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テラ・ドス・ヴェルメロス(12)
暗黒山脈(9)
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雪山に足を踏み入れて数日、ようやく一行は白銀が減じて、緑と茶色の大地が広がっていく領域に到達した。
「ふう、ようやくだな」
オクルスが漏らす。
「み、皆さん!」
ララが珍しく、大きな声をだした。
三人が何事かと足を止める。
「そ、そこ、雪の終わりの境界線ですよね。ちょっと皆でお祝いしませんか?」
先頭のオクルスの足元を指すララ。
一行の目線が注がれたその場所は確かに、境界線だった。
ソコより先、雪はもう点々と存在するだけだ。
「お祝いって何を」
「イイねえ! やろやろ!」
アルマージュを吹っ飛ばして、レインスが賛同する。
「じゃ、じゃあ、皆で横一列で手を繋ぎましょう」
「は、はい」
オクルスも勢いに戸惑いつつ返答する。
雪の境界線上で、レインス、オクルス、ララ、アルマージュが横一列に手を繋いだ。
「オッケーですね。では、せーので境界線を越えましょう。いいですか? せーのっ!」
皆が一飛びで越境する。
雪を踏みしめる音がしない、暖かく確かな大地に一行が降り立った。
◇◇◇
オクルスたちは暗黒山脈中部に入り、木々が空高く林立し始めて少しまで進むと、その日は休むコトにした。
テントの中でも何も問題はなかったのだが、あえて外にでて焚き火を焚いた。
中部に入ったとは言え、まだ夜は少し寒い。
焚き火に鍋を掲げ、皆でその中身であるスープと具をつついていた。
「いやしかし、まだちょっと冷えるけど、昨日までは雪の中にいたとは思えないね。コッチは最高」
「レインスさん、寒いの本当にイヤそうでしたもんね。今夜はテントの中じゃあなくて、良かったんですか?」
「やっぱり外の直火ってのが何て言うか一番、熱さを実感できるじゃん? ほら、あの温泉みたいに」
「ああ、あの温泉は気持ち良かったですね」
雪中行軍を行っていた際、一行は周囲の雪が溶けたオアシスを発見した。
そのオアシスに湧いていたのは、香りの良い湯だったのである。
「お前、今シーズンは女なんだから、あの時みたいにいきなり脱ぐのは今後やめろよ」
「何? もしかして惚れちゃった? あんたをおちょくれるなら向こう10年はコッチでいようかな~」
レインスがオクルスの鼻先に人差し指を近づける。
オクルスはスプーンでその指を払った。
「でも俺は、あの山頂での夜明けも良かったな」
アルマージュが言う。
山頂近くに陣を張り、その翌日に皆で日の出を見た時があった。
ダイヤモンドダストが煌めく中、ゆっくりと照らされ明らかになっていく山嶺は、思わず神々の世界を想起させるソレだった。
「夜明け前の星も綺麗でしたね」
「今の空だって悪かないよ、ホラ」
木々の隙間、濃く眩しく、散りばめられた星々が見える。
「……結構、楽しい旅ですよね」
「うん」
「そうだな」
「確かに」
皆はしばらく、空を見上げていた。
「食後は、たまにはコーヒーにするか。ずっと熱い煎茶かほうじ茶だったし」
オクルスが提案する。
「あら、いいのかしら。お茶の精がそんなコトで」
「同じ植物だしな。お茶ばっかも飽きるし、面白くない」
「とびきりの濃いのに、ミルクを3分の1と、砂糖をひとさじ」
「全員、アルマージュメニューでいいか?」
皆は微笑みながら、コクリと頷いた。
「ふう、ようやくだな」
オクルスが漏らす。
「み、皆さん!」
ララが珍しく、大きな声をだした。
三人が何事かと足を止める。
「そ、そこ、雪の終わりの境界線ですよね。ちょっと皆でお祝いしませんか?」
先頭のオクルスの足元を指すララ。
一行の目線が注がれたその場所は確かに、境界線だった。
ソコより先、雪はもう点々と存在するだけだ。
「お祝いって何を」
「イイねえ! やろやろ!」
アルマージュを吹っ飛ばして、レインスが賛同する。
「じゃ、じゃあ、皆で横一列で手を繋ぎましょう」
「は、はい」
オクルスも勢いに戸惑いつつ返答する。
雪の境界線上で、レインス、オクルス、ララ、アルマージュが横一列に手を繋いだ。
「オッケーですね。では、せーので境界線を越えましょう。いいですか? せーのっ!」
皆が一飛びで越境する。
雪を踏みしめる音がしない、暖かく確かな大地に一行が降り立った。
◇◇◇
オクルスたちは暗黒山脈中部に入り、木々が空高く林立し始めて少しまで進むと、その日は休むコトにした。
テントの中でも何も問題はなかったのだが、あえて外にでて焚き火を焚いた。
中部に入ったとは言え、まだ夜は少し寒い。
焚き火に鍋を掲げ、皆でその中身であるスープと具をつついていた。
「いやしかし、まだちょっと冷えるけど、昨日までは雪の中にいたとは思えないね。コッチは最高」
「レインスさん、寒いの本当にイヤそうでしたもんね。今夜はテントの中じゃあなくて、良かったんですか?」
「やっぱり外の直火ってのが何て言うか一番、熱さを実感できるじゃん? ほら、あの温泉みたいに」
「ああ、あの温泉は気持ち良かったですね」
雪中行軍を行っていた際、一行は周囲の雪が溶けたオアシスを発見した。
そのオアシスに湧いていたのは、香りの良い湯だったのである。
「お前、今シーズンは女なんだから、あの時みたいにいきなり脱ぐのは今後やめろよ」
「何? もしかして惚れちゃった? あんたをおちょくれるなら向こう10年はコッチでいようかな~」
レインスがオクルスの鼻先に人差し指を近づける。
オクルスはスプーンでその指を払った。
「でも俺は、あの山頂での夜明けも良かったな」
アルマージュが言う。
山頂近くに陣を張り、その翌日に皆で日の出を見た時があった。
ダイヤモンドダストが煌めく中、ゆっくりと照らされ明らかになっていく山嶺は、思わず神々の世界を想起させるソレだった。
「夜明け前の星も綺麗でしたね」
「今の空だって悪かないよ、ホラ」
木々の隙間、濃く眩しく、散りばめられた星々が見える。
「……結構、楽しい旅ですよね」
「うん」
「そうだな」
「確かに」
皆はしばらく、空を見上げていた。
「食後は、たまにはコーヒーにするか。ずっと熱い煎茶かほうじ茶だったし」
オクルスが提案する。
「あら、いいのかしら。お茶の精がそんなコトで」
「同じ植物だしな。お茶ばっかも飽きるし、面白くない」
「とびきりの濃いのに、ミルクを3分の1と、砂糖をひとさじ」
「全員、アルマージュメニューでいいか?」
皆は微笑みながら、コクリと頷いた。
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