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テラ・ドス・ヴェルメロス(10)
地図にない王国(12)
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一行は“アズール”で森の上空を進んでいた。
『トガノオ』に一泊して後、翌日の朝に別れを告げたのだった。
まもなく、他国や目的とする“暗黒山脈”も近づいてくるというコトで、自由編隊ではなく先頭にオクルスとララ、そしてその両サイドを固めるように一人分遅れてレインスとアルマージュが飛んでいた。
「……オクルスさん。ハイアーマウントさんの話、どう思いますか?」
ララが無線でオクルスに話しかける。
オクルスはララの方を向いた。
一行は何となく、再出発してからはハイアーマウントの話の内容を避けがちだった。
彼の話は、この“旅”自体を否定する内容だったからだ。
「うーん……。景気の良い話じゃあなかったけど、むしろ逆に今やってるコトに興味がでてきたかな。不安もないワケじゃあないけど、今更戻れるかってのもあるしね」
「ですよね……」
「何か、ソレ以上に思うトコロがある?」
「いえ、むしろオクルスさんも不安は持ってらっしゃると聞いて、安心しました」
「アレ聞いて、不安を持ってないヤツなんかいないよ。アルマージュとか、内心震えあがってるんじゃあないか」
二人がアルマージュの方を見る。
アルマージュは怪訝な顔で二人を見返し、口を「なんだよ」と動かす。
無線は今のところ、オクルスとララしか繋がっていない。
ソレを見て笑うと、二人は前を向き直した。
「まあ、悪いコトばかりじゃあないって」
ララには、オクルスが自分に言い聞かせているように聞こえた。
◇◇◇
「あっさりと解放されましたね」
ハイアーマウントに、昨日オクルスらに茶を持ってきた少年が語りかけた。
少年の脇には、同じく茶を持ってきた少女も佇んでいる。
「そもそも、我々は彼らを拘束していたワケではないですよ。拉致はしましたが」
ハイアーマウントが笑う。
そして少年に問いかけた。
「彼らを見て、どう思いましたか?」
「どう、とは?」
「お二人はパクスの出身でしょう。北方の出身の彼らを見て、どう思いましたか?」
「……何というか派手な感じがしました。豪華という意味ではないですが」
「彼らの国は蒸気と黄金色のパイプの、煤けた国です。まあ確かに、独自の衣服と装備は、我々の文化から見ると派手に見えたかもしれませんね」
「……彼らの内面に関しても、そのように感じました」
「その調子で伸ばしていきましょう。いずれ、私のように“読める”ようになります」
ハイアーマウントは柔和な笑顔を二人に返した。
二人はあまり表情を変えず、ハイアーマウントに聞いた。
「彼らを読んでみた感想は、いかがだったのですか?」
「外見通りの、良い子たちでしたよ。ただ……」
「ただ?」
「『ララ』さん。彼らの言葉で『まれびと』を意味する、旅の鍵となる人物ですが、あの人は何か『ララ』ではない気がしました。非常に似た何かであるとは、思うのですが」
『トガノオ』に一泊して後、翌日の朝に別れを告げたのだった。
まもなく、他国や目的とする“暗黒山脈”も近づいてくるというコトで、自由編隊ではなく先頭にオクルスとララ、そしてその両サイドを固めるように一人分遅れてレインスとアルマージュが飛んでいた。
「……オクルスさん。ハイアーマウントさんの話、どう思いますか?」
ララが無線でオクルスに話しかける。
オクルスはララの方を向いた。
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「うーん……。景気の良い話じゃあなかったけど、むしろ逆に今やってるコトに興味がでてきたかな。不安もないワケじゃあないけど、今更戻れるかってのもあるしね」
「ですよね……」
「何か、ソレ以上に思うトコロがある?」
「いえ、むしろオクルスさんも不安は持ってらっしゃると聞いて、安心しました」
「アレ聞いて、不安を持ってないヤツなんかいないよ。アルマージュとか、内心震えあがってるんじゃあないか」
二人がアルマージュの方を見る。
アルマージュは怪訝な顔で二人を見返し、口を「なんだよ」と動かす。
無線は今のところ、オクルスとララしか繋がっていない。
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「まあ、悪いコトばかりじゃあないって」
ララには、オクルスが自分に言い聞かせているように聞こえた。
◇◇◇
「あっさりと解放されましたね」
ハイアーマウントに、昨日オクルスらに茶を持ってきた少年が語りかけた。
少年の脇には、同じく茶を持ってきた少女も佇んでいる。
「そもそも、我々は彼らを拘束していたワケではないですよ。拉致はしましたが」
ハイアーマウントが笑う。
そして少年に問いかけた。
「彼らを見て、どう思いましたか?」
「どう、とは?」
「お二人はパクスの出身でしょう。北方の出身の彼らを見て、どう思いましたか?」
「……何というか派手な感じがしました。豪華という意味ではないですが」
「彼らの国は蒸気と黄金色のパイプの、煤けた国です。まあ確かに、独自の衣服と装備は、我々の文化から見ると派手に見えたかもしれませんね」
「……彼らの内面に関しても、そのように感じました」
「その調子で伸ばしていきましょう。いずれ、私のように“読める”ようになります」
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二人はあまり表情を変えず、ハイアーマウントに聞いた。
「彼らを読んでみた感想は、いかがだったのですか?」
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「ただ?」
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