青白の覚醒 〜影を超えし者〜

相野リキ

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第十一話 影の訪問者

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深夜。
部屋の明かりを消すと、闇が濃く沈む。
だが、そこにあったはずの影が、やはり消えない。
──お前はまだ、人間の影を持たない。
耳元で囁く声。
あの、妖怪の幹部格の声が、空気を震わせる。
「……来たか」
振り返ると、部屋の隅から黒煙のような影が立ち上がり、男の形を取った。
髪は銀白、瞳は燃える赤。
以前路地で会った男だ。だが、今回は空気そのものが押し潰されるような圧迫感がある。
「……お前は、力を暴走させたな」
男の声は低く、微笑を浮かべながらも冷たかった。
「……俺は止めようとした。制御できなかっただけだ」
「愚かだ」
男が手をかざすと、部屋の壁に影の渦が走った。
床も壁も歪み、光が飲み込まれる。
だが不思議なことに、俺に直接触れられる気配はない。
──俺は喰われない。
「面白い……やはり、器としては異質だ」
赤い瞳が俺を見据える。
「だが、お前の力が未熟なうちは、我々の道具として使える。……覚えておけ、佐伯涼介」
言葉が冷たく響く。
男の影が一瞬、俺の中に入り込もうとする。
だが触れた瞬間、俺の胸の奥で眠っていた力が反応する。
──熱が全身を駆け抜ける。
手のひらから青白い光が迸り、男の影を弾き飛ばす。
「……なっ……!?」
赤い瞳が一瞬驚きを見せる。
だが、すぐに冷たい笑みに戻った。
「ふふ……面白い。やはり、ただの器ではないか」
男は壁を貫くように消え、影だけが床に残った。
俺は膝をつき、呼吸を整える。
胸の奥で、まだ力が蠢いている。
──この力は、俺自身のものなのか?
それとも、奴らに組み込まれたものなのか?
神崎が駆け込んできた。
「……無事か?」
息を切らせ、机に符を置く。
「あいつ……俺を……」
「……あれが、幹部格だ」
神崎の声は静かだが、重みがある。
「お前の力を狙っている。未熟なうちは制御できないお前を、使い道としてほしいのだろう」
「……使うって……」
「器としてだ」
神崎が言葉を区切る。
「お前が目覚める前に、狙われたのだ。だが、お前は喰われなかった。恐れられ、避けられた。──その異常性が、お前を生かしている」
胸の奥がざわつく。
──俺は、逃れられない。
力を持つ者として、妖怪たちの目標になってしまった。
「だが……俺は、ただ生きたいだけだ」
必死に呟くと、胸の奥の力が応えるように熱く脈打つ。
神崎は短く頷き、符を置き直す。
「……ならば、俺がお前を守る」
だが彼の目には、警戒と不安が色濃く宿っていた。
外の夜風が窓を揺らす。
闇の向こうで、幹部格の影が確かに動いている気配。
俺はまだ、自分の力を完全には制御できない。
そして奴らは、俺が完全に目覚めるその瞬間を待っている。
──俺は、これからどうなるのか。
自分でも分からない。
ただ、闇の中で力が目覚めつつある。
それが世界に何をもたらすのかは、まだ誰にも分からないのだ。
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