カメリア・シネンシス・オブ・キョート

龍騎士団茶舗

文字の大きさ
126 / 307
テラ・ドス・ヴェルメロス(10)

地図にない王国(12)

しおりを挟む
一行は“アズール”で森の上空を進んでいた。
『トガノオ』に一泊して後、翌日の朝に別れを告げたのだった。

まもなく、他国や目的とする“暗黒山脈”も近づいてくるというコトで、自由編隊ではなく先頭にオクルスとララ、そしてその両サイドを固めるように一人分遅れてレインスとアルマージュが飛んでいた。

「……オクルスさん。ハイアーマウントさんの話、どう思いますか?」

ララが無線でオクルスに話しかける。
オクルスはララの方を向いた。

一行は何となく、再出発してからはハイアーマウントの話の内容を避けがちだった。
彼の話は、この“旅”自体を否定する内容だったからだ。

「うーん……。景気の良い話じゃあなかったけど、むしろ逆に今やってるコトに興味がでてきたかな。不安もないワケじゃあないけど、今更戻れるかってのもあるしね」

「ですよね……」

「何か、ソレ以上に思うトコロがある?」

「いえ、むしろオクルスさんも不安は持ってらっしゃると聞いて、安心しました」

「アレ聞いて、不安を持ってないヤツなんかいないよ。アルマージュとか、内心震えあがってるんじゃあないか」

二人がアルマージュの方を見る。
アルマージュは怪訝な顔で二人を見返し、口を「なんだよ」と動かす。
無線は今のところ、オクルスとララしか繋がっていない。

ソレを見て笑うと、二人は前を向き直した。

「まあ、悪いコトばかりじゃあないって」

ララには、オクルスが自分に言い聞かせているように聞こえた。


◇◇◇


「あっさりと解放されましたね」

ハイアーマウントに、昨日オクルスらに茶を持ってきた少年が語りかけた。
少年の脇には、同じく茶を持ってきた少女も佇んでいる。

「そもそも、我々は彼らを拘束していたワケではないですよ。拉致はしましたが」

ハイアーマウントが笑う。
そして少年に問いかけた。

「彼らを見て、どう思いましたか?」

「どう、とは?」

「お二人はパクスの出身でしょう。北方の出身の彼らを見て、どう思いましたか?」

「……何というか派手な感じがしました。豪華という意味ではないですが」

「彼らの国は蒸気と黄金色のパイプの、煤けた国です。まあ確かに、独自の衣服と装備は、我々の文化から見ると派手に見えたかもしれませんね」

「……彼らの内面に関しても、そのように感じました」

「その調子で伸ばしていきましょう。いずれ、私のように“読める”ようになります」

ハイアーマウントは柔和な笑顔を二人に返した。
二人はあまり表情を変えず、ハイアーマウントに聞いた。

「彼らを読んでみた感想は、いかがだったのですか?」

「外見通りの、良い子たちでしたよ。ただ……」

「ただ?」

「『ララ』さん。彼らの言葉で『まれびと』を意味する、旅の鍵となる人物ですが、あの人は何か『ララ』ではない気がしました。非常に似た何かであるとは、思うのですが」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

処理中です...