サイコドール

みかそ

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春眠暁を覚えず

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「おい、いい加減起きろ」
 日本家屋の縁側で、2人は将棋を指していたはずだった。
 自分の膝枕で眠るローゼンに、着流しを着たレイフは呼びかけた。普段この男は、部下と上司という関係から自分に対して距離感をある程度保ってはいるが、2人きりになると距離を急に詰めてくる。先ほども将棋の対局中に「参りました、眠くなっちゃったんで膝貸してください」と悪びれなく言い、自分の膝を枕に勝手に寝入ってしまった。
 春という事で桜の花見を楽しみながら酒を味わっていたため、どちらとも電脳のデータ上ではほんのりと酩酊状態だった。日本酒を楽しみ時間が経過し、仮想空間の陽光漂う春の昼の背景は生温い夜に変じた。
 桜舞い散る夜の中、将棋でも指してみるか?と言い出し、快諾された時の事を思い出す。
 (お前は私に寄り添ってくれているのか?)
 以前はパートナーとも付き合っていたが恋人間の雰囲気は苦手だ、何を話せばいいのか分からなくなる。
 戦闘を含む普段の任務をこなす日常、それに伴う会話はどうしても冷淡、殺伐としてくる。寡黙な自分が何となしに会話を必要としないチェスや将棋を提案しても、ローゼンは「いいですよ」と答えてくれる。
 それが愛おしい、という事なのかも知れない。
 しばらくはこのままでいよう。なかなか現実リアルで会う事ができない逢瀬、この時間を大切にしたいとレイフは思った。
 レイフはローゼンの頭に触れ、そっと灰色の髪を撫で上げた。子どもの頃の寝顔、その面影はまだ残ってるように感じる。
 ふわりと桜の花びらがそっと盃に、そして2人の髪や顔、唇に触れた。
 背景の三日月はもやで煙り、暖かな光を放っている。まるで2人を包むように。
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