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バクエット・ド・パクス(5)
二人の距離は急接近!
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「覆いなしで皆、育てていい?」
「ダメです♪」
ミサトの提案を、カトリーヌは一蹴する。
「お願い! 頼むよ! 先っちょだけでもいいから!」
「ダメです♪」
「なんでダメなのぉ?」
「ミサトさんこそ、どうして掛けたくないのですか?」
「いや、率直に言うけど、南山城国みたいに周りにイケメンばっかの方が、私のモチベーションが右肩上がりなのよ」
「じゃあ、ダメです♪」
ミサトは唸った。
だが、次の言葉については、少し真面目に口を開く。
「まあ、掛けたくない動機は冗談としても(冗談じゃあないけど)、どうしてこの国では皆、覆いが掛かった少女なのかは、やっぱり聞いちゃあいけない案件かしら?」
「……いいですよ。バクエット・ド・パクスは、過去に“災厄”がありました。“5度目の召喚”です。その詳細な内容まではお伝えできませんが、その時までこの国は、南山城国のように覆いを掛けないのが主流でした」
「ほうほう」
「ですが、それこそが“災厄”の原因とも関連していたのです。それ以降、この国で覆いを掛けないのは、文字通り御法度です」
「それって答えになってると思う?」
「なってないですね♪」
カトリーヌの顔がパッと明るくなる。コレコレ、この二面性。
「でもとにかくダメです、ミサトさん。覆いの期間を延ばしたいというのであれば、いくらでもOKですよ♪」
「延ばしたってなあ……」
ん、待てよ、とミサト。
「ねえ、カトリーヌちゃん。覆いを全くしない煎茶だと成人男性、覆いはするけど7日未満で煎茶の範囲内なら少年、覆いをして7日以上のかぶせ茶の範囲内だと少女、覆いをして20日以上の玉露・碾茶(てんちゃ、抹茶の元)だと成人女性なのよね」
「ええ」
閃いた。
名付けて宝塚作戦だ。
いきなり全員でやるとアレだし、時間はたっぷりあるから……
カトリーヌでまずは実験しよう。
◇◇◇
次の日。
ミサトはせっせと、カトリーヌの茶樹の畝に、覆いを掛けていた。
ここバクエット・ド・パクスでは、茶畑は大半が山の斜面に位置し、その畝は山の等高線に沿って形成されていることがほとんどだ。
元々、小高い山々が多い土地ゆえだが、作業性はかなり厳しい。
「ミサトさーん♪」
遠くから音符、もとい声。カトリーヌだ。
旅団メンバーの残り二人、ノワールとブレーズも一緒だ。
「言ってくれれば、手伝いましたのに」
「あーゴメン、頼むわ」
別に悪いことをしているわけではないが、カトリーヌの思う意図とは少し違う目的で覆いを掛けていたため、頼みにくかったのだ。
流石にミサト以外の全員も巫女装束ではなく、作業着だ。
しかしコレがギャップ萌えってヤツか、とミサトは一人思った。
ミサトとカトリーヌは覆いとなる寒冷紗の束の、それぞれが両端を持って、回転させながら広げて、畝に冠せていく。
ノワールとブレーズも隣の畝で同じことを行っていた。
最後の畝まで到達する。広げ終わりかけたその時
「危ない!」
カトリーヌが斜面で足を滑らせた。ミサトが斜面の下側だったため、受け止める形になる。
カトリーヌは頭からミサトの胸に飛び込んだが、ミサトは何とか持ちこたえた。
「っとお。危ねー」
「すみませんミサトさん! ありがとうございます!」
「いやはよ離れろ」
ミサトから離れると、ペコリと頭を下げるカトリーヌ。
「一つ、貸しておきますね♪」
「え、私が貸された方なの」
「ダメです♪」
ミサトの提案を、カトリーヌは一蹴する。
「お願い! 頼むよ! 先っちょだけでもいいから!」
「ダメです♪」
「なんでダメなのぉ?」
「ミサトさんこそ、どうして掛けたくないのですか?」
「いや、率直に言うけど、南山城国みたいに周りにイケメンばっかの方が、私のモチベーションが右肩上がりなのよ」
「じゃあ、ダメです♪」
ミサトは唸った。
だが、次の言葉については、少し真面目に口を開く。
「まあ、掛けたくない動機は冗談としても(冗談じゃあないけど)、どうしてこの国では皆、覆いが掛かった少女なのかは、やっぱり聞いちゃあいけない案件かしら?」
「……いいですよ。バクエット・ド・パクスは、過去に“災厄”がありました。“5度目の召喚”です。その詳細な内容まではお伝えできませんが、その時までこの国は、南山城国のように覆いを掛けないのが主流でした」
「ほうほう」
「ですが、それこそが“災厄”の原因とも関連していたのです。それ以降、この国で覆いを掛けないのは、文字通り御法度です」
「それって答えになってると思う?」
「なってないですね♪」
カトリーヌの顔がパッと明るくなる。コレコレ、この二面性。
「でもとにかくダメです、ミサトさん。覆いの期間を延ばしたいというのであれば、いくらでもOKですよ♪」
「延ばしたってなあ……」
ん、待てよ、とミサト。
「ねえ、カトリーヌちゃん。覆いを全くしない煎茶だと成人男性、覆いはするけど7日未満で煎茶の範囲内なら少年、覆いをして7日以上のかぶせ茶の範囲内だと少女、覆いをして20日以上の玉露・碾茶(てんちゃ、抹茶の元)だと成人女性なのよね」
「ええ」
閃いた。
名付けて宝塚作戦だ。
いきなり全員でやるとアレだし、時間はたっぷりあるから……
カトリーヌでまずは実験しよう。
◇◇◇
次の日。
ミサトはせっせと、カトリーヌの茶樹の畝に、覆いを掛けていた。
ここバクエット・ド・パクスでは、茶畑は大半が山の斜面に位置し、その畝は山の等高線に沿って形成されていることがほとんどだ。
元々、小高い山々が多い土地ゆえだが、作業性はかなり厳しい。
「ミサトさーん♪」
遠くから音符、もとい声。カトリーヌだ。
旅団メンバーの残り二人、ノワールとブレーズも一緒だ。
「言ってくれれば、手伝いましたのに」
「あーゴメン、頼むわ」
別に悪いことをしているわけではないが、カトリーヌの思う意図とは少し違う目的で覆いを掛けていたため、頼みにくかったのだ。
流石にミサト以外の全員も巫女装束ではなく、作業着だ。
しかしコレがギャップ萌えってヤツか、とミサトは一人思った。
ミサトとカトリーヌは覆いとなる寒冷紗の束の、それぞれが両端を持って、回転させながら広げて、畝に冠せていく。
ノワールとブレーズも隣の畝で同じことを行っていた。
最後の畝まで到達する。広げ終わりかけたその時
「危ない!」
カトリーヌが斜面で足を滑らせた。ミサトが斜面の下側だったため、受け止める形になる。
カトリーヌは頭からミサトの胸に飛び込んだが、ミサトは何とか持ちこたえた。
「っとお。危ねー」
「すみませんミサトさん! ありがとうございます!」
「いやはよ離れろ」
ミサトから離れると、ペコリと頭を下げるカトリーヌ。
「一つ、貸しておきますね♪」
「え、私が貸された方なの」
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