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ラスト・コンテクスト Part2
プリマキナ・オルソグナス(1)
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「アルマージュ、いつまで寝てんだ!」
オクルスがアルマージュに叫んだ。
胸ぐらを掴まれたアルマージュが目を覚ます。
「うおっ!」
「うおっ、じゃあねえよ! もう皆行っちまったぞ」
「は? ドコに?」
「下山だよ。決まってんだろ」
「下山? ドコから? てかココ山なのか?」
「アホか、寝ぼけてんな。暗黒山脈だよココ」
「……あ~そうか。あ~」
「よく酒も飲んでねえのに、そんなに寝てられんな」
横を通ったムサシが言った。
アルマージュも言い返す。
「うっせえ! 成長期なんだよ」
「ほれ、早く支度してこい」
「ああ、わりぃオクルス。えーっと、水場はアッチだっけ」
◇◇◇
童仙が精神を集中する。
一閃を目の前の巻物に放った。
確かに、その刃は巻物を通過した。
手応えもあった。
しかし、変化はない。
「難しいですね」
刀を鞘に納めながら、童仙が言う。
カップが答えた。
「ど、童仙さんでもや、やはり変な感触ですか?」
「ええ、切った感覚は確たるものです。ですが切れていない。いったい、何が起こっているのか」
◇◇◇
アルマージュは小さな泉で顔を洗っていた。
「ふう。やっと完璧、目ぇ覚めたぜ」
小さな泉といっても、対岸まではそれなりの距離だ。
ふと、その対岸の方をアルマージュは見た。
何か違和感がある。
「んん?」
目を凝らすが、すぐに違和感の正体が消えた。
そう、“見間違いだった”ではなく、“違和感の正体が消えた”コトにアルマージュは注意を払うべきだった。
光学迷彩は、まとっている物体が動いていると少しの違和感を生じる。
今、ソレはアルマージュの視線を感じ、止まっていた。
だが、ただ止まっているには留まらなかった。
「まだ寝ぼけてんのかな」
アルマージュがまた泉に目を落とし、顔を洗おうとする。
対岸が反射している部分に、赤い何かが光った。
「ん?」
対岸を見る。
何も見えない。
目を落とした。
反射している対岸に、樹々の間、赤い光源がある。
「何だ!?」
対岸を見る。
何もない。
しかし、アルマージュの直感が、その身体を後方に飛びのかせた。
◇◇◇
「やはり破壊できないかしら?」
メイが童仙とカップに話しかける。
アルマージュたちを待つ一行は“鍵”の破壊を試みていた。
だが、誰も成功しなかった。
「お。待っててくれたのか」
一行にムサシとオクルスが合流する。
「ちょうどいいわ。二人にも試してもらいましょ」
◇◇◇
アルマージュは森の中を走っていた。
「何なんだアレ!」
数瞬前、アルマージュは対岸からの赤いレーザーをすんでのトコロで回避したばかりだった。
そして今、遭遇した何かについて皆に伝えようと森の中を走っていた。
そんなアルマージュを、影が覆った。
思わず空を仰ぐ。
「マジで何なんだ……?」
大きなソレが、アルマージュを飛び越えていった。
◇◇◇
「やっぱり難しいわね」
ムサシとオクルスの結果を見て、メイが呟く。
「どうだ? 何か変化はあるのか? その、魔術的に」
「なさそうね」
ツヅキの問いにメイはそう答え、“鍵”に近づいた。
杖をだして。
「もう一度、私がやってみる」
メイが構える。
音が響き始めた。
「おお、流石はデル・ゾーネのお嬢さんだ」
フランシスが言う。
しかし
「……メイ?」
ツヅキの問いに、メイは「私じゃあないわ」と答えようとした。
全員を、迫りくる音と影が覆った。
直後、地面が轟音を立ててソレの着陸に割れ、土煙が巻き上がった。
“鍵”の上に、巨大な“蜘蛛”が降臨していた。
オクルスがアルマージュに叫んだ。
胸ぐらを掴まれたアルマージュが目を覚ます。
「うおっ!」
「うおっ、じゃあねえよ! もう皆行っちまったぞ」
「は? ドコに?」
「下山だよ。決まってんだろ」
「下山? ドコから? てかココ山なのか?」
「アホか、寝ぼけてんな。暗黒山脈だよココ」
「……あ~そうか。あ~」
「よく酒も飲んでねえのに、そんなに寝てられんな」
横を通ったムサシが言った。
アルマージュも言い返す。
「うっせえ! 成長期なんだよ」
「ほれ、早く支度してこい」
「ああ、わりぃオクルス。えーっと、水場はアッチだっけ」
◇◇◇
童仙が精神を集中する。
一閃を目の前の巻物に放った。
確かに、その刃は巻物を通過した。
手応えもあった。
しかし、変化はない。
「難しいですね」
刀を鞘に納めながら、童仙が言う。
カップが答えた。
「ど、童仙さんでもや、やはり変な感触ですか?」
「ええ、切った感覚は確たるものです。ですが切れていない。いったい、何が起こっているのか」
◇◇◇
アルマージュは小さな泉で顔を洗っていた。
「ふう。やっと完璧、目ぇ覚めたぜ」
小さな泉といっても、対岸まではそれなりの距離だ。
ふと、その対岸の方をアルマージュは見た。
何か違和感がある。
「んん?」
目を凝らすが、すぐに違和感の正体が消えた。
そう、“見間違いだった”ではなく、“違和感の正体が消えた”コトにアルマージュは注意を払うべきだった。
光学迷彩は、まとっている物体が動いていると少しの違和感を生じる。
今、ソレはアルマージュの視線を感じ、止まっていた。
だが、ただ止まっているには留まらなかった。
「まだ寝ぼけてんのかな」
アルマージュがまた泉に目を落とし、顔を洗おうとする。
対岸が反射している部分に、赤い何かが光った。
「ん?」
対岸を見る。
何も見えない。
目を落とした。
反射している対岸に、樹々の間、赤い光源がある。
「何だ!?」
対岸を見る。
何もない。
しかし、アルマージュの直感が、その身体を後方に飛びのかせた。
◇◇◇
「やはり破壊できないかしら?」
メイが童仙とカップに話しかける。
アルマージュたちを待つ一行は“鍵”の破壊を試みていた。
だが、誰も成功しなかった。
「お。待っててくれたのか」
一行にムサシとオクルスが合流する。
「ちょうどいいわ。二人にも試してもらいましょ」
◇◇◇
アルマージュは森の中を走っていた。
「何なんだアレ!」
数瞬前、アルマージュは対岸からの赤いレーザーをすんでのトコロで回避したばかりだった。
そして今、遭遇した何かについて皆に伝えようと森の中を走っていた。
そんなアルマージュを、影が覆った。
思わず空を仰ぐ。
「マジで何なんだ……?」
大きなソレが、アルマージュを飛び越えていった。
◇◇◇
「やっぱり難しいわね」
ムサシとオクルスの結果を見て、メイが呟く。
「どうだ? 何か変化はあるのか? その、魔術的に」
「なさそうね」
ツヅキの問いにメイはそう答え、“鍵”に近づいた。
杖をだして。
「もう一度、私がやってみる」
メイが構える。
音が響き始めた。
「おお、流石はデル・ゾーネのお嬢さんだ」
フランシスが言う。
しかし
「……メイ?」
ツヅキの問いに、メイは「私じゃあないわ」と答えようとした。
全員を、迫りくる音と影が覆った。
直後、地面が轟音を立ててソレの着陸に割れ、土煙が巻き上がった。
“鍵”の上に、巨大な“蜘蛛”が降臨していた。
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