす。
「……なっ……!?」 赤い瞳が一瞬驚きを見せる。 だが、すぐに冷たい笑みに戻った。
「ふふ……面白い。やはり、ただの器ではないか」
男は壁を貫くように消え、影だけが床に残った。
俺は膝をつき、呼吸を整える。 胸の奥で、まだ力が蠢いている。 ──この力は、俺自身のものなのか? それとも、奴らに組み込まれたものなのか?
神崎が駆け込んできた。
「……無事か?」 息を切らせ、机に符を置く。
「あいつ……俺を……」
「……あれが、幹部格だ」 神崎の声は静かだが、重みがある。 「お前の力を狙っている。未熟なうちは制御できないお前を、使い道としてほしいのだろう」
「……使うって……」
「器としてだ」 神崎が言葉を区切る。 「お前が目覚める前に、狙われたのだ。だが、お前は喰われなかった。恐れられ、避けられた。──その異常性が、お前を生かしている」
胸の奥がざわつく。 ──俺は、逃れられない。 力を持つ者として、妖怪たちの目標になってしまった。
「だが……俺は、ただ生きたいだけだ」 必死に呟くと、胸の奥の力が応えるように熱く脈打つ。
神崎は短く頷き、符を置き直す。 「……ならば、俺がお前を守る」 だが彼の目には、警戒と不安が色濃く宿っていた。
外の夜風が窓を揺らす。 闇の向こうで、幹部格の影が確かに動いている気配。 俺はまだ、自分の力を完全には制御できない。 そして奴らは、俺が完全に目覚めるその瞬間を待っている。
──俺は、これからどうなるのか。 自分でも分からない。 ただ、闇の中で力が目覚めつつある。 それが世界に何をもたらすのかは、まだ誰にも分からないのだ。
──お前はまだ、人間の影を持たない。
耳元で囁く声。 あの、妖怪の幹部格の声が、空気を震わせる。
「……来たか」
振り返ると、部屋の隅から黒煙のような影が立ち上がり、男の形を取った。 髪は銀白、瞳は燃える赤。 以前路地で会った男だ。だが、今回は空気そのものが押し潰されるような圧迫感がある。
「……お前は、力を暴走させたな」 男の声は低く、微笑を浮かべながらも冷たかった。
「……俺は止めようとした。制御できなかっただけだ」
「愚かだ」 男が手をかざすと、部屋の壁に影の渦が走った。 床も壁も歪み、光が飲み込まれる。 だが不思議なことに、俺に直接触れられる気配はない。 ──俺は喰われない。
「面白い……やはり、器としては異質だ」 赤い瞳が俺を見据える。 「だが、お前の力が未熟なうちは、我々の道具として使える。……覚えておけ、佐伯涼介」
言葉が冷たく響く。 男の影が一瞬、俺の中に入り込もうとする。 だが触れた瞬間、俺の胸の奥で眠っていた力が反応する。
──熱が全身を駆け抜ける。 手のひらから青白い光が迸り、男の影を弾き飛ばす。
「……なっ……!?」 赤い瞳が一瞬驚きを見せる。 だが、すぐに冷たい笑みに戻った。
「ふふ……面白い。やはり、ただの器ではないか」
男は壁を貫くように消え、影だけが床に残った。
俺は膝をつき、呼吸を整える。 胸の奥で、まだ力が蠢いている。 ──この力は、俺自身のものなのか? それとも、奴らに組み込まれたものなのか?
神崎が駆け込んできた。
「……無事か?」 息を切らせ、机に符を置く。
「あいつ……俺を……」
「……あれが、幹部格だ」 神崎の声は静かだが、重みがある。 「お前の力を狙っている。未熟なうちは制御できないお前を、使い道としてほしいのだろう」
「……使うって……」
「器としてだ」 神崎が言葉を区切る。 「お前が目覚める前に、狙われたのだ。だが、お前は喰われなかった。恐れられ、避けられた。──その異常性が、お前を生かしている」
胸の奥がざわつく。 ──俺は、逃れられない。 力を持つ者として、妖怪たちの目標になってしまった。
「だが……俺は、ただ生きたいだけだ」 必死に呟くと、胸の奥の力が応えるように熱く脈打つ。
神崎は短く頷き、符を置き直す。 「……ならば、俺がお前を守る」 だが彼の目には、警戒と不安が色濃く宿っていた。
外の夜風が窓を揺らす。 闇の向こうで、幹部格の影が確かに動いている気配。 俺はまだ、自分の力を完全には制御できない。 そして奴らは、俺が完全に目覚めるその瞬間を待っている。
──俺は、これからどうなるのか。 自分でも分からない。 ただ、闇の中で力が目覚めつつある。 それが世界に何をもたらすのかは、まだ誰にも分からないのだ。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」
「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」
私は思わずそう言った。
だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。
***
私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。
お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。
だから父からも煙たがられているのは自覚があった。
しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。
「必ず仕返ししてやろう」って。
そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!
秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。
民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。
「おまえたちは許さない」
二度目の人生。
エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。
彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。
1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。
「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」
憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。
二人の偽りの婚約の行く末は……
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる