カメリア・シネンシス・オブ・キョート

龍騎士団茶舗

文字の大きさ
79 / 307
United Japanese tea varieties of Iratsuko(7)

旅立ち(3)

しおりを挟む
「へえ、あの村をねえ」

ムサシが顎を撫でながら、ホログラムをまじまじと見る。

「残るデル・ゾーネは、皆でお嬢さまの館へ向かってるわ」

「は? 山脈とは逆方向だぞ。ペイルンオーリン嬢の館だよな?」

「そうだ。忘れ物を取りに帰ってるんじゃあないかと、俺は見てる」

ムサシへそう返すフランシス。ムサシは鼻を鳴らして答えた。
アサヒが口を開く。

「デル・ゾーネの皆さんは、しばらく行方が掴めなかったんですよね?」

「ええ。全く行方が掴めないコトで、却って消去法で場所はわかったけれど」

「確か、“龍騎士団茶舗”でしたっけ?」

「その通り。この後、ムサシに質問攻めにあっても話が進まないから、先に復習しておきましょうか」

「おいおい、俺だってある程度の情報は仕入れてるぜ」

「じゃあ、復習をお願い」

「……」

ムサシは顔を歪ませたが、ぶっきらぼうに片手でホログラムを扱い始めた。

「俺の仕入れた情報じゃあ、こうだ。
デル・ゾーネの“レア”は、同国内の政府機構“オートラグ”から不適格と認定、再召喚のために消滅させられるトコロを、龍騎士団茶舗に匿ってもらった」

「その通り。私たちの『消去法で場所はわかった』というのは、消息を全くもって絶てているという点から。あの国でそんな芸当ができるのはオートラグ自身か、あの茶舗ぐらいしかないわ。
しかしムサシ、貴方にはどうしてそこまでの情報があるのかしら?」

コレが目当てだったか、とムサシは思った。一種の誘導尋問だ。相手に解説させて、痛いトコロを突く。
しかしムサシも馬鹿じゃあない。こういう時には正直に言った方が良い、ある程度は。
とは言え、少し遊ぶか。

「と言うと?」

「私たちはFBUよ。最も科学力の進んだ国であるU.J.I内の、国家機密レベルの情報にもアクセスできる。だからこそ、“消去法”を使える」

「話が見えないな」

「私たちはU.J.Iの管理下にある人工衛星にアクセスしたわ。デル・ゾーネ上空には結界があるから、物理的には国の中のコトは見えないけれど、国から出る人物については把握できる。
デル・ゾーネの国から出た人物に、かの国の“旅団”はいなかった。結界があると言っても、他国の魔力動向が全てわからないワケじゃあない。その魔力動向が追えず、しかし国から出ていないとなれば、後は消去法で、という寸法よ」

アサヒとフランシスはムサシを注視する。
ムサシはしばしの沈黙の後、笑い出した。

「参ったよ、降参だ。しかし、面白い答えは用意できないぜ。あの国へ出入りできる情報筋を持ってるのさ」

「ハッタリね。そんな人物いるワケないわ」

「いやいや、キミが思っているより世界は広いものだよ。その人物はどんな時でも他国と他国を行き来して、重要な情報をかすめ取ってこれる」

ジュディが解せない顔でムサシを見つめる。ムサシは肩をすくめてみせた。
アサヒはフランシスの方を見る。フランシスはアサヒに『ジュディが一本取られたな』と、舌を出してみせた。

この時、南山城国内ではとある人物がくしゃみをしていたが、広い世界におけるくしゃみの一つなど、何も珍しくはない。
ただ、その人物の傍らにいた少女だけが「大丈夫ですか?」と問いかけたにとどまった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

氷弾の魔術師

カタナヅキ
ファンタジー
――上級魔法なんか必要ない、下級魔法一つだけで魔導士を目指す少年の物語―― 平民でありながら魔法が扱う才能がある事が判明した少年「コオリ」は魔法学園に入学する事が決まった。彼の国では魔法の適性がある人間は魔法学園に入学する決まりがあり、急遽コオリは魔法学園が存在する王都へ向かう事になった。しかし、王都に辿り着く前に彼は自分と同世代の魔術師と比べて圧倒的に魔力量が少ない事が発覚した。 しかし、魔力が少ないからこそ利点がある事を知ったコオリは決意した。他の者は一日でも早く上級魔法の習得に励む中、コオリは自分が扱える下級魔法だけを極め、一流の魔術師の証である「魔導士」の称号を得る事を誓う。そして他の魔術師は少年が強くなる事で気づかされていく。魔力が少ないというのは欠点とは限らず、むしろ優れた才能になり得る事を―― ※旧作「下級魔導士と呼ばれた少年」のリメイクとなりますが、設定と物語の内容が大きく変わります。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

処理中です...