244 / 307
ラスト・コンテクスト Part1
大文字の夜に(17)
しおりを挟む
カップとツヅキを、ムサシの弾丸が襲う。
ソレらをメイは弾いて、先に進んでいく2人を守っていた。
「クソっ、行かれちまうぜ」
「わかってるわ。でも、この壁だってもう長くはもたない」
焦るムサシに、ジュディが話す。
壁はその強度をいよいよ失い始めたのか、虹色に揺らぎだした。
「お嬢さま、そろそろですかね?」
「ええ。持ちこたえてくれてありがとう」
カップとツヅキは何とか、ムサシの弾丸の射程距離からでられたようだった。
弾丸の標的が、改めてメイに変わる。
メイはその弾丸を弾きながら後退し、ウィーと背中合わせの状態になった。
「準備はいい?」
「あいあいさー、ですぅ」
くるりと回転し、背中合わせの二人が入れ替わった。
『100℃弾』のメイが、ウィーの壁に魔力をぶつけた。
◇◇◇
先を行くツヅキとカップの背後から、強風が吹き過ぎた。
思わずツヅキは立ち止まる。カップが口を開いた。
「お、行われたみたいですね」
「……そうみたいだな」
樹々の向こうを振り返るが、その隙間から差し込む眩い光の他は何も見えない。
「メイとウィーが先に追いついてくれるコトを願うよ」
◇◇◇
「ぐぁっ……!」
龍之介は“壁”に吹き飛ばされていた。
いや、壁の向こう側の三ヶ国全員がそうだった。
「ぐっ……! 早くこの壁を破壊しないと!」
童仙が言う。
メイが壁に放った一撃で、壁は移動を開始したのだった。
そして、その壁に押しやられる形で、三ヶ国は後退していた。
「うああっ!」
龍之介が力を振り絞って剣戟を加える。
皆も呼応するかのように壁を攻撃した。
壁の移動が止まり、低音で鳴動したかと思うと、上の方から崩れ始めた。
数秒後には壁は虹色で半透明の瓦礫と化し、消えてなくなった。
三ヶ国全員が息を切らしている。
お互いへの攻撃を始める余裕もなかった。
しかしやがて一人、また一人と、デル・ゾーネの後を追って“鍵”へと歩み、走りだした。
◇◇◇
「やっと追いつけたわね」
ツヅキとカップが振り向く。
ボロボロのメイとウィーがソコにいた。
“壁”を動かすほどの魔力は、彼女らにもソレ相応の代償を強いたのだった。
「メイ!」
「ウィーさん!」
ツヅキらは駆け寄った。
「何してるの。戻らないで、先を急いでくれないと」
「何が『急いでくれないと』だ。自分らも一緒だ」
「そ、そうですよ」
カップがツヅキから降りようとする。
「大丈夫か?」
「え、ええ。み、皆さんと一緒にも、もう歩けます」
「走りますよぉ」
ウィーが傷だらけの顔で、意地悪そうにカップに言う。
「は、走れます!」
「じゃあ、もう少しだけ頑張りましょ。“鍵”まであと少しよ」
ソレらをメイは弾いて、先に進んでいく2人を守っていた。
「クソっ、行かれちまうぜ」
「わかってるわ。でも、この壁だってもう長くはもたない」
焦るムサシに、ジュディが話す。
壁はその強度をいよいよ失い始めたのか、虹色に揺らぎだした。
「お嬢さま、そろそろですかね?」
「ええ。持ちこたえてくれてありがとう」
カップとツヅキは何とか、ムサシの弾丸の射程距離からでられたようだった。
弾丸の標的が、改めてメイに変わる。
メイはその弾丸を弾きながら後退し、ウィーと背中合わせの状態になった。
「準備はいい?」
「あいあいさー、ですぅ」
くるりと回転し、背中合わせの二人が入れ替わった。
『100℃弾』のメイが、ウィーの壁に魔力をぶつけた。
◇◇◇
先を行くツヅキとカップの背後から、強風が吹き過ぎた。
思わずツヅキは立ち止まる。カップが口を開いた。
「お、行われたみたいですね」
「……そうみたいだな」
樹々の向こうを振り返るが、その隙間から差し込む眩い光の他は何も見えない。
「メイとウィーが先に追いついてくれるコトを願うよ」
◇◇◇
「ぐぁっ……!」
龍之介は“壁”に吹き飛ばされていた。
いや、壁の向こう側の三ヶ国全員がそうだった。
「ぐっ……! 早くこの壁を破壊しないと!」
童仙が言う。
メイが壁に放った一撃で、壁は移動を開始したのだった。
そして、その壁に押しやられる形で、三ヶ国は後退していた。
「うああっ!」
龍之介が力を振り絞って剣戟を加える。
皆も呼応するかのように壁を攻撃した。
壁の移動が止まり、低音で鳴動したかと思うと、上の方から崩れ始めた。
数秒後には壁は虹色で半透明の瓦礫と化し、消えてなくなった。
三ヶ国全員が息を切らしている。
お互いへの攻撃を始める余裕もなかった。
しかしやがて一人、また一人と、デル・ゾーネの後を追って“鍵”へと歩み、走りだした。
◇◇◇
「やっと追いつけたわね」
ツヅキとカップが振り向く。
ボロボロのメイとウィーがソコにいた。
“壁”を動かすほどの魔力は、彼女らにもソレ相応の代償を強いたのだった。
「メイ!」
「ウィーさん!」
ツヅキらは駆け寄った。
「何してるの。戻らないで、先を急いでくれないと」
「何が『急いでくれないと』だ。自分らも一緒だ」
「そ、そうですよ」
カップがツヅキから降りようとする。
「大丈夫か?」
「え、ええ。み、皆さんと一緒にも、もう歩けます」
「走りますよぉ」
ウィーが傷だらけの顔で、意地悪そうにカップに言う。
「は、走れます!」
「じゃあ、もう少しだけ頑張りましょ。“鍵”まであと少しよ」
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
異世界亜人熟女ハーレム製作者
†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です
【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる